「田中宇の国際ニュース解説」2015年の記事一覧
これより後の記事(2016年の記事)
国家と戦争、軍産イスラエル 【2015年12月28日】 イスラエルが、いくら米国を牛耳って動かしても、ロシアとイランがISISを退治して中東への支配力を強めることを、止めることができない。イスラエルは、覇権国である米国を支配しても、自国の安全を守れなくなっている。米国中枢は、しばらく前から、オバマと軍産イスラエルの暗闘になっているが、オバマは今年、露イランを動かし、軍産とイスラエルを無力化することに成功した。
シリアをロシアに任せる米国 【2015年12月21日】 ケリーが訪露してプーチンにロシア主導のシリア問題解決を進めるよう促し、プーチンはそれを実行するが、米政府全体としてはロシア敵視を変えず、ロシアが勝手にシリア内戦に介入しているという解釈をマスコミに書かせる傾向が、以前から続いてきた。今回もそのパターンだ。オバマがこの策を続けるほど、中東は米国でなくロシアが主導する体制に転換していく。
ドル延命のため世界経済を潰す米国 【2015年12月19日】覇権国は本来、世界最大の経済力を持ち、その余力を世界のために使って、世界が経済成長できる態勢を維持することが役割だ。その役割を果たすために、覇権国の通貨や国債は、世界的に最高位の信用を約束されてきた。だが今回、米国は、ドルと米国債の強さを守るため、世界が不況に向かい、新興諸国や途上諸国が経済減速で苦しんでいる今の時期に、苦しみを増すことにつながる利上げやドル高誘導策をやっている。米国は、ドルを延命させるために世界経済を潰してしまう策をやっている。
米国の利上げで債券崩壊が始まる? 【2015年12月15日】うまくいけば米連銀は今回、債券破綻の連鎖を起こさず利上げできる。しかし、QEなど過剰な緩和策によるバブル膨張は、もう限界に近い。今回うまく乗り切れても、安定は長続きしない。いずれバブル崩壊、信用収縮の時代になる。リーマン危機の時は、米欧日の金融当局に余裕があったが、その後の7年間の対策で余裕を使い切り、次の危機を乗り切れる「弾」が尽きている。今後いったんバブルが崩壊すると、世界的にひどい状態が数年以上続くと予測されている。
イラクでも見えてきた「ISIS後」 【2015年12月13日】 トルコ軍が北イラクのバシカに越境進軍(増派)したことに関して「トルコの新たなISIS支援策だ」という批判的な分析が多い。だが私は、トルコがISISとの関係に見切りをつけ、代わりにスンニ派の「ハシドワタニ」やクルド自治政府によるISIS掃討作戦を支援し、イラクを3分割しつつ安定化することに貢献し、自国の石油権益も守る策に転換しつつあると分析している。
利上げを準備する米連銀 【2015年12月6日】 QEを恒久化し、永久にゼロ金利を続けることは、株高や債券高につながって好都合だ。しかし、これはまさにバブル膨張だ。永久に続けられるものでなく、いずれ崩壊する。近いうちにバブルが再崩壊するなら、米連銀は対策を用意する必要がある。米連銀にとって最重要なことは、ドルの基軸通貨性と米国債の信用という、米国の経済覇権の原動力を守ることだ。利上げは、ドルと米国債の信用を守るために必要だ。
露呈したトルコのテロ支援 【2015年12月3日】 シリアに進出した露軍は、偵察衛星で刻々と写真を撮って解析することで、タンクローリー隊がイラクやシリアのISISの油田からトルコ国境まで走ってクルドからの石油と混合され、トルコに輸出されていることを突き止めた。ISISの石油が、エルドアン大統領の息子が経営する海運会社のタンカーで海外に輸出されていたことや、イスラエルがISISの石油の産地偽装に加担してきたことも暴露されている。
日豪は太平洋の第3極になるか 【2015年11月29日】 日本や豪州、東南アジアの国々が、今のように対米従属しつつバラバラに存在したままだと、いずれ米国が後退して中国が台頭したとき、バラバラに対中従属させられる。それを防げそうなのが、潜水艦の共同開発を機に形成される「日豪同盟」だ。日豪が、両国の間にあるフィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどと連携して同盟関係(東南アジアを含める意味で「日豪亜同盟」と呼んでおく)を強め、2本の「列島線」の間に独自の領域を作ってしまえば、米国が衰退して中国が台頭しても、自立を維持でき、対中従属する必要がない。世界が多極化する中で、日豪亜同盟は、西隣の中国と、東隣の米国の間の、太平洋の「第3の極」になりうる。
トルコの露軍機撃墜の背景 【2015年11月25日】 シリアでは今回の撃墜が起きた地中海岸の北西部のほか、もう少し東のトルコ国境近くの大都市アレッポでも、シリア政府軍がISISやヌスラ戦線と戦っている。さらに東では、クルド軍がISISと対峙している。これらのすべてで、露シリア軍が優勢だ。戦況がこのまま進むと、ISISやヌスラはトルコ国境沿いから排除され、トルコから支援を受けられなくなって弱体化し、退治されてしまう。トルコは、何としても国境の向こう側の傀儡地域(テロリストの巣窟)を守りたい。だからトルコは17秒間の領空侵犯を口実に露軍機を撃墜し、ロシアに警告した。
日本と世界で悪化する不況とバブル 【2015年11月22日】 日銀はQEを目一杯やり、金利もゼロにしているので、これ以上不況対策を拡大できない。日本経済が不況になったのに、日銀が新たな不況対策をできない状況であることが人々の知るところになると、世の中の景況感がさらに悪化し、日銀が買い支えても株価を保てなくなる。日銀が不況対策を拡大できないことを隠すため、日銀やマスコミは「不況は形式上のものでしかなく、実質的には景気が引き続きゆるやかに回復している。新たな景気対策は必要ない」と言ってごまかしている。
パリのテロと追い込まれるISIS、イスラエル 【2015年11月18日】 EUは、西岸やゴラン高原などの占領地の不正な入植地で製造され、欧州が輸入した製品に対し、不正入植地で作られたと明示するラベルを貼りつけるよう義務づけるEU全体の新たな規則を作ることを、昨年から検討してきた。フランスは、この動きの主導役に入っている。ラベル義務化の準備は今春から本格化し、11月初めにいよいよ導入されるめどが立ち、イスラエルによる批判をEU側が拒否した直後、パリのテロが発生した。
ひどくなる経済粉飾 【2015年11月15日】 マスコミや金融アナリストら「専門家」たちは、金融界と当局が結託して粉飾的な雰囲気を醸成する経済プロパガンダの談合システムの中にいる。経済分析は、政府、マスコミ、金融機関、大学など、権威ある組織に属する人が発したものだけが「正しいこと」とされ、それ以外の人が発したものは「素人の間違い」とみなされて、一般の人々に信用されない。権威ある組織はすべて、経済プロパガンダの談合システムの中にいる。経済学は粉飾学である、ともいえる。
米国の政権転覆策の終わり 【2015年11月11日】 米国がシリアのアサド政権を転覆する構想は、完全に崩れた。対照的に、国際社会でのロシアの威信は大幅に上がった。今後、国際社会の意志決定において、ロシアや、その事実上の同盟国である中国が反対した案件は、たとえ米国が強く推進しても実現しない。米国は、冷戦後ずっと保持してきた「米国に楯突く国々はすべて、軍事を背景とした力で政権転覆する」という方針(ウォルフォウィッツ・ドクトリン、単独覇権主義)を継続できなくなった。
TPPは米覇権の縮小策 【2015年11月9日】 米国は、単独覇権体制に基づくWTOを推進する気がなく、代わりにそれより小さな、BRICS+米欧(もしくはBRICS+米国+欧州)という多極型体制を前提に、BRICSをのぞく米国の地域覇権地域を対象としたTPPとTTIPを積極推進している。米国自身が、自国の覇権縮小と世界の多極化を前提に未来を考えている。
日本が南シナ海で中国を挑発する日 【2015年11月5日】 米国は、日本を、ぐいぐいと南シナ海紛争の中に引っぱり込んでいる。米軍と自衛隊の艦隊は、10月19日までインドとの3カ国の合同軍事演習に参加したかえり、日米軍が一緒に南シナ海を通った時に、10月28日から2週間ほどの期間で、初めての南シナ海での日米合同軍事演習を行っている。こうした流れから考えると、日本が南シナ海で中国を挑発する日は、意外と近いとも思える。
ロシアに野望をくじかれたトルコ 【2015年10月30日】 プーチンは、トルコ軍のシリア侵攻を阻止するため、アサドに頼まれてシリアに軍事進出した。シリア政府軍を強化するなら、ロシアは新兵器や衛星写真など情報の供給、軍事顧問団の派遣をするだけで十分で、露軍の戦闘機がわざわざシリアに駐留して空爆を行う必要はない。露軍がシリアで空爆をしているのは、トルコにシリア侵攻を思いとどまらせるのが主目的と考えられる。
米財政赤字上限問題の再燃 【2015年10月24日】 金融市場は、米国の財政赤字上限の引き上げがぎりぎりで実施され、2年ごとに繰り返されてきた騒動は、今回も大惨事になる前に寸止めされると予測している。しかし、騒動の行方を握る共和党の内部を見ると、これまでのように主流派が茶会派を抑えきれるかどうか、かなり心もとない状態だ。
勝ちが見えてきたロシアのシリア進出 【2015年10月22日】 シリアのアサド大統領がモスクワを訪問してプーチンと会った。アサドが自国を離れるのは2011年の内戦開始以来初めてだ。アサドは露軍の空爆についてプーチンに感謝の意を表明した。すでに露シリアの側がテロリストに勝って内戦を終結させる見通しがついていないと、アサドがモスクワに来てプーチンに謝意を述べることはない。すでにシリア露イランは、この戦いに勝っている。
金融蘇生の失敗 【2015年10月17日】 高レバレッジの金融事業が成功し続けることは、米英が覇権国であり続けるための必要条件だった。銀行が薄利なままだと、米国の金融界が世界を牽引する金融覇権体制を蘇生できず、米国は自国の覇権喪失と多極化を容認せざるを得なくなる。米金融界が高レバレッジ型の金融システムを蘇生できない理由の一つは、米連銀のQEなど金融救済策によって当局が金融界のリスクを吸い取っているので、金融界が自助努力による蘇生を怠っているためだ。
中露を強化し続ける米国の反中露策 【2015年10月13日】 中国は、ドルでなく人民元で決済する国際体制を強化している。まさに、それと同期するかのように、米国の裁判所が中国銀行を米国から追い出すかもしれない開示命令を下した。米国が中国を困らせようとして、中国の銀行によるドル建て決済を制限するほど、中国は元建て決済に力を入れ、ドル離れに向けて努力する。米国自身の戦略が、ドルの潜在的な地位低下と、基軸通貨の多極化を引き起こしている。
多極化とTPP 【2015年10月7日】 日本がTPP交渉に途中から参加し、今や米国より熱心な推進者になっている理由は、世界の多極化が進む中で、何とかして自国を米国の傘下に置き続けたいからだ。TPPは、米国の多国籍企業が日本の生産者を壊滅させつつ日本市場に入り込むことに道を開く。日本経済を米企業の餌食にする体制がTPPだが、日本の権力である官僚機構にとっては、米政府に影響力を持つ米企業が日本で経済利権をむさぼり続けられる構図を作った方が、米国に日本を支配し続けたいと思わせられ、官僚が日本の権力を握り続ける対米従属の構図を維持できるので好都合だ。
ロシアのシリア空爆の意味 【2015年10月4日】 ロシアの軍事進出は、ISISが退治され、シリアとイラクが露イランの傘下で安定していくという、全く新しい中東の政治体制を生み出している。米欧日のマスコミは、ロシアを意図的に悪者として描くことに執心している。しかし現実を見ると、米英仏のシリアでの空爆が、シリア政府の許可も受けず、国連安保理の決議も経ていない国際法上「違法」なものであるのに対し、ロシアの空爆は、シリア政府の正式な要請を受けて行われている「合法」なものだ。シリアへの軍事進出に関し、ロシアだけが合法で、米欧は違法だ。
米金融財政の延命と行き詰まり 【2015年9月28日】 米国は、利上げできなかった米連銀の行き詰まり、政府予算の編成すら滞る米議会の危機、経済指標の粉飾がひどくなる米政府など、矛盾が肥大化し、リーマン危機をしのぐ金融危機がいつ起きても不思議でない状況にある。だが、表層的な動きだけを見ると、株価は上がり続け、政府やマスコミが発表する「経済状況」は好転し、延命する状態が続いている。このバランスが今後、いつどう崩れていくか、それとも崩れずに延命し続けるのかが、今後しばらく最大の注目点だ。
ロシア主導の国連軍が米国製テロ組織を退治する? 【2015年9月24日】 米国が過激で無能な策を延々と続けている以上、中東はいつまでも混乱し、何百万人もの難民が発生し、彼らの一部が欧州に押し寄せる事態が続く。このままだと、ISISがアサド政権を倒してシリア全土を乗っ取り、シリアとイラクの一部が、リビアのような無政府状態の恒久内戦に陥りかねない。米国に任せておけないと考えたプーチンのロシアが、シリア政府軍を支援してISISを倒すため、ラタキアの露軍基地を強化して駐留してきたことは、中東の安定に寄与する「良いこと」である。
不透明が増す金融システム 【2015年9月21日】 米連銀が利上げできないことがわかり、米国の債券金融システムやドルが健全性を取り戻すことが難しいとわかった。米連銀は行き詰まっている。だが、しかし一直線で金融が崩壊に向かうわけでもない。新興市場から逃避した資金で、米国債の利回りが低下している。米国債は簡単に崩れない。事態が不透明になり、方向感が失われている。金融当局や金融界は、金融システムが行き詰まるほど、人々に行き詰まりを感じさせないよう、統計や報道をごまかし、事態はいっそう不透明になる。不透明さの増大は、危機が増していることを意味している。
英国に波及した欧州新革命 【2015年9月17日】 コルビンの登場は、英国が、米国覇権の黒幕として世界を(金融から)支配して繁栄を維持する従来の(すでに機能不全に陥って何年も経っている)国家戦略を放棄し、米英同盟を重視しなくなり、代わりに新革命に参加して欧州で大きな力を持つことで、今後の米国覇権崩壊後の多極型世界を生き抜く道を模索し始めたことを意味している。
クルドの独立、トルコの窮地 【2015年9月9日】 露イラン主導のシリア再建策が成功したら、シリアとイラクにクルド国家が作られる可能性が高まる。トルコとイランでも、クルド人の自治拡大要求が強まる。特にトルコは、国内にクルド人の自治区を作ることを認めざるを得なくなるかもしれない。この流れを食い止める策として、トルコ軍がシリアやイラクに侵攻し、ISISと組んでクルド軍を完全に潰すという選択肢があるが、これをやるとトルコはまったくの「テロ支援国家」になる。与党AKPが11月の選挙に勝つためにクルドに本格戦争を仕掛ける可能性がある。
行き詰る米日欧の金融政策 【2015年9月7日】 日本も欧州も、買える債券が減っているのでQEを拡大できない。欧州より日本の方が無理をしており、供給不足からQEが限界に達し、縮小する必要が出てきている。そこに、中国など新興市場の米国債売り(ドル離れ、QT)が加わっている。そんな中で、米連銀が自分だけを健全化しようと利上げや保有債券の縮小を画策している。IMFが連銀を「利上げするな」「しても短命に終わる」と諭すのは当然だ。米連銀は、利上げするかどうかでなく、逆にQE4を開始するかどうかを検討しなければならない状態だ。
シリア内戦を仲裁する露イラン 【2015年9月4日】 ロシアは今回初めて、自国の軍事衛星が撮った映像をシリア軍に配給し始めた。シリア軍はISISなどの動きを正確に把握できるようになった。ISISはこれまで、米軍の軍事衛星が撮った映像をリアルタイムに入手し、シリア軍の動きを正確に把握して攻撃を回避・反撃してきた。これがISISの強さの秘訣の一つだった。ロシアが対抗的にシリア軍にリアルタイムな衛星画像を配給したことは、今後の戦況を転換しうる。
構造転換としての中国の経済減速 【2015年9月1日】 中国の固定資産投資は明らかに過剰だ。しかし、この数年間の中国の過剰投資がなかったら、リーマン危機後の世界不況はもっと長く厳しいものになっていた。中国は、世界経済にとって大恩人である。日本も、中国の投資拡大がなければ、アベノミクスなどと命名して浮かれていられなかった。とはいえ、中国の過剰投資策は昨年あたりから弊害の方が多くなり、中国政府は今年から投資の増加を抑える政策を始めていた。今夏の中国株の暴落は、こうした過剰投資策の終焉を受けたものだった。
米国債を大量売却し始めた中国 【2015年8月30日】 中国が、米国を助けていた米国債の買い貯め(QE)をやめて、逆に米国債の大量売り(QT)を始めたことは、米国や日本にとって大きな脅威だ。中国がやめた分のQEを、誰かが代わりにやらないと、長期的に米国債の金利が上がり債券金融システムが崩れかねない。株が暴落した中国を「ざまあみろ」と冷笑している場合ではない。中国株の暴落は、日本が無理なQEを拡大することにつながる。
新興市場バブルの崩壊 【2015年8月25日】 新興市場諸国の景気悪化は、資金調達バブルの崩壊が一因だ。もともと新興諸国の資金の多くは米国で調達されていた。だが、米国が戦略をドル安からドル高、金融緩和から金融引き締めの傾向に転換したことで、新興市場から米国への資金流出がひどくなり、中国の株暴落やブラジルの景気悪化などにつながった。
インド洋を隠然と制する中国 【2015年8月20日】 冷戦後、インド洋の公海上の航行の安全を守るのは、覇権国である米国の任務だった。インドは、親米国として、米国がインド洋を守ることを前提としつつ、インド洋はインドの影響圏でもあると主張している。対照的に中国は、自国を敵視する米国が、中国の船の航行の安全を守ってくれなくなる傾向を見て取り、ソマリア沖の海賊退治だけでなく、インド洋全体での中国船の航行の安全を守るため、ジブチやスリランカ、モルジブ、セイシェル、パキスタン、モザンビークなどを経済面から傘下に入れ、中国軍が立ち寄れる補給基地としての機能を、それらの国々に持たせている。
人民元のドル離れ 【2015年8月16日】 中国の為替自由化は、人民元をドルと並ぶ基軸通貨に仕立てていこうとする中国の戦略の一環だ。中国経済の主導役が輸出産業だった従来は、固定相場制の維持や切り下げが中国経済の浮揚策として有効だった。だが、工業部門が中国のGDPに占める割合は低下し始めている。今後しだいに、中国は固定相場制を維持する利得が減っていく。中国自身は、固定相場制からの離脱をゆっくりやろうと考えていたが、ドル崩壊を懸念するIMFに急かされ、前倒しすることにした。
米国の利上げと世界不況 【2015年8月12日】 米連銀が利上げを志向する目的は、景気の過熱を防ぐためでない。基軸通貨としてのドルの信用を守るためだ。従来、世界の多くの国々が、輸出を振興するため、米国債(ドル)を買って自国通貨を売り、自国通貨の対ドル為替の上昇を防いできた。米国がゼロ金利策を続け、低利回りのままだと、世界各国が米国債の保有を減らし、ドルが貿易決済通貨として使われず、ドルが基軸性を喪失しかねない。それを防ぐため、米連銀は短期金利を1-2%の水準に戻し、ドルや米国債の健全さを蘇生したい。
イランがシリア内戦を終わらせる 【2015年8月8日】 イランは、自治を得たイラクとシリアのクルド人が領土を統合してクルド人国家を創設するところまで容認するかもしれない。イラクとシリアの国家統合が失われるが、その一方で、イラクはシーア派の国としてのアイデンティティが強くなり、シーア派の盟主であるイランにとってむしろ好都合だ。シリアのアサド政権は、自分たちの政権が延命するなら、クルド人地域の切り離しに応じるだろう。
ウクライナ危機の終わり 【2015年7月30日】 米国が突然、ウクライナの内戦を急いで終わらせようとする動きを始めている。米国がイラン核問題やシリア内戦、ISISなどの中東の諸問題でロシアに頼り始め、中東の解決の主導役をロシアにやってもらう代わりに、ウクライナ問題で米国がロシアに譲歩した、と解説されている。しかしこの筋書きは、よく考えるとおかしい。ロシアは、米国が譲歩する前から、勝手にイランやシリアの問題解決を進めていたからだ。
ユーロ危機の解決が近い 【2015年7月27日】 ギリシャが債権者団(トロイカ)から要求された財政緊縮策を実施する代わりに、トロイカはギリシャに追加的な救済支援をするとともに、ギリシャの債務の一部を帳消しにしてやり、ギリシャ危機を先延ばしでなく根本解決する構想が、EUの中枢で検討されている。債務帳消しはドイツが強硬に反対しているが、最近、米政府やIMF、フランスなどが、債務帳消しを認めるしかないとドイツに圧力をかけている。
金暴落はドル崩壊の前兆 【2015年7月25日】 米国の雇用統計の粉飾も、中産階級の崩壊も、シェール産業の債券破綻の危険も、米国の地方財政の危険性も、すべて以前から指摘されていた。しかし、これらのすべてが悪化の傾向だ。大きな崩壊は、まだ発生していないだけで、発生の可能性自体は増している。崩壊の懸念が増しているので、ドルや米国債から他のところに資金が逃避しないよう、まず究極の逃避先である金地金の相場を先物で潰す努力が、ドルの番人である米金融界によって続けられている。金相場の暴落が大きいほど、ドルに対する懸念が強まっていることを意味している。
対米協調を画策したのに対露協調させられるイラン 【2015年7月21日】 イランはもともと、米国との関係改善を目的としてウラン濃縮を増強し、米欧を交渉に引っぱり込んだ。イランは、米国の覇権を壊すことを目的とせず、逆に米国の覇権下でうまく立ち回ることを望んだ。しかし米国の方が、自国の覇権下にぶら下がる国々を増やすのを嫌がった。米国は、オバマが世界のイラン制裁を解除する一方、米議会が米国自身の対イラン関係の改善を拒否することで、イランが頼るべき国を、米国でなく、ロシアや中国の方にねじ曲げてしまった。
独仏を振り回すギリシャ 【2015年7月17日】 ギリシャのチプラス首相は今年初めにトロイカと交渉開始して以来、トロイカから譲歩を引き出すたびに、チプラス自身も譲歩するやり方を繰り返してきた。ギリシャの左翼や世論は「チプラスは国を裏切った」と怒るが、チプラスはむしろ国内の怒りを使って自国の譲歩を骨抜きにする策を講じてきた。今回のギリシャ議会の緊縮策の可決は、これまでにない大譲歩だが、同時に、EUの主導役であるドイツも、IMFに借金を返さないままのギリシャに追加の救済融資をするという大きな譲歩をしている。マスコミは「メルケルがチプラスに譲歩させた」と喧伝するが、むしろ逆だ。
中露がインドを取り込みユーラシアを席巻 【2015年7月15日】 ここ数年、米国の安保戦略や経済政策が次々と失敗したのに、米国の議会や政権中枢を好戦派や金融界救済派が握り続け、世界の運営を米国に任せておくことが危険な状態になった。中露は、米国覇権の支配を受けない地域を世界で増やす必要があると考え、上海機構やBRICSを拡大した。上海機構には、朝鮮半島、ASEAN、中東アラブ、欧州をのぞく、ユーラシア大陸のほとんどの国が参加している。中露は、今回印パを上海機構に入れ、ユーラシア大陸を席巻した。地政学の定理に従うと、今後の世界を支配するのは、米国でなく、中露ということになる。
中国株暴落の意味 【2015年7月10日】 中国銀行のロンドン金相場の値決めへの参加(金相場に対する中国の影響力拡大)の決定と、中国株の暴落開始が、ほぼ同時に起きていることは興味深い。中国は、ドルのライバルである金地金の世界価格決定への支配力を増すことで、ドルや米国債を潰せる力を増したが、それと同時期に、何者か(米国勢?)が中国株のバブルを崩壊させ、中国を弱体化する策略を開始している。これは、金地金という新たな武器を得た中国と、ドルや債券を防衛しようとする米国との、金融大戦の激化であると考えられる。
多極側に寝返るサウジやインド 【2015年7月6日】 ロシアのサンクトペテルブルグで開かれた経済フォーラムは、同市が出身地のプーチン大統領が主催する年次の国際経済会議だ。米国がロシア敵視を強める中、敵国が開いた国際会議ということで、米欧日では重視されなかった。しかし実のところ、この会議では地政学的な大転換となる国際協定が2つも締結された。サウジアラビアとインドが、相次いでロシアとの経済軍事関係の強化に踏み切ったことだ。
中国がアフガニスタンを安定させる 【2015年7月3日】「武力によるアフガニスタンの民主化、安定化」を掲げて01年に侵攻してきた米国と対照的に、昨年来、内戦終結交渉を手がける中国は、武力を全く使わず、外交と経済(投資)だけを手段としてアフガニスタンを安定させたい。米国は、アフガン永久占領の好戦的イメージだけを醸しつつ、実のところ、仇敵のはずの中国にアフガン運営を任せている。中国は、自分たちがアフガニスタンを運営し始めていることを隠し、好戦的な米国のアフガン支配が続いている印象の維持に貢献している。これは偶然の産物でなく、米中対話で双方が「米中関係の新たなモデル」として定めたことだ。米中は、米国の好戦的な世界支配がずっと続くかのように演じつつ、裏でアフガニスタンの覇権をこっそり米国から中国に移している。
ふんばるギリシャ 【2015年6月30日】 ギリシャが02年にユーロに加盟した後、高利回りを求めて巨額資金がEU各国からギリシャに流入してバブルとなり、11年にドル防衛・ユーロ潰しのために米英投機筋がそのバブルを崩壊させてユーロ危機を起こし、米国傘下のIMFが救済支援と称してギリシャを借金漬けにして、危機を長引かせている。IMFが貸した金は不正な策の道具なのだから返す必要などなく、むしろギリシャが受けた被害を弁償する意味で追加融資をする義務があると、ギリシャ人は考えている。
世界に試練を与える米国 【2015年6月26日】 軍産イスラエル複合体や米金融界は、各国に試練を与えている。本来の目的は、各国が試練を乗り越えず米国の言いなりになり、米国の覇権体制が維持されることだ。しかし、米国の上層部には覇権を解体して多極化したい勢力もいて(オバマ大統領は多分その一人)彼らが試練を一神教的な「頑張れば乗り越えられる」水準に調整して施行し、試練を覇権維持の道具から覇権解体の道具に変質させている。服従を目的とする「圧力」が、乗り越えられることを目的とする「試練」に転換している。宗教上の「試練」を思わせる手法をとる理由は、その方が一神教の人々のやる気を起こせるからだろう。
革命に向かうEU 【2015年6月23日】 米国中心の金融システムと覇権を守るために、米金融界と傘下の人々は、米国以外の領域を先に金融危機に陥らせ、資金が米国に戻るよう仕向けている。最近、危機に陥らされている領域は、中国など新興市場諸国と、ギリシャ危機の欧州だ。欧州では、この危機を利用して逆に対米従属を離脱しようとする動きがある。対米自立を意味するEU統合には、EU上層部から対米従属派を一掃する必要があるが容易でない。そこで、ギリシャで左翼政党シリザが政権を取ったのを機に、IMFや米金融界による支援のふりをした破壊策に人々が激怒してIMFを拒絶し、その運動が同様の被害者である南欧や東欧諸国に拡大し、欧州議会やEU上層部まで波及し、EUを対米従属から離脱させる「革命」が画策されている。
大企業覇権としてのTPP 【2015年6月18日】 大企業は従来、米政府や議会にロビー活動(献金や圧力)を行って、米国の国際戦略や国内政策を企業好みのものに変質させてきたが、今後、米国の覇権が衰退していきそうで、ロビー戦略が有効でなくなる。だから、ロビー活動で政府をあやつるのでなく、大企業が政策立案者を政府内に送り込み、TPPやTTIPの機密の条文を非公開で作成し、それを欧州やアジアの米同盟諸国に押しつけようとしている。米覇権衰退を受けた、米大企業による「米国覇権の乗っ取り」「米政府の乗っ取り」が、TPPやTTIPの本質だ。
債券市場の不安定化 【2015年6月15日】 QEは、金融市場に大量の流動性を供給することが目的だ。しかし当局がQEで流動性を供給するほど、市場参加者は、QEがいつどのように終わるのか(いつ流動性が失われるか)を懸念するようになり、現実の市場は流動性が低下する。大手の投資家たちは、QEに「出口」がない(金融崩壊以外の終わり方がない)ことを知っている。当局がQEをやるほど、投資家は不安になってすくんでしまい、市場は薄商いになり、流動性の危機や、乱高下(テーパー・タントラム)が起きやすくなる。
イスラエル支配を脱したい欧州 【2015年6月12日】 ドイツの公共放送である第1テレビ(ダス・エルステ)が最近、ウルスラ・ハーバーベックのインタビューを初めて放映した。ハーバーベックは、ホロコーストの史実性に疑問を表明し「ドイツ政府などに対し、ホロコーストが史実であるという根拠を示してほしいと何度要請しても無視されている。ホロコーストは史実と思えない」と表明し続けている86歳の知的な女性だ。ドイツのテレビが、ホロコーストの史実性に疑問を呈する発言を放映したのはこれが初めてであり、画期的なことである。
米国の新冷戦につき合えなくなる欧州 【2015年6月9日】 米国は昨年来EUに圧力をかけてロシア制裁を続けてきたが、EUはもう自分たちを疲弊させる対露制裁を続けたくない。EUの対露制裁の諸策の多くは期限つきで、多くが7月に切れる。EUは、6月25日のサミットで制裁の延長を決議できない場合、制裁が7月に次々と自動失効して終わる。EUの決議は全会一致が原則だが、ギリシャやハンガリーなど、ロシア制裁反対の国が増えている。独仏は、苦労してウクライナの停戦合意を作って維持してきたのに、オバマがウクライナ政府を煽って好戦策をとらせるので苛立っている。ロシア制裁を延長するかどうか、EUは国際戦略の分岐点にいる。
覇権攻防としてのFIFA汚職事件 【2015年6月7日】 英国のサッカー協会長は、18年のロシア開催を白紙撤回し、選に漏れた英国を格上げしてロンドンで開催することすべきだと言うだけでなく、22年のカタール開催も白紙撤回し、この分は22年の立候補諸国のうち米国もしくはオーストラリア、特に米国で開催すべきだと言っている。英国は、国際サッカー業界の欧州覇権を崩してFIFAの多極化を進めたブラッター会長を汚職疑惑で辞任に追い込み、その後のFIFAをアングロサクソン主導の米英単独覇権体制に引き戻し、英国、米国、豪州といったアングロサクソン諸国がワールドカップの開催を強奪する構図を押し進めている。
わざとイスラム国に負ける米軍 【2015年6月4日】 軍産イスラエルは、ISISと戦うふりをして支援したりわざと負けたりすることで、ISISがアサドを倒してシリアを恒久内戦に陥れ、イスラエルの仇敵であるレバノンのヒズボラを弱体化し、イラクで東進するISISがイランに戦いを挑む構図を作りたい。ISISがアサドを倒して中東をイスラエル好みにさらに混乱させるのか、中露がイランを支援強化してアサドを守るのか、世界の覇権構造の転換と相まって、中東は分岐点にいる。
南シナ海の米中対決の行方 【2015年6月1日】 ASEAN諸国は、米国にけしかけられても中国敵視を強めたがらない。中国はAIIBやシルクロード構想で、ASEAN諸国のインフラ整備への投資を増額している。アジアの貿易決済で最も良く使われている通貨は、いまや人民元だ(シェア31%、円は23%)。この3年間でアジアの人民元の国際利用は3倍になり、日本円を抜いてアジアの国際決済で最も使われている通貨になっている。中国のアジアでの経済覇権の拡大が、今後さらに強まることはほぼ確実だ。南シナ海紛争で、ASEANが団結して中国と対決することは、今後ますますなくなるだろう。ASEANをけしかけて中国と対決させたい米国の策略は、すでに破綻している。
米露対決の場になるマケドニア 【2015年5月26日】 米国勢が扇動するマケドニアの政権転覆策は、米国と露中との地政学的な陣取り合戦を超えた、バルカン諸国を民族間の殺し合いや政治混乱に陥れる危険をはらんでいる。諸民族が殺し合った98年のコソボ紛争の再燃があり得る。マケドニアの混乱に乗じて、アルバニアの首相が「いずれコソボを併合する」と大アルバニア主義を示唆する発言を放ち、セルビアが猛反発し、EUはうろたえている。
超金融緩和の長期化 【2015年5月23日】 QEなどでゼロ金利状態が続くと、預金と融資の金利差で儲けてきた銀行業全体が薄利となり、経営が行き詰まる。今の超緩和策を縮小すると「タントラム」で金融危機が起きて銀行が「突然死」的に潰れるが、超緩和策を持続すると、銀行を経営難によって業界ごと「緩慢な死」に追いやることになる。
米サウジ戦争としての原油安の長期化 【2015年5月19日】 米国のシェール革命が進展し、米国と同盟諸国がサウジの石油を必要としなくなると、サウジにおける王室の権威の低下を引き起こし、米右派が歓喜するサウド家の転覆につながりかねない。サウド家は、全力でそれを阻止する必要がある。シェールの石油ガス田の多くは、数年で枯渇する。シェール産業は、常に油井を掘り続けねばならず、巨額の投資を必要とする。低金利の金融環境と、原油価格の高止まりの両方の永続を必須とし、かなり基盤が脆弱だ。サウド家はこの点に着目し、サウジがOPECを率いて増産し原油相場の超安値を続ければシェール産業は赤字になり、投資がこなくなって潰れ、サウド家の脅威になるシェール革命も終わると考えたのだろう。
負けるためにやる露中イランとの新冷戦 【2015年5月17日】 事態は、米国が同盟国を率いて露中イランを封じ込める新冷戦体制の成功に向かっていない。数年前なら、まだ露中イランが弱かったので、新冷戦体制が組みやすかったが、米国は露中イランの優勢が増した今のタイミングをわざわざ選んで、新冷戦体制を構築している。米国はあまりに馬鹿だ。意図的に馬鹿をやっている。新冷戦体制は、失敗することを予定して開始された、隠れ多極主義の戦略だろう。
国内の反乱を煽る米政府 【2015年5月13日】 金融危機の再燃と、その後の社会混乱や暴動、内戦化が予測され、米連邦当局や米中枢の人々自身が社会混乱と暴動を扇動している観がある中で、もともと連邦当局に対する不満が大きく、社会が混乱するなら銃をとって自衛しようと考えてきた共和党の草の根右派の人々が多いテキサス州に対し、国防総省が今夏、軍事訓練と称し、テキサスを敵陣に見立てて特殊部隊を送り込む。これがテキサスの右派の人々に対する扇動策でないなら、何であろうか。
多極化への捨て駒にされる日本 【2015年5月10日】 きたるべき米国の金融大崩壊で覇権体制が多極化する前に、日本をけしかけて中国敵視策を強め、ウクライナ危機を扇動してロシアを反米の方に押しやって中露を結束させ、米国に頼らない新しい世界秩序、つまり多極型の覇権体制を一足先に作る動きを中露に急がせる、それが米国中枢の隠れた意図と考えられる。ウクライナも日本も、米国の隠れ多極主義の捨て駒として使われている。安倍訪米で日米同盟が強化されたと喜んでいる場合ではない。
出口なきQEで金融破綻に向かう日米 【2015年4月28日】 QEは国債金利を下げるための政策だが、QEによって国債金利が人為的に下げられていることを国債投資家の全員が知っているため、QEを減額した時の金利高騰が恐れられ、民間市場で国債の売れ行きが悪い。日銀のQEが新規国債の大半を買い占めているため、民間の国債市場は供給も需要も先細り、わずかな衝撃で金利が激しく上下する。この不安定を恐れて投資家がますます国債を買わなくなり、QEで国債購入用の資金が無限大にあるのに、下がるべき金利が逆に高騰してしまう。QEによる国債金利の高騰は「起きるか起きないか」でなく「いつ起きるか」の問題になっている。
人民元、金地金と多極化 【2015年4月26日】 人民元は今年中にSDRに入るだろう。元は、世界が多極型の複数基軸通貨体制に転換していくなか、基軸通貨の一つになる。一方、金地金のSDR加入はまだ先かもしれない。元や金地金の先行きを決めるのは、元や金自身でなく、ドルの延命策がいつ破綻するかによる。日銀のQEなどゼロ金利策の長期化により、日米の国債の値決めが困難になる信用不安が起きているのが、今の最大の金融不安だ。この信用不安が拡大・顕在化するかどうかが、今後しばらくの注目点だ。
現金廃止と近現代の終わり 【2015年4月22日】 EU統合は、国民国家の根本に位置してきた愛国心(ナショナリズム扇動策)の統合を含んでいない。これは人類史上、近現代(モダン)の終わりを意味する。これは究極の戦争抑止策だが、同時に人々に喜んで納税させてきた徴税制度を危機にする。愛国心の低下と反比例して脱税が増える。現金廃止と決済電子化を進めれば、国民が愛国心を発露して納税の手続きをわざわざとらなくても確実に徴税でき、とりあえずの対策ができる。
イランとオバマとプーチンの勝利 【2015年4月20日】 すでに国際社会はイランとの関係強化に着々と動いている。4月2日の暫定協約後、イランが絡んだ地政学的な動きがあちこちで噴出している。多くは、イラン核問題の解決を前提に、以前から出されていた構想だ。イラン核問題の本質が「核兵器」でなく、核問題を口実にイランが絡む転換・多極化を防ごうとする「地政学」であることが見て取れる。特に目立つのは、ロシアとの関係強化だ。倫理的な善悪から見ても、従来の「米国とイスラエルが善で、ロシアとイランが悪」という二元論から、米国がオバマと軍産に分裂した上で「オバマとロシアとイランが善、軍産イスラエルが悪」に転換している。
日本をだしに中国の台頭を誘発する 【2015年4月16日】 米国が日本に引っ張られて中国敵視を続けるほど、他の国際社会は中国を敵視することに不利益を感じ、米国の制止を振り切って中国に接近し、米国の覇権喪失と中国の台頭、世界の多極化が進む。それが米国側の真の目的であり、日本はだしに使われているだけだ。
加速する日本の経済難 【2015年4月14日】 日本経済は見かけ上、株高やベースアップで景気が好転しているかのようだが、株高はQEによるバブル膨張であり、全体の賃金は下がっている。実質的に日本経済は悪化し続けている。機関投資家の多くは、株高がQEによるバブルだと知っている。日銀がQEをやめようとすると、米連銀がQEをやめた(日銀に引き継いだ)時のようにうまくやめられず、QE終了が日本国債市場の崩壊、流動性危機から金利急騰を招きかねない。日本はすでに、QEを続けても破綻、やめても破綻という事態に入り込んでいる懸念がある。
安倍訪米とTPP 【2015年4月8日】 最近、米国の金融債券システムの崩壊が近いと米国のヘッジファンドなどが騒いでいるが、金融危機の再燃は米国の覇権崩壊、西太平洋からの撤退、日本の対米従属の終わりになる。だから、安倍を操る官僚機構は、TPPや米軍基地の辺野古移転、日米安保ガイドライン改訂による日米軍の一体化、日銀のQE続行による債券金融システムのテコ入れなどを全力でやり、米国の覇権崩壊や日本からの撤退を何とか防ごうとしている。
イラン核問題の解決 【2015年4月6日】 ISISやアルヌスラと本気で戦っているのはイラン、イラク、アサド政権、ヒズボラといったイラン系の諸勢力だけだ。彼らがISISに負けると、中東の混乱がひどくなり、大規模な米地上軍が再び中東に駐屯せざるを得なくなり、米国が軍産イスラエルに牛耳られる状態が永続化する。これを防ぐには、核問題を解決してイランを強化すればよい。だからオバマはイラン核問題を全力で解決し、ネタニヤフはそれを全力で阻止しようとした。
米国に相談せずイエメンを空爆したサウジ 【2015年3月31日】 米国のイエメン撤退が隠れた意図を持っていたとしたら、その究極の意図は、フーシ派がイエメンの政権を取って内戦を終わらせて安定させることでない。米国のイエメン撤退は、サウジを標的にした戦略だろう。イランの影響下にあるフーシ派がイエメンを乗っ取ると、イランを敵視するイエメンの隣国サウジアラビアが、軍事介入せざるを得なくなる。サウジは、米国がイエメン総撤退によってフーシ派を強化した経緯を、隣国として詳細に見ている。だから、サウジはイエメンを空爆する際、米国に頼らず、直前まで米国に知らせずに挙行せざるを得なかった。
中央銀行がふくらませた巨大バブル 【2015年3月27日】 上がり続ける米国や日本の株価や債券価格は巨大な金融バブルであるという指摘が、あちこちから出ている。この1カ月ほどの間で「日米の株や債券はバブル状態だ」ということが、常識になった感じだ。
続くイスラエルとイランの善悪逆転 【2015年3月25日】 ネタニヤフが総選挙の前日にパレスチナ問題の2国式解決を正式に拒否したため、米オバマ政権は、イスラエルとの関係を見直さざるを得ないと言っている。米国は従来、国連安保理のパレスチナ国家承認決議で拒否権を発動して否決に持ち込む方針を掲げてきたが、今後は可決を容認する可能性が高まっている。ネタニヤフ勝利の後、オバマ政権は「イスラエルは西岸とガザの占領を終わらせるべきだ」と表明し始めた。米政府は「パレスチナ運動家」になった。
日本から中国に交代するアジアの盟主 【2015年3月22日】 歴代総裁が日本人であるADBは、米国の覇権下で対米従属の日本がアジアを主導するかたちをとった組織で、国際政治として見ると、中国主導のAIIBが拡大するほど、日本主導のADBが縮小する。日米以外の関連諸国がこぞってAIIBに入りそうな現状は、アジアの盟主が日本から中国に代わっていく流れを示している。
茶番な好戦策で欧露を結束させる米国 【2015年3月17日】 米国は、ロシアと戦争する気がないのに、今にも対露開戦しそうな雰囲気を醸し出している。なぜなのか。冷戦状態(米国が欧州を傘下に入れてロシア敵視を恒久化する策)を再現したいのか。それならドイツを怒らせるのは大間違いだ。ドイツだけでなくフランスやイタリアも米国への信頼を失い、親露的になっている。米国の茶番な好戦策は、冷戦機関であるNATOを強化するどころか、逆に解体している。
金本位制の基軸通貨をめざす中国 【2015年3月14日】 中国勢が今回、ロンドン金市場に参入した理由は、30余年にわたる中国の金地金備蓄が一段落したので、ロンドンやNYの金市場で長らく行われてきた、金相場を下落させる不正操作をやめさせる動きを開始するためと考えられる。中国政府は、多極型の複数基軸通貨による世界体制を将来の前提として、金本位制を意識しつつ、人民元を基軸通貨の一つに育てようとしている。米英がドルや債券といった紙切れ資産の価格を守るために、紙資産のライバルである金地金の相場を先物を使って引き下げている現状が続く限り、金本位制が機能しない。だから中国は、国有銀行群をロンドン金市場に参入させ、金相場の下方歪曲をやめさせようとしている。
QEの限界で再出するドル崩壊予測 【2015年3月11日】 ドルの発行者である米連銀は、日欧の中央銀行を巻き込んでQEを続け、ドルと米国債の価値を維持しようとしている。「ドル高は米経済の強さを表している。ドルや米経済が崩壊するはずがない」という見方は、ドル高がQEという持続困難な策によって不健全に維持されていることを忘れている。QEをやらなければ、すでにドルや米国債は世界経済を巻き込んで崩壊していた可能性が高い。QEは、長くて数年程度の延命策でしかなく、QEが効かなくなった後の金融崩壊はQE前よりひどいものになる。リーマン危機直後の初めてのG20サミットで語られた「ブレトンウッズ体制の終わり」が、また議題になるだろう。
露呈するISISのインチキさ 【2015年3月8日】 中東のISIS(イスラム国)は、米国やNATOが全力で倒そうとしているはずの仇敵だ。日米欧では、そう報じられている。ところが最近、米軍やイラク軍がISISと戦っているイラクの現場で、米国や英国の飛行機やヘリコプターが、ISISに武器や食料を空輸して投下しているのが多数目撃され、イラクの政府軍や民兵が、こうした利敵行為をする米英の飛行機やヘリを撃墜する事件が相次いでいる・・・
日銀QE破綻への道 【2015年3月5日】 無制限のQEを認められている日銀は、債券市場で価格決定不能のパニックが起こりかけたらすぐ円を大量発行して債券を買い支え、その日のうちに事態を安定化できる。しかし、投資家の間には「日銀がQEをやらなかったら金融崩壊が起きていた」という記憶が残り、不透明感と不信感が増す。次にパニックになった時には、日銀が前より大きな額を投入しないと事態が安定化しなくなる。QEは中毒症状を生み、最終的に日銀がいくら買い支えても金利が下がらなくなる。
テロ戦争を再燃させる 【2015年3月3日】 テロ戦争の策略は、01年の911事件とともに米国が世界戦略として大々的に採用した。その後、ネオコンが話をねじ曲げてイラク侵攻を引き起こし、イラク占領が失敗してオバマが米軍を撤退させ、テロ戦争は下火になった。しかし昨年6月、モスル陥落とともにISISが突然台頭し、ISISとの戦いが「テロ戦争Ver.2」となった。最初のテロ戦争は911事件で劇的に始まったが、今回は段階的に始まっている。第2テロ戦争が始まったのはISIS台頭から半年後の今年1月、パリの週刊シェルリ襲撃事件がきっかけだ。その直後、安倍首相のイスラエル訪問とともにISISが日本人2人を殺すと脅す映像を流し、日本も自分から第2テロ戦争に入り込んだ。
QEやめたらバブル大崩壊 【2015年3月1日】 QEの表向きの目的が「景気回復」であることと裏腹に、当局はQEを続けるため景気を回復させないようにしている。GDPや失業率などが改善されないと景気回復の演出がばれるので、統計上失業者でない半失業者や求職活動停止者を増やし、統計を歪曲・粉飾している。これら大きなマイナスを勘案しても、なおQEが必要だと米日当局は考えている。それだけQEをやめた場合の金融崩壊の程度が大きいと予測されるのだろう。QEをやめたらバブルの大崩壊が起きる。
EU統合加速の発火点になるギリシャ 【2015年2月25日】 今回のギリシャとEUの交渉延長合意は、EU史上初の、加盟国の民意が勝ち取った獲得物だ。スペインやイタリアの国民は、ギリシャの動きを注視している。いずれ、スペインやイタリアも、EUに借金取り救済策を変えさせるべく、政権交代や交渉を始めるだろう。各国が民意に基づいてEUを変えようと交渉し、それでEUが変わるほど、EUは民主的な組織に衣替えする。国家統合だけして民主体制がなかったEUは、シリザに引っ張られて「民主化」していきそうだ。
ISISと米イスラエルのつながり 【2015年2月22日】 イスラエルは米軍(米欧軍)の中東駐留を恒久化するため、米軍産複合体は軍事費の肥大化を恒久化するため、ISISやアルカイダを操って跋扈させ、シリアやイラクを恒久的に内戦にする策を展開している。軍産イスラエルとISISやアルカイダは同盟関係にある。対照的に、中東を安定化し、米軍が撤退できる状況を作るため、イランやアサド政権やヒズボラ、ロシアと中国、オバマは同盟関係にある。不安定化や戦争を画策する軍産イスラエル・ISISアルカイダ連合体と、安定化や停戦を画策するイラン露中・アサド・ヒズボラ・オバマ連合体との対立になっている。
ウクライナ再停戦の経緯 【2015年2月18日】 ウクライナの事態は、独仏とポロシェンコが米国の過激な好戦策に迷惑し、プーチンと結託して停戦や和平を進めるミンスク協定を推進する半面、米国は和平を無視し、根拠を示さずロシアに軍事侵攻の濡れ衣をかけ、民意の支持を失ったウクライナの極右勢力を支援しつつ軍事介入を試みる不合理な好戦策に固執している。どうみてもプーチンの方が「正義」で、米国が「悪」だ。
まだ続く地球温暖化の歪曲 【2015年2月16日】 NOAAやNASAが発表した「史上最高平均気温」の根拠となった気温データは、生の気温データに「調整」を加えて気温がしだいに高くなっているように見せる仕掛けがほどこしてある。気温が高めに測定される都市周辺の測定地ばかり残し、それを修正すると称して、やるべき方向と逆の、最近の温暖化を捏造する方向の調整を行った。気温のグラフが右肩上がりになり、近年に何度も平均気温の最高値が更新されたのは当然だった。
ギリシャはユーロを離脱しない 【2015年2月12日】 ギリシャが離脱したらユーロがどうなるか考える前に、離脱する場合の手続きやシナリオについて考える必要がある。EUはユーロを作る際、ユーロに加盟する手続きだけ法制化し、ユーロから離脱する手続きを作っていない。EU(独仏)上層部は、EUやユーロに加盟する諸国の国民が、加盟による国権の放棄に反対し、選挙で反EU政党が勝って政権をとっても、簡単にEUやユーロから離脱できない「出口のない状態」をあらかじめ作ってある。ギリシャをユーロから強制離脱させることはできない。ギリシャ新政権は、ユーロを離脱する経済利得より、ユーロ圏に残ってEU政界の革命を起こす方を望んでいる。
ウクライナ米露戦争の瀬戸際 【2015年2月9日】 ウクライナに対する米国の軍事支援が始まると、最悪の場合、米露の軍隊がウクライナで直接交戦し、第三次世界大戦の様相を呈する。米国はNATOとして参戦するから、独仏はロシアと本格戦争せざるを得なくなる。独仏首脳は、この冷戦後最悪の危険事態を看過できず、米国がウクライナ軍事支援を開始する前にロシアとウクライナを和解させようと、モスクワとキエフに飛んだ。
イスラエルとの闘いの熾烈化 【2015年2月7日】 米議会共和党からの招待に対し、ネタニヤフが大統領にも議会民主党にもAIPACにも通知せず、招待を受けて訪米を決めてしまったため、それまで超党派でイスラエルを支持していた米政界の構図が崩れ、大統領府だけでなく、外された民主党議員たちもネタニヤフの訪米に反対し始めた。バイデン副大統領や民主党の議員たちは、ネタニヤフ演説への欠席を検討している。
QEするほどデフレと不況になる 【2015年2月4日】 世界の大半の国々がQEや金融緩和を加速し、各国通貨が引き下げられている。輸出国の通貨が引き下げられるほど、輸出商品の価格が実質的に下がり、世界的なデフレ傾向になる。QEはデフレを助長している。QEは銀行の貸し渋りをも助長し、中央銀行から民間銀行に流れる資金をいくら増やしても、銀行から中小企業や個人に資金が行き届かず、実体経済が改善されない。
ギリシャから欧州新革命が始まる? 【2015年1月30日】 ギリシャに新政権ができ、EUに債権放棄を迫っている。EU(ドイツ)がギリシャに対する債権を少しでも放棄すると、スペインやイタリアなど、EUから救済融資を受けている南欧諸国が同様の放棄を求め、緊縮策に反対してきた極右や極左の政党が台頭して政権転覆が起こり、EU各国の2大政党制(エリート支配)が崩れ、EU全体の権力構造が転換していく。全欧的な権力構造の転換が起きるかどうか、転換したらその後どんな政治体制になるか、新事態が始まったばかりなのでわからないが、とりあえず欧州でフランス革命やロシア革命に匹敵するかもしれない画期的な事態が始まった感じを強く受けている。
ユーロもQEで自滅への道? 【2015年1月27日】 QEは経済を回復しない間違った政策だが、日欧のQEは円やユーロを引き下げてドルを延命させる効果がある。米連銀は、自分が6年間QEをやってもう続けられないので、日銀やECBにQEを引き継がせたい。ドラギはその策略にはまり、米国との関係を悪化させたくないドイツも押し切られ、ECBはQEを開始した。すでに述べたように、今のところECBのQEには多くの制限がついているが、QEはやめると株や債券の大幅下落を引き起こすのでやめられず、中毒に陥りやすい。ユーロは自滅への道をたどり始めたかもしれない。
安倍イスラエル訪問とISIS人質事件 【2015年1月23日】 ISISに捕まった日本人を救出するため、日本政府はISISに関する情報を多く持つ(ISISの生みの親である)イスラエルや米国防総省、米タカ派議員など「軍産イスラエル複合体」に頼る傾向を強めざるを得ない。日本政府が、米イスラエルとISISとの裏のつながりを察知した上で、米タカ派やイスラエルと協調するならまだしも、そうでなく米イスラエルとISISとのつながりを無視しているように見えるだけに懸念がつのる。
スイスフランの転換 【2015年1月18日】 ドイツは親米国だが、米連銀がECBのドラギ総裁をたらし込み、ユーロを犠牲にしてドルを延命させるQE拡大をやろうとしているのを、ドイツは看過できない。スイスの中央銀行は、唐突にペッグを廃止することで「ECBのQEにはついていけないよ」と世界に向かって表明する効果をもたらし、QEをめぐるドラギとドイツの戦いでドイツを加勢した。
覇権過激派にとりつかれたグーグル 【2015年1月17日】 ネオコンとジェアード・コーエンが同じような過激な好戦勢力であることから考えて、国務省や(ネオコンを擁した)CFRがグーグルとの融合を強め、国務省にいたコーエンがグーグルに送り込まれたことは、隠れ多極主義の総本山と目されるCFRによる、覇権機関となったグーグルを自滅させようとする策略と疑われる。
冷戦後の時代の終わり 【2015年1月13日】 冷戦後の25年続いてきた「グローバリゼーションの時代」が終わりそうだと指摘する記事を、最近FT紙が載せた。政治の民主主義と経済の市場主義という、冷戦後の時代を支えてきた2つの理念が揺らいでいる。加えて、2つの理念に支えられてきた米国の覇権が揺らいでいるため、冷戦後の一つの時代が終わりそうだという。
覇権転換とパレスチナ問題 【2015年1月9日】 米国にイスラエル絡みの好戦策を採らせている黒幕はユダヤ人だ。「地理上の発見」後、世界を単一な覇権体制下に置く構想が欧州で持たれて以来、覇権国はスペインからオランダ、英国、米国と遷移してきたが、そのたびに黒幕(資金源や官僚)として動いていたのが(宮廷)ユダヤ人だった。「覇権ころがし(による金儲け)」は、ユダヤ人の天職だ。そうした歴史を見ると、米国のユダヤ人が今、自国の覇権を衰退させるような過剰な好戦策を続けている目的も「覇権ころがし」の策だと考えられる。
2015年の予測 【2015年1月6日】 現時点の、短期的に重要な国際情勢のテーマは以下の3点だ。(1)サウジなどによる原油安攻勢がいつまで続くか。ロシア経済と、米国のシェール石油産業のどちらが先に潰れるか。(2)先進諸国の金融緩和の行方。米連銀は利上げするか、もしくはQE(通貨過剰発行による債券買い支え)を再開するか。ECB(欧州中央銀行)はQEをやるか。アベノミクスはどうなるか。(3)中東の対立。年末にパレスチナが国際刑事裁判所に加盟し、イスラエルが世界的な悪者になりそう。3月イスラエル選挙の与野党逆転で和平に転換か?。解かれそうで解かれないイランの核の濡れ衣。やらせ的ISIS戦争の行方。
これより前の記事(2014年の記事)
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