「田中宇の国際ニュース解説」2013年の記事一覧
これより後の記事(2014年の記事)
金融戦争で中国に勝てない米国 【2013年12月26日】 中国と金融戦争した場合の米国の敗北が09年から予測され、その後も米国の不利が拡大する一方なので、ふつうに考えれば米国は、中国との対立を回避するのがかしこい戦略だ。しかし、それと正反対に、オバマ政権は11年から、軍事的な中国包囲網の強化である「アジア重視策」を開始し、日本やフィリピン、ベトナムなどをけしかけて、中国との軍事対立を煽った。「米国は、経済で勝てないから軍事で中国を包囲したのだ」と思うのは時代遅れだ。
米連銀QE縮小で増すリスク 【2013年12月24日】 これまで「QEの資金が株式市場に流入して株高になっている」とされ、連銀がQEの継続を決めそうだと株高、QEの縮小を決めそうだと株安だった。しかし今回、株高の理由は「連銀のQE縮小で、米景気の回復傾向が裏付けられたので株高」にすり替わっている。従来どおり「QE縮小は株安」のままだと、連銀のQE縮小の決定を受け、株が急落しなければならない。金融界と米当局と金融マスコミのいずれにとっても、株安は好ましくない。だから、理由をすり替えて株高が維持されている。
北朝鮮・張成沢の処刑をめぐる考察 【2013年12月18日】 張成沢が処刑に際して「反党活動」の罪をなすりつけられたことは、北の権力中枢が今後も労働党を最重視していくことを示している。先軍政治の復活はない。軍が正恩をそそのかして張を殺したのでもない。張の失脚は、軍のクーデターでなく、正恩自身の権力掌握のための謀略だ。引き続き軍より党が重視されることは、北が今後も経済政策に力を入れることを示している。張の処刑は中国にたてつくことでもあるが、正恩はまず中国の言うことを聞かない姿勢をとることで、中国を修正主義と批判した初期の父親や、ソ連への従属拒否として個人独裁の「主体思想」を作った祖父の手法を継承している。
敵味方が溶解する中東 【2013年12月16日】 サウジとイランの和解にみるように、米イランの暫定協約とともに、中東の各地で、敵味方の関係が溶融し始めている。サウジは、イランだけでなく、イスラエルとの和解も模索している。イランと協約する国際的な動きが、雪崩のように起きている。米国が、敵だったはずのアルカイダ支持へと流されているのも敵味方の溶解の一つだ。そんな中で英国もイランや中国にすり寄り、イスラエルの入植地との取引を英企業に禁じるなど、多極化に迎合する「多極主義の傀儡国」へと転じている。
WTOの希望とTPPの絶望 【2013年12月11
日】 WTOとTPPの会議が同時期に開かれたことが重要だ。中国などBRICSは「バリ会議でWTOが合意に達しない場合、アジア太平洋諸国はWTOをあきらめてTPP交渉に本腰を入れるだろうから、何としてもWTOを合意させねばならない」と考えたはずだ。WTOの合意締結に道を開いた背景にTPPとの競争があった。WTOが多極型の世界運営組織として蘇生したのに対し、TPPは米単独覇権体制だ。対米従属一本槍の日本は、TPPに無条件で賛成せざるを得ないが、TPPに入ると国民経済が悪化する。日本がTPPに入らずにすむには、他の交渉国がTPPよりWTOが良いと考え、米国の無茶な要求に乗らないことが必要だ。中国などBRICSに頑張ってもらうしかない。日本は、逆説的な他力本願の状態にある。
米国にはしごを外されそうな日本 【2013年12月9日】 中国が防空識別圏を設定した直後は、米国が日本を誘って中国との敵対を強め、日米対中国の戦争が近いと感じられる緊張状態だったが、結局のところ、米国は日本の中国敵視策を煽っておいて、日本がその気になり、国会が中国非難を決議した後になって、米国は、中国の識別圏設定を容認する譲歩をめだたないように開始し、日本が米国にはしごを外される懸念が強まっている。
従属のための自立 【2013年12月4日】 米国は、日本に防衛や外交的に自立を求め、自立しないと日米同盟を維持できないと言っている。日本は、しかたなく防衛力強化やNSC設立をやっているが、それらの自立策は、対米従属の維持のためだ。従属を続けるために自立するという、矛盾した策をやらざるを得ないのが近年の日本だ。
頼れなくなる米国との同盟 【2013年12月2日】 サウジアラビアやイスラエルの先例が示すように、対米従属や、逆に米国の戦略を牛耳る略策は、国家戦略としてリスクが高くなっている。リスクを軽減するには、対米従属を国是から外していくしかない。「米国はけしからん」という主張は「対米従属をやめよう」という主張と紙一重の差に見える。しかし右からの米国批判は、出てもすぐ消える。日本の右派は戦後ずっと米国の傘下の反共産主義の道具であり、マスコミも対米従属を固持する官僚機構の配下にあるからだ。米国が「お上」の地位にある限り、官僚は「米国の意を受けて動く人々」として政治家(国会)より上位にある。
米国が中国を怒らせるほどドルが危なくなる 【2013年11月28日】 米国債の観点で見ると、米国が一線を越えて中国を敵視するのは米国の国益に反する。米国が、日本のために自国の覇権を崩しても、中国敵視を続けるとは考えられない。日米と中国の対立は、軍事問題としてのみ語られているが、その行方にとって決定的なのは軍事でなく、米国債や金融相場、経常収支などに象徴される経済だ。
世界経済の構造転換 【2013年11月22日】 ドルと米国債の崩壊に象徴される通貨の多極化は先のことになりそうだが、その前にいくつもの分野で、世界の体制が多極型に転換しつつある。その一つは貿易の分野だ。米欧のやり方と利害を途上諸国に押しつけるために始まったWTOのドーハラウンドは、12年経って、途上諸国の利害を先進諸国に押しつける体制に衣替えして結実しそうだ。世界システムの主導権が米国から中国などBRICSに移ってしまう動きは、地球温暖化対策に関しても起きている。
見えてきた中東の新秩序 【2013年11月19日】 独裁と混乱が続いたエジプトが、米国の傘下を離れ、ロシア外相が訪問したとたん、安定化に向けて動き出した。パレスチナ和平も、米国が何十年も仲介してうまくいかなかったが、フランスが仲介しにきたとたん、ネタニヤフがこれまで考えられなかった首脳の相互訪問を提案した。ロシアやフランスが、特に外交上手なわけではない。米国が下手糞すぎた。米国の中枢が、自国の覇権をこっそり自滅させたい隠れ多極主義であると思われるゆえんだ。これまでの米国の覇権体制下より、きたるべき多極型の世界体制の方が、世界は安定すると予測できる。
イラン核交渉の進展 【2013年11月18日】 イランと米国の協約を妨害したフランスは、イスラエルが孤立して米欧を巻き込んでイランに自滅的な戦争を仕掛けるのを防ぎ、イスラエルとイランとの和解や、イスラエルの側に立ってパレスチナ和平を仲裁する役割をやろうとしている。これまでイスラエルの庇護者だった米国は、今回のイランと協約の流れの中で、イスラエルと対立するようになっている。米国から外されたイスラエルは、孤立して何をやり出すかわからない。ロシアや中国はイランの側に立っているので、イランを敵視するイスラエルの側に立てない。だからフランスがあえてイスラエルの側に立ち、なだめる役を始めたのだろう。
金融相場と実体経済の乖離 【2013年11月12日】 金利をゼロにして市場に過剰に資金を供給し、金融相場の上昇をあおると、投資家が儲かって消費が増え、実体経済が改善され景気が回復するはず、というのが連銀のバーナンキの理論だ。だが実際には、投資家が儲かっても貧富格差が拡大するばかりで、経済全体の消費増につながらない。ゼロ金利の永続は金融バブル拡大の永続を意味するが、バブルの拡大を永続することはできない。どこかで金融崩壊が起きる。日本でも、日本国債市場は日銀がほとんど唯一の買い手だ。
飢餓が広がる米国 【2013年11月11日】 11月1日から、米政府の貧困救済策であるフードスタンプの予算を削減した。米国では近年、実質的な失業者の急増が続き、フードスタンプの利用者が、リーマン危機直後の08年の3千万人から、今は5千万人弱まで増えた。フードスタンプに頼る人が増える中、減額で足りなくなった食料をほかで補おうとする人が、民間の貧困救済所に早朝から長蛇の列を作っている。米国では、飢餓がしだいに深刻な社会問題になりつつある。
中国包囲網のほころび 【2013年11月6日】 フィリピン政府が米政府に軍事駐留の強化を依頼しても、米軍は当初決めた海兵隊の巡回駐留を超えるプレゼンスの拡大をしなかった。アキノ政権は、米国の軍事協調強化が口だけであるとの苛立ちを強めた。行き詰まり解消のため、今年10月にオバマ大統領の訪比が計画された。しかし、米議会との対立による米政府閉鎖に対応するため、オバマは訪比を直前にとりやめ、比側の不満は解消されなかった。米国のやる気のなさをみて、アキノは再び中国に対する姿勢を緩和した・・・
しだいに多極化する世界 【2013年11月1日】 軍事の分野でも、米国の力は、静かに自滅的に削がれている。軍事で最も重要な分野は、兵器開発よりも、諜報の技能である。今の諜報の中心は人的スパイ行為でなく、米国の「NSA」がやっている信号傍受、通信の盗み見などの信号諜報だ。元NSAのエドワード・スノーデンによる連続暴露で、NSAが世界中の人々の私的な通信を盗み見していることが国際問題になり、怒ったドイツやブラジルが国連などで通信の盗み見を禁止する国際体制作りに動き出している。中国とロシアも、NSAを抑止した後の世界の通信管理体制の構想を、国連に提出した。これらの動きは、米国の軍事力の根幹に位置するNSAの信号諜報の力を劇的に低下させかねない。
NSAメルケル盗聴事件の意味 【2013年10月29日】 米国の諜報機関NSAがメルケルら親米諸国の要人の電話を盗聴していたことが発覚した事件では、米国から盗聴されたりネット攻撃されたりする被害者である点で、EUと、ブラジルや中国といったBRICSが同じ立場にいる。メルケルの電話が盗聴されていたことが発覚した直後、ドイツは国連総会で、ブラジルと一緒に、米国の国際盗聴を禁じる決議を提案した。ドイツやEUが、米国を敵視・抑制する政策をBRICSと一緒に提案したのは始めてであり、BRICSを中心とする多極型世界にEUが参加した初の例として画期的だ。
米国を見限ったサウジアラビア 【2013年10月24日】 サウジの米国離れを考える際に重要なことは、サウジが米国から離れること自体でない。米国から離反しても、米国以外に組む相手がいなければ、いずれ米国頼みに戻らざるを得ない。しかしもし、米国以外の諸大国が台頭し、米国覇権に対抗できる新たな世界体制を組む流れがあり、サウジが米国を見捨ててその新世界秩序に便乗する新戦略を打ち出したのであれば、それは米国の覇権にとって大きな脅威になる。サウジの米国離れが、真に大々的なものであるなら、サウジはドル以外の主要通貨による原油決済を増やし、石油収入を米国以外のところに投資する傾向を強めるだろう。これは、ドルや米国債の基軸性を喪失させ、米国の覇権低下に拍車をかける。
中国主導になる世界の原子力産業 【2013年10月22日】 英国政府は最近まで、チベットのダライラマと公然と仲良くし、中国政府を意図的に怒らせる包囲網戦略を採っていた。しかし、米国の自滅的な財政破綻騒動などで米国の覇権衰退が如実になったため、英国は転換を余儀なくされ、自国を中国原発産業のショーケースにしたり、英中の原子力産業の一体化を模索したりして、中国との戦略提携に熱心になった。英国は、これまで中国を敵視してきただけに、仲良くしてもらうために大胆な策をやっている。
延命するほど膨張するバブル 【2013年10月19日】 政治や財政だけでなく、金融相場も洗脳的な「上昇=善、下落=悪」の図式が喧伝され、それが相場をつり上げている。金融市場は、ドルや金融商品の価値が歪曲報道に支えられる「プロパガンダ本位制」になっている。米国の平均株価が最高値を更新し、金融界は5年前のリーマンショックの後遺症を脱したかに見える。しかし実のところ、リーマン危機前と同じバブルを再膨張させて生きながらえているにすぎない。財政危機が先送りされ、バブルの拡大が長引くほど、破綻したときの被害が大きくなる。
米覇権自壊の瀬戸際(2) 【2013年10月16日】 米政府の国庫が空になる10月17日以降、オバマ政権は、デフォルト発生を看過せず、議会を無視して勝手に米国債を発行するか、議会の立法を経ずに増税するか、議会の予算審議を経ずに政府支出を大幅に削るか、議会を無視する違法な3つの選択肢の一つを採るだろう。いずれの議会無視も、合衆国憲法を無視することであり、議会と大統領の間で激しい政争が起きる。デフォルトが「突然死」にたとえられるのに対し、米政府の支出大削減による不況再燃は、もう少し緩慢な「病死」だ。
米国覇権自壊の瀬戸際 【2013年10月15日】 米国で「誤算によるデフォルト」が語られている。それは共和党内で「デフォルトは小さな政府を実現できるので歓迎だ」という茶会派が席巻しているのに、オバマが「共和党はデフォルト直前に全面譲歩する」と考えて突っ走ることをさしている。
米財政危機で進む多極化 【2013年10月9日】 政府閉鎖や、財政赤字上限の引き上げ拒否が、必ずデフォルトにつながるとは限らない。しかし、デフォルトしそうだということで債券の買い控えが広がり、債券市場の凍結が再発すると、それ自体がリーマン危機の再来で、米国中心の現代世界システムの崩壊を加速する。BRICSはドルに代わって自国通貨で貿易決済するシステムを作っているが、ドルと米国債の信用失墜が実際に起きたとき、それで代替しきれるかどうかわからない。しかし長期的に見て、ドルと米国債の崩壊が、多極型体制への移行につながることは、ほぼ間違いない。
米国金融財政、嵐の前の静けさ 【2013年10月7日】 米国の政府閉鎖は、議会での進展が何もなく、報道も騒がないまま政府閉鎖が1週間をすぎ、惰性で2週目もすぎそうだ。米政府の国庫が尽きる10月17日の後、金融市場が不安に駆られ、市場が混乱し始めてから、ようやく米議会が交渉し始めるのかもしれない。オバマケアが交渉の条件である限り、2大政党間の妥結はない。政治混乱は、金融市場の混乱へと拡大する。相場が平静で、報道も少ない現状は「嵐の前の静けさ」といえる。
米国債がデフォルトしそう 【2013年10月3日】 共和党でオバマとの財政対決を先導している茶会派は、小さな政府を希求する人々で、連邦政府の閉鎖は願ってもないことだ。貧困層が窮乏する荒治療ではあるが、米国民が、連邦政府なしでもやっていけることを体感できるまたとないチャンスなので、むしろ政府閉鎖が長期化した方がよいという考えが、茶会派の中にある。米国債のデフォルトも、デフォルトしたらそれ以上財政赤字を作れず、小さな政府を作らざるを得なくなるので好都合だと、茶会派は思っている。
中東政治の大転換 【2013年9月30日】 1989年の米ソ和解や72年の米中和解に匹敵する、地政学的な戦略の大転換が、米国とイランの和解によって起きている。今回の米イラン和解は、米ソ和解や米中和解と同様、敵対から和解への大転換に関する「正史」的な説明がないまま、人々がなかば放心状態で見守る中、進行している。不自然なシリア空爆騒動を契機に、多極型世界体制の重鎮であるロシアの台頭が誘発され、さらに、米国の覇権を崩したがっているイランが、米国によって、国際社会の敵から味方へと転換されつつある。
米国債利払い停止危機再び 【2013年9月28日】 共和党内には、金融界や軍産複合体といった資本家系の勢力と別に、草の根のリバタリアンなど、肥大化し、権限を持ちすぎている連邦政府を嫌い、小さな政府を本気で推進したがっている勢力がいる。彼らは、あえて米国債をデフォルトさせた方が、米政府の安直な肥大化を可能にする財政赤字の拡大が不可能になり、強制的に小さな政府を作れるので好都合だと考えている。米国債がデフォルトしたら保険金が支払われる保険であるCDSの価格(保険料)が1週間で6倍にはね上がった。
イランを再受容した国際社会 【2013年9月25日】 オバマはシリア空爆騒動で窮してロシアに頼り、シリア問題を解決するために、シリアに影響力を持つイランを許さざるを得なくなった。ロハニの国連総会出席を機に、イランは30年ぶりに突如、国際社会に再受容されることになった。米国は、ロシアやイランの主張を受け入れざるを得ず、シリアとイランだけでなく、同時にイスラエルの化学兵器と核兵器も廃棄されることになりそうだ。
米連銀はQEをやめる、やめない、やめる、やめない 【2013年9月19日】 行き詰まり状態の中で連銀が採っていると思われるのは「QEをやめると言いつつやめない」もしくは「やめる、やめない」を繰り返す戦略だ。連銀は、QEについて「やめる」「やめない」の発言を繰り返した後、理事会でQE続行を決めたとたん、株や債券の相場が急騰した。米国債の危ない状態はとりあえず去った。連銀が「やめる、やめない」を繰り返さなかったら、今ごろ株や債券の相場はもっと悪かっただろう。
プーチンが米国とイランを和解させる? 【2013年9月17日】 オバマのシリア空爆策を裏の思惑のない、まっとうな戦略と考えると、あまりに稚拙な策である。これだけやり方が稚拙だと、シリア空爆策に裏の意図があったのでないかと考えてみる必要が出てくる。そして、シリア内戦の外交解決の流れを生んだロシアのプーチン大統領は、次にイラン核問題を外交策で解決しようと動き出している。米イランの歩み寄りは、プーチンの外交策と同期している。
シリア空爆策の崩壊 【2013年9月13日】 オバマはロシア提案を受け「うまくいくか疑問だが、外交で解決を試みるのは良い」という面子保持の発言をしつつ、米議会に対し、ロシアにやらせてみたいので空爆案の票決をしばらく延期してくれと要請した。このまま票決していたら、議会下院は空爆案を否決しただろうから、オバマはプーチンに助けられた。ロシア案には、国連やアラブ連盟、EUも賛成しており、シリア空爆が挙行される可能性は大きく減っている。ロシア案は、米国の面子を潰さずに、米国がシリア政府に化学兵器使用の濡れ衣をかけた問題を解決しようとしている。
シリア空爆騒動とイスラエル 【2013年9月5日】 シリア空爆は、米国、サウジ、イスラエルのいずれの国益にもならない。イラン、ロシア、中国など、米国覇権外の国々を有利にするもので「隠れ多極主義」的だ。オバマを引っかけた米中枢の勢力は、イラク侵攻を起こしたネオコンとつながった勢力であろう。共和党の好戦派は、地上軍侵攻を選択肢に入れ、シリアに本気で侵攻するなら空爆に賛成するとに言っている。彼らはシリア侵攻をイラクの二の舞の泥沼化にしたい。オバマをブッシュにしたい。彼らのような動きが、隠れ多極主義である。米軍内部でシリア空爆に反対する声が強まっている。反乱やクーデターが起きる可能性もある。
米英覇権を自滅させるシリア空爆騒動 【2013年9月3日】 米議会がシリア空爆案を可決すれば、米国は再び中東の戦争にはまり込み、軍事力を浪費し、何十万人も無辜の市民を殺しつつ、軍事面から信用を失墜していく。空爆案が否決されれば、米国は国際政治の面から信用を失墜していく。オバマのシリア空爆策は、米国史上最大の外交の失敗だと指摘されている。米国が、過剰に下手くそな国際戦略によって、自滅的に覇権を失墜し、横から立て直し策を試みる英国を邪険にしたり、引っかけて失敗させたりして、返す刀でロシアや中国の台頭を誘発するのは、ベトナム戦争、イラク侵攻、アフガニスタン占領など、戦後の米国の多くの策に共通している。
シリア空爆騒動:イラク侵攻の下手な繰り返し 【2013年8月30日】 米当局は、イラク侵攻のころから諜報分析に歪曲を入れたがる。イスラエルから報告を受けた米当局は「シリア軍の最上層部は化学兵器の使用を知らなかったが、化学兵器を管理する担当部局が勝手に使用したに違いない」という推論をひねり出した。「アサド自身は化学兵器を使う気がなかったが、部下の軍人が勝手に化学兵器を使った。それでも責任はアサドにあり、シリアは空爆されねばならない」という理屈だ。米国では、諜報やプロパガンダの機能が(意図的に?)下手くそに過激に運営され、国際信用が失墜し、覇権が崩れている。
無実のシリアを空爆する 【2013年8月28日】 もし化学兵器使用の犯人がシリア政府軍であるなら、国連調査団をさっさと現地に行かせて米国に帰国させ、国連総会で真相を発表させれば良い。それをせず逆に、調査団の帰国を遅らせ、妨害しているのは米政府自身なのに、アサドが妨害しているんだとマスコミに歪曲報道させている。真相は、化学兵器を使ったのが反政府勢力だということだろう。それが国際的に暴露されると、米英が支援してきた反政府勢力の信用失墜と崩壊が進み、アサド政権が内戦に勝ってしまい、ロシアの言いなりでアサド続投を認知する国際会議をやらねばならなくなる。
サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変 【2013年8月23日】 イスラエルがパレスチナ問題を解決したいならサウジアラビアと話をつけねばならない。イスラエルは、パレスチナ国家の創設を認めるから、アラブ諸国がイスラエルとの関係を敵視から協調に転換するよう誘導してくれとサウジに頼み、サウジは、その件を了解するから、代わりに米欧のプロパガンダをいじってエジプトのクーデターを支持するように誘導してくれとイスラエルに頼んだのでないか。
終戦記念日に考える 【2013年8月16日】戦前の日本は、どこの国にも従属していなかった。敗戦は日米の国力差から見て仕方がなく、敗戦直後の対米従属もやむを得ないことと考えられるが、米国が日本に自立した防衛力を持つよう促した1970年代以降も、日本が官僚独裁を維持するために対米従属を続け、日本人が世界のことに無知な状態に(意図的に)しているのは、明らかに国益を損ね、日本人の精神をねじ曲げている。日本の対米従属は、自主独立を好む米国の精神にも反する。戦没者たちは、自国が対米従属の国になったことをあの世で嘆いているだろう。首相が英霊に謝罪するとしたら、それはまず自国が卑屈な対米従属を続けていることに関してだろう。
国際情勢の夏休み 【2013年8月14日】イランの大統領がアハマディネジャドからロハニに代わった。アハマディネジャドは過激な言い方を得意とし、発展途上諸国の反米主義の国際運動を率いる存在だったが、ロハニはもっと現実的で穏健なやり方を好む人とされる。アハマディネジャドは、今年3月に死去した南米ベネズエラのチャベス前大統領と親しく、2人は途上諸国(非同盟諸国)の反米国際運動を率いていた。この2人が去ったことで、途上諸国の反米運動を率いる国際的な政治家がいなくなる。運動が下火になるかもしれない。
貿易協定と国家統合 【2013年8月12日】 非関税分野の貿易協定は、国家統合に近いものになる。米欧FTAは米国とEUが対等な関係で国家統合的だが、TPPは米国が他のアジア太平洋の中小国を「植民地化」する感じだ。米国はグアム、プエルトリコ、サモアなど、植民地的な準州の島々を持っている。それを経済分野に限定して拡大したのがTPPだ。米国は1990年代、カナダ、メキシコと国家統合していくNAFTAを計画したが、あれの小規模な焼き直しがTPPだともいえる。日本のTPP参加は、日本という経済大国が、グアムのような小さな存在(もしくはメキシコという荒れた存在)にまで自国を矮小化・弱体化していく行為だ。日本の「自己矮小化」「自己弱体化」の戦略は、対米従属のためである。
テロ対策への不信 【2013年8月10日】米議会では「NSAは諜報部会の議員に対しても、基本的な情報すら開示しない」「スノーデンが暴露したNSAの盗み見政策の存在すら、米議会は、新聞に出るまで知らなかった」といった不満が増大している。米政府のテロ対策への信用は落ちている。しかしその一方で、NSAが本来の諜報の対象としている「アルカイダ」の力が、リビアやシリアなどで増している。米国のテロ対策の構図は自滅的だ。
中東和平再開とともに不穏になる世界 【2013年8月6日】イスラエルは、中東和平の推進に失敗すると、米国を無理に引き留めておかねばならず、中東で大規模な戦争を誘発せざるを得ない事態に近づく。中東大戦争は、イランやアラブ諸国だけでなく、イスラエル自身を破壊する。イスラエルは核兵器を使うだろう。勝者が繁栄を得る戦争でなく、参戦する多くの国が破滅し、米国の財政を圧迫し覇権崩壊も早める。最終的に漁夫の利を得るのは、中露など新興諸国だろう。
行きつ戻りつの世界情勢 【2013年7月31日】 世界には、米国の覇権が崩壊するのを嫌がっている国が多い。EUやBRICSは大国だが、米国の覇権の一部を肩代わりするほど強気ではない。米国の側では、投機筋がEUでユーロ危機を起こしたり、BRICSに資金を流入させた後で流出させて金融危機を誘発するなど「金融兵器」で多極化を妨害している。世界は、長期的に多極化に向かっていると考えられるが、短期的・中期的には、全体的に行きつ戻りつの状態が続いている。
中東和平交渉の再開 【2013年7月29日】 かつて米国覇権が強かった時代、イスラエルの国策は、和平するふりをしつつ恒久的に引き延ばすことだった。今は正反対で、少なくともネタニヤフ政権は、和平を真剣に考えている。和平しないとイスラエルが国家存亡の危機から抜けられないことから考えて、私は、意外と交渉が進展するのでないかと予測しているが、これは楽観的すぎるかもしれない。
減速する中国経済 【2013年7月26日】 リーマン危機後、先進諸国経済が低迷する中で、中国経済は世界経済の牽引役となっている。中国の経済成長が大きく減速すると、世界経済の成長が半減するなど、大きな影響が出る。中国は、石炭と鉄鉱石に関して世界の総需要の約半分を、銅など金属類に関して3-4割を消費しており、減速はオーストラリアやカナダなど資源輸出国の経済が打撃を受ける。米欧日の製造業大手の多くは利益が減る。経済成長を国民に約束している安倍政権も、中国が減速すると約束の達成が難しくなる。日本は政治面で対米従属策の一環として中国を敵視する一方で、経済面で中国に頼っている。
米雇用統計の粉飾 【2013年7月22日】 米国の中小企業がフルタイムを減らしてパートに替えたくなる健康保険の規定をオバマ政権が打ち出した結果、パートが急増している。オバマ政権は、米国民と国際社会から、米経済を早く回復させろと圧力をかけられている。そして、米経済の回復を示す最も重要な数字が雇用統計だ。オバマ政権は、健康保険制度の改革という名目の裏で、雇用統計をうわべだけ実態より良く見せるフルタイムからパートへの転換を誘発し、雇用が回復しているのでオバマの経済政策は正しいという話にしている。
さらに弱くなる日本 【2013年7月20日】 経済大国となった日本が強い財政を持っていると、日本が米国より健全になり、日本が米国の下位に居続ける日本の対米従属の国是が維持できなくなる。だから日本の官僚機構は、無意味な公共事業の大盤振る舞いや、90年代の不動産金融バブル崩壊の悪影響を長引かせて「失われた20年」を演出し、日本の財政や金融の体質を意図的に弱くしてきた。日本政府が10年以上先の財政赤字の予測を出さず、赤字が減りにくい状態を作っているのは納得できる。
中東不安定化を狙って誘発されたエジプト転覆 【2013年7月18日】 中東では米国覇権が低下するとともにエジプト、トルコ、イランの地元3大国の国際影響力が増していた。今回、エジプトの政権転覆と、今後予測される内戦的な混乱で、地元3大国のうち、エジプトが国際的に使いものにならなくなる。今回のエジプトの政権転覆には、米国の影響力低下後の中東における安定を崩そうとする意図と、イスラエルの国家存続を危うくしようとする意図が見える。
迷走する米連銀 【2013年7月12日】 米連銀のバーナンキ議長が講演で「まだQEを続けることが必要だ」と表明した。QEが終わりに向かっていると考えて債券を買い控えていた投資家たちは、QEの続行が表明されたことを好感し、10年もの米国債の金利が2・7%台から2・5%に下落した。しかし市場には、1ヶ月かけて連銀が解消してきた「バーナンキはQEを縮小するのか続けるのか。どちらなのか」という不透明感が、再び拡大してしまった。今後いずれ、また国債金利が危険水域の3%超に向かって上昇しかねない。
裏読みが必要な各地の反政府運動 【2013年7月3日】 ブラジルの反政府運動は、エジプトやトルコの運動と意味が異なる。エジプトとトルコでは、イスラム主義の与党勢力に対し、選挙で勝てないリベラル派や旧体制の人々が、反政府運動による政権転覆をめざし、反イスラム的な欧米系の国際マスコミが反政府運動を美化して報じた。ブラジルの反政府運動は、このような政治闘争の構図でなく、もっと「官制デモ」に近い。
トルコ反政府運動の意図と今後 【2013年7月1日】 トルコ国内でも、アジア側のアナトリアには、エルドアンが進めるイスラム主義化に賛成の人が多い。イスタンブールでなく、アナトリアの人々が、トルコの多数派であり、エルドアンは彼らの得票によって3選されている。イスタンブールでエルドアンに下野を求める人々は、選挙でエルドアンを下野させることができないので、都市開発反対、都会の緑を守れ的な脇筋の運動にまぶしてエルドアンを批判している。
悲劇から喜劇への米国の中東支配 【2013年6月25日】 ブッシュ政権は、大量破壊兵器を持っていないイラクに本気で侵攻してしまい、米国の軍事財政力や国際信用を浪費する、米国にとっての悲劇を挙行した。オバマ政権は、大量破壊兵器(化学兵器)の使用者を(間抜けにも、もしくは意図的に?)取り違え、シリアに侵攻するようなことを言いつつ実はせず、米国の国際信用をますます落としている(財政力はすでに落ち、軍事力はこれ以上使いたくない)。しかも米国のライバルであるプーチンのロシアが、米国よりも正しくて国際政治力が強いことが示されてしまった。
金融大崩壊がおきる(3) 【2013年6月21日】 バーナンキはQE3を終わらせる道筋をつけたが、彼自身が連銀議長としてQE3の終わりを見届けることは、多分ない。バーナンキの任期は来年1月末までだ。オバマ大統領は先日「バーナンキは連銀議長を十分に長くやった」と述べ、バーナンキに再任を求めず辞めさせることを示唆した。バーナンキは、金融崩壊につながりかねないQE3の終了を、自分でやる見通しもないのに、あとは野となれ山となれという感じで、勝手に「来年半ばにQEをやめる」と表明してしまった。
全人類の個人情報をネットで把握する米軍諜報部 【2013年6月17日】 米軍の信号諜報機関NSAは、プリズム(PRISM)というコンピュータのツールを使って9社のサーバーに入り込み、サーバー内にユーザーが蓄積した情報(メール、検索履歴、通信記録、画像、動画、その他のファイル)を検索して選び出し、取り出している。対象となる9社はグーグル、アップル、マイクロソフト、ヤフー、フェイスブック、スカイプ、ユーチューブ、AOL、パルトークで、07年から順次拡大されており、今後ドロップボックスも対象となる予定だ。
ビルダーバーグとグーグル 【2013年6月14日】 ビルダーバーグの今年の開催地となった英国の「グローブホテル」は、グーグルが07年から毎年「ツァイトガイスト会議」を開いているホテルでもある。今年のツァイトガイストは、ビルダーバーグが開かれる直前の日程で開かれており、両会議は参加者がかなり重複している。グーグルのシュミット会長は、ビルダーバーグの常連参加者だ。グーグルは、ツァイトガイストとビルダーバーグを合体させようとしており、今年はその元年という感じだ。
米中首脳会談と日本 【2013年6月12日】 米中首脳会談を機に、米国は、中国包囲網策でアジア諸国からせびるよりも、中国と協調して中国に世界運営の負担の一部を背負ってもらうことによる利得を重視する方に向かいそうだ。折しも中国政府は、中国国内の消費市場を拡大し、これまでの輸出主導型の経済を内需主導型に転換しようとしている。米企業が中国市場で拡販するには、米政府が中国を敵視するより、中国と協調した方が都合が良い。米国は、大企業や金融界が国策を決める。オバマ政権が、中国を敵でなく味方と見始めたのは自然な動きだ。
金融大崩壊がおきる(2) 【2013年6月10日】 米国の大手金融機関が、サブプライム危機で住宅価格が急落したまま回復していない全米各地の住宅街の住宅を、何千軒という単位で買い取って地主・家主となることで、米国の住宅相場を押し上げ、債券市場の崩壊を防いでいる。住宅を買う人が少ないからといって、金融機関自身が住宅を大量購入するのは危険だ。米金融界自身のリスクが高まっている。
米国と肩を並べていく中国 【2013年6月6日】 これまで中国は米国からの非難に沈黙しがちだったが、習近平政権になってから、米国からの非難に黙らず「返礼」するようになった。米国は、ブッシュ政権時代に「米中G2で世界を管理していこう」と、中国にG2構想を持ちかけたが、胡錦涛に断られた。しかし今、習近平は米中関係を「新たな大国間の関係」と位置づけ、G2を容認する姿勢だ。かつてG2構想を胡錦涛に断られた米国は、習近平の「返礼」にひそかに喜んでいる。
アサドが巻き返すシリア 【2013年6月3日】 米政府はシリア問題について、シリアの安定よりも、アサド政権の転覆が目標だと公言している。しかし、アサドと戦っている反政府勢力は軍事的に退却し、政治的に分裂し、テロリストの本性を露呈して国際信用を失っている。米欧が軍事的にアサドを倒そうにも、ロシアによる兵器供給で、飛行禁止区域すら設定できない。米欧によるシリア軍事介入の可能性は大きく減った。シリア内戦は、3カ月ほど前まで、いずれアサドが倒れると予測されたが、最近になって、アサド政権が維持され、反政府勢力の方が負ける可能性が急に高まっている。
遺伝子組み替えの政治懸念 【2013年6月1日】 私が懸念するのは、モンサントの「悪さ」よりも、日本の米国からの圧力への弱さだ。これまで日本の農水省は、国内の農業など一次産業を守るため、今回の輸入禁止や狂牛病のときのように、米国産の農産物に懸念があるときは、米国の業界や政府筋から神経質すぎると非難されても無視して輸入禁止の措置を採ってきた。しかし昨年後半以来、特に安倍政権になってからの日本は、日米同盟の維持を最優先にして、米国から政治圧力を受けると、国内産業の打撃や地元の反対などを無視して、米国側の言いなりになる傾向だ。日銀がつぶされたように、農水省もつぶされかねない。日本の食を守るには百姓一揆のパワーが必要だ。
地球温暖化は政治と投機の問題 【2013年5月30日】 習近平政権は、国内の新戦略として二酸化炭素の排出削減を打ち出して「中国が削減しない限りわが国も」と言っている米日加などを黙らせ、BRICSに有利な温暖化対策を国際的に定着させようとしている。中国がもたもたしていると、EUの排出権市場の崩壊やカナダの離脱などで、せっかく中国などが乗っ取った温暖化対策の国際体制が崩れてしまう。中国は、国際的で大規模な詐欺の構図に意図的に乗ることをいとわず、むしろ国際詐欺の構図を活用して儲けようとする傾向がある。二酸化炭素と温暖化が関係なくても、排出権市場が作られ、相場が上下し、当局に近い筋の人々が儲けられればそれで良い。
日米で金融バブル崩壊のおそれ 【2013年5月28日】 米連銀のバーナンキがQE3縮小の可能性を述べたことは、日本の金融を混乱させたが、米国では債券(MBS)市場の下落を引き起こした。MBS市場はその後も再上昇していない。米MBSも日本国債もかなり不安定になっており、今後また何らかの悪いきっかけによって、日米両方で債券金融システムの崩壊が起こりうる。
中国の影響力拡大 【2013年5月27日】 中国の基本姿勢は、インドとの関係を敵視から協調に変えることだ。米国は、アフガン撤退や軍事費削減で、世界に対する関与を縮小している。インドの戦略として、中国と関係改善できるときにしておいた方がいいはずだ。李克強の訪印は、またとない機会だった。商人の民族である中国は、ぎりぎりになって李克強訪印の値段をつり上げてきた。それが、ラダックでの中国軍の越境居座りだった。居座りをやめてほしければ、以前から求めてきた国境地帯の軍事施設撤去をやってほしいものですな、と中国側が求め、インドは要求をのんだ。
タックスヘイブン潰しと多極化 【2013年5月25日】 G7が規制することを決めたタックスヘイブンは、英米系の投機筋が、最近のユーロ危機や、90年代のアジア通貨危機を起こす際に活用した「金融兵器」だ。タックスヘイブンが規制され、匿名性がはがされると、誰が金融危機を誘発したかわかってしまうので投機資金として使えず、金融兵器としての機能が失われる。これにより、EUや中国、ロシア、BRICSなど、米英の覇権に従わない勢力が、英米から金融攻撃されにくくなる。タックスヘイブン潰しは、世界が米英覇権から多極型覇権に転換するのを加速しそうだ。
金融大崩壊がおきる 【2013年5月20日】 マスコミは当局による市場や指標への操作を報じず、景気が自然に回復しつつあると歪曲報道大している。連銀もマスコミも、金融システム延命のため事態を歪曲しているうちに自らの信用が失われ、最後には延命策が効かなくなって金融危機が再発するだろう。サブプライム危機の直前まで、民間の金融界が債券を旺盛に買っていた。その民間債券需要が失われて起きたのが前回の金融危機だった。それに比べて今は民間の債券需要が非常に少ない。すでに現時点で、前回の危機の直前よりずっと悪い状況だ。
和平会議に向かうシリア 【2013年5月17日】 シリア和平会議は、シリア内戦でアサド政権が優勢に、反政府勢力が劣勢になる中で行われる。そのため、アサド政権は出席を表明したが、反政府勢力は参加をいやがっている。米国は、反政府勢力を傀儡化しようとして弱体化させた挙げ句、反政府勢力の弱体化が進んだところで和平会議の開催に賛成するという、自滅的なやり方を突き進んでいる。中東政治では、いつものことだ。
日本の核武装と世界の多極化 【2013年5月15日】 日本の上層部(官僚)は「米国が覇権を失って中露が台頭するなら、その前に核武装しよう。いったん核武装すれば誰も廃絶を強要できまい」と思っているのかもしれない。しかし、この考えは甘い。日本は貿易立国だ。核武装を世界から非難され、経済制裁されたら半年も持たない。日本が核武装するとしたら数年後だが、そのころには国連の主導権は中露など非米反米諸国に移り、米国は日本を支持しても国連を動かせなくなっている。
財政破綻したがる日本 【2013年5月13日】 安倍政権が目標のインフレ2%を達成したら国債金利が3%になり、政府は税収の8割を国債利払いにあてねばならない。国民の福祉や教育の予算が急減し、貧困層が急増する。円安が加速し、百円ショップなどの安い輸入商品が値上がりし、インフレは2%に達した後、もっと上がって5%超になりそうだ。大都市圏以外の地方は、政府の財政破綻とともに公共事業が急減し、公務員も減らされて雇用がなくなり、荒廃がひどくなる。TPPで地方経済を支えてきた農業も衰退する。アベノミクスは長期的に見て、日本に大きな悪影響を与え、急速に衰退する日本にとどめの一撃を与える。
大戦争と和平の岐路に立つ中東 【2013年5月7日】 イスラエルが国家存続したければ、米国でなく、ロシアや中国に和平を仲介してもらうしかない。そのような状況下、イスラエルのネタニヤフ首相と、パレスチナのアッバース大統領が、5月5日から同時に中国を訪問している。表向き、2人の訪中は偶然に時期が一致しただけで、両者が中国で会談することはないとされている。しかし、ネタニヤフが中国に向けて出発したのは、イスラエルがシリアを空爆し、シリアが反撃してくるかもしれない重大なタイミングだ。経済が主目的なら、訪中を延期したはずだ。ネタニヤフの訪中の真の目的は、経済よりも緊急で重要な案件と考えるのが自然だ。
北方領土問題はまだまだ解決しない 【2013年5月2日】 今の日本政府は、自国民の生活維持よりも、日米同盟の維持を優先している。TPPや、日銀による円の増刷と国債買い支えは、日本国内を犠牲にして日米同盟(対米従属)を維持する策だ。米国はロシアを敵視しており、今後米露対立が高まるおそれもある。そんな中で日本がロシアと関係改善すると、日米同盟を損なうことになりかねない。日本はロシアとの関係を、短期的に改善するとしても、長期的、根本的に改善する気がない。日本政府は、北方領土問題を解決するわけにいかない。
北朝鮮と世界核廃絶 【2013年4月30日】 米国が北朝鮮敵視を続けた結果、北が自国の核廃絶の交換条件として世界核廃絶を持ち出したことは、軍産複合体に妨害されているオバマの核廃絶構想を北が助ける構図になっている。核武装した北を放置して中国に押しつけているオバマは、自分がやりかけたが軍産複合体に阻止されてできない世界核廃絶を、中国にやらせようとしている。
ボストンテロの自作自演性 【2013年4月26日】 ボストンのマラソン大会で起きた爆弾テロ事件で、米当局が主犯格とみなしたタメルラン・ツァルナエフが、昨年夏、米国の諜報機関CIAが出資する「コーカサス基金」が主催する、ロシアを困らせる目的で北カフカスを不安定化する政治運動のワークショップに参加していたことが明らかになった。ロシアの新聞イズベスチヤが報道した。
金地金の売り切れ 【2013年4月24日】 今のように人々がどんどん金を買い増していくと、どこかの時点で、人々が商社に預けたはずの地金を引き出そうとしても、金地金の在庫が足りない事態となる。この時に初めて深刻な売り切れが露呈する。世界的な「金の取り付け騒ぎ」となる。
ボストン爆弾テロの深層 【2013年4月22日】・・・テロ事件の直後、FBIが(のちに容疑者として指名手配された)タメルラン・ツァルナエフに電話してきて、お前が犯人だ(もしくは「こんなことになったのはお前のせいだ」)と非難した。タメルランは「それはそっち(FBI)の問題でしょ」と、電話をかけてきたFBIに答えたという。これは、英国などのマスコミ各社がロシア在住のタメルランの父親に取材して聞いた話だ。・・・
通貨戦争としての金の暴落 【2013年4月16日】 長期的にみると、金は再び買われるだろう。しかし金が再び買われるようになると、米金融界が債券システムで簡単に作れる資金を使って金先物に巨大な売り爆弾を落として金相場を暴落させる攻撃を再発するかもしれない。金の現物価格が先物で簡単に下落させられる、金にとって無力な価格決定の仕掛けは、今後も変わらない。金に対する通貨戦争はまだ続きそうだ。
世界的バブル崩壊の懸念 【2013年4月13日】 米国以外の投資先が隆々として繁盛していたら、米国から他の投資先に資金が流出し、債券金融バブルが崩壊しかねない事態になるが、他の投資先が次々と壊れていけば、少なくともその間、ドルは安泰だ。ユーロ危機など、米国以外の市場が崩壊するたびに「いちばん安全な投資先はやはり米国債だ」という話が喧伝され、投資金が米国債からジャンク債までの債券金融システムから資金が逃げず、ドルのバブル崩壊が防げる。米金融界は、ドルのバブル崩壊を先送りするため、米国以外の世界中のバブルを崩壊させようとしている。
北朝鮮と世界大戦の危機 【2013年4月11日】 報道を読むと、北朝鮮を発火点に米中が戦争して世界大戦になりかねない感じを受ける。だが、世界的な視野に立つと、世界大戦が起きるとしたら、その可能性は、北朝鮮より、イランとイスラエルなど中東地域の方が高い。米国の著名な分析者の何人もが、これから世界大戦が起きるとしたら、イランなど中東から発生すると予測している。米国の権力筋を動かす政治力で見ても、日韓よりイスラエルの方がはるかに強い。
北朝鮮を扇動する米国 【2013年4月3日】 国連が、北朝鮮と交渉せざるを得ないと言い出している。このことと、国連との連携が強いBRICSが、米国がやり散らかして失敗している国際問題に取り組む姿勢を強めていること、BRICSの中心が中国であることを合わせて考えると、北朝鮮問題の解決に向けた新たな枠組みが立ち上がっていく可能性がある。北朝鮮に対する米国の挑発は、そうした可能性が出てくるのと同じタイミングで行われている。
キプロス金融危機の意味 【2013年4月2日】 キプロスで検討されているような、銀行危機に際して預金を返さず損失の穴埋めをするやり方は、これから増えていく可能性がある。ニュージーランドでは、このやり方が危機対策の一つとして検討されている。リーマン危機が直後に感染して08年に銀行危機に陥ったアイスランドでは、銀行を救済せず国有化したうえで破綻させ、その代わり、アイスランド国民の預金は保護するやり方を採った。日本でも、デフレ脱出のためと称し、円や日本国債を意図的に弱体化する策が続けられており、今は安定している日本の金融界が、国債危機などが起きて不安定化した場合、日本人の預金も安泰でなくなる。
シェールガスのバブル崩壊 【2013年3月25日】 これまで米国のシェールガスについてバラ色の未来が語られてきたが、それは現実に裏打ちされていない。8年経って、しだいに経験量が増えてくると、シェールガスには難点が多いことがわかってきた。その一つは、ガスの産出量の減少が、従来型のガス田よりも、はるかに早いことだ。米国には約30カ所の主要なシェールガス産出地域(プレイ)があるが、多くのガス井は、ガスの産出が始まって3年たつと、産出量が79%から95%減ってしまう。つまり3年でほとんど枯渇してしまう。シェールガス井は寿命が非常に短いので、ガスの産出量を維持するため、一つの産出地域の中で次々と新しいガス井を掘り続け、ガスが出ているガス井群の中の3-5割が毎年交代している状況だ。
揺らぐ経済指標の信頼性 【2013年3月21日】 多くの人々が「経済指標が意図的に操作されることはない」と思っている。「ソ連や中国は経済指標をごまかしたが、市場重視の米欧日でそのようなことはない」「政治はごまかしに満ちているが、経済は厳然たる数字であり、ごまかしがない」という信仰も根強い。だが、市場重視を掲げる米英の覇権体制が弱体化して揺らぎがひどくなる中で、米国などの政府系機関が出す経済指標の中に、状況の悪化を隠すためのごまかしが増える傾向が強まっている。
終わりゆく原子力発電 【2013年3月14日】 今回の米NRCの決定で、私が驚いたのは、このように米国と世界の原発の将来に大きな影響を与えそうなカルバートクリフス3号機の建設却下の決定を、世界中が「フクシマの2周年だ」「原発は危ないよな」と思い出している3月11日のタイミングに、わざわざ選んで行ったことだ。建設申請に対するNRCの検討は、何年にもわたって行われ、決定を出すのを1-2週間ずらすことは簡単だった。オバマ政権の公式な姿勢は原発推進だが、それが政権の本音でもあるなら、NRCが311の日取りを選んで30年ぶりの原発建設申請を却下するはずがない。やはりオバマ政権の本音的な戦略は、原発廃止だろう。
世界の転換を止める北朝鮮 【2013年3月12日】 オバマが世界核廃絶の道筋をつけられないまま米国の覇権が衰退すると、北朝鮮やその他の国々の新たな核武装を誰も止められなくなり、核不拡散のたががはずれ、日韓を含め、より多くの国々が核武装したがるようになる。北朝鮮は、世界を不安定化する核拡散の先鞭をつけることになるかもしれない。
世界を変える米財政危機(2) 【2013年3月9日】 イスラエルのバラク国防相がAIPAC年次総会で「中東諸国間の集団安全保障体制」を提案したことは画期的だ。米国を牛耳って自国好みの中東戦略をやらせ、フセインのイラクのように脅威となる他の中東諸国を米国に潰させるのが、これまでイスラエルの無敵の安保戦略だった。しかし今、米国はイラクからもアフガンからも撤退し、軍事費を減らし始め、中東での影響力を失うことを容認し、イラン敵視を解こうとしている。イスラエルは米国に頼れなくなり、独力でイスラム世界と対峙するか、直接交渉で集団安保体制を構築するしかない。バラクの提案は悲壮なものだった。
世界を変える米財政危機 【2013年3月7日】 グアムやハワイなど米国傘下の西太平洋に展開する米軍は、軍事費だけでなく、それ以外のすそ野的な費用を必要としている。米政府が島々のインフラ整備や行政費の一部負担、基地や役所における島民の雇用確保など、経済面で島民の生活を米政府が保障することで、米軍の駐留が成り立っている。米政府の歳出一律削減によって「中国包囲網」として米軍が駐留する西太平洋の島々の経済が打撃を受け、包囲網が脆弱になる。米国の財政緊縮は、オバマのアジア重視策と矛盾する事態になっている。
米歳出一律削減の危険 【2013年2月28日】 米国では今後、軍事費の削減だけでなく、軍事費削減を理由とした、世界からの軍事的・政治的な撤退が強まりそうだ。国際問題を軍事でなく外交で解決すべきだと主張し、オバマから次期次期国防長官に指名されたチャック・ヘーゲル元上院議員が、2月27日に米上院でようやく人事承認された。軍産複合体やイスラエル右派系の議員らがヘーゲルの国防長官就任に強く反対したが、就任を阻止できなかった。この件と、3月1日からの軍事費を含む一律削減策を合わせて考えると、今後米国が進みそうな方向が見えてくる。
崩れ出す中央銀行ネットワーク 【2013年2月27日】 英国の中央銀行は、米連銀の危険な量的緩和策についていけなくなり、米英の中央銀行が別々の道を進みだした。その直後、ムーディーズが英国を格下げし、英国は35年ぶりに最優良格から下落し始めた。これは、ブレトンウッズ会議以来の米英経済覇権体制の中枢が崩れ出したことを意味している。
世界体制転換の渦・経済編 【2013年2月21日】 通貨戦争はおそらく、日本など各国が弱くなるドルに合わせて自国通貨を切り下げる競争をする前半部分と、中国やEUが経済体制的に米国を見限ってドルが基軸性を失う後半部分という2つの戦局から成り立っている。前半戦において、中国は後方に立っているだけの端役だ。この戦争が全体として何年間続き、いつから後半戦に入るのか、今のところ見えない。
世界体制転換の流れの渦 【2013年2月19日】 米国の覇権が崩れつつある中、米政府が財政や国力を立て直すには、世界からの軍事撤退やロシアとの核軍縮が必要で、軍産複合体の影響力は減じる。イスラエルはパレスチナ国家を作らないと行き詰る。イスラム世界は傀儡状態から脱していく。北朝鮮は中国の傘下に入る。米国の弱体化で日本は対米従属を続けられなくなる。そうした方向性そのものは、すでに何年も前から感じられ、私はその流れの記事を何十本と書いてきた。しかし現実の事態は、渦巻き状、もしくは行きつ戻りつの不明瞭な軌跡で、裏表のある不明瞭な状態でしか進んでいない。
北朝鮮の核実験がもたらすもの 【2013年2月13日】 これまで核実験やロケット発射を繰り返す北朝鮮を止める主導役は、米国だった。米国は北を動かす手綱を持っておらず、03年に6カ国協議の体制が組まれて以来、手綱は中国に移ってきたが、それでも米国が主導役という色彩が残っていた。だが今回、国連安保理でもマスコミでも「北の核武装をやめさせられるのは中国だけだ」「中国はもっと北に圧力をかけろ」といった論調がぐんと強まっている。北朝鮮が中国の傘下の国であるという、中国の地域覇権を積極的に認める論調が明確化した。
中国は北朝鮮を抑止できるか 【2013年2月11日】 中国は、北に核実験をやめさせる影響力を持っている以上、それを行使する可能性が高い。米国の中枢では、中国に頼んで北に核廃棄させたいオバマ政権と、北の核開発を扇動して東アジアの対立構造や中国包囲網を維持強化して米軍の予算と権限を維持したい軍産複合体が暗闘している。中国は、対中協調派のオバマに勝ってもらいたいはずだ。そのためには中国が、北に圧力をかけて核開発をやめさせ、返す刀で6カ国協議の進展や南北和解、米朝対話、在韓米軍の撤退まで持っていく必要がある。
日本企業の問題は円高でなく製品競争力の喪失 【2013年2月6日】 円安で日本製品の価格が下がっても、世界の人々がサムソン製の代わりにソニーや東芝の製品を買うようにはならない。日本の問題は、通貨でなく製品の競争力だ。円が急速に安くなりすぎて日本国債が信用不安になって急落し、巨額の国債を持っている日本の金融界が国債を買い支えるために米欧から資金を急に引き上げ、世界的な金融危機の引き金を引きかねない。
いよいよ出てくるオバマの世界核廃絶 【2013年2月2日】 オバマは大統領に就任した直後から、世界的な核兵器廃絶を進めようとしてきた。その方針ゆえに、09年にノーベル平和賞を受賞した。ヘーゲルがグローバルゼロで核兵器全廃を提唱したことは、オバマから見て、ヘーゲルを国防長官に指名した主要な理由だったと考えられる。同時にヘーゲルは、国防長官になって、オバマが企図する軍事費削減を進めようとしている。軍事費が増えないのを利用して軍備削減が必要な状況を作り、その一環として核兵器を削減していく作戦だろう。
中国敵視は日本を孤立させる 【2013年1月30日】 国連では、中国が主導国の一つである発展途上諸国の発言力が増加し、米英から主導権を奪いつつある。米国の戦略の失敗に反比例して中国が国連で発言力を増している。中国は、尖閣に関する中国の大陸棚の主張を検討する国連の委員会に圧力をかけるだろう。日本人は、尖閣を奪おうとする中国こそ侵略国と思うが、世界は逆に「尖閣は日本が帝国主義的に奪った領土」と見る。南京大虐殺や従軍慰安婦など「戦争犯罪」問題も再燃し、日本は、中国の巧妙な外交策によって孤立させられる方向にある。
日本経済を自滅にみちびく対米従属 【2013年1月29日】 もし日本が、質素倹約の国民性に沿って黒字を増やし、隆々と発展を続けていたら、米国はアジアの地域覇権を日本に押しつける態度を強め、日本は対米従属を続けられなくなっていた。それは困るので、日本の官僚機構は、90年代初めの金融バブル崩壊を長引かせるとともに、経済再建のためと称して財政赤字を急拡大させ、先進諸国で最悪の財政状況にした。日本国債や円の格付けを意図的に引き下げ、米国から覇権を押しつけられないようにした。米国は、アジアの地域覇権を日本に譲渡することをあきらめ、代わりに中国に与えることにした。このような流れの末に、今の崩壊寸前の日本がある。
ドイツの金塊引き揚げがドル崩壊を誘発する? 【2013年1月22日】 ドイツは、EU統合が進んできたので米国の覇権が崩れても良いと考えている。だから、米連銀の世界支配からの離脱を意味する、米連銀金庫からの金地金引き揚げを挙行するのだろう。これは1960年代後半、ドゴールのフランスがドル売り金買いやNATO脱退を敢行し、ニクソンショックや冷戦終結、EU統合へと進むその後の世界の流れの形成に寄与したのと似ている。50年前にフランスが金地金で米覇権を揺さぶったように、今またドイツが金地金で米覇権を揺さぶっている。
中国と対立するなら露朝韓と組め 【2013年1月18日】 米国はいずれ中国との和解に転じる。日本は対米従属できなくなり、自立的に中国と渡り合わねばならない。日本が今のうちにロシアや北朝鮮、韓国と協調しておけば、中国と渡り合う戦略がいろいろ考えられるが、ロシアとも北朝鮮とも韓国とも仲が悪いまま、米国に頼れず独自に中国と対峙せねばならなくなると、日本は窮してしまう。
独裁化する2期目のオバマ 【2013年1月15日】 来週から2期目に入る米国のオバマ政権が、2大政党間の対立が解けず決定不能の傾向を強める米議会の意向を無視し、議会を通す民主主義のやり方をせず、議会を回避して大統領権限でやりたい政策をやる、独裁の傾向を強めようとしている。最大の案件は外交問題だ。議会多数派の共和党が、好戦的な世界戦略を変えることを拒否しているのに対し、オバマ政権は、財政難で軍事費の削減が必要なので好戦策を続けられないとの理屈で、議会の批准が必要な条約の締結などを経ず、国際協調策に転じようとしている。その筆頭は、ロシアとの相互核軍縮だ。
2期目のオバマは中国に接近しそう 【2013年1月12日】 ヘーゲルとケリーの閣僚就任が日本にとって重要なのは、2人が中国と協調する姿勢を持っている点だ。彼らは、米国が軍事的・政治的に世界のことに介入しすぎて米政府の財政難を招いているので、台頭しつつある中国やロシアへの敵対をやめて、中露やブラジルなどBRICSや他の諸国が国際問題の解決に努力するのを後押しし、米国の国際介入の負担を減らすべきと考えている。
悪者にされるイスラエル 【2013年1月9日】 英国がイスラエルを戦争犯罪の加害者扱いしたのは初めてだ。戦争犯罪の構図はもともと第二次大戦で英国が仇敵のドイツに恒久的に「悪」のレッテルを貼るために創設した考え方で、その後、ソ連やサダム・フセインなど、英米にとって都合が悪い勢力に難癖をつけて戦争犯罪のレッテルを貼ってきた。ナチスドイツの「ホロコースト」の「被害者」であるイスラエルは、ドイツを脅して金を取り続け、これまで戦争犯罪の構図の中の勝者・受益者だった。国際社会がイスラエルを従来の「善」から「悪」へと突き落とす流れが明確化している。
終わらない米国の財政騒動 【2013年1月6日】 右肩上がりだった90年代の財政再建時と対照的に、現在の財政赤字削減は非常に難しい。軍産複合体は911事件で復権した。クリントン時代に急拡大した債券金融はバブルと化し、リーマンショックの大崩壊を生み、その後の金融界はドルと米国債の覇権を食いつぶしながら何とか延命している。90年代と正反対の悪い環境の中で、米国が財政再建するのはほとんど無理だ。
これより前の記事(2012年の記事)
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