クリントン提案で動き出すか北朝鮮の民営化計画

(97/01/24)

 韓国政府の国家統一院は、満期がきても支払われないまま、ジャンク債市場で取り引きされている北朝鮮の国債を、韓国企業が買うことを認める方向で検討しているという。これは韓国の新聞各社が年明け早々に報じた。国際市場で取り引きされている北朝鮮国債は、ドイツマルクやスイスフラン建てで発行されたものが多いが、それまで額面の22%前後の価格で取り引きされていたのが、この報道を受けて25%程度まで上昇した。
 国家統一院は、この報道を否定している。だが、火のないところに煙は立たないと考える人も多いわけで、国際金融関係者の間では、いくつかの可能性が取りざたされている。
 その主たるものは、米朝交渉の進展などによって、近く北朝鮮が国営企業の民営化を行い、その過程で国債を民営化された国営企業の株式と交換する仕組みが作られるのではないかとの読みである。その動きの当事者である韓国政府は当然、自国企業に対して北朝鮮の国債が安い今のうちに買っておくよう、アドバイスすることになる。

 このところ朝鮮半島問題の解決に力を入れており、北朝鮮にスムーズな体制改革を促したいアメリカとしても、破産状態にある北朝鮮の国営部門を建て直しを韓国企業が行うのは望ましいことであり、南北統一に向けた重要な一歩だと考えている。2期目に入ったクリントン大統領は「歴史に名を残す」ことを最重要課題としているといわれ、だとしたら彼が朝鮮半島の統一を実現し、その立役者と言われるようになれば、まさに彼の夢がかなう。北朝鮮の民営化計画は、クリントン大統領が提案したものであろう。

 完全な閉塞状態に陥っている北朝鮮は、こうした計画をすでに基本的に了承しており、だからこそ昨年9月の潜水艦事件に関して異例の謝罪を行い、それを機に制裁対象になっていた米国の北朝鮮に対する穀物輸出も解禁された、ともみられている。
 1月23日のフィナンシャル・タイムスによると、1月26日からの週に実施される米国と北朝鮮、韓国の3者非公式会合で、この問題について話し合う予定となっている。北朝鮮政府は裏技が得意なだけに、クリントン氏の野心も見抜いているはず。それだけに交渉は一筋縄ではいかないだろうが、事態が急速に動いていることだけは間違いない。