北朝鮮から「ねつ造する権利」を買ったアメリカ2008年4月15日 田中 宇4月8日、シンガポールで、アメリカのヒル国務次官補と、北朝鮮の金桂寛(キム・ゲグァン)外務次官が会談し、北朝鮮の核開発疑惑に関し、米朝間で非公開の合意がなされ、覚書が取り交わされた。 合意内容は非公開だが、アメリカの政府系ラジオ局「自由アジア」が、複数の米高官の話として内容を報じている。それによると、アメリカは今後、6者協議の場で、北朝鮮が以前にウラン濃縮型の核兵器開発を行っていたことと、シリアに核兵器開発の技術を供与したことの2点について発表を行い、それに対して北朝鮮は「アメリカが言っている通りです」もしくは「アメリカがそう言っているのは認める」という「認知」を表明する。これらが行われた後、アメリカは北朝鮮をテロ支援国家のリストから外し、北朝鮮はアメリカから経済制裁を解かれて支援を受けられるようになる。アメリカと日本は、北朝鮮との国交回復に向けた話し合いを開始する。こうした道筋が、米朝間で合意されたという。(関連記事) 4月10日に北朝鮮の駐ロシア大使が発表したところによると、北朝鮮はすでに6者協議で約束した寧辺原子炉などの核施設の解体破棄作業を終え、近く破棄作業の完了を中国に報告し、これを受けて中国が6者協議を召集する。この6者協議で、アメリカは北朝鮮の「ウラン濃縮」と「対シリア核技術供与」について主張し、北朝鮮はアメリカの主張を認知するという「手打ち」が行われ、その後、アメリカは北朝鮮をテロ支援国家リストから除外すると予測される。(関連記事) ▼北朝鮮核問題3つのテーマ 北朝鮮の核兵器開発疑惑は、いくつもの話が長期にわたって複雑に絡まっていて理解が難しいので、ややくどいかもしれないが、以下に説明する。北の核疑惑には「プルトニウム」と「ウラン」と「核技術の海外譲渡」という3つのテーマがある。 「プルトニウム」に関しては、北朝鮮が1980年代から稼動している寧辺(ヨンビョン)の小型原子炉と再処理工場でプルトニウムを製造し、それで核爆弾を作って2006年10月に地下核実験を行ったが、起爆装置が稚拙で一部しか爆発せず失敗したという経緯だ。昨年の6者協議で、北朝鮮は作ったプルトニウムの総量を発表することで合意し、昨年11月に北朝鮮は「30キロのプルトニウムを作った」と、米朝2国間協議の場で米側に開陳した。しかし米側は「もっと作ったはずだ」と言って、北朝鮮の開陳を6者協議の合意事項の履行とみなすことを拒否した。北朝鮮は「本当のことを開陳したのに、それを事実と認めない米側が悪い」と怒り、この問題は暗礁に乗り上げた。(関連記事) 「ウラン」に関しては、パキスタンの「核の父」と呼ばれているカーン博士が、ウラン濃縮によって核兵器を作れる施設と技術を北朝鮮に譲渡したと、米当局が1990年代末から主張していた。その後2002年10月、米朝2国間交渉で、北朝鮮がウラン濃縮を行っていることを、北の代表であるカン・ソクジュ(姜錫柱)外務次官が認めたという話が大々的に報じられ、これ以降「北はウラン型核兵器開発も行っている」というのが「事実」として定着した。しかし実は、この「カン次官の認知」は誤報だった。実際には、米代表のケリー国務次官補が「わが方は、北朝鮮が秘密裏にウラン濃縮を進めて核兵器を作っている証拠を持っている」と述べたのに対し「アメリカがわが国を侵略しようとする限り、わが国は自衛策としてウラン濃縮を行う権利を持っている」と述べたにすぎなかった。(関連記事) その後2004年春には「パキスタン政府がカーン博士を尋問し、北朝鮮にウラン型核兵器製造用の施設(遠心分離器)と技術を譲渡したことを認めた」という話が報じられた。だが米政府は、この件を具体的な証拠とともに6者協議の場に出し、中露韓日という他の参加者を納得させた上で北朝鮮側の回答を迫ることをしなかった。アメリカは「証拠を持っている」と言うだけで出さず、北朝鮮は「ウラン型の核開発はやっていない」と反論する水かけ論が続いた。(関連記事) 3つ目の「核技術の海外譲渡」は、昨年末から急に問題になりだしたポイントだ。昨年9月6日、イスラエルの爆撃機がシリアの軍事施設を空爆した。イスラエル側では「シリアが北朝鮮の技術支援を受けて建設中だった核兵器開発用の原子炉を空爆した」という話が出てきた(イスラエル政府は攻撃対象について何も発表せず)。シリア政府は「空爆されたのは、使われていない軍事施設であり、核関連の施設ではない」と反論したが、この事件を機に「北朝鮮がシリアに核兵器技術を譲渡したに違いない」という疑惑が、米政界などで問題になった。(関連記事) ▼北朝鮮と司法取引してシリアを悪者にする 北朝鮮の核疑惑をめぐる、以上の3つの点のうち、今回の米朝合意では、一つ目の「プルトニウム」については何も問題にされていない。つまりアメリカは、北朝鮮が開陳した「30キロ製造」を事実として容認することにしたと考えられる。 2番目の「ウラン」と3番目の「対シリア核技術供与」に関しては、アメリカが主張をまとめて文書にしたものを、北朝鮮が認知することで、解決することになった。北朝鮮が自国の方で「わが国はウラン濃縮をしました」「わが国はシリアに核技術を供与しました」と表明するのではなく、アメリカが文書を作り、それを北が認知する、という奇妙な構図になっている。 そこから透けて見えるのは、北朝鮮は、自国としてはウラン濃縮と対シリア供与について積極的に認めるつもりはないが、アメリカが「2点を認めたら、米朝関係を正常化してやる。テロ支援国家リストから外し、経済援助を再開する」と言うので、2点は事実ではないが認知することにした、という構図である。 米政府が、北朝鮮にウソをつかせてまで2点を認めさせたいのは、おそらく、シリアが核兵器を開発しているという話を、国際的な大問題に仕立て、イスラエルがシリアに戦争を仕掛けるのを正当化したいからである。アメリカは、シリアを「犯人」に仕立てるため、北朝鮮と「司法取引」をして、北朝鮮が「シリアも犯人です」という、米当局が作った「供述調書」に署名する代わりに、北朝鮮を罪に問わないことにした。アメリカは、国交正常化や経済援助という見返りで北朝鮮を買収し、シリアを攻撃する口実をねつ造する権利を買い取った、とも言える。 米ブッシュ政権はイラク侵攻後、イスラエルと組んで、もしくはイスラエルに依頼して、シリアとイランを空爆する構想を持っている。今回の「司法取引」は、シリアを空爆するための口実作りの一つと思われる。 ブッシュ政権の中枢で、イスラエルにシリア攻撃をやらせたがっている勢力の中心はチェイニー副大統領だ。北朝鮮と「司法取引」する作戦も、チェイニーの策略である可能性が高い。チェイニーは、イラク戦争の前にも、配下のネオコンを動かして「ニジェールウラン問題」などの証拠をねつ造し、マスコミを動員してイラクが大量破壊兵器を作っているという話を人々に信じ込ませ、イラク侵攻の挙行に成功した。その後、イラクは大量破壊兵器を作っていなかったことが公式に認められたが、チェイニーらのねつ造行為は大して非難されていない。チェイニーは2006年に「北朝鮮のミサイルは大したことがない。アメリカにとって脅威ではない」と発言するなど、以前から「悪の枢軸」のうち北朝鮮にだけ甘かった。(関連記事) ▼シリアの核施設を空爆したことにする 北朝鮮がシリアに核技術を供与した話は、イスラエルが昨年9月に空爆したシリアの施設が建設途中の原子炉(もしくは核兵器工場)だったという話を補強するために必要とされている。実際には、イスラエルが空爆した施設が原子炉だったとは考えにくい。シリア政府は、イスラエルに空爆されて施設を破壊された後、跡地を整地し、3カ月後には、破壊された施設とほとんど同じ施設を、同じ場所に再建している。壊されたのが原子炉なら、3カ月で再建できないだろう。米諜報機関は空爆後、空爆されたシリアの施設周辺から放射能が出ていないことを確認したとも報じられている。 (関連記事その1、その2) イスラエルが空爆したのはシリアの核兵器開発施設だったと米マスコミにリークしたのはチェイニーだったと指摘されている。イスラエルは2006年夏、シリアとイランに支援されたレバノンのイスラム武装組織ヒズボラと戦争し、シリアとも戦争に入る直前の状態まで事態は発展した。イスラエル中枢に戦争拡大を止める動きがあり、シリアとの戦争は回避されたが、06年夏にイスラエルをけしかけてヒズボラと戦争させたのもチェイニーだったと報じられている。(関連記事) イスラエルに空爆されたシリアの施設が原子炉でないのなら何だったのか。シリア政府は、それを明確にしておらず、そのために立場が弱くなっている。シリア政府が空爆された施設を明確に発表できないのは、おそらく、それが軍事施設だからである。発表すると、どんな軍備を持っているのか、世界に公表することになり、都合が悪い。 イラク侵攻前の2002年秋、米政府が「イラクは核開発用のウラン濃縮の遠心分離器の部品となるアルミのパイプを大量購入していた」と指摘したことがあったが、イラク側はこれにきちんと反論しなかった。後でわかったのは、アルミのパイプは遠心分離器の部品ではなく、短距離ミサイルの胴体として使う部品ということだった。短距離ミサイルの保有は「自衛用」として国連からイラク政府に認められていたが、イラク側は防衛機密の観点から、アルミのパイプを何に使ったのか発表できず、アメリカの濡れ衣に反駁できなかった。これと同じ構図が、空爆されたシリアの軍事施設についても言えるのではないかと推測される。(関連記事) とはいえその一方で、衛星写真を見ると、空爆された施設の周囲にはフェンスも設けられていないので、厳重に警備する施設ではなく、ユーフラテス川沿いにあるため、採石場などではないかとの分析もある。真相はわからない。(関連記事その1、その2) シリアはイラクの隣国であり、イラクの前政権と同様、独裁政権である。2003年にイラクが大量破壊兵器の濡れ衣をかけられて侵攻・政権転覆される一部始終を見ていたシリアは、その後でわざわざ核兵器を開発するような愚行をしないだろう。 イランのアハマディネジャド大統領は「あらゆる国に、平和利用の原子力開発をする権利がある」といって、遠心分離器を回してウラン濃縮を大っぴらに続行しているが、これは濃縮度の低い平和利用の原子力開発を頑固に続け、国連の国際機関(IAEA)の査察に積極的に応じることで、イランの方が正しく、アメリカは濡れ衣をかけているのだということを世界に知らせるという、シリアやイラクとは逆の戦略である。北朝鮮の「こっちもミサイル持ってるんだぞ」と騒ぎ続けるのも、アメリカに潰されるのを防ぐための独自の戦略である。(関連記事) ▼全部ひっくるめて認めるのが金正日の好む戦略? 今回の米朝合意で、北朝鮮は冤罪をかぶることになるが、アメリカから敵視されなくなり、制裁を解除されて欧米から経済支援を受けられるようになるのだから、その対価としては安い。北朝鮮の金正日書記は「本物の非難も濡れ衣も全部ひっくるめて認め、対立を解消する」という交渉術を好むようで、たとえば日朝間の「拉致問題」でも、金正日は日本政府の主張を全部認め、それによって日朝の対立を解消しようとしたと考えられる。 北朝鮮側が長年にわたって行っていた拉致行為の中には、拉致した日本人が抵抗したため名前を確認しないまま船上で殺したケースなどが想定され、北朝鮮当局がすべての拉致被害者の氏名を把握しているとは考えにくいが、2002年の小泉首相の訪朝時、北朝鮮側は、日本側が出した拉致被害者のリストを一括して認知した。金正日は細かいことを詰めないで一括認知し、一回謝罪して日朝間の対立を解消しようとしたのだろう。小泉も、日朝国交回復までやって自分の手柄にしようとしたと考えられるから、その点では、金正日の戦略はうまくいく可能性があった。(関連記事) しかし日本政府内には、外務省など、日朝の国交回復ではなく、拉致問題を使ってむしろ日朝対立を煽った方が、日米同盟を維持できると考える勢力が多くいた。日本の戦略はそちらに引きずられ、金正日が一括して全部認めたことを逆手にとって、北朝鮮を個別のケースで非難し続けることが展開された。金正日の思惑は外れた。 アメリカは、6者協議が成功したら東アジアの集団安保体制に移行させようと考えているから、日本が北朝鮮との関係を改善したら、アメリカは日米同盟を希薄化させ、日本をアジアの方に押しやることが予測された。対米従属を何よりも重視する外務省などは、日朝関係の改善を阻止する必要があった。(関連記事) ▼小泉が福田に訪朝を勧めたのも・・・ 北朝鮮がシリアに核技術を供与したかどうかについては、米朝は昨年末から2国間交渉を繰り返してきたが、北朝鮮は一貫して否定してきた。3月中旬の米朝交渉では、米側が「シリアに核技術を供与しに行った北朝鮮担当者たちの名簿を持っている」と言ってそれを見せ、北側は「こんな名簿はニセモノだ」と反駁した。(関連記事) この交渉の後、3月28日に北朝鮮は「これまで外国に核技術を提供したことはない。ウラン濃縮を手がけたこともない。アメリカの主張は馬鹿げている」と表明した。推測するに、この北の発表は、アメリカが北に圧力をかけて、事実でない対シリア核技術供与を事実化しようとしているのを見て、6者協議を主催する中国が懸念し、北朝鮮に発表させたのではないかと考えられる。中国は以前からシリアと比較的緊密な経済関係を持っており、シリアが濡れ衣をかけられて攻撃されるのを見過ごすわけにはいかなかった。だがその10日後、アメリカは「司法取引」を提案し、北朝鮮はそれに乗った。(関連記事) 同時期、イスラエルのオルメルト首相は3月末に日本を訪問し、福田首相に対し、9月にイスラエルが空爆したのは、北朝鮮の支援を受けてシリアが建設していた核兵器用の原子炉だったと伝えた。9月の空爆の標的は原子炉だったとオルメルトが認めるのは、これが初めてだった。オルメルトがわざわざ訪日して福田首相にこれを伝えたのは、北朝鮮を敵とする日本と、シリアを敵とするイスラエルが組んで、アメリカや国際社会を動かし、北朝鮮とシリアの政権転覆をやりましょう、と誘う目的だったのではないかと推測される。だが、核兵器開発疑惑を使った米イスラエルの政権転覆作戦は、イラクですでに大失敗し、イランに対しても失敗しかけている。福田首相は、イスラエルの謀略に乗らなかった。(関連記事) 米朝が4月8日に「司法取引」で合意した後、4月10日には、小泉元首相が福田首相と会い「訪朝して日朝国交正常化に道を開いた方が良い」と勧めた。2005年9月の6者協議の合意では、北朝鮮が核開発を破棄したら、アメリカだけでなく日本も北朝鮮と国交正常化することが義務づけられている。米朝合意によって、日本が北朝鮮と国交を正常化せねばならない事態が近づいており、このまま日本が何もしないでいると、北朝鮮が優勢になり、日本は面子を潰される。その前に、早めに日本の側から訪朝した方が得策だ、と小泉が考えたのは当然である。(関連記事) ▼次々と作られる戦争開始の口実 中東は、大戦争の瀬戸際にある。先週、イスラエルで行われた5日間の軍事訓練に際しては、私だけでなく、中東情勢の分析者の多くが「戦争が勃発しそうだ」と考えた。軍事訓練の期間中、イスラエルでは右派の閣僚が「イランに攻撃されたら、イスラエルはイランを潰すまで反撃してやる」と啖呵を切ったりした。(関連記事その1、その2、その3) 結果的には、イスラエルの軍事訓練は、中東大戦争の勃発につながらなかった。これは、イスラエルの政権中枢で「戦争したらイスラエルは破滅しかねない」と理解している中道派がまだ強く、右派の好戦性に対抗していることを示している。しかし、チェイニーを筆頭とする米中枢の好戦派は、イスラエルに自滅的な戦争をさせる次の策略として、北朝鮮との「司法取引」を成功させている。(関連記事) イスラエル右派の影響力が強い米議会では、北朝鮮はシリアだけでなくイランにも核兵器技術を供与したはずだ、と言い出す議員(Ileana Ros-Lehtinenら)も出てきた。せっかくアメリカが北朝鮮と取引して核技術供与の情報をねつ造する権利を買ったのなら、シリアだけでなくイランへも核技術供与が行われたことにした方が良いじゃないかというわけだ。(関連記事その1、その2) 衛星写真の分析によって、イランの首都テヘランから東南230キロの場所に長距離ミサイル基地が見つかり、その格納庫の大きさから見て、北朝鮮のノドンミサイルが置かれている可能性がある、と指摘する米大学教授(Geoffrey Forden)も現れた。北朝鮮を買収できたのなら、イランが北朝鮮から買った長距離ミサイルを持っていることにするのも良いアイデアじゃないか、という話に見える。(関連記事) ▼台頭する中露 今回の米朝間の「司法取引」は、中東大戦争だけでなく、米朝・日朝の国交正常化など東アジアの国際政治体制の将来展望にも関わる、重大な話である。米朝が国交を正常化するなら、日本も6者協議の合意を遵守して北朝鮮と国交を結ぶ必要が出てくる。事態は、日本にとって不利になる傾向が続いている。(関連記事) その一方で、中国は、国際社会での影響力をどんどん拡大している。最近では、中国がイランの核開発疑惑についての国際会議(国連安保理5カ国とドイツ)を4月16日に上海で開くことが決まった。これは、中国がロシアと協力し、中露の「非米同盟」の側でイランの核開発疑惑を解決していこうという、画期的な動きである。(関連記事その1、その2) (マスコミ報道だけ見ていると、中国は北京五輪のチベット問題で世界から悪者にされているイメージしかないが、実際の国際政治の動きをよく見ると、アジアや中東、アフリカなどに対する中国の影響力の拡大は、驚くべき速さで進んでいる)(関連記事) また、4月6日に行われたアメリカのブッシュ大統領とロシアのプーチン大統領との首脳会談で、ロシアが世界的な原子力発電事業の中心地になり、世界の発展途上国を相手に、ウランの濃縮代行や使用済み核燃料の再処理の代行を大々的に行うことについて、アメリカが全面的に支持・協力していくことが決まった。これは、イランや北朝鮮の核開発疑惑の解決策として、ロシアがこれらの国々の原子力事業を代行する計画が、今後出てくることにつながりそうである。(関連記事) 中東大戦争の勃発は不可避かもしれないが、大戦争は、中国やロシアの非米同盟が、従来の米英中心の国際政治体制を、中露やイスラム諸国など非米的な諸国による米英抜きの国際政治体制へと塗り替えていくことを加速する。中国がイランの問題解決に本腰を入れたり、ロシアが世界の発展途上国の原子力開発の代行センターになったりするのも、国際政治の中心が米英から中露へと移行しつつある傾向を示している。 北朝鮮の問題解決につながりそうな今回の米朝の合意も、東アジアがアメリカ中心から中露中心に変質する動きとなっている。日本政府は、ロシアとの北方領土問題を解決することを望んでいるようだが、これも東アジアの中心が中露に移ることへの、日本としての対策の一つと考えられる。(関連記事)
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