「田中宇の国際ニュース解説」2006年の記事一覧
これより後の記事(2007年の記事)
半年以内に米イラン戦争が始まる? 【2006年12月28日】米空母2隻のペルシャ湾派遣、対イラン国連決議などから、アメリカがイランと戦争に入る可能性が高まっていると感じられるが、開戦するとしたら時期はいつなのか。最近、中東情勢をめぐる出来事や要人発言をウォッチしていると、来年3月から6月ごろに、イランとの戦争が始まるのではないかと感じさせる発言や出来事がいくつもあることに気づく。
近づいてきたドル崩壊 【2006年12月26日】 今後のアメリカ経済は、2007年から08年にかけて住宅バブルの崩壊で不況になり、税収が減る一方でメディケアや防衛費などの政府支出は増え、今後の数年間で財政赤字が急拡大する。その間にアメリカの中産階級は消滅し、国全体としての消費力が減り、今後10年ぐらいかけて財政が再建されても、そのころには、旺盛に消費できる世界経済の牽引役という従来のアメリカの姿は、二度と再現できない過去の話になっている。この過程のどこかの時点で、ドルは世界通貨としての役割を終える。
大戦争になる中東(3) 【2006年12月20日】 イランに戦争を仕掛けるのはイスラエルにとって成功率の低い賭けなので、今のところイスラエルでも戦争を主張しているのは右派だけで、オルメルト政権は好戦的な世論に抵抗している。しかし、おそらくレバノンとパレスチナで親米派が壊滅するのは時間の問題だから、オルメルトが抵抗を続けられるのも時間の問題で、いずれイスラエルはイランに戦争を仕掛けざるを得なくなる。
多極化に圧されるNATO 【2006年12月12日】 NATOに対する仏シラク大統領の提案は、欧米の集団安保組織であるNATOと、中露の集団安保組織である「上海協力機構」などが、協力し合う体制を作ろうとしており、世界の多極化を容認するものだ。アメリカの自滅的強硬姿勢を危険視する傾向が強い欧州では、ドイツなど多くの国がシラク提案に賛同している。欧州は、国際的に危険な存在となったアメリカを抑えるため、中国やロシアの台頭を容認するようになった。
アフガンで潰れゆくNATO 【2006年12月7日】 アフガニスタンに関して、イギリスやカナダなどNATO諸国は、2001年からの5年間の米軍統治によって、タリバンの残党はほぼ一掃され、あとは小規模の小競り合いのゲリラ戦があるぐらいだと考えていたから、予算も装備も兵力も、大した準備をしないまま、米軍から占領を引き継いだ。しかし、これは大きな間違いだった。関係者の間では「もうNATOは勝てない」という見方が強まっている。
自滅の仕上げに入った米イラク戦争 【2006年12月5日】 イラクでは今後、シーア派の中の最大勢力であるサドル師の派閥が、スンニ派など他の勢力に呼びかけて、反米の連合戦線を組織し、イラク議会を席巻する動きが強まりそうだ。275議席のイラク議会のうち、すでに100人の議員が、反米連合戦線に参加する意向を表明したという。アメリカがイラク占領を長引かせているうちに、イラク人は宗派を超えて反米で結束し、米軍撤退要求を決議するようになりそうである。
レバノンの暗殺と中東再編 【2006年11月28日】 中東のイスラム世界は、イランを中心に再編されつつある。そしてその一方で、イスラム世界を支配する側だったアメリカ、イギリス、フランスとイスラエルは、追い出される方向にある。レバノンの閣僚暗殺事件は、この流れの中で分析すると、よく理解できる。
中国の台頭と日本の未来 【2006年11月21日】 かつて、アジア・アフリカなどの多くの発展途上国にとって、日本は発展のモデルだった。世界には、欧米文明以外の文明に立脚している国が多いが、日本が、日本的なものを残したまま、欧米の技術やノウハウを取り入れて発展に成功したことは、同様に富国強兵を目指す非欧米系の国々にとってお手本だった。ところが今、多くの途上国にとって、日本をしのぐ発展のお手本になりつつある国がある。それは、中国である。
「一人負け」の日本 【2006年11月16日】 911後のアメリカが故意の失策を繰り返し、何も変わっていないかのように見せながら隠然と世界から手を引き始めている今の新状況に、日本も早く気づき、次の国是を考え、対策を打った方が良い。韓国や中国、ロシアは、すでに新状況に気づいている。北朝鮮の金正日も、もう気づいたかもしれない。このままでは、日本だけが出遅れて「一人負け」することになる。
ブッシュ変節の意味 【2006年11月14日】 ブッシュは、中間選挙での共和党の敗北が決定する前に、早々と負けを認め、民主党に超党派での協調を呼びかけた。この変節は、ホワイトハウス内の黒幕たちが、中間選挙で負けることを想定して事前に考えていたもので、選挙の敗北という好機を使って方向転換が行われたと私には感じられる。黒幕たちは「民主党から要求されてやむを得ず」というかたちをとりつつ、イラクからの早期撤退を実現しようとしている。
米中間選挙後に世界は混乱する? 【2006年11月7日】 アメリカで、ここ数カ月の株価上昇など経済の活況は、ブッシュ政権の「下落防止チーム」による粉飾的な選挙対策だったのではないかという見方が出ている。・・・
不正が予測される米中間選挙 【2006年11月3日】 アメリカの電子式投票機の大手メーカーは3社あるが、最も台数が多いのは「ディーボルド社」の「アキュボート」(AccuVote)という製品で、全米の投票所の約4割が、この投票機を使っている。この製品名は「正確な(accurate)投票(vote)結果を出す機械」という意味でつけられたのだろう。だがこのマシンは、名前が示すものとは正反対の、不正な投票結果を出してしまうことで、アメリカの選挙専門家の間で有名になりつつある。
アジアのことをアジアに任せる 【2006年10月31日】 北朝鮮の核実験を機に中国は、これまでよりも自主的、能動的に北朝鮮に対する手綱を持つようになった。アジアのことはアジアに任せるというアメリカの戦略は、北朝鮮の核実験を機に、中国の能動的な覇権活動、安倍訪中による日中敵対の終息などが引き起こされたことで、ようやく実を結び始めている。
日本の核武装とアメリカ 【2006年10月24日】 軍事費も兵力も足りないアメリカでは、日本が核武装したら「もはや日本はアメリカの核の傘の下にいないので、アメリカに頼らず自分で防衛した方が、アメリカにとってもコスト安になる」という議論が出てきかねない。すでに韓国では、韓国側がアメリカ側に「韓国はアメリカの核の傘の下にあると言ってほしい」と求めているのに対し、米側は「前向きに検討する」としか答えない状態になっている。
アメリカ中東支配の終わり 【2006年10月21日】「中東混乱期の夜明け」と題するCFR会長の論文は、アメリカはイラク占領の失敗と、パレスチナ和平の失敗、穏健な親米アラブ諸国がイスラム過激派を抑えることに失敗したことによって、中東でのアメリカの影響力が減退したと書いている。今後も、アメリカが中東で最大の影響力を持つことは変わらないものの、アメリカの減退と入れ替わりにEUやロシア、中国などからの影響が強まりそうだと予測している。
中国が北朝鮮を政権転覆する? 【2006年10月19日】 中国政府が北朝鮮に対する態度を硬化させたのは、核実験が実施されたことが最大の原因ではない。核実験は、態度硬化のきっかけでしかない。中国が北朝鮮を批判したり、政権転覆支援を示唆したりする本質的な理由はおそらく、中国が北朝鮮にアドバイスした経済開放政策が進まず、中国が目指してきた「北朝鮮を中国のような社会主義市場経済に軟着陸させていく」という目標が実現していないからである。
安倍訪中と北朝鮮の核実験 【2006年10月17日】 北朝鮮の核実験が不可避になった時点で、中国側は金正日に「中国が良いと言ってから実験を実施せよ」と命じる一方、アメリカに「核実験後の北朝鮮との交渉に中国が責任を持つから、その代わり日本の安倍に、首相になったらすぐ中国に来いと言ってほしい」と求め、かねがね中国に責任を持たせたいと思っていたアメリカは中国の提案に応じ、安倍に「もうすぐ北朝鮮が核実験するから、早く中国との関係を改善しなきゃダメだ」と強く言って訪中を実現させ、中国は北朝鮮に「安倍が中国を離れたら核実験しても良い」とゴーサインを出し、核実験は安倍が北京から離れた半日後に実施された、というのが私の仮説である。
イスラエルとアラブの接近 【2006年10月10日】 イスラエルを弱めてしまった7−8月のレバノン戦争後、占領地からの撤退は危険だと考える世論がイスラエルで強くなり、撤退は棚上げされた。だが、このままではパレスチナ問題に対する現実的な戦略が欠如している。そのためオルメルトは、アラブ側と交渉する戦略を新たに採用した。サウジ側は「イスラエルが弱くなった今こそ、アブドラ提案を実現できる機会だ」と考え、オルメルトと会談した。
原油安で経済軟着陸? 【2006年10月3日】 8月まで、米中枢からは、石油価格の高騰に歯止めをかけようとする実質的な動きが何もなかったことを考えると、ここにきて石油価格を下げ、米経済の不況突入を避けようとする動きが出てきたことは、注目すべきである。不況は避けられないだろうが、ソフトランディングはできるかもしれない。
アメリカ発の世界不況が起きる(2) 【2006年9月30日】 アメリカ中枢の人々は、本当は不況の懸念が強まって金利が逆転しているにもかかわらず「あれは不況の予兆とは違う」という見方を定着させ「不況を防止した方がよい」という世論の出現を食い止めて、不況を確実に発生させようとしているのではないか。
国際協調主義の再登場 【2006年9月26日】 米軍を成功裏にイラクから撤退させるには、イラク情勢の安定化が不可欠で、そのためには、反米ゲリラの強さの源泉であるイラク国民の反米感情を緩和する必要があり、それにはブッシュ政権が好戦的な姿勢をやめて協調主義的な態度に転換せねばならない。中東の人々の反米感情を緩和するには、パレスチナ問題を解決し、イランとの戦争を避けねばならない。米軍の撤退には、パレスチナ問題とイラン問題の平和的な解決が必要となる。加えて、イラクと国境を接するシリアとの和解も必要だ。ベーカーの組織は、すべてを一括して解決しようとしている。
多極化と日本(2)北方領土と対米従属 【2006年9月19日】 日本政府が4島返還にこだわるのは、それを言っている限り、ロシアと和解せずにすみ、日本が外交的にアメリカだけと緊密な関係であり続けられ、対米従属戦略を継続できるからだ。日本は、軍事的にアメリカの「核の傘」の下にあり、自衛隊は米軍の一部のように機能しているが、同様に、日本は外交的にもアメリカの世界戦略の傘の下にあり、外務省はアメリカ国務省の分室のようである。戦後しばらくは、アメリカからの圧力で、日本は対米従属を強いられていたかもしれないが、この体制はしだいに日本にとって、安心できて気楽で心地よいものとなった。
多極化と日本(1) 【2006年9月12日】 最近、日本は対米従属が続けられなくなるかもしれないという前提で問題提起をした人がいる。中曽根元首相である。中曽根氏は9月5日の記者会見で「米国の態度が必ずしも今まで通り続くか予断を許さない。核兵器問題も研究しておく必要がある」と強調した。発言は、アメリカが覇権を失墜したり、孤立主義に陥ったりして、日本は対米従属が維持できなくなる懸念があるという趣旨だと解釈できる。
イランとイスラエルを戦争させる 【2006年9月6日】 すでにイスラエルは、北のヒズボラと南のハマスという、イランに支援された2つの武装勢力によって狙われている。今後、中東でイランの影響力が上がり、アメリカの影響力が下がり続ければ、後ろ盾を失ったイスラエルを一気に武力で潰すべきだという過激派の考え方が、中東でますます優勢になる。イスラエルにとって、非常に危険なことである。
見放されたネパール国王 【2006年8月29日】 ギャネンドラ国王が、早い段階でインドやアメリカの要請に従っていたら、ネパールの混乱は収拾していたかもしれないが、ギャネンドラは別の考えを持っていた。彼は、マオイストは「テロ組織」なのだから、自分がマオイストと戦うのは、アメリカのブッシュ大統領が取り組んでいるのと同じ「テロ戦争」であり、ブッシュと同様、自分も、ネパールの民主主義を制限して国王の権限を拡大しても、国際社会から許されるはずだと考えた。しかし、アメリカはそのようには考えてくれなかった。むしろ「独裁者が民主主義を弾圧している」という図式でとらえられた。
ヒズボラの勝利 【2006年8月22日】・・・ところが意外なことに、この土壇場の状況で、アメリカが突然に譲歩した。アメリカのボルトン国連代表は、議場から席を外し、30分後に戻ってくると、停戦案の最大の対立点だった、国連憲章7章に基づいた武力行使権を国連軍に付与する条項について、アラブ側の要求を受け入れ、武力行使権を削除しても良いという譲歩を行った。アメリカの譲歩により、停戦案はまとまったが、国連軍の力行使権は削除され、誰もヒズボラを武装解除しない状況が作られることになった。
アメリカは破産する? 【2006年8月15日】 日本も財政赤字は危機的だが、私がアメリカの方がはるかに危いと思うのは、チェイニーのように財政赤字を故意に急増させたがる多極主義的な勢力が政権中枢におり、多くの人は彼らの戦略に気づいてすらいないからである。
アメリカにつぶされるイスラエル 【2006年8月8日】 アメリカの政治家の中には、共和党にも民主党にも「イスラエル支持」を叫びながら、その一方で米軍のイラク撤退をブッシュに要求している人が多い。民主党から次期大統領を狙うヒラリー・クリントンなどが好例である。ここで私が勘ぐっているのは、アメリカの政界やホワイトハウスには、実はイスラエルを潰したいと考えている人が多いのではないかということである。
大戦争になる中東(2) 【2006年8月1日】 アメリカ政府は表向き、レバノンでの停戦に向けてライス国務長官らが外交努力を続けているように見せているが、これはアメリカの外交力に期待する国際社会の目を欺くための見せかけであり、実はイスラエルが戦火をシリアやイランに拡大することを誘発しているのではないかと私には思える。
世界に嫌われたいイスラエル 【2006年7月27日】 イスラエルのレバノン攻撃のやり方は、故意に国際社会を怒らせようとしているかのようだ。イスラエルがこんなことをやる目的は、おそらく、アメリカ軍をレバノン南部に駐留させ、イスラエルの防衛を担当させたいからである。イスラエルは、戦争開始と同時に市民の避難路を破壊し、逃げ遅れた外国人やレバノンの一般市民を「人質」にして、人質がいたぶられる姿を世界にテレビに放映させ、アメリカが国際社会からの圧力に耐えられなくなって軍隊を派遣してくることを待っている。
戦争とマスコミ 【2006年7月25日】・・・翌日のBBCニュースでは、ハイファに滞在する記者が「ハイファ市民は意外と冷静です」と現地レポートを始めたとたん、映像が途切れてしまった。BBCが「イスラエル市民は意外と冷静で、ミサイルの着弾現場には野次馬がたくさん来ています」といった現実を報道してしまうと、世界の世論にイスラエルを不利にする悪影響を与えかねない。だから軍が放送をカットしたのではないかと思われた。
大戦争になる中東 【2006年7月23日】 ブッシュ大統領がイランとの戦争を回避したいと考え続けても、イスラエルの苦戦がしだいに明らかになり、イスラエルがアメリカを巻き込もうとイランの戦争に入る懸念が強まっているため、イラクに軍を駐留させているアメリカが、この戦争から逃れられる可能性はしだいに低下している。アメリカがイラン、シリアとの戦争に入ることこそ、ネオコンが強く求めていることである。
イスラエルの逆上 【2006年7月19日】 イスラエルは、なぜ戦争を拡大しようとするのか。私の見るところでは、今のイスラエルの内部は一枚岩ではない。占領地撤退を進めたい「現実派」と、あくまでもパレスチナ・アラブ側との戦いを好む「右派」とが対立し、暗闘している。今回の戦争は、イスラエル内部の暗闘の中で、右派がクーデター的に起こしたものである。
ウォール街と中国 【2006年7月14日】 ブッシュ政権の残りの2年間で経済政策がうまく行く可能性は低いのに、財務長官への就任をポールソンが引き受けたのは、何か隠れたメリットがあるからに違いない。私が疑っているのは「ポールソンは、中国の経済発展で儲けているウォール街(アメリカの金融業界)を代表して財務長官になり、中国経済の発展を阻害しないかたちで人民元の切り上げを実現しようとしているのではないか」ということである。
北朝鮮ミサイル危機と日本 【2006年7月11日】 日本は、日米同盟の強化を願って、北朝鮮に対する強硬姿勢をとっているが、この姿勢を利用してアメリカは、日本の願いとは逆に、中国中心のアジア諸国に、アメリカから自立した新体制を作らせようとしている。北朝鮮に対する中国の外交努力が成功したら、朝鮮半島は中国と韓国、ロシア、北朝鮮という当事者間の話し合いで動くようになる。アメリカは、東アジアおける覇権の多極化を容認する度合いを強める。日米同盟強化を目的とした日本の強硬姿勢は、結果的に、日米同盟の空洞化を進めかねない。
北朝鮮ミサイル危機で見えたもの 【2006年7月7日】 ブッシュ政権が、イラクやイランに対しては好戦的な方針なのに、北朝鮮に対してだけは「脅威ではない」と言うのは、そうしないと中国が6カ国協議の主導役を務めてくれなくなるからである。中国は、アメリカに敵視されることを恐れている。中国を警戒させないためには、ブッシュ政権は、緊張が高まるごとに「北朝鮮を攻撃しない」と言い続ける必要がある。中国は、アメリカとの敵対は避けたいが、アジアでの覇権国にはなりたいと考えている。ブッシュ政権は、この中国の野心を利用して、北朝鮮問題の解決を中国にやらせている。
中国経済の危機 【2006年6月27日】 不動産や鉄鋼、自動車、エアコンなどに対する過剰投資の状態が起きていることは、中国の経済成長の質に大きな影を落としている。ここ数年の中国の経済成長を見ると、全体としての成長率は8−10%だが、その要因の6−7割は、固定資本形成、つまりビルや道路、工場設備などを作ることによる経済成長である。ビルや工場設備への投資の中には、使われない、売れない過剰投資が多い。この過剰な部分は近い将来、確実に減少すると予測される。投資バブルの崩壊である。
自衛隊イラク撤退の意味 【2006年6月20日】 イギリスが日本やオーストラリアと協議し、日本のサマワ撤退計画が浮上したのは、ブレアの訪米が失敗し、米政界が撤退否定に向けて議論をしていたときである。ブレアの訪米の失敗により、イギリスがアメリカを協調主義に引き戻す計画は失敗で終わり、英日豪はアメリカより先に撤退に動くことになった。
文明の衝突と東チモール 【2006年6月17日】 冷戦時代には、インドネシアは「反共」でアメリカの味方であり、左翼的傾向が強い東チモールのゲリラ組織は味方ではなかった。しかし、冷戦後の次の50年戦争となるべき「文明の衝突」では善悪が逆転し、インドネシアはイスラム教徒の国なので「敵方」であり、東チモールは住民の90%以上がキリスト教徒なので「欧米側」である。東チモールは、オーストラリアに守られつつインドネシアから独立を勝ち取ることで「イスラム包囲網」の一部となった。だが、話はここで終わらなかった・・・
アメリカの「第2独立戦争」 【2006年6月13日】 アメリカは、領土的には1783年にイギリスから独立している。しかし、アメリカの世界戦略の中に、イギリスにとって都合が良い半面、必ずしもアメリカ自身の国益に沿っていないものが多いことを考えると、アメリカは特に第二次大戦後、イギリスによって傀儡的に動かされているような印象を受ける。ヒットラー敵視や冷戦(ソ連・中国敵視)など、正義感の強いアメリカ人の世論がイデオロギー的に動かされて採られた戦略は、いずれもイギリスに大きな利益を与えている。
つぶされるCIA 【2006年5月30日】・・・ハイデンがNSA長官として行った「失策」は、うまくやろうと思ったのに失敗したのではなく、故意にNSAの機能を潰したのであり、これからCIA長官になったら、こんどはCIAの機能を潰しにかかるのではないか、と推測される。ハイデンを長官に迎えるにあたって「もうCIAは終わりだ」という声がCIA内部から出ていると報じられている。
やはり仕組まれていた911 【2006年5月16日】・・・結局、アメリカ、ドイツ、スペインのいずれの裁判でも、被告がアルカイダの関係者(同情者)であることは立証できても、911のテロ計画に関与していたことは立証できなかった。「911の犯人はアルカイダだ」ということは、米当局が主張し、マスコミが事実であるかのように報じただけで、実は事実ではないことが、ほぼ確定した。「アルカイダに同情すること自体、十分犯罪的なことだ」と考える人もいるかもしれないが、本末転倒だ。アルカイダが911の犯人であることが立証された上でなら、アルカイダへの同情は犯罪行為かもしれないが、アルカイダが911の犯人ではないとしたら、犯罪視する前提が崩れる。
通貨から始まったアジア統合 【2006年5月9日】 アジア諸国が、従来の「ドルこそ命」の態度をやめて、ドルを見捨てることを意味するアジア通貨単位の活用を、ASEAN+3という多国間で決定し、表明したのは、もはやアジア諸国がドルを買い支えても、ドルの急落は避けられない情勢になったとアジア諸国が総意として判断したからに違いない。アジアでドルが唯一の基軸通貨だった時代が終わる過程が始まったが、同時にドル下落でアメリカの消費力が落ち、世界が不況に陥る懸念が増している。
IMFが誘導するドルの軟着陸 【2006年5月2日】 1985年の「プラザ合意」では、円とマルクの対ドル相場を切り上げたが、今回は、円とユーロ、人民元、韓国ウォン、サウジアラビア・リヤルなど、広範囲な諸通貨のすべてが切り上がることになりそうで「大プラザ合意」とも呼ぶべき新構想が提案されたことになる。プラザ合意では、関係国の米日独はすべてG7に加盟していた。その後の世界の経済運営も、G7が取り仕切ってきた。だが今後の大合意は、中国やサウジといったG7以外の国の参加が不可欠だ。それで、大合意を実現するため、G7からIMFに機能の一部を移転しようという話になっている。
非米同盟がイランを救う? 【2006年4月25日】 アメリカに自国の商品を買ってもらえなくなると困る中国は、アメリカと正面切って対立することを望んでいない。それでは中国は、どのようにしてアメリカの破壊行為を止め、イランが戦争に陥るのを止められるのか。最近の動きから私が感じる答えは「外堀から埋めていく戦略が採られているのではないか」ということだ。「外堀」とは、世界各地の親米国や、アメリカにとって重要な国々のことで、堀を埋め立てる材料は札束、つまり経済である。
イラン訪問記(2)民族の網の目 【2006年4月21日】・・・テヘランで聞いた小話に「アゼリ人はすでにイランを支配している」というのがある。最高権力者のハメネイ師はアゼリ人の血が入っており、イラン経済界ではアゼリ人が強く、イランのサッカーチームの大人気の有名選手もアゼリ人だからだという。こういう話を聞くと、イランのアゼリ人が反政府運動に無関心なのは納得できる。
イランは核攻撃される? 【2006年4月18日】 アハマディネジャドの大統領就任後、イランでは経済が回復せず、失業率も低下せず、大統領に対する不信任が強まっていた。イラン政界内で、対米協調派が復活しそうになっていたと考えられるが、そうした中でアハマディネジャドの不利な状況を吹き飛ばす効果をもたらしたのが「ブッシュはイランを核攻撃することをすでに決めている」という一連の報道だった。
イラン訪問記 【2006年4月14日】・・・裕福層とは反対に、貧困層はアハマディネジャドに期待している。ペルシャ湾岸の貧しいブッシェール州で、乗り合い長距離タクシーの中でとなりに座った青年は、イランの地方では珍しくカタコトの英語ができた。彼は私と話すうちに、自宅に来ないかと誘ってくれ、私は農村にある彼の自宅に一泊することになったのだが、彼は、石油収入を広く貧困層に分配すると宣言したアハマディネジャドは、前任の金持ち法学者のハタミ大統領より良いと言っていた。
ネオコンと多極化の本質 【2006年3月31日】 次期大統領になりそうなヒラリー・クリントンやコンドリーサ・ライスは「中東民主化貫徹」「イスラエル断固支持」といったネオコン路線を継承することで、実はイスラエルを潰して世界を多極化する金融資本家の策動に乗っている。ヒラリーもライスも「隠れ多極主義者」というわけだ。
拡大する双子の赤字 【2006年3月23日】 「アメリカは赤字が増えても、当局がドル札を印刷するだけで良いのだから問題ではない」という見方は間違いである。世界の人々が、決済や貯蓄のために保有する通貨をドルにしておきたいと考えるのは、アメリカには経済力、外交力、軍事力があり、発展性と安定度が高くて有事にも強いからだった。ところが今やアメリカは、製造業が死滅して経済は危機、先制攻撃戦略の強行で外交的にも信用されず、イラク占領の泥沼で軍事力を浪費している。潜在的に、ドルはかなり危険な状態だ。
自滅したがるアメリカ 【2006年3月14日】 ブッシュ政権がインドに核技術を供与したり、米議会がドバイ・ポーツ・ワールドのアメリカ6港の運営権獲得に反対したことは、いずれも反アラブや反中国、軍事産業強化といった、タカ派の戦略を反映しているように見えながら、よく見ると外交的、経済的にアメリカを自滅に追い込む一方で、反米や非米の諸国の台頭を誘発し、世界の多極化が推進される結果を生み出すものとなっている。
日本を不幸にする中国の民主化 【2006年3月7日】 中国で共産党の独裁が崩壊しても、その後、日本にとって好都合な内部分裂した状態がずっと続くとは限らない。独裁が崩壊して民主化した後、カリスマ的な政治家が登場し、中国内部を再統合するために、極度の反日感情を扇動し、日本製品を中国市場から完全に締め出したり、日本に戦争を仕掛けるようなことをやり出したら、日本に悪影響しか及ぼさない。
イラクの技術者を皆殺しにする戦略(短信)
イラク・モスク爆破の深層 【2006年3月3日】・・・爆破された後のモスクの写真を見ると、ドームが見事に全部なくなっており、ものすごい破壊力だったことが分かる。これほどの破壊は、モスクの隅の方に爆弾を隠して爆破するぐらいではダメで、柱に穴を開けて爆弾を仕掛けるやり方でないと実現できない。柱に穴を開けるとなると、夜中にモスクから工事の音が漏れ、近所の人々がおかしいと気づくことになる。それでも爆破が実行されたのだから、イラク軍と米軍は、爆弾が仕掛ける作業が行われているのを知りながら黙認したか、もしくは彼らが爆弾を仕掛けたということになる。
イランとアメリカのハルマゲドン 【2006年2月21日】 アメリカのキリスト教原理主義には、キリストの再臨を誘発するために中東で最終戦争(ハルマゲドン)を起こす、という考え方があるが、アハマディネジャドもそれと同じ思考法で、救世主マフディの出現を誘発している。ただし、アメリカとイランでは、善悪が逆転している。お互いに「自分の方が善であり、相手が倒すべき悪だ」と考えており、鏡像的な敵対関係にある。お互いが「戦争こそ必要」と思っている以上、アメリカとイランが長い戦争に入る可能性は大きい。
イランとアメリカの危険な関係 【2006年2月14日】 アメリカがイランを攻撃した場合、イランは、世界の石油消費量の25%を載せたタンカーが通航するホルムズ海峡を閉鎖し、原油価格は200ドルに達する。またイランは隣国イラクに駐留する米軍を攻撃する。イラクの民兵の多くはイランを支援し、米軍は地上戦の再激化に耐えられず、何年かの戦いの末にイラクから敗退する。中東の反米感情が高まり、エジプトやヨルダンで親米政権が転覆され、サウジアラビアも親米でなくなる。これは、中東におけるアメリカの覇権の終焉となる。
イラン核問題:繰り返される不正義 【2006年2月7日】 イラクのフセイン政権は「言われたとおりに大量破壊兵器を全廃すれば、もう侵攻されることはないだろう」という道理を信じて全廃したが、その結果起きたことは、丸裸にされたイラクを米軍が簡単に潰す侵略戦争だった。イラク侵攻を機に、国際社会からは「正義」や「道理」が消えた。イラクの悲劇を見て、イランや北朝鮮は、欧米に武装解除を求められても、一歩も譲歩しなくなった。武装解除に応じても、アメリカは「まだ武器を持っているはずだ」と言いがかりをつけ、潰されるのが落ちだからである。
ハマスを勝たせたアメリカの「故意の失策」 【2006年2月2日】 イスラエルは、ハマスがファタハを破って政権に就く選挙の実施は避けたかった。パレスチナでも、ファタハのアッバス議長は、負けると分かっている選挙を延期したかった。昨年12月下旬には、イスラエルが「1月の選挙では、東エルサレムでの投票を許可しない」と発表し、アッバスは投票延期を実現できる状況となった。ところがその後、議会選挙は予定どおり実施せざるを得なくなった。アメリカ政府がアッバスに「選挙を予定どおり実施しなければ、経済支援を打ち切る」と圧力をかけたからだった。
アメリカを空洞化させた国際資本 【2006年1月31日】アメリカは、国が破綻しそうになっても、外国からの輸入を続ける姿勢をとっている。その理由は、アメリカの最上層部にいる人々が、自国より世界を重視する「国際資本家」だからである。彼らは、先進国になって経済成長が鈍化し、投資利回りが下がった自国より、発展中のアジアなど利回りの高い途上国に投資することを好み、自国には海外製品を積極的に輸入する市場としての役割を担わせる政策を30年間続けてきた。
アメリカ発の世界不況が起きる 【2006年1月25日】ここ数年の米経済の景気回復は、住宅価格の上昇をテコに人々は金を借りて消費したからで、日本や中国が作った商品がアメリカで良く売れたのも、不動産が牽引するアメリカの消費拡大があったからだ。今後、アメリカの住宅バブルが崩壊すると、アメリカの消費全体が冷え込み、対米輸出で経済成長してきた日本や中国など、世界経済の全体が悪化する。ニューヨークやマイアミでマンションが売れなくなることは、世界不況の引き金を引きかねない。
続・ウクライナ民主化の戦いのウソ 【2006年1月20日】・・・ロシアとウクライナの間で1月3日に妥結された新契約は、さらに奇妙な状況になっていた。間に挟まって「中抜き」する会社が増え、ロシア側とウクライナ側の合弁で新設される「ガストランジット」という企業も挟まることが、新契約に盛り込まれた。これまでの経緯から推測するなら、従来の中抜き会社がクチマ前大統領の派閥への裏金供給システムであるのに対し、ガストランジットは、ロシアに楯突くことをやめたご褒美として、ユーシェンコ大統領に裏金を供給するメカニズムとして作られた疑いがある。
プーチンの光と影 【2006年1月16日】大統領になってから現在まで、プーチンが最も力を入れて行ったことは、彼が1990年代に書いた「資源を使ってロシアを世界的大国に戻す」という論文で提唱した戦略を実現することだった。戦略の中で、昨年までの過程は、新興財閥に私物化された資源産業を、国家の手に取り戻す段階だった。今年から、戦略は次の段階に入った。国有化で欧米に乗っ取られる懸念がなくなったロシアの資源産業の株式の半分未満を欧米の投資家に売り、世界から資金を集めてさらなる資源開発を行う段階である。
プーチンの逆襲 【2006年1月12日】元日にロシアがウクライナへのガス送付を減らしたのは、ウクライナなど旧ソ連諸国に「ロシアの影響圏からの離脱は許さない」というシグナルを送るとともに、欧米諸国に対して「ロシアの影響圏である旧ソ連諸国で、政権転覆や内政干渉を行うことは許さない」というプーチンからの警告だった。石油価格高騰と、中東地域の不安定化の中で、欧州は、プーチンの警告に逆らうのが難しくなっている。
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