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北朝鮮をめぐる情勢

  田中 宇

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 私がこれまでに書いた記事のうち、北朝鮮をめぐる情勢に関するものの一覧です。

ヤルタ体制の復活
【2008年6月17日】 大国どうしが競っていた対立的な第一次大戦前の多極型とは異なり、今後予想される新ヤルタ体制(多極型の世界体制)は、世界に対する大国間の共同管理のような形を取る。これは旧ヤルタ体制で、すでに目指していたことだ。大国どうしが戦争して単独覇権を目指すという、戦前の動きとは逆方向である。世界は、今よりも安定するだろう。ただしその前に、窮したイスラエルやイギリスによる最後の逆襲的な戦争誘発があるかもしれない。

維持される北朝鮮・イラン敵視策
 【2008年6月5日】 アメリカは、北朝鮮と国交を正常化せず、かといって「政権転覆」にも乗り出さない中途半端な状態を続けそうだ。この状態が続くほど、韓国と中国が、北朝鮮に支援や干渉をして安定化を維持することが重要になる。北朝鮮にとって最も重要なことが、従来の「アメリカとの国交正常化」から「中国や韓国との関係維持」に変わっていく。朝鮮半島の安定は、アメリカによってではなく、中国・韓国・北朝鮮・ロシアという、地元の国々によって守られる体制になる。

北朝鮮から「ねつ造する権利」を買ったアメリカ
 【2008年4月15日】 米政府が、北朝鮮にウソをつかせてまで「シリアへの核技術供与」を認めさせたいのは、シリアが核兵器を開発している話を、国際的な大問題に仕立て、イスラエルがシリアに戦争を仕掛けるのを正当化したいからである。アメリカは、シリアを「犯人」に仕立てるため、北朝鮮と「司法取引」をして、北朝鮮が「シリアも犯人です」という、米当局が作った「供述調書」に署名する代わりに、北朝鮮を罪に問わないことにした。アメリカは、国交正常化や経済援助という見返りで北朝鮮を買収し、シリアを攻撃する口実をねつ造する権利を買い取った。

北朝鮮核交渉の停滞
 【2008年1月29日】 北朝鮮が核開発の内容について事実をアメリカに伝えたのに、アメリカが「それは事実ではない」「もっと多いはずだ」と言ったのだとしたら、北朝鮮は「ブッシュは信用できない。次の大統領になるまで待った方が良い」と考えて当然である。ブッシュ政権は、自分たちが北朝鮮の核開発について誇張してきたことを認識しているだろうから、核問題の解決に向けた動きを止めたのは、北朝鮮の意志ではなく、アメリカの意志である。

6者協議進展で困る日本
 【2007年7月10日】 日本が「拉致問題が解決しない限り、北朝鮮は信用できないし、支援したくない」という姿勢をとり続けていると、6者協議は日本抜きに進展し、6者協議の成功後に作られる東アジアの集団安保体制の枠組みにも、日本は入らない状態になる。日本は孤立するが、アメリカとしては、親米の日本を見捨てるわけにもいかず、日米同盟だけは維持し続けてくれるかもしれない。そのような展開を、日本政府は望んでいると思われる。

北朝鮮制裁・デルタ銀行問題の謎
 【2007年7月3日】 不可思議なのは、アメリカ政府内で、財務省がデルタ銀行問題で北朝鮮を怒らせ、6者協議を頓挫させ続けたのとまさに同時期に、国務省ではヒル次官補が、何とかして6者協議を再び進展させようと動き回り、今年1月にはベルリンで米朝の直接交渉までやって、6者協議を復活させたことである。米政府内ではこの1年半、6者協議に対し、財務省が潰す作戦を展開した一方、国務省が何とか復活させる作戦を展開していた。

北朝鮮6カ国合意と拉致問題
 【2007年2月16日】 冷戦後、北朝鮮が起こす問題は、東アジアの最大の不安定要因だった。クリントン政権までは、この問題をアメリカだけで解決しようとしていたが、ブッシュ政権は、中国を中心とする東アジア諸国が解決し、アメリカはそれに協力するという多極化戦略に転換した。この転換を受けた日本政府の対応が「拉致問題が解決されない限り、北朝鮮とは交渉不能」という状況を演出することだった。

朝鮮半島を非米化するアメリカ
 【2007年2月6日】 アメリカは中東の戦争で手一杯だから、北朝鮮の核開発問題は、空爆などの軍事で解決できない。北との和平条約の締結と引き換えに解決するしかない。和平条約が発効し、朝鮮戦争の終結が宣言されると、朝鮮戦争の休戦を維持監視するために存在していた国連軍は必要なくなり、国連軍の名目で韓国に駐留していた在韓米軍の存在意義が失われる。在韓米軍の撤退は、米韓の軍事同盟を終わらせ、韓国をアメリカの傘下から中国の傘下へと移転させ、韓国における親米右派を衰退させ、反米左派を盛り上げる。ブッシュ政権の行動からは、それでもかまわないと思っていることがうかがえる。アメリカは韓国を非米化しようとしている。

北朝鮮・イランと世界の多極化
 【2007年1月30日】 アメリカとイギリス、イスラエルの関係史を踏まえると、アメリカが世界を多極化するためには、単に中国やロシアを台頭させるだけではダメで「米英イスラエルを中心とする『正義』の諸国と、ソ連やイスラム教徒など適当な『悪』との半永久的な戦い」の世界システムを作ることで、多極体制の実現を不可能にしてきたイギリスやイスラエルを無力化することが必要だと分かる。

北朝鮮問題の解決が近い
 【2007年1月23日】 ベルリンでの米朝協議の翌日に北朝鮮が「協議は前向きで誠実だった」と言っているということは、アメリカは北朝鮮にCVID(厳格な核の破棄)を求めなかったということである。北朝鮮が満足しているということは、今後アメリカが北朝鮮の核施設を査察しても、北側は核兵器の技術をうまく隠すことができそうで、また必要になったら核兵器を作れそうだということでもある。

閉じられるアメリカの核の傘
 【2007年1月4日】今後、アメリカが中東での戦争をイランに拡大し、中東の大戦争の中で軍事力と外交力を低下させた場合、アメリカは余裕がなくなり、国力を温存するためにできる限り海外から軍事力を撤退しようとする可能性が大きくなる。日本は独力で自国を守ってくれと言われる傾向が強まる。だから、今のうちから「日本は核武装すべきか」という議論が必要になる。

「一人負け」の日本
 【2006年11月16日】 911後のアメリカが故意の失策を繰り返し、何も変わっていないかのように見せながら隠然と世界から手を引き始めている今の新状況に、日本も早く気づき、次の国是を考え、対策を打った方が良い。韓国や中国、ロシアは、すでに新状況に気づいている。北朝鮮の金正日も、もう気づいたかもしれない。このままでは、日本だけが出遅れて「一人負け」することになる。

アジアのことをアジアに任せる
 【2006年10月31日】 北朝鮮の核実験を機に中国は、これまでよりも自主的、能動的に北朝鮮に対する手綱を持つようになった。アジアのことはアジアに任せるというアメリカの戦略は、北朝鮮の核実験を機に、中国の能動的な覇権活動、安倍訪中による日中敵対の終息などが引き起こされたことで、ようやく実を結び始めている。

日本の核武装とアメリカ
 【2006年10月24日】 軍事費も兵力も足りないアメリカでは、日本が核武装したら「もはや日本はアメリカの核の傘の下にいないので、アメリカに頼らず自分で防衛した方が、アメリカにとってもコスト安になる」という議論が出てきかねない。すでに韓国では、韓国側がアメリカ側に「韓国はアメリカの核の傘の下にあると言ってほしい」と求めているのに対し、米側は「前向きに検討する」としか答えない状態になっている。

中国が北朝鮮を政権転覆する?
 【2006年10月19日】 中国政府が北朝鮮に対する態度を硬化させたのは、核実験が実施されたことが最大の原因ではない。核実験は、態度硬化のきっかけでしかない。中国が北朝鮮を批判したり、政権転覆支援を示唆したりする本質的な理由はおそらく、中国が北朝鮮にアドバイスした経済開放政策が進まず、中国が目指してきた「北朝鮮を中国のような社会主義市場経済に軟着陸させていく」という目標が実現していないからである。

安倍訪中と北朝鮮の核実験
 【2006年10月17日】 北朝鮮の核実験が不可避になった時点で、中国側は金正日に「中国が良いと言ってから実験を実施せよ」と命じる一方、アメリカに「核実験後の北朝鮮との交渉に中国が責任を持つから、その代わり日本の安倍に、首相になったらすぐ中国に来いと言ってほしい」と求め、かねがね中国に責任を持たせたいと思っていたアメリカは中国の提案に応じ、安倍に「もうすぐ北朝鮮が核実験するから、早く中国との関係を改善しなきゃダメだ」と強く言って訪中を実現させ、中国は北朝鮮に「安倍が中国を離れたら核実験しても良い」とゴーサインを出し、核実験は安倍が北京から離れた半日後に実施された、というのが私の仮説である。

多極化と日本(1)
 【2006年9月12日】 最近、日本は対米従属が続けられなくなるかもしれないという前提で問題提起をした人がいる。中曽根元首相である。中曽根氏は9月5日の記者会見で「米国の態度が必ずしも今まで通り続くか予断を許さない。核兵器問題も研究しておく必要がある」と強調した。発言は、アメリカが覇権を失墜したり、孤立主義に陥ったりして、日本は対米従属が維持できなくなる懸念があるという趣旨だと解釈できる。

北朝鮮ミサイル危機と日本
【2006年7月11日】 日本は、日米同盟の強化を願って、北朝鮮に対する強硬姿勢をとっているが、この姿勢を利用してアメリカは、日本の願いとは逆に、中国中心のアジア諸国に、アメリカから自立した新体制を作らせようとしている。北朝鮮に対する中国の外交努力が成功したら、朝鮮半島は中国と韓国、ロシア、北朝鮮という当事者間の話し合いで動くようになる。アメリカは、東アジアおける覇権の多極化を容認する度合いを強める。日米同盟強化を目的とした日本の強硬姿勢は、結果的に、日米同盟の空洞化を進めかねない。

北朝鮮ミサイル危機で見えたもの
 【2006年7月7日】 ブッシュ政権が、イラクやイランに対しては好戦的な方針なのに、北朝鮮に対してだけは「脅威ではない」と言うのは、そうしないと中国が6カ国協議の主導役を務めてくれなくなるからである。中国は、アメリカに敵視されることを恐れている。中国を警戒させないためには、ブッシュ政権は、緊張が高まるごとに「北朝鮮を攻撃しない」と言い続ける必要がある。中国は、アメリカとの敵対は避けたいが、アジアでの覇権国にはなりたいと考えている。ブッシュ政権は、この中国の野心を利用して、北朝鮮問題の解決を中国にやらせている。

アメリカの戦略を誤解している日本人
 【2005年11月29日】 アメリカは、自国の負担軽減のため「戦後60年、もう日本を信頼しても良い時期に来ている。日本に軍事的・外交的な自由裁量を与え、防衛技能を日本に教える施設共用のプロセスを経たうえで、在日米軍を撤退させる」と考えている。アメリカは、もう日本に従属を求めていないし、中国包囲網を強化する方向にもない。これらは、多くの日本人が思い込んでいる誤解である。

日本の孤立戦略のゆくえ
 【2005年11月24日】 小泉首相の靖国参拝は、暫定的に日本を東アジアで孤立させることで、米軍の撤退に対応できる新体制を日本に作ろうとする「暫定孤立戦略」であると考えられる。この戦略は、日本の体制を、アメリカの庇護のもとにあった戦後体制から脱却させるためであり、その転換のプロセスが一段落したら、役目を終えることになる。

日本:脱亜入欧から親米入亜へ
 【2005年10月4日】 欧米の方で世界を多極化してアジアを中心の一つに格上げしようとする動きがあるなら、日本がアジアを軽視し続ける必要はない。100年前に欧米が隆々とする一方で清朝中国が衰退して敗北し続けた時代には「脱亜入欧」が適していたように、アメリカが自滅して中国が勃興する傾向が続くなら、今後の時代には「脱米入亜」が適している。まだアメリカは復活する可能性があるし、いきなり「脱米」を宣言するとアメリカの反撃が怖いので、しばらくは「親米入亜」を掲げておけばよい。

不利になる日本外交
 【2005年9月30日】 北朝鮮をめぐる6カ国協議の大譲歩に象徴されるように、アメリカの外交的な裁量はかなり低下している。そのあおりで日本も、共同声明で北朝鮮との国交正常化に努力すると約束する一方で「拉致問題は解決済みだ」とする北朝鮮側の主張を黙認しないと国交正常化交渉を進められないという不利な立場に置かれている。

北朝鮮6カ国合意の深層
 【2005年9月22日】 なぜブッシュ政権は、北朝鮮に対する無条件の譲歩を行うのだろうか。なぜ今の時期に急いで譲歩する必要があるのか。この疑問に対する私なりの答えは「今後、アメリカはイランやシリアに侵攻するつもりで、その際に北朝鮮が煽られて無茶なことをしそうなので、それを事前に抑制したのではないか」というものだ。

アジアでも米中の覇権のババ抜き
 【2005年8月3日】 アメリカのライス国務長官がASEAN地域フォーラムを欠席し「東南アジアは中国やインドにあげますよ」というメッセージを発したのに対し、中国やインドは「いやいや、それはご遠慮いたします」とばかり、自分たちも逃げ出した。

朝鮮半島和平の可能性
 【2005年7月28日】 もはやアメリカが脅威でない以上、金正日としては、6カ国協議に参加する必要がない。にもかかわらず、今回北朝鮮が6カ国会議に再参加したということは、何か満足できる条件をアメリカから提示されたに違いない。その条件とは何だろうか。一つありそうなのは「北朝鮮が核兵器開発を破棄したら、米軍が韓国から撤退する」という交換条件である。

中台関係と日本の憲法改定
 【2005年3月1日】 日本政府には、中国や韓国、北朝鮮と対立しなければならない特段の事情でもあるのだろうか、と思っていたところ、国会で出てきたのが、日本国憲法改定のために必要な国民投票を行う構想であった。国民投票を成功させるには、日本周辺の脅威が大きい方が好都合だ。小泉政権は、憲法9条改定のために、周辺諸国との関係を悪化させる方向へと事態を微妙に動かしてきたのだと思われる。

北朝鮮の核保有宣言と日米
 【2005年2月22日】 北朝鮮の核保有宣言について、アメリカからの政権転覆攻撃を招く自滅行為だと見る解釈も多いが、実際にアメリカがその後とった行動は、北朝鮮に「6カ国協議の場に戻ってくれ」と説得することを中国に頼む、ということだった。アメリカはもはや、北朝鮮が核保有国になっても、軍事攻撃など強行策によって止めるつもりはなく、北朝鮮の問題は中国を中心とする周辺国に任せ続ける方針であることが、これで確定した。

実は悪くなかった「悪の枢軸」
【2005年1月25日】 ブッシュ政権はイラク、イラン、北朝鮮の3カ国を「悪の枢軸」と呼び、これらの国々は大量破壊兵器を開発してアメリカを攻撃しようとしているので、場合によっては先制攻撃する必要があると発表した。イラクについては、大量破壊兵器を開発していなかったことが明らかになったが、北朝鮮とイランに対しても、アメリカはこれらの国々が脅威だと主張するためにウソをついている可能性がある。

北朝鮮崩壊の可能性を分析する
 【2005年1月18日】 韓国と中国が支援している経済自由化が軌道に乗れば、北朝鮮が崩壊する可能性は低くなり、逆に経済自由化に失敗すれば、政変が起きやすくなり、崩壊の可能性が高くなる。政治面では、今のところ金正日政権が危機に瀕している兆候はないので、経済自由化が成否のカギである。自由化が成功するかどうかは、今年中にある程度分かるだろう。

経済発展が始まりそうな北朝鮮
 【2005年1月13日】 北朝鮮の山間部などでは、飢餓状態の人がかなりいるのは事実だろうが、その一方で、都会では経済自由化の恩恵を受ける人も増えている。平壌市内では、夜遅くまで開いているレストランや商店が増え、市内を走る自家用車の数が増え、あちこちに外国製品の広告看板が立つようになった。北朝鮮経済のここ2−3年の変化は、それ以前の50年間の変化よりも大きいといわれる。韓国の統一相は、今年末までには北朝鮮の人々の間に経済市場主義の考え方が定着すると予測している。

自立を求められる日本
 【2004年8月17日】 最近感じられ始めたことは、アメリカは日本にも、自国を牽制する「非米同盟」諸国の一つになってほしいと考えているのではないか、ということである。日本はアメリカのくびきから自らを解き放ち、日本らしい独自の外交戦略を実行してほしい、というのがパウエルやアーミテージの「憲法9条を捨てよ」という発言の真意ではないか。

アジアから出て行くアメリカ
 【2004年6月15日】 朝鮮半島をめぐる昨今の動きは、北東アジア全域にとって、第二次大戦以来の大きな動きの始まりである。冊封体制の復活という意味では、アヘン戦争以来の大きな動きになる。日本にとっても大変動になることは、ほぼ間違いない。日本は明治維新の際は他のアジア諸国より先見の明があったが、今の日本は見たいものしか見ない傾向が強く、失敗する可能性が増している。

北朝鮮をめぐるアメリカの詭弁作戦
 【2004年6月11日】 北朝鮮が核兵器を持っている可能性はある。北朝鮮はアメリカからの核攻撃に備え、全国に巨大な地下豪を持っている。そうした地下施設に核兵器が隠されてしまえば、査察団に見つけられる可能性は低い。だがその一方で「見つけられる可能性が低いのだから、査察などやっても無駄で、先制攻撃した方がいい」というネオコンの主張が通ってイラク侵攻が挙行された結果、アメリカは大失敗を喫した。イラクは侵攻ではなく、査察と外交で問題を解決すべきだったが、同じことは北朝鮮に対しても言える。

在韓米軍撤収と南北接近
 【2004年6月8日】 韓国は北朝鮮と接近する一方でアメリカとの距離を置き、その分中国と親密になっていく傾向を強めている。韓国の世論は、中国よりアメリカを脅威とみなす傾向が強まっており、経済でも韓国製品の対米輸出より対中輸出が多くなるなど、中国との関係が深まっている。韓国と中国が東アジアの「非米同盟」の中核になり、そこに北朝鮮やロシアが入る展開になる可能性が大きい。

北朝鮮とミサイル防衛システムの裏側
 【2003年9月5日】 アメリカのミサイル防衛システムは迎撃能力に対する疑問が多く、テスト結果も思わしくないため、ブッシュ政権はシステムの拡大を思うように進められずにいる。そのため、本国で使えないパトリオットを日本などに売り込もうとしている。北朝鮮を「悪の枢軸」に入れたのも、そうすればミサイル防衛システムを米国内や日韓などに売り込むことができると考えてのことだったのかもしれない。

北朝鮮問題で始まる東アジアの再編
 【2003年9月3日】 北朝鮮の核兵器開発宣言は、戦争を誘発しなかった。むしろアメリカはその後、自ら北朝鮮と交渉することを避け、交渉の主導権を中国に与えた。中国は朝鮮半島に大きな影響力を持つことになった。中韓が協力して北朝鮮をなだめ、問題を解決できたら、中韓朝3カ国は親密な同盟体になるだろう。そのとき、アメリカは東アジアに対する影響力を失っている。北朝鮮問題を中国にやらせることは、汚れ仕事を下請けに押しつけるようなものではなく、逆にアメリカが東アジア支配から手を引く第一歩となる可能性が大きい。

静かに進むアジアの統合
 【2003年7月18日】 アメリカ市場が飽和状態なら「アジアが作った工業製品をアメリカが買う。アメリカの金融商品をアジアが買う」という相互依存は将来性がない。そのためアメリカは、アジアの経済統合を認める代わりに、アジアがアメリカ市場に頼らなくても経済成長していけるようにした上、その一方で為替を今よりかなりドル安に持っていき、アメリカの製品がアジアやヨーロッパでも売れるようにしてアメリカ経済を救う、というシナリオかもしれない。

ドル安ユーロ高とアジア
 【2003年5月28日】 日本や中国は、アメリカとの経済的な関係が国の繁栄の土台となっているので、イラク侵攻にも反対できなかった代わりに、アメリカが北朝鮮を武力侵攻する可能性も少ないことになる。北朝鮮と戦争すれば、日中や韓国の経済基盤が大打撃を受け、アメリカの金融市場を支えるアジアからの資金も失われてしまうからである。

北朝鮮に譲歩するアメリカ
 【2003年4月19日】 北朝鮮がすでに核弾頭を持っているかどうか、日米韓ははっきりした結論を出していない。これは、わざと結論を明確にしないことで、北朝鮮をとりあえず交渉の場に引っぱり出そうとする意図がありそうだ。すでにアメリカも韓国も日本も、たとえ北朝鮮が核弾頭を持ってしまっても容認せざるを得ない、という態度を表明している。

暗雲たれこめる東アジア
 【2003年2月24日】 在韓米軍の縮小は、以前から取りざたされていたものだが、中道派的な縮小と、タカ派的な縮小は、中身が180度違う。中道派による在韓米軍縮小は、北朝鮮に対する宥和策と抱き合わせで少しずつ行うもので、北朝鮮の警戒を解き、朝鮮半島を安定させるためのものだ。タカ派による在韓米軍縮小は、北朝鮮を煽りつつ、韓国側が対立を煽る米タカ派に文句をつけてきたところで一気に米軍を韓国から引き揚げ、北朝鮮をさらに煽って「第2朝鮮戦争」の瀬戸際まで東アジアを持っていこうとする戦略だ。

北朝鮮ミサイル船拿捕とイラク攻撃
 【2002年12月17日】 アメリカにとって、北朝鮮から送られてきたミサイルを中東沖で押収しても買い手であるイエメンが沈黙するという事態は、ミサイルが「イラクに運ばれる予定だったに違いない」と主張できることになる。何とか理由をつけてイラクに宣戦布告したい米政権内の右派にとって、これは格好のチャンスだった・・・

小泉訪朝の背景を探る
 【2002年9月24日】 「第2朝鮮戦争」を回避したいアメリカの中道派は、極右派がイラクにかかりっきりな今のうちに、北朝鮮や中国を、極右派の「文明の衝突」戦略から切り離そうと考え、そのため小泉首相に北朝鮮訪問を持ちかけ、金正日にも「大幅譲歩すればサダム・フセインのようにならずにすむ」と持ちかけたのではないか、と思われた。

揺れるアメリカの北朝鮮外交
 【2002年6月3日】 北朝鮮に対するアメリカの政策が敵対と宥和の間を行ったり来たりするのは、アメリカの支配層の中に、北朝鮮との敵対を望む国防総省や軍需産業など「産軍複合体」の勢力と、東アジアが安定して経済発展につながるので宥和策の方が良いと考えている資本家層という2つの勢力が存在し、ブッシュ政権の方向性をめぐって対立しているからだと思われる。

北朝鮮人亡命事件の背景
 【2002年5月27日】 中国・瀋陽の日本領事館に北朝鮮人が駆け込んで亡命申請した事件について、日本ではあまり報道されていないが、欧米のメディアではこの事件の本質として説明されていることがある。それは、北朝鮮人の駆け込み亡命が、欧米人や韓国人でつくる国際市民グループによって企画されたものだった、という点である。

日本の有事法制とアメリカ
 【2002年4月18日】ブッシュ政権は今後、中国や北朝鮮を挑発する行為をやめる可能性が高い。東アジア情勢が沈静化に向かうなら、小泉政権としてはなるべく早く有事法制を国会に通したいと考えたとしても不思議ではないということになる。

北朝鮮を中国式に考え直す  2001年2月5日

北朝鮮の人々を救いそうもない南北和解  2000年11月16日

北朝鮮:金正日のしたたかな外交
 【2000年6月26日】 北朝鮮は1998年にミサイルを日本海に試射した後、アメリカだけを相手にした外交を、国際社会全体と付き合う戦略に変えざるをえなくなった。その裏には、金正日が軍や党さえも食わせられなくなった経済的困窮のほか、アメリカのミサイル防衛構想を潰す意図もあった。作戦は成功し、金正日のイメージは大幅に良くなった。

財閥解体で日本を超えたい韓国
 【1999年8月16日】 5大財閥を頂点とする韓国経済の苦境は、一昨年の金融危機によって起きたが、これを国家的な大改革に利用したのが、金大中大統領だ。19世紀末、西欧化に遅れをとり、日本の植民地にされた韓国だが、それから100年、アジアを再び覆う変革の機運の中で、今回は動きが鈍い日本より早く、世界標準の経済システムを導入し、100年の苦渋を晴らそうというものだ。

変質するアメリカの北朝鮮政策  1998年12月14日

韓国の威信を傷つけた「経済進駐軍」IMF  1997年12月10日

クリントン提案で動き出すか北朝鮮の民営化計画 (1997/01/24)

黄書記亡命でうかがえる北朝鮮高官たちの絶望感 1997年2月15日

米国が作った北朝鮮の謝罪文 (1996.12.30)

北朝鮮への対応めぐりきしむ米韓関係 (1996.11.8)



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