トップページへ

「田中宇の国際ニュース解説」2011年の記事一覧


これより後の記事(2012年の記事)

世界のお荷物になる米英覇権
 【2011年12月29日】 ユーロがつぶれると、独仏だけでなく、EUに巨額投資をしてきた米英金融界も大打撃を被る。米英金融界は何とか延命しているだけだから、ユーロが崩壊すると米英も金融危機になる。その崩壊の中で、再びリーマン倒産直後のように「多極化やむなし」という声が世界的に強まり、覇権の不可逆的な転換が起こるかもしれない。そこで転換が起きなければ、世界は長期にわたって不況になる。すでに米英覇権は、世界のお荷物になっている。

日中通貨協調と中国包囲網
 【2011年12月26日】 ユーロ危機がマスコミの誇張作戦であるように、中国経済の危機に関する報道にも誇張が入っている。ユーロが誇張攻撃の挙げ句に崩壊する可能性はあるのと同様、中国経済も誇張報道と投機筋の攻撃によって崩壊するかもしれないが、同時に、崩壊必至という報道が誇張作戦であることも確かだ。中国経済が崩壊する可能性が強いなら、わざわざ日本政府が中国敵視策を引っ込めてまで、ドルの利用減と対米従属の希薄化につながる日中の金融協定を結ばないだろう。

中国包囲網と矛盾する米朝対話
 【2011年12月23日】 金正日の死より、その直前に進展した米朝交渉と、その先に6カ国協議の再開が予定されていたことの方が重要だ。6カ国協議が達成されたら、日本にとっても大変だ。南北や米中対立が解消され、在韓米軍と在日米軍は「グアム以東」に撤退していく。日韓は対米従属からアジア重視に転換せざるを得ない。韓国と北朝鮮は、米中の監督下で連邦的な体制を強める。韓国は親中国の色彩を強め、北朝鮮は中国式の市場経済化を進める。極東の秩序は中国主導になっていく。

金正日の死去めぐる考察
 【2011年12月21日】 中国も韓国も米国も、北朝鮮の不安定化や南北対立の激化を望んでおらず、逆に、北朝鮮が核兵器開発をやめて、6カ国協議が進展し、米朝や南北の対立が緩和することを望んでいる。周辺事態の安定を好む中国は、北朝鮮の新政権に、米韓との対立を激化させるなと命じているだろう。このような状況なので、今後の北朝鮮情勢は、意外に安定した状態が続き、6カ国協議の再開に向けた動きも、早期にまた始まるのではないかと考えられる。

プーチンを敵視して強化してやる米国
 【2011年12月19日】 ロシアのWTO加盟は米国に不利だが、実のところロシアの加盟は米国が誘発した。WTO加盟にはすべての加盟国の賛同が必要だが、ロシアと敵対するグルジアが反対し、ロシアの加盟を阻止してきた。だが今年11月、米国がグルジアに圧力をかけてロシアと貿易協定を結ばせ、グルジアはロシアのWTO加盟に反対しなくなり、ロシアの加盟が実現した。米国はわざわざプーチンが大統領になる時期を選んでWTO加盟を許す「利敵行為」をしている。

イスラエルと共存するムスリム同胞団
 【2011年12月16日】 イスラエル政府が同胞団のエジプトとの協調関係を構築し始めていることは、中東でイスラム主義が席巻した後もイスラエルが国家存続できる新たな可能性が出てきたことを表している。西岸とガザの統治権がパレスチナ人の手に完全に戻った後、イスラエルが、国土や国力は小さいが、周辺諸国と友好な関係を持つ国として存続する道が細々と見え始めた。これは、成功するかどうか、まだおぼつかないものの、画期的なことだ。

人権抑圧策を強める米国
 【2011年12月14日】 「ブッシュは911事件で人権意識が麻痺し、人権無視の国内政策を進めたが、オバマはまともなので人権侵害などしない」というのが、日米でよく言われてきた「解説」だ。だが、今回の展開を見ると、911を口実にしたブッシュの人権侵害の国内政策を、オバマもしっかり継承している。今回の国防権限法は、テロ容疑者に対する捜査尋問の執行を国防総省に一本化する内容であり、国防総省がFBIやCIAの権限を奪うかたちになっている。この点も、オバマはブッシュを踏襲している。

EU財政統合で英国の孤立
 【2011年12月11日】 この100年、英国の欧州戦略の要諦は、英国よりも強い産業力をつけて台頭するドイツをどう弱体化させるかだった。2度の大戦、冷戦中のドイツ分割など、ドイツは英国の均衡戦略にやられっ放しだった。しかし、今回のEUサミットでドイツ主導の財政統合策が何とか決まるとともに、英国が孤立したことは、欧州の主導権が英国からドイツに移る流れが明確化したとも受け取れる。

失効に向かう地球温暖化対策
 【2011年12月7日】今後もCOPでは温暖化対策が決定できず、そのうち温暖化問題自体が重視されなくなっていきそうだ。温暖化人為説が諸説の一つにすぎず、地球の大きな温暖化も起きていない。国際的な温暖化対策が決まらなくても、人類にとって自然現象的な実害は何もない。政治経済的には、日本など先進国が温暖化対策を口実に中国からピンはねできるなら、中国を脅威とみなす日本人にとって、うれしいことだっただろう。だがそれは実現しない。中国の国際政治力が強まるほど、逆に日本は「温暖化対策への援助」の名目で中国からピンはねされかねない。

見えてきたユーロ危機の打開策
 【2011年12月5日】EUの高官たちは、ユーロ危機がひどい状況であることを、意図して過剰に認めている。それによってEU各国の政界や国民に危機感を持たせ「今すぐ財政統合を進めなければ、ユーロも欧州経済も崩壊し、自分たちの生活も破壊される。財政統合は、議会の予算編成権や、政府の財政裁量権などの国権をEUに剥奪されるものなので、平時なら了承できないが、今のような危機の時は、そんなことを言っていられない。国権を制限されることはやむを得ない」という論調を拡大し、平時に実現できない財政統合を、ユーロ危機という有事を使って実現しようとしている。

『米国の「アジア重視」なぜ今?』が英訳されました
公共性が高いテーマの記事なので、もともと有料記事だった原文の日本語版も無料化しました

自滅的にふさがれるNATOのアフガン補給路
 【2011年11月30日】 米国はパキスタンとの関係が悪化し、改善の見通しがない。米国は、パキスタン政府がイスラム主義を弾圧しないと非難し、嫌がらせをしてパキスタン人を激怒させ、ますます反米イスラム主義を勃興させる愚策を繰り返している。その一方で米国は、対露協調を重視すると言いつつ、ミサイル防衛問題などでロシアを怒らせ、アフガンへの2つの補給路を両方とも自分から危機に陥れている。

ユーロの正念場
 【2011年11月29日】 独仏が考えたのは、まずトリプルA格の6カ国で統一した財政緊縮を行う財政統合の条約を締結し、6カ国で共通国債を発行することだった。共通国債はトリプルA格となり、利回りが2%台と低くなる。財政統合の条約を6カ国だけで締結することは、反対しそうな国が少ないため、ユーロ圏やEUの全体で条約を締結するより障害が少ない。うまくいけば、12月9日のEUサミットで6カ国の財政統合と共通債発行を決定し、来年の元旦に6カ国の財政統合条約を発効できる。

イスラム化と3極化が進む中東政治
 【2011年11月23日】 エジプトとトルコ、イランのイスラム主義勢力が、今後の中東で政治力を持つ「勝ち組」の3極になりそうだ。米欧イスラエルの支配力を減退させ、空白を埋める形で自分たちの影響力を拡大するため、合従連衡的な動きが起きている。半面、イスラム主義を建前とする勢力の中でも、サウジアラビアやペルシャ湾岸のアラブ産油国は、対米従属に拘泥しているがゆえに、米国の影響力の低下に流されて「負け組」だ。加えて、中東の究極の負け組はイスラエルだ。

米国の「アジア重視」なぜ今?
 【2011年11月20日】 米政府は財政難がひどくなっている。オバマは「(アジアが金を出してくれる限りにおいて)米国はアジアを最重視する」と宣言した可能性が高い。TPPや米軍駐留には、非常に高価な値札がついている。中国の台頭を懸念するアジア諸国は、米軍に出て行くなと懇願している。米政府は「出て行かないから駐留費を出せ。TPPや米韓FTAに入って、米企業が儲かる国家システムに変えてくれ」と言っている。米国は悪くない。日本などアジア諸国の対米依存心が、米国に狡猾な戦略をとらせている。

中国包囲網の虚実(2)
 【2011年11月17日】 米国は、日米同盟の強化、南沙群島問題への介入、米韓軍事同盟の強化、インドとの軍事関係の強化など、中国の軍事台頭に対抗して中国包囲網を拡充しており、オーストラリアへの初の米軍駐留もその一環だというのが日米マスコミの論調だ。しかし、米軍の豪州駐留の背景を詳細に見て考えていくと、事態はもっと複雑だ。

米国の財政危機再び
 【2011年11月14日】 米議会は11月23日までに、3兆ドル近い財政赤字の削減策を決めねばならない。期限まであと2週間を切っているのに、削減策を審議する米議会の特別委員会は、増税を求める民主党と、増税に反対で社会保障関連の支出削減を求める共和党との対立が解けない。赤字削減策がまとまらない場合、8月に演じられた米国債の格下げ危機が再燃する。

エネルギーで再台頭めざすロシア
 【2011年11月11日】 米英中心の国際報道の世界では、ドイツにとって米英が同盟国であり、ロシアは警戒すべき脅威だ。しかし実際のところドイツにとって大きな脅威は、投機筋を使ってユーロを潰そうとする米英の方だ。ドイツが、ノルドストリームを通じ、目立たないかたちでロシアとの協調を深めるのは自然な流れだ。ロシアが石油ガスを世界各地に売って国際政治力を高めていこうとする戦略は、プーチンが00年に大統領になる前から持っていた構想だ。プーチンが大統領に戻ることが内定したのは9月だが、ロシアはちょうどその時期から、エネルギー輸出を使った国際政治戦略を再強化している。

米軍イラク撤退で再燃するイラン核問題
 【2011年11月9日】 米国がIAEAにイランの核兵器開発を非難する誇張的な報告書を書かせ、それを受けて米イスラエルがイランを空爆しようとする流れは、イラク侵攻の直後から何度も繰り返されてきた。実際の空爆は行われず、オバマ政権になってからの近年は、騒ぎが低調になっていた。それなのに、今また騒ぎが再燃した背景には、米軍が今年末までにイラクから総撤退することがある。米撤兵後のイラクは、イランのものになってしまう。イスラエルはこれを看過できない。

貿易協定で日韓を蹂躙する米国
 【2011年11月7日】 米国の力が、日本などTPP加盟予定の他の諸国よりずっと強いという力関係から考えて、米国を有利にするISD条項が、TPPに盛り込まれる可能性が高い。TPPも米韓FTAと同様に、米国だけが有利な「不平等条約」になるだろう。イラクは米国に武力で蹂躙されたが、日韓のようなアジアの対米従属諸国は、経済的に米国に蹂躙されている。衰退しつつある米国は、自国の力を維持するため、言うことを聞く同盟諸国からの収奪を強めている。緩慢な二度目の「敗戦」が、日本を襲いつつある。

TPPが日本の政界再再編につながる?
 【2011年11月1日】 日本国内では、農業団体から左派市民運動まで、TPPへの反対を強めている。野田首相はすでにTPPに参加すると米国に伝えており、反対論を押し切って無理やりTPPに参加しようとするだろう。しかし、それは野田にとって危険なことだ。自民党も民主党も、賛成派と反対派に内部分裂し、反対派の方が多い。これまで対米従属が日本のために良いと思っていた人々が、米国の露骨な利権あさりを見て、米国との関係を損ねてもTPPに入らない方が良いと思い始めている。日本の政界は、これまでの「左派vs右派」「民主党vs自民党」という構図が崩れて「対米従属主義vs国粋主義(鎖国主義)」という対立軸に再編されていくかもしれない。TPP問題がこじれると、野田政権は短命で終わる。日本の政治が、再び面白い時期に入りそうだ。

ユーロ危機対策めぐる裏の暗闘
 【2011年10月29日】 独仏は、自分たちが対立してユーロ救済策が決まらない状態を意図的に演出している感じだ。加盟各国の国権の一部を剥奪してEUに集中させる財政統合や、その先にある政治統合は、平時に各国の議会に議論させても、ほとんど支持されない。政府財政を審議して決める権限は、国家の議会が持つ重要な権限の一つだ。各国議会が、それを喜んで手放すはずがない。平時にやれないなら、有事にどさくさ紛れに進めるしかない。財政統合が究極の解決策であるユーロ危機は、格好の有事だ。EUは、わざと自分たちを困難に追い込んだ方が、財政を含む政治統合を推進できる。

米国債格下げ危機が再燃へ
 【2011年10月25日】 米議会は12人の特別委員会で2大政党間の対立を解き、財政赤字削減策をまとめようとしたが、期日まであと1か月しかないのに、何も決まっていない。緊縮策が合意できそうもないので、年末までに米国債がまた格下げされるとの予測が出てきた。11月は、今夏の米議会での騒動が繰り返されそうだ。

イラクの夜明け
 【2011年10月24日】 米軍撤退によって抑圧から解放され、外交面で言いたいこと言えるようになる来年以降のイラクは、サウジやバーレーンの王政がシーア派を弾圧していることを非難し、シーア派による民主化を誘導するだろう。シーア派はイラクとイランを合わせると、OPECを支配してきたサウジと並ぶ石油埋蔵量を持つ。石油利権の世界でもイラクの台頭が予測される。米軍侵攻から8年間、イラクで10万人以上の市民が殺された。だが今、米軍が撤退していく方向が定まり、ようやくイラクにとっての夜明けが近づいている。

経済で接近するパキスタンとインド
 【2011年10月19日】 パキスタンがインドに最恵国待遇を与えることになった。印パ間の貿易が活発化していきそうだ。1週間前には、インドはアフガニスタンと安保や経済の協約を結び、両国が戦略関係になることを決めた。これはインドがパキスタンに対抗する動きとして報じられている。しかし、2つの動きを合わせて考えると、むしろインドはパキスタンと協力してアフガニスタンの安定化に貢献する戦略だ。中国や上海機構は、印パが和解して上海機構に入り、米軍撤退後のアフガニスタンを安定化していく構想を持っており、インドの動きはそれに沿っている。

遠くに見えてきたユーロ危機の打開策
 【2011年10月18日】 欧州議会が、EU加盟諸国に財政赤字を一定以下にすることを義務づける、罰則つきの規則を可決した。来年からEU加盟諸国は、政府が次年度の予算案を決めたら、議会が審議に入る前に、欧州委員会と欧州議会に予算案を提出することを義務づけられる。EUの委員会と議会で各国の予算案を調べ、赤字が上限を超えていた場合、EUは予算案の改定を求められる。各国が従わない場合、罰金を支払わねばならない。これは、EUの財政統合を進める歴史的に非常に重要なものだ。はるか遠くにであるが、ユーロ危機を打開する出口が見えてきた感じだ。

イランにテロの濡れ衣を着せる米当局
 【2011年10月17日】 米当局は、イランが駐米サウジアラビア大使を暗殺した容疑で関係者を逮捕したが、これは扇動的なおとり捜査の結果であり、イランに濡れ衣をかけようとするでっち上げの可能性が高い。米国は、イスラエルがハマスと捕虜交換によって緊張緩和しようとしている時に、わざわざ米国とイランとの対立を高め、親米のイスラエルと親イランのハマスが和解できないようにしている疑いがある。

中国経済の弱さと強さ
 【2011年10月12日】 中国の地方政府は簿外に巨額の不良債権を抱えるが、それは重篤な危機でないとの指摘もある。中央政府が政策として地方政府にインフラ整備に投資させたのだから、不良債権の面倒は中央が見る。中央はGDPの15倍の資産を持っている。中国は、対外勘定も政府も地方も家計もすべて黒字だ。中国は全体的に、不良債権を償却する能力が高い。中国の経済成長率が5%以下になるとしたら、それはバブル崩壊や不良債権増といった国内的な原因でなく、ユーロ危機がひどくなって米国の金融システムが再崩壊し、世界不況になって世界の需要が減退し、中国の輸出産業が不振になるという国際的な要因からになる。

入植地を撤去できないイスラエル
 【2011年10月11日】 米国の覇権が低下し、イスラエルは今になってパレスチナとの対立を解かねばならない。イスラエル政府は違法入植地への黙認をやめて、裁判所が判決を出した入植地の撤去を執行している。だが、軍が撤去作業に行くことを決めると、軍内の右派が情報を漏洩し、入植者は対策をとってしまう。軍が和平の前提となる入植地撤去を進めるほど、入植者は報復として和平阻止のため、パレスチナ人のオリーブを切り、モスクに放火し、自動車をひっくり返して、パレスチナ人との対立を扇動している。

まもなく欧州発で世界金融が再崩壊する?
 【2011年10月9日】 IMF顧問でハーバードのシャピーロが「十分な危機対策をとらない場合、今後2−3週間以内にEU国債の崩壊が起こり、欧州の大手銀行が次々に破綻し、米英など世界に危機が伝播する。08年(リーマンショック)よりひどいことになる」と発言した。英国の中央銀行総裁は「大恐慌よりひどい史上最悪の金融危機が起きそうだ」と述べた。グリーンスパンは「ギリシャがデフォルトするだろう。欧州にリーマン型の金融危機が起き、米国に飛び火するかもしれない」と発言した。いよいよ大危機が起きるのか。

米国が誘導する中国包囲網の虚実
 【2011年10月5日】 失敗するとわかっているのに、なぜ米国は、南沙問題でアジア諸国をけしかけて中国との敵対を煽るのか。一つありそうなことが、軍産複合体の営業活動だ。米国は財政難で防衛費も削減されていく傾向にあり、代わりに米国の言いなりになる外貨の豊富なアジア諸国に、中国との敵対を煽り、その裏でアジア諸国に兵器を売りつける戦法と考えられる。米国がアジア諸国をけしかけて中国包囲網を作らせる戦略は、いずれ解体するだろう。米経済が隆々とした状態に戻るなら、米国の財政赤字も減り、米国の覇権が維持されるだろうが、米国の金融システムがこれ以上崩壊せず安定の方向に戻る確率は低い。

米国の民主化運動「ウォール街占拠」
 【2011年10月3日】 ウォール街占拠運動の参加者たちは、米政界が金融界の強い影響下にあることに反対している。彼らは、米当局が金融界に巨額の救済を行い、市民の雇用や実体経済の悪化が看過されたと怒っている。運動は、金融界が米政界を支配する米国の「金融界独裁体制」をやめさせようとする「民主化運動」である。米国は、金融界や軍産複合体による談合体制である2大政党制(2党独裁体制)で縛られ、真の民主化がかなり難しい国だ。

出口が見えないユーロ危機
 【2011年9月30日】 ユーロ危機は当面、最悪の事態をまぬかれた。しかし、危機を脱する方向に動き出したわけではない。米英金融筋は、ユーロ圏を潰すことに成功したら、次は中国など新興諸国の金融市場で脆弱な部分を探し、そこを攻撃するだろう。中国経済を混乱に陥れれば、世界においてドルの覇権を脅かす2大要因であるユーロと中国の両方を破壊させられる。たとえドルが崩壊しても、代わりの基軸通貨体制を作ることができず、世界はドル基軸体制を使い続けねばならなくなり、米国の覇権が何とか延命する。

北朝鮮6カ国協議再開に向けた動き
 【2011年9月28日】 韓国で北朝鮮との関係を担当する統一相が、対北強硬派の玄仁澤から、対北穏健派の柳佑益に代わった。柳佑益が就任した日、北京で韓国と北朝鮮の外務次官会談が開かれ、6カ国協議の再開について話し合いが持たれた。北朝鮮や、6カ国協議の主催国である中国は、柳佑益の統一相就任が6カ国協議の再開につながるかもしれないと期待している。

台湾中国への米国の態度の表と裏
 【2011年9月26日】 オバマは台湾にF16C/Dを売ることを見送った。同時に、台湾の空軍力が中国に差をつけられる状況に対して何もしないことは、米国内でのオバマのイメージ悪化につながるので、台湾が保有するF16A/Bに改良を加えることで、新型に近い性能を持たせることにした。台湾のF16を改良することは、米議会がオバマに求めた最低線だった。オバマがここまで譲歩しても、中国政府は不満を抱き続けていた。そのため、中国に対するリップサービスとして、ホワイトハウスの高官がFTに電話し、中国が嫌っている蔡英文を来年の台湾総統選挙において不利にするような蔡批判のコメントを発したのでないか。

対談収録:田中宇vs奥山真司(地政学者) 【2011年9月24日】

債券危機と米連銀ツイスト作戦
 【2011年9月24日】 7月以降、景気と住宅市況の悪化、S&Pの米国債格下げなどが加わり、再び米国債とジャンク債の金利差が拡大している。放置すると、再びリーマンショック的な事態になる。リーマンの時は、まだ米政府の財政赤字が少なく、悪いのはジャンク債だけだった。だがその後、財政赤字を急増してジャンク債を救済したため、今では米国債からジャンク債まですべての債券が悪い。次の危機は、リーマンショックよりひどい事態になる。連銀は、QE3をやれないまでも、それに準じるツイスト作戦をやらざるを得なくなった。

否決されても中東を変質させるパレスチナ国連加盟申請
 【2011年9月22日】 米国の拒否権発動でパレスチナの国連加盟が否決された場合、中東における米国の影響力が減退する。米国は、この20年以上の間、パレスチナとイスラエルとの和平交渉を仲裁してきたが、ずっと失敗に終わっている。米政府は、イスラエルから受ける政治圧力に屈しており、すでに中東諸国やその他の国々は、米国にこの問題を仲裁する力がなくなっていると見ている。米国が拒否権を発動すると、中東問題における米国の信頼失墜がひどくなり、パレスチナ和平交渉の枠組みは瓦解した感じが強くなる。

ギリシャ危機とユーロ破綻の可能性
 【2011年9月20日】 ドイツの国家的な意志が変わるとギリシャはデフォルトに追い込まれるが、ドイツの国家意志が変わることは考えにくい。EU統合は、冷戦終結とともに始まって以来、一方通行の戦略だ。EU諸国は、統合をあと戻りする選択肢を何も作らず、統合案が国民投票で否決されても、1−2年後に似たような統合案に別の名前をつけて再び同じ国に意志決定させ、統合案が通るまで繰り返す。民意は事実上、EU統合に関係ない。欧州の政治意志は昔からビルダーバーグ会議に出るようなエリートにゆだねられ、彼らはEUの統合を推進したい。ドイツの民意が「ギリシャのユーロ離脱」で固まっても、ドイツが国家意志としてギリシャを見捨てる可能性は低い。

911十周年で再考するテロ戦争の意味
 【2011年9月14日】 911は、国防総省や軍産複合体が、米政府内での影響力を爆発的に拡大するために誘発したクーデター的な事件である。911で始まった長期のテロ戦争は、軍産複合体が仕掛けた「第二冷戦」といえる。冷戦終結後、米英は、それまでの軍事覇権から、金融自由化による経済主導の覇権体制に移行した。軍産複合体と組んで米国の世界戦略を牛耳っていた英国は、85年の米英同時の金融自由化の開始以来、経済覇権戦略に乗り換えて軍産複合体を見捨て、米国が冷戦を終結するのを容認した。クリントン政権下で軍事費は削られ、米軍事産業は縮小・合理化されていた。911は、冷や飯を食わされていた米軍産複合体による、経済覇権体制への反撃だった。

イスラエルを悪者に仕立てるトルコ
 【2011年9月5日】 トルコが国際司法裁判所にイスラエルを提訴する。トルコは2年ほど前から、イスラエルとの親密さを捨て、中東イスラム世界から英雄として見られることをめざす「ネオ・オスマン戦略」ともいうべき戦略をしだいに強めてきた。パレスチナ人に対する弾圧など、イスラエルの国家行為のうち世界から非難されるべきものを声高に非難していくやり方だ。提訴はその流れの一環で、国際法廷に引っ張り出し、イスラエルに公式に「悪」のレッテルを貼ろうとする新たな展開だ。トルコ政府は提訴と同時に、イスラエルとの軍事協力をすべて中止し、自国に駐在するイスラエル大使を追放した。

バーナンキ演説の空騒ぎ
 【2011年8月27日】 米連銀は、もう打つ手がない。金利はゼロまで下げて久しく、これ以上は下げられない。連銀はこの3年間、債券買い支えをやりすぎて資産が肥大化し、QE3の実行は困難だ。仮に実行したとしても一時的な株価の押し上げ効果のみだ。だからバーナンキは、てこ入れ策をやれないのに、何かやりそうな感じのことを演説で言い、投資家の気を引き続けるしかない。オバマ大統領は夏休み明けに演説し、新たな景気対策を発表する方針と報じられている。しかし、オバマが8月に議会と決めた財政の大緊縮を棚上げしない限り、新たな景気対策をやる資金を作れない。緊縮をやらず赤字増を続けると、米国債に対する信用が再び揺らぎ、米国債の格下げ問題が再燃する。バーナンキもオバマも打つ手を持たず、口だけにならざるを得ない。

バンカメの危機
 【2011年8月25日】 バンカメは不良債権と共倒れになることを防ぐため、カントリーワイドの部門だけを切り離して倒産させることを検討している。倒産すると、巨額の不動産担保債券が債務不履行となり、債券市場の中核をなす不動産担保債券市場が崩壊し、リーマンショックの再来となる。バンカメはもともと、米金融界や政府から懇願されてカントリーワイドを買収したが、不良債権の増分を、政府や金融界が十分に穴埋めできなくなっている。それでバンカメは、カントリーワイド部門を倒産させるという脅しを流している。

ミャンマーの和解
 【2011年8月22日】 スーチーの転換を引き起こした主導役は米国でない。主導役はおそらく、この間の政治劇の水面上にほとんど出てこないが、中国である。リーマンショック後、国際社会において米英覇権が弱くなる一方、中国が大きく台頭する方向が決まった。この転換を受け、それまでスーチーに戦略的なアドバイスをしてきた英米が、中国に譲歩せねばならなくなった。

ニクソンショックから40年のドル興亡
 【2011年8月17日】 40年前の金ドル交換停止の夏と、今年の米国債格下げの夏で、状況が似ている部分がある。今回、すでに米国の財政支出は急増し、ドルも過剰発行されている。金に対する世界的な買いあさりも起きている。だが、米金融界は40年前と異なり、債券金融システムとして巨額の簿外資金を隠し金的に持っている。それを絆創膏のように危機になりかけた箇所に貼り付けることで、今回の米国債格下げのショックを吸収できたように、ドルの崩壊を対症療法的に先送りしている。

格下げされても減価しない米国債
 【2011年8月13日】 米国債は格下げされたのに、史上最高に近い高価値(低金利)を維持している。この状態があと1−2週間ぐらい続いた場合「米国債を格下げしたS&Pの方が間違っていたんだ」という言説が、米金融マスコミにたくさん出るようになり、ムーディーズやフィッチは米国債を格下げせず、S&Pは米議会に呼び出されて「誤判断」を非難されるかもしれない。S&Pの格下げは市場から無視される傾向となり、事実上「なかったこと」にされるかもしれない。債券市場の崩壊による大混乱を避けたい金融界は、そうしたシナリオを考えているのでないか。

米国債格下げの影響はまだ序の口
 【2011年8月9日】 世界的に株価が暴落しているが、これは米国債格下げの悪影響として序の口にすぎない。格下げによる直接の影響は、米国債の価値の下落(金利上昇)として起きるはずだが、実際のところ米国債の価値はむしろ格下げ後も上がっている。株価の下落が先に起きたので、株式市場から大量の資金が米国債市場へと逃避し、米国債が上がっている。米国の債券金融システムを守るため、ヘッジファンドなどが米金融界の意を受け、あえて世界的な株暴落を誘発したのでないか。米国債の格下げが債券市場を直撃すると、米企業の好調を支えてきた債券金融システムが破壊され、やがて株式市場も急落し、債券と株式の両方の市場がやられる。だが先に株式を壊せば、少なくとも当分の間、債券市場は資金が入って崩壊せずにすむ。債券市場は、この20年間の米経済の成長を下支えした最重要システムだ。株式より債券を守ることが重要だ。

米国債の格下げ
 【2011年8月7日】 財政赤字増と金融バブルの残存から考えて、今回のS&Pによる格下げによって、米国債の最優良格は半永久的に失われた。米国債は世界の債券市場の「道路元標」である。米国債の格下げは、債券市場全体の格下げを意味する。米国債が格下げされた以上、先送りされていた金融バブル(債券バブル)の崩壊がいずれ必ず起きる。格下げが唐突に起きたので、短期的な市場の反応も混乱した荒れたものになるという予測も出ている。

延命した米財政
 【2011年8月1日】 米議会両院は今回ぎりぎりの議論をしたが、1兆ドル分の赤字削減しか実質的に合意できなかった。これ以上の削減をするには、どちらの党も反対しない小手先の削減を積み重ねるしかない。それをやるには公開的な議会上下院では無理だ。だから、米国の民主主義の本来の手続きを無視して少人数の超法規的な特別委員会を作って談合し、騙し的な合意を形成するしかないのだろう。

米財政赤字の何が問題か
 【2011年7月29日】 米国の長期的な財政赤字問題に火をつけたのは、09年末に米政府が発表した年次報告書「米政府決算報告書」だった。そこには、官制健康保険や社会保障の支出増により、75年後の2083年には米政府の累積財政赤字がGDPの7倍に達するとか、最終的に累積赤字が107兆ドルに達するといった、驚くべき数字が書かれていた。それは不確定要素の多い数字で、金食い虫になっている福祉費用を削減をしたい米政府が、政治意図を持って発表したとも考えられる。しかし、米国のメディケアや社会保障費が急増する傾向にあることは間違いない。福祉関係の重圧によって、米政府はいずれ財政破綻に陥ると、以前からあちこちで指摘されてきた。米国の財政赤字の最大の問題点は、軍事費や金融救済の費用でなく、メディケアや社会保障費である。

デフォルトに向かう米国(3)
 【2011年7月24日】 米政界が財政赤字上限の引き上げ問題を解決できず、米国債が格下げされても、米国債相場は少し下落するだけで大した被害がないという予測も金融界で出回っている。短期的にはそうかもしれない。だが米国債は、世界のすべての債券の頂点に立つ「基準点」だ。その格下げは「影の銀行システム」と呼ばれる巨大な債券金融システム全体の格下げを意味し、それが瓦解的に起きると、リーマンショック以上の金融危機が再燃する。

ギリシャのデフォルト
 【2011年7月22日】 米英系の格付け機関がギリシャ国債をデフォルト格に引き下げ、60年ぶりに欧米諸国の中からデフォルトが出るだろうが、それはふつうのデフォルトではなく、政治臭の強いものだ。ギリシャはEUから国債の元利返済用の資金を来年の分まで借りる救済の約束を取り付けており、本来的な意味のデフォルトは起こらない。格付け機関は、ドイツの政界や世論が民間銀行界の参加を強く求めているのを見据えた上で「銀行界を参加させたらデフォルトだ」と宣言しておき、事態を意図的に「みなしデフォルト」に追い込んだ。

デフォルトに向かう米国
 【2011年7月15日】 共和党は茶会派に引っ張られて強硬姿勢だが、それは見かけだけだ。共和党主流派は7月13日、赤字上限を引き上げる権限を、議会が事実上オバマに委譲する案を提案した。しかしオバマはこの案を「小手先の危機回避策だ。赤字体質を改善できない」として拒否した。たとえ本当にデフォルトが起きても、オバマはそれを共和党のせいにでき、来年の大統領選挙で有利になる。しかし同時にオバマは、米国を一歩デフォルトに近づけた。翌日、S&Pなどが、赤字上限が引き上げられなければ米国債を格下げすると警告し、金地金や円は値上がりした。

日本も脱原発に向かう
 【2011年7月8日】 米英覇権が不可逆的に崩れて多極型の世界体制が確立した場合、大国だけが核兵器保有を許される、以前に模索された体制でなく、大国も含めて核兵器の全廃が模索されるのではないか。一部の国だけが核兵器保有を許されると、英国あたりの諜報機関の地下化して生き残った勢力が、核技術を他の国々に漏洩させて多極型の世界秩序を壊そうとするだろう。だからすべての核技術を規制しないと意味がない。核兵器の全廃には、核技術の全廃が必須だ。ウラン濃縮やプルトニウム製造といった、核兵器製造と同じ工程を持つ原発産業は、世界的に終了させていく必要がある。東芝のWH買収から5年後の今年、福島原発事故が起こり、それを引き金として、米当局が日本に対し「こんなひどい事故が起きたのだから日本は原発を全廃した方が良い」と圧力をかけ始めた。大震災を待ってましたという感じで、米政府が日本に圧力をかけ始めたのだろう。

ストロスカーンの釈放
 【2011年7月2日】今回の米当局のお粗末さは「未必の故意」的なにおいもする。事件の被害者とされる女性が彼氏との電話でストロスカーンから金をせびり取ることを示唆していたことが「判明」したのは6月29日だが、それはIMFの次の専務理事に仏経済相のラガルドが選出された翌日だ。米当局は、ストロスカーンが確実にIMFの専務理事を辞めさせられて次期専務理事が決まるのを待っていたかのように、彼の冤罪性を認め始めた。隠れ多極主義的な米中枢の傾向からすると、ストロスカーンを反米主義者に仕立て、仏独主導のEUを米覇権から離脱した別の地域覇権勢力にするために、意図的に濡れ衣をかけたとも考えられる。

米国原油放出の意味
 【2011年6月27日】 これまでOPECを傀儡化して原油価格の上昇を防いできた米欧は、イランが率いる反米諸国がOPEC内で台頭したため、影響力を失い、IEAの備蓄放出で対抗するしかない1970年代の不利な状況に戻った。米国は、国際政治におけるイランとの長い戦いに(自滅的に)負けているため、OPECを失い、自らの戦略備蓄を放出せざるを得なくなった。一方、金融面から見ると、QE2後の原油相場の高騰を防ぐため、QE2の終わりにあたる今のタイミングで備蓄の放出が行われたとも考えられる。

南シナ海で中国敵視を煽る米国
 【2011年6月23日】 中国は東アジアの覇権国なりつつあるが、周辺国に対し、自国が覇権的でないというイメージを持ってもらいたい。南沙群島での軍事衝突は、中国のイメージ悪化になり逆効果だ。米国は今後3年もすると、財政難からドルが基軸通貨としての信頼を失い、軍事面でも世界的な展開を縮小するだろう。中国は米国の覇権衰退を見届けてから、南沙問題での姿勢を強気に転換するのが効率的だ。早まって越や比と対立する必要はない。昨今の中国とベトナムやフィリピンとの南沙群島をめぐる対立は、中国から仕掛けたことでなく、米国が越や比を支援して中国と対立激化させる戦略をとり、中国が怒るよう仕向けたと考えた方が妥当だ。マスコミは、越や比の主張を大きめに採用するだけで「悪いのは傲慢な中国の方だ」という論調を作れる。

立ち上がる上海協力機構
 【2011年6月21日】 中国とロシアが主導するユーラシア諸国のゆるやかな集団安全保障体制である上海協力機構(SCO)が、カザフスタンで年次総会を開き、同機構がインドとパキスタンの和解を仲裁し、和解が成立したあかつきに印パを同時に加盟させる方針を決めた。米英による印パ和解仲裁は、うまくいかない仕掛けになっていただけに、米英と異なる仲裁者が出てくることは重要だ。

意外とデフォルトしにくいギリシャ国債
 【2011年6月18日】 ギリシャ国債をめぐる状況は悪い。しかし私は、ギリシャ国債がデフォルトする可能性が、実は見かけより低いと感じている。今の危機は、政治的な交渉過程の一つという側面が強いからだ。独政府は、ギリシャ国債を保有している独仏の民間銀行に、ギリシャ国債の償還を自主的に繰り延べさせ、民間もギリシャ救済に参加する態勢を作り、国内世論を納得させようとしている。ギリシャのデフォルトはユーロ圏の連鎖破綻になり、独仏の銀行界と政府の両方にとって大損失だ。デフォルトの前に、独仏政府と銀行界の間で、何らかの譲歩と合意が得られ、ギリシャに新たな救済金が渡されてデフォルトを防ぐ展開になるだろう。デフォルト騒ぎは政治駆け引きの材料となっている。

日本が忘れた普天間問題に取り組む米議会
 【2011年6月17日】 辺野古移転を中止すべきだと5月に提案した3人の米上院議員はしぶとい。米議会上院で6月14日、軍事委員会傘下の小委員会が開かれ、国防総省が海兵隊のグアム移転計画などアジアの軍事戦略について、議会に対して十分な説明をしない限り、辺野古移転やグアムでの基地増設、在韓米軍の基地移設などにかかる防衛費を議会で可決しないことを決定した。条項は、上院の来年度の防衛予算法に盛り込まれる。3人の上院議員は、海兵隊のグアム移転を本気で止めようとしている。

米軍撤退を前にイラク人を怒らせる
 【2011年6月14日】 米国のイラク訪問議員団を率いるロラバッチャー下院議員(共和党)が、イラク首相との会談とその後の記者会見で「イラクは(米軍の侵攻によって独裁者サダムフセインを倒してもらい、自国民がやれなかった民主化を米国にしてもらったのだから)米軍のイラク戦争の費用の一部をイラク政府が負担すべきだ」と発言した。これは間抜けな発言だ。米国がイラクの占領事業をもっとうまくやっていたら、イラクの石油利権の多くを米国のものにでき、今ごろになって米政府が財政難だから侵攻費用を出せと言う必要はなかった。

中国を招いたビルダーバーグ
 【2011年6月13日】 欧米の上層部の人々が覇権の今後について話し合うビルダーバーグ会議に、中国から外務次官の傅瑩が呼ばれた。会議で、台頭する中国と米英覇権の関係の今後について議論した可能性がある。人民元の為替政策を練る北京大学の黄益平も呼ばれたが、基軸通貨としてのドルの地位がぐらつく中で、人民元の自由化と国際化をいつどうやるか、ドル単独基軸制から多極型の基軸通貨体制にどう移行するかという問題が話し合われた可能性がある。中国の代表は、欧米と別の「次の覇権国」の人として呼ばれた感じだ。

プーチンをめざすアハマディネジャド
 【2011年6月12日】 イランのアハマディネジャド大統領の任期は2013年までだ。しかし彼は、自分の娘婿で側近のマシャイエを次期選挙で当選させ、1期4年の大統領をやらせた後、17年に再び自分が大統領に返り咲こうと目論んでいる。このやり方はロシアのプーチン首相から学んだことだ。ロシア大統領も2期8年が上限で、プーチンは大統領を8年やった後、子分のメドベージェフに1期大統領をやらせ、来年の選挙で再び大統領に返り咲こうとしている。メドベージェフは最近、次期選挙に出ないと認めた。とはいえイランでは、大統領より聖職者集団の方が権力を持っている。アハマディネジャドと最高指導者ハメネイらの権力闘争が続いている。

トルコがシリアの政権転覆を模索?
 【2011年6月11日】 シリアに対してトルコが二枚舌政策をとるのは、アサド政権が転覆される可能性があるからだろう。転覆が起きた場合、トルコは、ムスリム同胞団に政権をとらせて隣国シリアの安定を維持する戦略と読める。5月末にアンタルヤの会議が開かれたことは、トルコ当局が、アサド政権の転覆が不可避となったと見ていることをも示唆している。トルコは、シリアのキングメーカーとして機能し始めている。

ドイツ脱原発の地政学的な意味
 【2011年6月9日】 日本は、震災を機に、米国覇権の混乱が予測される今後の2−3年間を「うちは震災対策で手一杯で、世界のことに関与できません」という「いないふり」「政治鎖国」の国策によって乗り切ろうとしている。こうした国家戦略は日本だけのことかと思ったら、そうでもない。ドイツも、福島の原発事故を機に、脱原発でロシアの天然ガスへの依存と独露協調を強め、対米従属から隠然と離脱する方向性を模索している。

金正日の訪中と南北敵対の再開
 【2011年6月7日】 中国は、国家破綻に瀕する北朝鮮を無条件に援助しているほとんど唯一の国で、北は中国の援助なしに立ちゆかない。欧米日が北朝鮮を経済制裁するほど、北朝鮮は経済的に中国への依存を強める。対中貿易が北朝鮮の貿易全体に占める割合は05年に53%だったが、今では83%だ。中国は、北が無礼な態度をとった場合、対北貿易の実務条件を少し引き締めるだけで北を経済制裁できる。北は、中国政府の機嫌を損ねることをとても恐れている。金正日が中国要人たちに会った直後、北が急に韓国敵視に再転換したことは、金正日が中国側に対し、韓国との対話姿勢をやめたいと提案し、ある程度の了承を得たことを意味している。

米国債政治デフォルトの危機(3)
 【2011年6月5日】 今の米国覇権体制に賛成する大多数の国々の政府や銀行などは、ドルや米国債が安定している限り買い続けたいと思っている。米国は、まだ財政赤字を増やしても大丈夫だ。それなのに米議会は、世界の投資家を不安にさせるデフォルト議論を続けている。今後、米国債がデフォルトするとしたら、それは経済的な理由からでなく、議会のばかげた論争の結果としての政治的な理由からであり、政治的デフォルトとなる。

スコットランド独立めぐる駆け引き
 【2011年6月1日】 スコットランド独立とは、スコットランドが英国の枠内から外れて、代わりにEUの枠内で振る舞うことを意味する。現状を見ると、英経済の悪化は続いているが、EUも周縁諸国の国債危機でひどい状態だ。昨年、SNPがスコットランド独立を問う住民投票を先送りする傾向をとり始めた背景には、このような状況があった。英政府の側からは「SNPは独立を問う住民投票を先延ばしせず、早くやるべきだ」という主張も出ている。これは、EU統合が危機に陥って、スコットランドの民意が独立に消極的になっている現状が続いている間に投票をさせ、否決させてしまおうという戦略だろう。

米国債政治デフォルトの危機(2)
 【2011年5月26日】 米国債は、現在のリスクを示す利回りが低いのだが、将来のリスクを示すCDSの価格が5月17日から急上昇し、6営業日の間に価格が3倍になった。CDSが示す「米国債が今後1年間に破綻する可能性」は、インドネシアやスロベニアの国債より高い。米国債のCDSが急上昇し始めたのは、米国の財政赤字が法定上限に達した日の翌日だ。

パキスタンを中露の方に押しやる米国
 【2011年5月25日】 パキスタンが米国から邪険にされ、中国に頼る傾向を強めるのは、911事件後ずっと続いていることで、目新しい流れでない。しかし今回、新たな動きと思える事態が起きている。ビンラディン「殺害」から1週間後の5月9日に行われた米中戦略対話の席上、中国側は、パキスタンを領土侵犯して攻撃を繰り返す米国を批判し「パキスタンに対する攻撃は、中国に対する攻撃と同じであるとみなす」と警告を発したという。

まだ続くテロ戦争(2)
 【2011年5月24日】 CIAがタリバンやアルカイダを支援強化する「敵作り作戦」を展開し、米軍がパキスタンの核兵器を乗っ取る計画を持っていることをふまえ、タリバンが海軍基地を襲撃した事件について考えると、米国がタリバンの一部勢力を勧誘して襲撃させた疑いが出てくる。たとえオバマがアフガン撤退を模索しても、パキスタンが不安定だと実現できない。逆に、パキスタンを不安定化して政府ごと反米の側に転じさせれば、米国はテロ戦争を恒久化できる。テロ戦争を終わらせたい勢力と恒久化したい勢力が、米中枢で暗闘している。

まだ続くテロ戦争
 【2011年5月22日】 オバマ大統領は「すでにホワイトハウスは戦争について十分な権限を持っており、新たな戦争の権限など必要ない」と考えている。しかし議会の共和党は「後世の大統領たちが拡大された戦争権を必要とするかもしれない」という理由で、ビンラディンの「死」が確定する今後も、アルカイダやタリバンとの恒久戦争権を大統領に与えようとしている。恒久戦争を画策する軍産複合体と、それを許すと米国の財政難がひどくなるのでやめさせたい勢力が暗闘している。

ひどくなる世界観の二重構造
 【2011年5月18日】 私が分析作業を続けてきて、特に911事件後の10年間にひどくなっていると感じるのは、マスコミの報道を通りいっぺん見聞したときに人々が受け取る「表に出ている世界の様相(表相)」と、報道などの情報をもとに分析していくと矛盾や説明の空白が見えてきて、それらを自分なりに洞察すると気づく「一枚めくった下にありそうな世界の様相(深相)」との乖離だ。私はかつて、いずれ表相の歪曲性の暴露と深相の事実化が進むことによって、表相と深相の乖離が解消されていくと楽観的に予想していた。しかし実際には、表相と深相の乖離が縮まらないまま、テーマごと忘れ去られることで終わるものが多い感じだ。かつて「冷戦」がそうだったし、今は「テロ戦争」や「地球温暖化」がそうだ。

米国債政治デフォルトの危機
 【2011年5月17日】 米政府の財政赤字が、法定上限の14兆2940億ドルに達した。米政府は、これ以上の国債発行ができなくなった。米政府は今後、為替安定のための基金などにあてる資金を、国債利払いや償還など必要不可欠な支出に回す。その緊急策によって、米国債は8月2日までデフォルトを免れる。しかし、それまでに赤字上限の引き上げが行われないと、史上初の米国債デフォルトが現実になる。実際のデフォルトにならなくても、米政府は綱渡りの状態になり、投資家が米国債への投資を控えると予測され、危機の可能性が増している。

再浮上した沖縄米軍グアム移転
 【2011年5月14日】 3人の有力米議員による今回の提案は、東アジアにおける米軍の力を落とさずに費用削減をやろうとしている。提案は、中国の台頭に対峙する戦略であり、米国の覇権を守りつつ軍事費を削ろうとする正統的なものだ。反戦的、孤立主義的、隠れ多極主義的な感じはしない。しかし、日本政府は提案を喜んでいない。官僚機構(対米従属派)が誘導する今の日本政府は、日米同盟の象徴として、米軍が減員せず今後も末永く日本(沖縄のみ)に駐留してほしいと考えており、米軍のグアム移転計画をひそかに迷惑な話だと思っている。日本も韓国も立派な軍隊を持っており、防衛費も十分で、米軍なしに自国を防衛できるが、日韓ともに政府は「うちの軍隊は弱いので米軍が必要です」とウソを言って国民を軽信させている。

米中のはざまで揺れる韓国
 【2011年5月12日】 韓国では「米中どちらと組むか」という議論が続いているが、李明博政権は天安艦の北犯人説を取り下げて態度を転換できそうもない。韓国は国家的に重要なときに内紛になり、過剰に議論してうまく国是の転換ができない性癖がある。これと対照的なのが、隣のわが日本である。韓国は過剰に議論して失敗するが、日本はまったく議論をしない状況を自ら作り出して失敗する。第二次大戦の敗北がそうだった。最近の日本で国是転換の議論が始まりそうだったのは、09年秋に鳩山政権が成立し、東アジア共同体や米中等距離外交を打ち出した時だ。だがその後、鳩山・小沢コンビは官僚機構からの攻撃にさらされて潰れ、米国覇権の崩壊が如実になっても対米従属以外の国是は全く議論されなくなった。

ギリシャからユーロが崩れる?
 【2011年5月10日】 ドイツなどEUの諸大国はギリシャに不満をぶつけつつも、追加融資してギリシャをユーロ内にとどめて救済し続けることに同意した。ギリシャ国債をめぐる状況が悪いのは事実だが、5月6日の非公式会議では、ギリシャのユーロ離脱と逆方向のことが話し合われていた。ギリシャ政府は最近、いくつもの打開策を検討し、その中の一つにユーロ離脱があったと指摘されている。シュピーゲルは、ギリシャ政府が検討した複数の打開策の中から、ユーロ離脱案だけを取り出して報道し、あたかもギリシャが間もなくユーロ離脱を決定するかのような印象を読者に与えた。

ビンラディン殺害の意味
 【2011年5月6日】 もし本物のビンラディンであるなら、丸腰の彼に向かって米軍部隊が顔面に銃弾を撃ち込んだのはおかしい。相手が丸腰なのだから米軍側に余裕があり、殺すにしても心臓などを狙うはずだ。顔面がきれいな方が、遺体の写真を世界に公開し、本当にビンラディンを殺したことを証明できる。顔を撃った(ことにして遺体の写真を公開しない)のは、人違いであると疑われることを強めてしまった。襲撃計画は何カ月もかけて練られ、海兵隊の特殊部隊は本物そっくりな隠れ家を作ってそこで襲撃の練習を繰り返したと報じられている。米当局は、ビンラディンのどこに銃弾を撃ち込むか十分検討したはずだ。

中東の中心に戻るエジプト(下)
 【2011年5月3日】 エジプトで軍部とムスリム同胞団が和合しつつあるように見えることは、中東全域の政治構造が約30年ぶりに大転換していくことにつながっていくと予測される。エジプトは、中東を米欧イスラエルの支配下から離脱・自立させることを画策するだろう。エジプト暫定政権によるパレスチナ和解策で、すでにそれが始まっている。中東政治のダイナミズムは、スンニ対シーアという作られた対立構造から、中東を米欧イスラエルの支配下から自立させようとするエジプト、イラン、トルコを中心とする動きと、米欧イスラエルによる支配に便乗してきたサウジ、湾岸産油小諸国、ヨルダンなどによる生き残り策との間の相克へと転換する。

中東の中心に戻るエジプト(上)
 【2011年5月3日】 エジプトの仲裁によって、パレスチナで敵対を続けていた西岸のファタハとガザのハマスが和解した。アラブの世論は、ファタハとハマスが和解することを、ずっと前から望んでいる。世論を受け、エジプトのムバラク前政権は09年に和解案をまとめ、和解の仲裁を開始したが、うまくいかなかった。ムバラクは、米国からの支援を受け続けるため、米イスラエルの傀儡になっており、パレスチナの和解を仲裁するふりをして、実際には和解を実現するつもりがなかった。エジプトだけでなく、ファタハも米イスラエルもパレスチナの再統合を望んでいなかったのだから、和解が進むはずがなかった。だが、こうした閉塞状況は、今年2月のエジプト革命によって終わった。エジプトの暫定新政権は、成立した直後から、09年にエジプト政府が立案した和解策に沿って仲裁の努力を再開し、わずか2カ月で和解を実現した。

タイのタクシンが復権する?
 【2011年4月29日】 06年のクーデター以来、タイでずっと続いている政治紛争の本質は、王室にぶら下がる勢力(軍部、官僚)と、議会を中心とする勢力(諸政党)との権力の奪い合いである。この対立の構図は、1932年に軍部の若手将校たちがタイ史上初の政党(人民党)と組んでクーデターを起こし、政治体制を絶対君主制から立憲君主制に転換してからずっと続いている。王室にぶら下がる勢力は、政治体制を立憲君主制にすることに譲歩し、議会や内閣の権力を認めたものの、その後できるだけ議会を抑制しようと試み、権力増大をはかる内閣を、軍事クーデターや憲法裁判所の判決によって潰してきた(司法権と軍事力は事実上、王室側にある)。逆に議会は、立法の力によって王室系の権力を削ごうとしてきた。

米中協調で朝鮮半島和平の試み再び
 【2011年4月25日】 米国と中国が協調し、韓国と北朝鮮を和解させようと動いている。この動きは、北朝鮮の核開発をめぐる6カ国協議を再開するために中国が発案したものといわれ、3段階の構想になっている。(1)韓国と北朝鮮との対話再開(2)米国と北朝鮮との対話再開(3)6カ国協議の再開、という3段階で、このうちの第1段階のための準備が今週、山場を迎える。

革命に近づくシリア
 【2011年4月23日】 2000年に父親のハフェズが死んでバッシャールが権力を継承した時、バッシャールは「政治改革」を目標に掲げ、多くの国民が、戒厳令などの独裁的な体制が解除されると期待した。しかし、父親の代からいた治安当局者たちは、自分たちの権限を低下させる政治自由化に反対し、バッシャールの政治改革は口だけに終わった。「いまさら戒厳令を解除しても遅すぎる」というのが大方の意見だ。すでに反政府デモは、アサドの独裁を終わらせることを明確な目標にしており、エジプトのように独裁が倒されるか、バーレーンのように運動と弾圧が長期化するか、どちらかになる。バーレーンはサウジアラビアという後ろ盾に守られているため、対立が長期化している。シリアにはそのような強い後ろ盾がないので、アサドは倒される可能性が大きい。

米国債デフォルトの可能性
 【2011年4月21日】 米議会多数派の共和党では財政緊縮を求める「茶会派」が台頭し、米議会で財政上限の引き上げる案に反対したが、共和党内は財政拡大(赤字増)で利権を拡大した軍産複合体の勢力も強かった。しかし、そんな中でS&Pが「赤字を減らさねば格下げだ」と宣言したものだから、茶会派は「赤字削減策として赤字上限を引き上げず頑張るのが良い」と強気になり、支持者を増やしている。5月中旬、米議会が赤字上限の引き上げを拒否したら「米国債のデフォルト」という、これまであり得なかったことが、現実の可能性になる。経済的な世界の景色が変わる。米国債に対する忌避が激しくなり、S&Pが避けたかった米国債の格下げが、むしろ前倒しされる。

タックスヘイブンを使った世界支配とその終焉
 【2011年4月19日】 英国系のタックスヘイブンが強力な理由は、それが大英帝国が持っていた世界に対する影響力を維持するシステムを目指す、英国の隠れた国策として行われているからだ。英国は第2次大戦直後、国力復活のため、米国政府による厳しい金融規制に縛られていた米金融界の資金をロンドンに流入させて運用して儲けられるよう、1950年代にロンドンをオフショア金融市場として機能させた。この戦略は洗練され、1960年代末に英国は、世界に対する植民地支配を全廃していったのを機に、英仏海峡やカリブ海、アジア地域にある自国の領土や旧植民地を、オフショア金融の拠点(タックスヘイブン)として機能する衣替えを行った。これにより、ロンドン金融街の代わりに、世界各地に点在する旧英国領が、米国など各地から集めて運用し、英国の金融の儲けを維持拡大する機能を果たすようになった。

日本は原子力を捨てさせられた?
 【2011年4月16日】 米原子力規制委員会のヤツコ委員長は、米大統領の代理人としての権威を得て、原発事故に対する日本政府の認識が甘すぎるという主張や情報発信を続けた。その流れから考えて、4月12日、日本政府が福島原発事故に関する国際評価尺度(INES)を唐突に5から7に引き上げたことに関しても、ヤツコがオバマの代理人として日本政府に圧力をかけた結果であると思われる。事故のひどさについて過剰な評価を行うことは、過剰な反応を誘発して悪影響が大きい。日本は「世界最悪」を早々と自認したことで、国内で原発を増設することも、海外に原発を売ることも非常に難しくなった。こんな自滅的なことを、日本政府が自己判断のみで決めるとは考えにくい。

福島原発事故はいつ終息するか
 【2011年4月14日】 汚染水の封じ込め作業がうまくいけば、数カ月後をめどに原発が放出する放射線量を減らすことができ、避難している人々が帰宅できる。事故原発は非常に不安定なので、人的ミスや再度の大地震など不測の事故が起これば、再び放射線量が激増するかもしれないが、それが起きる可能性があるのでずっと帰宅禁止の政策を政府がとり続けると考えることは無理がある。今の時点で、事故原発の周辺に10年も20年も住めないと確定的に言うことはできない。

リビア戦争で窮地になる仏英
 【2011年4月11日】 今後米国の覇権が衰退したら、カダフィのような軍備増強に熱心な産油国の独裁政権の力が増し、米国の軍事力の後ろ盾を失うフランスなど西欧諸国の言うことなど聞かなくなる。西欧諸国が米国の軍事力を使ってカダフィを倒し、リビアに傀儡政権を作るには、今回が最後のチャンスだ。だからフランスは、長年の反米姿勢を捨て、仏軍が率先してリビアを空爆しつつ、米国をカダフィ潰しの戦争に巻き込もうとした。しかし、米国はその手に乗らず、途中で後方支援に回る態度を強めた。フランスの策略は失敗した。

福島原発事故・長期化の深刻
 【2011年4月6日】 日々の放射線量は減っても、原発事故が長引くほど、累積被曝量は増える。たとえば原発から51キロ離れている福島市では、4月5日の段階で1時間あたり2マイクロシーベルトを観測しているが、仮にこの状態が何日も持続すると、20日間で政府が定める公衆にとっての1年間の被曝量の上限である1ミリシーベルトに達する。何カ月もこの状態が続くと、上限をはるかに上回る。チェルノブイリ事故など過去の事例では、放射線被曝の人体への悪影響が住民の健康被害として顕在化したのが、実際に放射線を浴びてからかなり経ってからのことだ。被曝の被害への対策は、顕在化してからでは遅すぎる。

イランとサウジアラビアの対立激化
 【2011年4月4日】 中東各地で、イランとサウジアラビアの対立が激しくなっている。バーレーン、イラク、レバノン、イエメン、クウェート、エジプトなどで、イランが支援する勢力が台頭し、サウジが支援する勢力が減退している。その要因の一つは、サウジの後ろ盾である米国の影響力が中東全域で低下するとともに、イラク侵攻以来の反米感情の高まりがイランにとって追い風になっていることだ。両国は直接の戦争になりにくいが、対立の行方は今後数十年間の中東の政治状況を左右する。

リビアで反米イスラム主義を支援する欧米
 【2011年4月2日】 反政府勢力がカダフィを倒して新政権を樹立したら、リビアは民主的な「良い国」になるというのが欧米の考え方だ。しかし実際には、カダフィに代わって東部の勢力が政権を取ったら、リビアは欧米にとって従来よりさらに手強い敵になる。カダフィの軍隊と戦う東部の武装勢力の中には、アフガニスタンやイラクで米軍などと戦った経験を持つイスラム聖戦士が多くいる。彼らは、欧米勢力をイスラム世界から追い出すことを目標とする反米イスラム主義者で、米当局がいうところのアルカイダの一部である。

震災対策にかこつけた日銀のドル延命支援
 【2011年4月1日】 大震災後、日本の企業などが海外に持っていたドル建て資産を取り崩して円に換え、復興資金として使うという予測から円が買われ、円高ドル安になった。日銀は、円高を止めるため市場に巨額の円資金を供給するとともに、円売りドル買いの為替市場介入を行い、G7諸国にも協調介入してもらった。その結果、今は円安に戻りつつあるが、この日銀の介入の目的は、円安だけでなく、これ以上金融緩和できない米連銀に代わって日銀が米国(日米)の株価をテコ入れする意図があったとの分析が、米国で出ている。

第2の正念場を迎えた福島原発事故
 【2011年3月31日】 福島第1原発の1−3号機では、圧力容器からの水の漏洩状況が把握しにくく、炉内の燃料棒の溶融状況も確定できない二重の非常事態で、圧力容器にどの程度の冷却水を入れ続ければよいか、手探り状態の運転が続いている。通常電源の配線が復旧して通常のポンプを動かせるまで、かなり時間がかかりそうだし、通常の冷却水循環機能を回復する際には、切り替えの難しさがある。その後の手探り状態の運転が安定してから、さらに何年も冷却水の循環を続け、炉心を冷やしつつ廃炉の作業に入る。こうした「冷やす水」の対策とは別に、圧力容器からの汚染された「漏れる水」の対策も続けねばならない。これらの「第2の正念場」の工程の中で大きな失敗があると、炉内が再び高温になり、大気への放射能漏れという「第1の正念場」の危険に戻りかねない。しかし、そうした不測の事態がなければ、事態は沈静化していく傾向にある。

シリアも政権転覆か?
 【2011年3月26日】 アサド政権の転覆されシリアが民主化することは、米イスラエルの望むところだとマスコミの多くが書いている。しかし私が見るところは、そうでない。シリアでは独立以来、イスラム主義の同胞団と、世俗主義(左翼)のバース党(アサドの党)が対立し、父アサドが1982年に同胞団の決起を大弾圧した後、同胞団は静かになったが、アサド政権が転覆されれば、ほぼ確実に同胞団が台頭する。近年のイスラエルは、シリアやエジプトといった周辺諸国との関係を改善することで国家の生き残りを模索してきた。アラブ諸国の全体を一つの国に統合し、イスラエルを潰すことを目標としている同胞団より、シリア一国の独裁者であり続けたいアサド家の方が、イスラエルにとってはるかにましな交渉相手だ。【短信】

欧米リビア戦争の内幕
 【2011年3月20日】米国は、自国主導でリビアと戦争するつもりではない。オバマは、リビア上空の飛行禁止区域を維持するのは欧州とアラブ諸国の主導で行われ、米国はそれを助ける役割に徹すると表明している。米国防総省は「米軍のパイロットが米軍の戦闘機に乗ってリビアを空爆することを意味するものではない」と表明し、リビア上空に偵察機を飛ばして情報収集したり、後方支援などはするが、それ以上のものでないと言っている。米国は英仏に「戦闘は君たちでやってくれ。僕らは後ろで助けるから」と言ったわけだが、これがその通りにいくとは限らない。英仏は、米政界の右派(軍産複合体)を全力でたらし込み、米軍をリビアとの戦闘に引っ張り込もうとする。英仏軍が負けそうになったら、米軍がもっと出て行かざるを得ない。

福島原発事故をめぐる考察
 【2011年3月16日】いずれかの原子炉の格納容器の外側でなく内側で水素爆発が起きた場合、格納容器に大きな裂け目ができたりして、今よりはるかに多くの放射性物質が外気に漏洩しかねない。再臨界も格納容器の大破裂も、いずれも現時点では起きていないが、すでに可能性として存在している。4号機の使用済み核燃料プールの水位が下がったまま使用済み燃料が冷却されない状態が続くと、この余熱で燃料被覆管が溶融し、プールの下部にたまり、そのたまり方の状態によっては、ここでも再臨界が起こる可能性がある。炉心溶融の時、どのような時に再臨界が起きるか、専門家もほとんどわかっていない。

日本の大地震と世界経済
 【2011年3月14日】▼日本企業が復興費用や保険金支払いのため、海外投資金を取り崩して日本に戻す流れが起こり、円高ドル安が続くとの見方がある。
▼ドイツや米国で原発への反対意見が強まっている。
▼日本が米国から燃料を買い、米国内のガソリン価格の上昇に拍車がかかり、米経済の回復の足を引っ張る?

最近の速報分析から
 【2011年3月9日】 主な分析:香港上海銀行を香港に行かせない英国。原油高騰とスタグフレーションの可能性。金銀を通貨にしたい米ユタ州。米地方債の売れ行き悪化。地上軍侵攻をやめる米国。ロシアの北方領土軍備増強は中国への対抗? 運動家より海外マスコミが多い中国ジャスミン革命。リビア反政府派に拒否された英軍派兵。和解を模索するパレスチナ二大勢力。

覇権とインターネット
 【2011年3月7日】 インターネットの登場や発展が産業革命である以上、そこには資本と帝国の相克がある。ここ数年のインターネットの発展の産物であるソーシャルメディアの世界的普及によって、エジプトやサウジアラビアといった中東の重要な諸国の親米政権が倒されそうになっており、中東における米英覇権という「帝国」が自滅しようとしていることが、産業革命の伝播をめぐる資本と帝国の相克に関係しているように見える。

失われるドルへの信頼
 【2011年3月4日】 地政学的な混乱の時、従来なら世界の投資家は、資金を米国債やドル建て債権に逃避させ、為替市場でドルが上がるのが常だった。だが今、中東危機による原油高騰を前にして、この「有事のドル」現象は起きず、代わりにスイスフランなどが史上最高値を更新した。原油が高騰すると、極度の金融緩和を続けている米国がデフレからインフレに転換し、むしろ米国債などドル建て債権が下落(長期金利が上昇)すると投資家は考えている。金利が上昇すると、米経済は不況に戻ってしまう。ドルへの信頼が崩壊し「有事のドル」の不文律が失われている。

中東革命とドル危機の悪循環
 【2011年3月2日】 中東各地で起きている政権転覆革命の発端となったチュニジアやエジプトの反政府運動は、食糧高騰に対する庶民の不満が爆発して起きた。そして食糧価格の高騰は、米当局がドルを過剰発行して米国の金融経済を救済しようとしたため、投資家や新興市場諸国がドルから現物や先物の穀物など国際商品に乗り換える傾向を強めた結果として起きている。ドル危機によって中東革命が起こり、それが原油高騰からインフレを引き起こし、ドル危機をひどくする悪循環が始まっている。

内戦化するリビアに米軍が侵攻する?
 【2011年3月1日】 米政府は財政難だ。米議会では防衛予算も削れという意見が出ている。オバマら政権中枢の人々は、米軍をリビアに介入させたくない。米軍はリビア沖に展開を開始したが、リビアから避難する人々を支援するのが主眼で、米軍のリビア侵攻を意味しないと報じられている。しかし、防衛予算の削減に抵抗している軍事産業など軍産複合体にとっては、米軍がリビアに侵攻せざるを得なくなり、その関係で予算削減が棚上げされ、防衛費の増加が続くのが望ましい。軍産複合体の系列の政治家である共和党のマケイン上院議員らは、オバマ政権に対し、米国がリビアの反政府勢力に武器を供給すべきだと言い出している。

イラク反政府運動の意味
 【2011年2月28日】イラク各地で反政府運動が起きている。そこで発せられる要求は、政府の腐敗根絶から治安改善、米軍撤退、クルド人2大政党の権力独占への批判まで非常に多岐にわたっており、この運動が成就するとイラクの何がどうなるのか見えない。しかし、イラク政府の反応は明確だ。反政府運動に対する報道をすべて禁止し、代わりにイラクのマスコミはデモの抑制を試みるマリキ首相、サドル師、システニ師などシーア派指導者の演説を流している。このイラク政府の反応からは、反政府運動がイラクのシーア派主導政権を壊そうとする方向を持っていることが感じられる。そして米政府は、イラク政府の運動弾圧を黙認している。

「第2の911事件」が誘発される?
 【2011年2月27日】パキスタン軍の諜報機関ISIが、CIAのデービスの所持品を捜索したところ、厳秘の機密文書が発見された。そこには、デービスが所属するTF373の任務として、アフガンやパキスタンのイスラム過激派を通じてアルカイダに核兵器の材料となる核分裂物質や生物化学兵器の材料をわたし、米国に対して大量破壊兵器によるテロを起こさせる計画が書いてあった。米欧の経済覇権は数カ月内にも崩壊しそうな危機的な状況にあるが、米当局は、アルカイダに「第2の911事件」的な対米大規模テロを起こさせ、それを機に米国は世界規模の戦争を起こし、テロ戦争の体制を再強化して危機を乗り越え、世界に対する米国の覇権を維持する目的だという。

最近の速報分析から
 【2011年2月24日】主な分析:米国とカナダが軍事統合。米国でベトナム戦争以来の大規模な反政府運動。サイバー戦争は誇張だらけ。住宅ローン登録システムの合法性を米裁判所が否定。エジプトを試すイラン軍艦のスエズ運河航行。エジプト革命の主導組織は米当局に支援されていた。EU統合を崩壊させるドイツ与党。

リビア反乱のゆくえ
 【2011年2月22日】リビアの状況は、いくつかの重要な点で、エジプトやチュニジアと大きく異なっている。その一つは、エジプトやチュニジアが統一国家として無理のない状況で、政権が転覆されても国家が分裂する恐れがなかったのに対し、リビアはいまだに、首都トリポリを中心とする西部地域(トリポリタニア)と、第2の都市ベンガジを中心とする東部地域(キレナイカ)の間に対立が強く、それを無理矢理に統合してきた独裁者カダフィが辞めたら、東西の対立が決定的になり、リビア国家が二分されて内戦になる可能性がある。

バーレーンの混乱、サウジアラビアの危機
 【2011年2月21日】 バーレーンで王政が転覆され、革命がサウジアラビアに伝播して、サウジ東部州で真の民主化(分離独立)が実現すると、サウジの原油の9割は、サウド王家でなくシーア派のものになる。サウジのシーア派はアラブ人だが、イラクやバーレーンのシーア派と同様、親イランの傾向をとる。サウジ、イラク、イランという中東の3大油田地帯のすべてが、反米反イスラエルのイランの傘下に入る。OPECはイランの傀儡となり、イランを敵視する国は石油を止められ、原油価格は高騰する。イランは米欧に敵視されている分、中国やロシアと親しいから、米欧の覇権喪失が加速する。

ソーシャルメディア革命の裏側
 【2011年2月18日】 エジプト革命を率いた4月6日運動は、早い段階から米当局筋に支援されてきたが、この運動体が米当局の傀儡やスパイであると「悪い」方向に考える必要はない。この運動体は、自分たちのまわりの社会を良くしようと純粋かつ真摯に考えるエジプトの若者らが参加・推進していると考えた方が自然だ。私にとって分析が必要だと思うのは、4月6日運動自体に関することでなく、4月6日運動を支援し、ムバラク政権を転覆するところまで容認してしまった米当局筋の意図に関することだ。

きたるべきドル崩壊とG20
 【2011年2月16日】おそらくG20がドル単独制に代わる通貨体制を確立する前に、ドルや米国債の崩壊が起きる。早ければ今年か来年、米国債の急落が起こりうる。米当局がうまく延命策をつなげれば、もっと先まで持つ。しかし延命策を越えた根本的な問題解決は困難だ。ドルが崩壊したら世界経済が大混乱し、中東などで戦争が起きるかもしれないが、その混乱の中で、G20が新しい多極型の基軸通貨体制を具現化していくのではないか。

中国の米国債保有額のなぞ
 【2011年2月14日】米連銀のバーナンキ議長は米議会での証言で、中国が保有している米国債の総額が、発表されている8960億ドルではなく、少なくともその2倍以上の2兆ドルであると述べた。中国は米国債の発行総額の4分の1を保有していることになる。だがバーナンキは、中国の米国債保有額をできるだけ多く見せようとする動機を持っている。本当のことを言っているとは限らない。

やがてイスラム主義の国になるエジプト
 【2011年2月12日】 エジプトのムバラク辞任に関して、欧米や日本の多くの人々が「エジプトがリベラルな民主主義に転換して欧米化し、みんなハッピー」と思っているが、それは幻想だ。欧米人が嫌うイスラム主義が西アジアを席巻する可能性の方が高い。米国のマスコミや右派は、イスラム同胞団を大したことない勢力と分析している。だがそれは、03年のイラク侵攻の前後に、彼らが「米軍がフセイン政権を倒すだけで、イラクはリベラルな民主体制になっていく。イラクがイスラム主義化することはない」と言っていたのと同様の、少し考えればすぐにわかる大間違いである。米国のマスコミや右派には中東情勢に詳しい人が多いのに、なんでこんな基本的な大間違いを繰り返すのか。

最近の速報分析から
 【2011年2月11日】主な分析:G20が食料高騰規制を機に世界政府機能の強化を提案。世界最大の米国債保有勢力が中国から米連銀に交代。お門違いになる国際石油価格WTI。米国の高齢者の6人に一人が貧困生活。アリゾナ州議会が米国から事実上の分離独立を画策。S&Pの日本格下げはドル防衛策の一環、喜んで自滅したがる日本当局。現実路線に転換するアウンサン・スーチー。エジプト革命を機にイスラエルを裏切るネオコン。マスコミがソーシャルメディアを喧伝するいかがわしさ。英国が欧州大陸にイスラム暴動の拡大を煽動?

ムバラクの粘り腰
 【2011年2月7日】ムバラクの粘り腰の本質は、イスラエルの粘り腰だ。チュニジアの革命がエジプトに伝播してムバラクが辞任すると、政権転覆が他のアラブ諸国に拡大していく可能性が高まる。ヨルダンやパレスチナ自治政府といった、イスラエル近傍の諸政府が次々と瓦解し、代わりにイスラム同胞団の政権になるか、イスラム主義者と政府軍との内戦の混乱に陥る。ムバラクが早期に辞めたら、イスラエルが30年かけて構築した自国周辺の安定状況が瓦解する。だからイスラエルと、米中枢の親イスラエル勢力は、ムバラクを辞めさせるわけにいかない。

エジプト革命で始まる中東の真の独立
 【2011年1月30日】チュニジアで始まった民衆による政権転覆の革命がエジプトに飛び火し、ヨルダンやイエメンなどにも伝播している。50年ぶりに、アラブ諸国が米国に分断された傀儡勢力である状態から自らを解放するかもしれない展開が始まっている。今後、独裁政権が次々と崩壊していくと、軍とイスラム主義勢力との対立状態になる。イスラム主義勢力は各国の貧困層の広範な支持を受けている。中東が完全に民主化されると、各国に支部を持つイスラム同胞団によるアラブの統一、つまりアラブのイスラム革命が起こる。

最近の拙速分析から
 【2011年1月26日】主な分析:グリーンスパン米連銀議長が金本位制を支持。米連銀が不良債権の増加を隠す会計基準の変更を実施。食料価格が今後40年上昇し続けると予測する英政府が「世界政府強化」を提案。経済学界の権威者は連銀の傀儡ばかり。米議会が州財政の破産を認める法改定を検討。インフレが悪化する中国は人民元の切り上げが必要になる。中国がカーギルから史上最大の穀物買い付け。米国やロシアがパレスチナ国家の承認に向けて行動開始。

チュニジアから中東に広がる革命
 【2011年1月21日】チュニジア革命は、他のアラブ諸国に伝播し、中東が英米から支配される構図を破壊していく流れになりそうだ。エジプトやヨルダンがイスラム同胞団主導の国に転換すると、パレスチナ問題が劇的にイスラエルにとって不利になる。最終的には、中東のほぼ全域がイスラム主義に席巻され、イスラエルは窮して自滅的な戦争を起こすか、連続的な譲歩を強いられた挙げ句に消滅するだろう。ドル崩壊という米国の経済覇権の失墜が、チュニジア革命の拡散を通じて、中東から米国が撤退せざるを得なくなり、イスラエルも潰れるという、米国の政治覇権の失墜につながる流れが起きている。中東は米英の拘束から自立し、豊富な石油ガスの資源を背景に、多極型に転換した世界の一つの極になるだろう。

ほぼ日刊の拙速分析を始めました
 【2011年1月18日】私は、毎日ネット上で何十本かの英文情報を探して読み込み、簡単な分析をして短いメモを書き、解説記事を書く時に使います。その分析メモを「拙速分析」と名づけ、ほぼ日刊で「田中宇プラス」の会員向けに配信し始めました。

「イランの勝ち」で終わるイラク戦争
 【2011年1月6日】 米国は何兆ドルもの軍事費と十何万人もの兵士をイラクに派兵して何年間も占領したが、イラクの政治を支配しきれなかった。ところがイランは一人も派兵せず、金はばらまいただろうが大したことない金額で、イラクの政治を支配するに至った。しかもイラクが仇敵米軍の占領下にあった数年間に、である。米国は高い代償を払って得たイラクの利権を、無償でイランに譲渡したことになる。米軍は、早ければ素直に今年末、遅くとも2012年ごろには、国際社会の圧力を受け、イラクから総撤退するだろう。その後のイラクはイランとの結束を強め、両国は2つの大産油国としてサウジアラビアより強い国際政治力を持つだろう。

危機深まる今年の世界経済
 【2011年1月3日】 EUが財政統合に失敗した場合、欧州と米国の両方が崩壊感を強めていくことになる。欧米しか見ていない日本人的には「欧州も米国も破綻したら世界はおしまいだ」となるが、実際はそうでない。中国などBRICの新興市場諸国がかなり経済的に強くなっており、内需も拡大している。欧米が弱体化する分、IMFや国連などの国際社会でBRICの発言力が強まり、新興諸国の成長力が世界経済の牽引役になる事態が前倒しされる。欧米両方が破綻を強めると、世界の多極化が進む。日本は経済的に中国への依存を強めており、それが加速する。大嫌いな中国に依存する哀れが増す。


これより前の記事(2010年の記事)


 作者あてのメールはこちらからお願いします。リンクは、このサイト内のどの記事に対しても、自由に張っていただいてかまいません。