「田中宇の国際ニュース解説」2009年の記事一覧
これより後の記事(2010年の記事)
地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(2) 【2009年12月27日】 地球が温暖化していないのに、世界のほとんどの国の代表が集まって温暖化対策会議を開いたことは、確かに無意味であり、壮大な無駄遣いだ。合意文は「誰にも好かれない文書」と揶揄された。だが、もう一つ深く掘り下げてみると、実はCOP15は非常に重要な会議だった。それは「世界政府作り」の面である。
「官僚が隠す沖縄海兵隊グアム全移転」が英語訳されました。
Japanese Bureaucrats Hide Decision to Move All US Marines out of Okinawa to Guam
ユーロの暗雲 【2009年12月24日】 もし今後、金融財政危機が南欧、東欧からユーロ圏全体へと広がり、ユーロが不安定になって国際通貨としての信用を失墜した場合、得をするのは、財政赤字と通貨過剰発行によってユーロ圏より先に破綻すると思われてきた米国と英国である。「米英中心主義」と「多極主義」との対立軸で見ると、ギリシャの危機は、EUが世界の極として立ち上がることを阻害するとともに、米英中心主義を延命させる効果がある。今年初めと今回のギリシャや東欧の金融財政危機について「英米金融界が、ユーロは危ないという話を作ってドルやポンドを守るために流したデマの結果である」との指摘もある。
イランとイラクの油田占拠劇 【2009年12月19日】・・・・非米反米的な傾向を強める新生イラクが、その傾向の一環として行ったのが、非米諸国の取り分を多くした石油開発権の落札だった。イランが、こうしたイラクの行為を敵視するはずがない。イラクが自国の石油利権を非米化していくのは、むしろイランにとって好ましいことである。今回のイラン軍によるイラクの油田占拠は、イラクの石油利権が非米化され、イラク自身が非米反米の国になっていく道筋を歩み始めたことを機に、イランとイラクが国際原油価格をつり上げるために、採掘されていない油田をイラン軍が占拠し、両国間の油田地帯で国境紛争が起きているかのような状況を作ったと思える。
強まる日中韓の協調 【2009年12月15日】 米国のボズワース特使の訪朝によって、来年の6カ国協議開催と、北核廃棄・米朝と南北の和解・日韓の対米従属の終わり・東アジア新安保体制への転換という流れが復活した。この流れを受けて日本では、東アジア共同体構想が出たり、小沢の大訪中団が繰り出したり、既存の宮内庁体制を破る形で天皇の習近平会見が行われる動きになっている。小沢や鳩山は、従来の日本で「マスコミや世論を敵に回すので提起しない方が良い」と考えられてきた「米軍基地は日本に必要なのか?」「日本は対米従属のままで良いのか?」「中国、朝鮮、ロシアを嫌うのは国益に合うのか?」「皇室と国民の関係はこれでいいのか?」などといった問題を、あえて蒸し返している。この動きは、世論に問いを吹き込むことで「戦後のタブー」を露呈させ、米国覇権が壊れて世界が多極化する今後、日本がどのような国になるのが良いかを、日本人が模索できるようにしているように見える。
官僚が隠す沖縄海兵隊グアム全移転 【2009年12月10日】 日本のマスコミでは「沖縄からグアムに移転するのは、海兵隊の司令部が中心であり、ヘリコプター部隊や地上戦闘部隊などの実戦部隊は沖縄に残る」と説明されてきたが、宜野湾市役所の人々が調べたところ、司令部だけでなく、実戦部隊の大半や補給部隊など兵站部門まで、沖縄海兵隊のほとんどをグアムに移転する計画を米軍がすでに実施していることがわかった。ヘリ部隊や地上戦闘部隊のほとんどがグアムに移転するなら、普天間基地の代替施設を、辺野古など沖縄(や日本国内)に作る必要はない。辺野古移転をめぐるこの数年の大騒ぎは、最初からまったく不必要だったことになる。
日中防衛協調と沖縄米軍基地 【2009年12月8日】 日本にとって中国が脅威でなくなると、沖縄の米軍基地は、必要性が大幅に低下する。2005年の日米防衛協議で、沖縄の米軍基地は、従来からの朝鮮半島有事への備えだけでなく、中国の脅威に備えるためにも必要だと宣言された。だが今や、台湾も親中的な国民党政権であり、米国も中国との協調を重視している。オバマ大統領は先日の訪中で「米国は、中国を世界有数の大国として尊重する。中国に、大国としての役割を期待する」と表明した。沖縄の米軍基地は、日本ばかりでなく米国にとっても、すでに不必要である。
北朝鮮通貨切り下げの意味 【2009年12月6日】・・・民間に蓄積された富の一掃をめざした北朝鮮のデノミ戦略を見て、東京発の英文ウェブログの筆者は、興味深い問いを発している。「北朝鮮と同じ趣旨の手口を、米当局がやることは絶対ないといえるかどうか」というものだ。経済面で世界最弱の北朝鮮と同じことを、世界最強の米国がやるはずがないと思う人々の軽信を、このウェブログ筆者は嘲笑している。
あちこちで膨らむ金融再崩壊の種 【2009年12月4日】・・・G20のFSBが「遺言状作成」を要求した30行は、今後の金融危機で潰れる可能性がある。日本では、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、野村証券が30行の中に入っている。国際的に活動する日本の大手金融機関はすべて危ないということだ。これは日本人にとって驚愕だ。銀行から預金を引き出したくなる。しかし、G20の遺言状作成戦略についてよく考えてみると、これは覇権多極化にともなう政治的な動きだと感じられる。新興市場諸国の機関投資家の中には、先進国の同業者よりずさんな投資をしているところが多そうだが、新興諸国の金融機関は今回の危険リストに入っていない。
地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(1) 【2009年12月2日】・・・これは要するに、1940年代の高温時期の山をなだらかにして、今より気温が高い状態でなくすとともに、60年代から80年代以降にかけて温度が急上昇したように見えるグラフを作るための操作である。プログラムの作者自身が「非常に人為的(不自然)な補正」と注釈していることからも、温暖化人為説の証拠作りのため、データを歪曲したことがうかがえる。
ドバイの破綻 【2009年11月27日】 来年にかけてドバイが債務不履行に陥る可能性がある。今のドバイの負債総額800億ドルは、2001年に破綻したアルゼンチンの負債額に匹敵する。アルゼンチンは人口3700万人だが、ドバイの人口は220万人で、しかも移民以外のもともとの人口は40万人しかいない。今年初めに破綻したアイスランド(人口10万人)の負債額は95億ドルだった。ドバイは最近まで飛ぶ鳥落とす勢いの成長をしており、観光地としても有名で、エミレーツ航空会社の評判も良かった。ドバイが破綻すると、イメージ的な衝撃も大きい。
経済覇権国をやめるアメリカ 【2009年11月26日】 米オバマ大統領は、アジア歴訪を終えて帰国した後のラジオ演説で「米国は従来のような借り入れによる消費で経済を回してはならず、代わりにアジアへの輸出で経済成長せねばならない。米国民は消費を控えて貯蓄を増やし、政府も財政赤字を減らさねばならない。アジアへの輸出が5%増えるだけで米国の失業はかなり減る」と述べた。私から見ると、このオバマの発言は、米国が経済覇権国をやめることを意味する決定的な宣言である。
パレスチナ和平の終わり 【2009年11月24日】 パレスチナの最大政党ファタハは、パレスチナ自治政府(PA)を解体するとともに、国連の力を借りてパレスチナを国家として国際認知させ、入植地に居座るイスラエル人に侵略者のレッテルを貼り、イスラエルと自分たちの善悪を転換しようとしている。同時にファタハは、イスラエルに対する非暴力の民衆蜂起「第3インティファーダ」を起こそうとしている。これは国連でパレスチナ国家の創設が認められていくのと連動して行われるので、マスコミもパレスチナの運動に注目せざるを得ない。非暴力の民衆運動に入植者らが発砲してパレスチナ人を殺害したら、それはイスラエルによる侵略的な戦争行為であり、世界から非難される。
中国が世界経済の中心になる? 【2009年11月20日】ジョージ・ソロスが言うように、世界経済を救うのは、中国に先導された新興諸国や途上諸国だろう。だが、救済の前に地獄が来る。中国が本気で動き出すのは、まだ少し先の話だ。それまでは米経済の崩壊による世界経済危機の拡大が続くだろう。中国は、米英が経済崩壊によって力を失い、英米系投機筋が中国を攻撃できなくなってから、人民元の国際化をやるつもりかもしれない。
近現代の終わりとトルコの転換 【2009年11月18日】世界的に起こりつつある多極化は、欧米が中心だった「近現代」という時代の終焉を意味している。欧米が圧倒的に強かった20世紀前半には、トルコや日本のような国々は「近代化」(欧米化)を進めざるを得なかったが、21世紀になって欧米が相対的に弱くなった今、欧米モデルを目指す国家戦略は時代遅れになりつつある。各国は、近代化以前の自国の姿を歴史的に捉えなおし、欧米化を絶対視する従来の価値観から距離をおいた上で、自国の戦略を見直す必要に迫られている。トルコは、この見直しをすでに開始している。
日本の官僚支配と沖縄米軍 【2009年11月15日】 田中角栄の追放後、官僚機構は「対米従属をやめようと思うと、角さんみたいに米国に潰されますよ」と言って自民党の政治家を恫喝した。この官僚による「虎の威を借る狐」の戦略を持続するためには、米国が強くて日本は弱い状況が必要で、そのために官僚は、沖縄に米軍が駐留し続けるよう、巨額の金を使って米軍を「買収」し続けた。外務省は「対米従属をやめたら米国が日本を潰す」という歪曲をマスコミに報じさせ、世論を操った。
二番底に向かう世界不況 【2009年11月11日】来年にかけて、米国の商業不動産市場の崩壊が金融危機の再燃を招き、失業増が消費減につながり、米政府が財政赤字を急増して景気テコ入れをしても足りず、米国は再び不況に戻る懸念が増す。これがドイツなど各国の経済難につながるので、メルケル首相は「来年は今年より悪い」と予測している。先進諸国はすべて厳しい状況になる。
民主党の隠れ多極主義 【2009年11月6日】日本の民主党がとっている国連中心主義は、米英中心体制を崩して世界を多極型に転換する多極主義とほとんど同じである。国権共有化の是認による東アジア統合推進と合わせ、民主党は、日本の国是を米英中心主義から多極主義に転換しようとしている。対米従属をやめた後の日本が多極化を阻害しかねないので、その可能性を削ぐために、米国の隠れ多極主義者は、日本に地方分権をやらせ、国家としての統合力を低下させて、日本が恒久的に東アジアの一員となるように誘導している。
沖縄から覚醒する日本 【2009年11月4日】対米従属下の高度成長が終わった日本には、官僚制度を大幅縮小させる地方分権が適しているが、上からやってもダメで、下から住民が革命的に権力を霞ヶ関から奪う展開にならないと、地方分権は進まない。しかし、日本の住民は政治にすっかり諦観し、下からの力はほとんど存在しない。そんな中で民主党の沖縄ビジョンが「沖縄を地域主権のパイロット・ケースにする」と言っているのは、米軍基地問題をめぐり、米国の「協力」も得て民主党が煽った沖縄の人々の「住民自治の精神」が、いずれ本土にも感染し、日本各地で下から地域主権を求める動きが起きることを期待していると読み取れる。うまくいけば、日本は沖縄を皮切りに覚醒していき、国連中心の多極化した世界の中で、指導力を発揮する国の一つとなりうる。
新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題 【2009年10月31日】 地球が本当に温暖化しているのか、その原因は人為によるものなのか、わからなくなっているのに、COPでの温暖化対策の国際議論は、相変わらず温暖化を前提として続いている。地球が温暖化しているのかどうかの「事実」(人々が事実と感じるイメージ)は、マスコミや学界を操作すれば変えられるのだから、現実がどっちであるのかは、実は重要でない。しかしその一方で、温暖化対策の元締めである国連を握るのは、先進国から新興諸国に代わっている。新興諸国は温暖化の国際プロパガンダのシステムをそのまま使って、資金が先進国から途上国に流入する制度を作ろうとしている。英国など温暖化問題の首謀者にとっては、地球寒冷化よりも、新興諸国による乗っ取りの方がはるかに脅威だろう。
「世界がドルを棄てた日」中国語版が出ました。 「世界抛弃美元的臨界期」中国鉄道出版社
オバマの核廃絶策の一翼を担う日本 【2009年10月27日】 世界多極化に沿ったNPTの再編を目指すとき、それを米国だけが主導すると、英イスラエルから圧力がかかり、むしろ多極化を阻害する結果になる。そのため、英米と親しいが核武装していない豪日に世界核廃絶の準備となるICNNDを作らせたと推測できる。対米従属と違う方向のことはやらないのが日本の姿勢だったので、キッシンジャーらは、米国と親しいものの中国と協調してアジアの一員になりつつある豪州に「日本の引っぱり出し」を要請したのだろう。豪ラッド首相は08年に訪日した際、世界の非核化を論じる国際組織を主催することを日本に提案し、日本政府はいやいやながらも共同議長国となることを了承した。
中国の内外(3)中国に学ぶロシア 【2009年10月23日】 ロシアは、伝統的に中国を信用していないので、これまでは、中国共産党に学ぶなどということはしたくなかった。そもそも1910年代から共産党の運営技能を毛沢東ら中国人に教えてやったのはわれわれだ、と考えるロシア人のプライドもある。しかし、ここ1-2年の急激な覇権の多極化の結果、中国は欧米と並ぶ覇権国になっている。「政治独裁の維持したまま経済を自由化して発展する」というトウ小平以来の中国式発展モデルは、世界各地の発展途上国にもてはやされている。この激変の中、プーチンは考えを変え、中国に学ぶことにした。
オバマのノーベル受賞とイスラエル 【2009年10月21日】 オバマはノーベル受賞によってイラン空爆ができなくなった。この件を欧米イスラエル内の暗闘の図式に当てはめると、欧州勢と米国の隠れ多極主義者(ホワイトハウス)が組んでノーベル選考委員長に圧力をかけ、授賞に持っていったと推測できる。今後、イラン空爆は行われたとしてもイスラエル単独でやることになる。イスラエルはまた一歩、不利な立場に追い込まれた。
台頭する中国の内と外(2) 【2009年10月17日】 アフリカからパキスタンまでの広い範囲で、中国の影響力が拡大している。アフガニスタン政府も、中国による介入を望んでいる。中国の作戦としては、米軍が撤退を決めたら、国連がアフガン国内諸派間の和解を取り持ち、中国もその和解工作に協力してアフガン復興に参加し、その間に中国からアフガンへのワハン回廊の道路を立派にして、米軍撤退後のアフガンの経済開発に投資して儲けようと考えているのだろう。
台頭する中国の内と外 【2009年10月16日】 世界での中国の影響力は今後ますます拡大するだろうから「中国の次の最高指導者が誰になるか、どんな人が党中枢で力を持つかによって、世界の未来は変わる」という見方が、世界的に強くなるかもしれない。しかし、私はその見方はとらない。中国がここまで急速に台頭したのは、胡錦涛ら共産党幹部の世界戦略が見事だったからではない。
東アジア共同体の意味 【2009年10月13日】 東アジア共同体は今のところ、観光客訪問のビザ免除制度や、公衆衛生、エネルギー、環境問題など、すでに各国が協調している分野で結束を強める予定で、通貨統合はずっと先のこととされている。だが、今後ドルが崩壊していくと、ドルに代わるアジア域内の決済体制が必要になり、自然と通貨統合が加速されるだろう。鳩山政権が「東アジア共同体」を言い出した最大の理由は、米国崩壊の顕在化が間近だからだと私はみている。日本の政権交代が9月中旬で、G8がG20に取って代わられてドル崩壊の過程に入ったのが9月末だから、日本はぎりぎりで多極化対応の態勢に滑り込んだわけだ。
世界システムのリセット 【2009年10月11日】 今後起こりうるドル崩壊過程で失われるものは、米英の中央銀行制度と、米英の中央銀行が日本やEUの中央銀行を引っ張り回してきた戦後の米英中心金融体制と、その体制下で「金融技術革新」によって繁栄していた民間金融機関の儲けである。民間主導・米英中心の国際金融体制がシャットダウンされ、代わりに国家主導の多極型の国際金融体制が立ち上がっていきそうな「世界システムのリセット」の過程に入っている。リセットボタンが押された瞬間は、9月25日にG20と米政府が「世界経済の中心はG8からG20に移った」と宣言した時である。
ドルは崩壊過程に入った 【2009年10月8日】 石油のドル建て取引をやめることが検討されているという、英インディペンデント紙の記事は、内容は決定的ではないが、タイミングとして重要だった。最近のG20サミットやIMF総会で、ドルの地位が低下して基軸通貨は多極化しそう(すべき)だという発言が相次ぎ、どうなるのだろうと人々が思っていたところに「石油のドル建てをやめることが計画されている」と報じられ、ドル下落と金高騰につながった。これが転機となり、事情通の間では「ドルは崩壊過程にある」ということが「常識」となった観がある。ドルは「崩壊に向かう過程」から「崩壊する過程」に入った。
G20は世界政府になる 【2009年10月6日】 今のところG20は、経済政策の分野のみ世界政府として機能するが、G20の最大の議題はドルが崩壊して国際通貨体制が多極化していく今後の転換をできるだけ安定的に進行させることである。これは覇権の問題であり、国際政治の問題でもある。国際政治の問題は、国連安保理が世界の最高意志決定機関であるが、今回のIMF(国連機関)とG20の融合の流れから考えると、経済だけでなく政治分野でも、いずれG20が国連安保理に取って代わる、もしくは国連安保理の体制が改革されてG20に近いものになると予測される。
多極化の本質を考える 【2009年10月4日】 米英中心主義者による延命策がうまくいかなければ、ドルは崩壊し、米英中心体制が崩れて世界は多極化し、米国は通貨と財政の破綻と、もしかすると米連邦の解体まで起きる。しかし米国が破綻するのは、英国など覇権を維持したい勢力に牛耳られてきた状態をふりほどくためであり、米国は恒久的に崩壊状態になるのではなく、システムが再起動するだけだ。いったん単独覇権国型の米国がシャットダウンした後、多極化に対応した別のシステムを採用する新生米国が立ち上がってくるだろう。
G8からG20への交代 【2009年9月29日】 19世紀から現在までの約150年間、欧米が世界を支配してきた。G8は、世界を支配する欧米が意志決定をする機関だった。G20がG8に取って代わることは、世界を支配する勢力が「欧米」から「欧米+新興諸国」へ拡大したことを意味している。中国を筆頭とする新興諸国の地位は大幅に上昇した。今回の世界の覇権体制の転換は、150年に一度の出来事といえる。
歪曲続くイラン核問題 【2009年9月27日】・・・「米国はゴムの核施設について暴露して非難する」とロシア経由でイランに伝えたのは、米国内部だったとしてもホワイトハウスではなく、共和党右派や国防総省内、もしくはイスラエルの右派だった可能性の方が強い。イランに核兵器開発の濡れ衣を着せる戦略を推進してきた彼らは、オバマが対話によってイラン問題を解決してしまうことに反対で、10月1日のイランと国際社会の一回目の交渉が行われる直前の今のタイミングで、ロシア経由でイランに「米国はゴムの施設建設を暴露し、空爆の標的に指定する」などと伝え、イランがIAEAに申告するよう誘導したのだろう。
多極化に対応し始めた日本 【2009年9月25日】 日本人の多くは従来「米国に嫌われたら日本はおしまいだ」と恐れてきた。しかし今、日本人が漠然とした危機意識から8月末にとった投票行動によって民主党政権に転換してみると、日本は対米従属を静かに離れることによって、意外にも米国に対して強い立場を持てる事態となった。今後、日本人は世界における自分たちの新たな立場の意味に気づき、自信を持つようになるかもしれない。
近づく多極化の大団円 【2009年9月19日】 米英の覇権が強く、ロシアが米英に立ち向かうことに躊躇している限り、米国はロシアを挑発し、奮起させ続ける。だが、米英覇権の崩壊が進み、代わりにロシアや中国やイランといった非米反米諸国が国際社会の主流に出てくる主役交代の瞬間、多極化の瞬間が近づくと、米国はロシアを挑発し続ける必要がなくなり、東欧へのミサイル防衛計画も破棄される。この私の分析に基づくなら、今回オバマが東欧へのミサイル配備を破棄したのは「多極化の瞬間」が近づいていることを意味している。
目立たず起きていた「反乱の夏」 【2009年9月16日】 9月12日、前代未聞の100万人規模の人々がワシントンDCに集まった912集会は、米政府財政の肥大化や、金融界による米政府支配に反対する運動として今春から始まった「ボストン茶会」運動の流れをくんでいる。初夏以降は、米政府が掲げる健康保険改革について国会議員が住民に説明する集会で住民が議員を詰問する形式へと拡大し、そして今回、912の100万人集会に結びついた。
ウイグルと漢族の板挟みになる中国政府 【2009年9月14日】 ウルムチ暴動の経緯から感じられるのは、中国政府が、漢族とウイグル人の両方から批判され、板挟みになっていることだ。しかし同時に、中国政府はむしろ板挟みになることを望んでいるようにも思える。中国ではここ10年ほど、人々が行政への不満を爆発させ、役所の前などに群衆が集まって抗議行動を展開し、暴動に発展することが多くなっている。中国政府は、不満の噴出を容認している面がある。中国には選挙で民意を計る仕組みがないので、当局が不満を抑圧しすぎると、やがて体制転覆につながる大きな不満爆発が起こりかねない。そのため、むしろ人々の不満の噴出をある程度容認し、政策変更が必要なことを示す危険信号や、人々の不満のガス抜きとして使っている。市民に抗議行動を起こされると市党書記や市長の首が飛ぶ仕掛けは、その一環である。
中国とロシアの資本提携 【2009年9月9日】 中露関係は「文明の衝突」風の長期的な対立の構図を持つので、911後に米国が単独覇権主義を振りかざす中で中露が関係を好転させても、多くの人々は依然として、中露関係の基盤は対立であり、上海協力機構などを通じた中露協調は確固たるものではなく、一時的・便宜的なものにすぎないと考えてきた。しかし最近、この従来の常識をくつがえしそうな新事態が起きている。そのひとつは、ロシアが自国のエネルギー開発に中国の資本参加を認めたことだ。
ドル自滅の量的緩和策をやめられない米国 【2009年9月7日】・・・欧州中央銀行総裁のトリシェは今回の論文で「今は(まだ)出口戦略を実施すべき時ではない。出口戦略のやり方を(あらかじめ)決めておくだけだ」と言いつつ、出口戦略の実施が必要になった時には(米英などから)政治的な圧力を受けても無視して決行する、と宣言した。私はこの論文を、今後インフレ懸念が増大しても米英が量的緩和をやめられず、金融引き締めの出口戦略に転換できないことをEU側が予測して、そのような事態になったら欧州中銀はユーロを守るため、米英との協調をやめてEUだけで利上げなど出口戦略に転じる、と宣言したのだと考える。EUは、ドル崩壊時に無理心中させられるのを拒否する宣言を放った。
中東政治・逆転の迷宮 【2009年9月3日】 アハマディネジャドは保守派のためにリベラルのふりをしているのではない。最高指導者ハメネイは、アハマディネジャドに揶揄され、面子を潰されている。アハマディネジャドは、ハメネイと本気で政治対決して勝てると思っているはずだ。アハマディネジャドは自分が最高指導者になろうとしているのではなく、崩壊に瀕している最高指導者という制度自体を壊そうとしている。
政権交代と世界情勢 【2009年8月31日】 今回の政権交代は、日本国内的には、自民党独裁が延命してしまったがゆえに矛盾が拡大していた問題が、問題として露呈し、明確に解決策が模索されるようになるという利点がある。その一つは「道州制」や「地方分権」の進展である。かつて自民党は、首都圏や京阪神に集中する製造業とその従業員から得られた税収を、それ以外の地域に公共事業などのかたちで再分配するという「国土の均衡ある発展」の長期政策を持っていた。この政策下で「箱もの行政」や「土建政治」が続けられ、その体制は日本の経済成長が鈍化した後も、自民党が執政していたがゆえに変わらず、今では全国各地に誰も来ない巨大なコンサートホールや大赤字のテーマパーク、乗客の少ない空港などの構築物だけが負担として残されている。民主党は、この構図を脱する方向を模索している。それは良いのだが・・・
世界史解読(2)欧州の勃興 【2009年8月25日】 ここ数年で起きている米国の覇権崩壊と多極化の始まりによって、欧米が他を圧倒していた状態が崩れ、世界の体制が転換しつつある。この転換の歴史的な転換の意味を考えるには、今起きていることだけでなく、欧州の覇権がどのように勃興したかという500年史もしくは1000年史を考えねばならない。そのための試みの一つとして、今回の記事を書いた。
ドル崩壊の夏(3) 【2009年8月22日】 金融市場の回復は、連銀が市場に巨額資金を供給する量的緩和策の効果である。連銀の資金流入によって、リーマン破綻前の「上げ底」的な高レバレッジの状態がやや戻った。失業が増え、消費も不振なのに、連銀が金融市場に巨額資金を流し込んでいるため、金融だけ少し活況になっている。しかし、量的緩和策はジンバブエ化につながるドルの過剰発行であり、近いうちにやめねばならない。米当局の下支え策がなくなれば、おそらく米経済は再び不況感が増す。
世界史解読(1)モンゴル帝国とイスラム 【2009年8月19日】 モンゴル帝国には残虐と圧政のイメージがあるが、モンゴル帝国が繁栄していた約100年間は、世界史上まれにみる、中国から中東までのユーラシアの主要部分がモンゴルの統治下で安定した「パックス・モンゴリカ」(モンゴル覇権体制)の時代であり、陸路と海路の両方で、安定的な国際貿易路が存在する「グローバリゼーション」の時代だった。この貿易路を使って最も儲けた人々は、ペルシャ人やアラブ人などのイスラム教徒の商人たちだった。
ウォール街のあと出しジャンケン 【2009年8月11日】・・・自動取引のプログラムは、1秒の何百分の1かで取引を行えるので、たとえ1秒の何十分の1かでも、他の市場参加者より早く取引の動向を知れることは、一瞬先の株価を先取りして常に儲かる「あと出しジャンケン」が可能になる。市場参加者の一般的な動き方のパターンをあらかじめ組み込んだプログラムを取引所のサーバー内に置かせてもらい、あと出しジャンケンの自動取引を行うのが、今回問題になっている「高頻度取引」である。
多極化の進展と中国 【2009年8月7日】 中国の巧妙な国際戦略は、誰が立案しているのか。私の経験では、中国の専門家には先見の明が少ない。中国の外交官の質は、日本の外交官より、さらに低いかもしれない。私の推論は、中国の国家戦略を作っているのは、私が会ったような中堅の専門家ではなく、もっと上層の、北京の中南海の人々であり、中南海の人々は、米国の中枢(NY資本家)からのアドバイス(先読み)を参考にしているのではないかということだ。
クリントン元大統領訪朝の意味 【2009年8月5日】 クリントン訪朝は、2人の記者の釈放はむしろ口実で、本質的な意味は、6カ国協議に出ないと言っている金正日に考え直してもらう説得工作である。米国は、6カ国協議を再開し、東アジアの多極化への政治体質の転換を進めたいのだろう。見返りに北が米国に要求することは3点ありえる。1、韓国からの米軍撤退。2、米朝国交正常化。3、アジア太平洋地域にある米軍の核兵器の撤去。いずれも、アジア太平洋の国際政治体制の根幹を変更する話であり、従来の価値観では「米国が了承するはずがない」となるが、国際政治は今、価値観の大転換期に入っている。
インフルエンザ強制予防接種の恐怖 【2009年7月29日】 米英などの政府が製薬会社の言いなりで、副作用が懸念されるワクチンが臨床試験もなしに英国の全国民に強制接種されたり、副作用が出ても製薬会社が免責されるので無責任なワクチン製造がまかり通る事態が米国で出現したりしている。欧米マスコミはこの件について大して報じず、市民の反対運動もあまり起きていない。欧米でインフルエンザの予防接種が義務づけられると、日本でも似たような強制・半強制の政策が採られる可能性がある。欧米と同じワクチンが使われるのだろうから、最悪の場合、副作用が日本でも発生しうる。
ドル崩壊の夏(2) 【2009年7月24日】 ・・・この話が意味するところは、国務省は半年以内にドルが使いものにならなくなる事態が来ると感じ、ドルが急落しても各国の米国大使館が活動に困らないよう、1年分の現地通貨を備蓄させているということだ。英ポンドが除外されているのは、米国と同時に英国の金融通貨も破綻すると国務省が予測しているという意味である。
多極的協調の時代へ 【2009年7月21日】・・・多極型世界は、すでにクリントンの言う「多協調型世界」になっている。クリントンが対立的に提示した2つの世界型は、そもそも対立的なものではない。クリントン演説の意味はむしろ、米国がこの多極型協調の輪の中に入ることを拒否して単独覇権主義を振りかざしていたことをやめて、多極型世界の存在を認め、米国がすでに協調しているEU以外の、ロシアや中国などの極とも協調する方向に進む、ということである。
追い込まれるイスラエル 【2009年7月17日】 EUの外交代表であるハビエル・ソラナが「国連の安全保障理事会は、パレスチナ問題を解決すべき期限を定めた方が良い。イスラエルとパレスチナの交渉が妥結しなくても、期限が来たら、国連はパレスチナ国家を正式な国連加盟国として受け入れるべきだ」と述べた。この提案は、パレスチナ和平に初めて期限を設けることで、イスラエルが問題の解決を無期限に先延ばししてきた構図を打破するという、画期的な意味がある。
オバマの核軍縮 【2009年7月14日】 オバマが米露核軍縮を皮切りに行おうとしていることは、米国の覇権が低下して米露協調が不可欠になっている現状を利用して、米国自身を含む世界的な核廃絶を行い、従来の「常任理事国の5大国は核兵器を保有するが、それ以外の国々は核保有は厳禁」という既存の世界秩序も壊し、地球上から核兵器をなくすことだと考えられる。
米金融危機再燃の可能性 【2009年7月12日】 今年から来年にかけてのどこかの時点で、再び金融危機が再燃し、AIGやシティグループなど米大手金融機関のどこかが破綻した場合、米当局は事態を収拾することが困難になる。被害は、昨年のリーマン倒産時よりも大きなものになりうる。連銀はドルの過剰発行、米政府は財政赤字増が加速し、ドルと米国債に対する国際的な信用の失墜が起きる可能性が拡大する。AIG株の価値がゼロになるときには、ドルや米国債の価値も大幅に下がるかもしれない。
アフリカの統合 【2009年7月7日】 今後の状況が従来と全く異なる点は、米英の覇権が衰退に向かうことだ。米欧中心の世界体制が崩壊し、国際政治に真空状態が生まれる。空白を埋める、代わりの世界体制が待ち望まれるようになる。その待望感の中で、アフリカや中南米、中東、東アジアなどで、地域統合による、地域ごとの新たな世界秩序が意外に早く立ち現れる可能性がある。アフリカの統合も、意外と進展するかもしれない。アフリカが統合による自立を実現すれば、分割支配される状態から脱し、経済発展や政治安定化が可能となる。
IAEA事務局長に日本人選出の意味 【2009年7月3日】 日本人のIAEA事務局長への就任が何年か前だったとしたら、米国の尻馬に乗って「イランは核兵器を開発している」と激しく非難していれば、日本国としての対米従属と、IAEA事務局長を通じた国際指導力の発揮とは、何の矛盾もなく両立した。しかし世界が多極化している今後は、そうはいかない。日本が天野をIAEA事務局長に送り出し、国際指導力を発揮するには、多極化を肯定的にとらえることが必須となる。これは「英米中心主義にぶらさがるか、さもなくば鎖国」という従来の日本の国是を逸脱させる。
金正雲の中国訪問など【短信集】 【2009年7月2日】 金正雲の中国訪問が、上海や広州などの経済見学を主軸にしたことからは、やはり中国は北朝鮮に改革開放をやらせたいのだと考えられる。▼インドも誘ってドル離れするBRIC▼「ドル終焉」のプロセス。世界経済の中心が米国から離れていく「デカップリング」が起こりつつある。▼米国の温暖化対策と中国▼日本では、米国が温暖化対策に本腰を入れたと評価する向きが多いが、それは楽観しすぎで、新法は米国の自滅に拍車をかける。
イラン選挙騒動の本質(2) 【2009年6月30日】 イラン選挙後の政変は、保守派の側から誘発し、改革派は乗せられてしまったという見方もできる。投票日当日、開票が始まって1時間後、イラン内務省がムサビ候補に「選挙は貴殿の勝ちだから、勝利演説の準備をしてください」と連絡してきた。だがその後、革命防衛隊の数人の幹部がムサビの事務所にやってきて「君の選挙運動は、米欧に支援された政権転覆の策略だったので、当選は認められないことになった」と宣告した。そして、護憲評議会はアハマディネジャドの当選を発表した。いったんは当選の連絡を受けたのに、革命防衛隊の横やりによって落選に変えられたムサビは激怒し、今回の選挙騒動が始まった。
「地球の平均気温」は意味がない 【2009年6月28日】 地球上に無数の観測地点があり、その各地点間の気温が多様な差異を持ち、多種多様な気候が発生して、それが次の日の気温や気候に反映されていく連続的な現象があり、その総体が地球の気候である。この非常に複雑な地球の気候の状態を、各地点の気温の平均値によって代表させることは、非現実的である。アンダーセンらは「各地点の気温の平均値が地球を代表する気温だと考えることは、電話帳に載っているすべての電話番号を合算して算出した平均値が、その町を代表する電話番号であると考えるのと同じ種類の、頓珍漢な話である」と主張している。
GPSが破綻する?? 【2009年6月25日】 カーナビや船舶の航行用、米軍の精密誘導兵器などに使われる、人工衛星を使った位置確認システムであるGPSは、米空軍が地球の上空に打ち上げた30基の人工衛星を使ってシステムを機能させており、使える人工衛星が24基以下になると、満足な位置確認ができなくなると指摘されている。米政府の会計検査院(GAO)は今年5月下旬「来年以降、GPS用の人工衛星の中で軌道を外れるなど機能が低下するものが増える。このままでは、使える人工衛星が24基以下になる可能性は、来年が5%、2011-12年には20%、2017-19年には90%となる」とする報告書を発表した。
金正日の死が近い? 【2009年6月23日】 北朝鮮は、中国肝いりの集団指導体制を目指している。金正日が死んだ後、一族による世襲体制をすぐに壊すと政治の不安定を招くので、表向きの後継者は三男の金正雲にして、有能とされる妹婿の張成沢が摂政役をつとめる世襲を維持しつつ、いずれしだいに一族外の人材を政権中枢の国防委員会に入れ、集団指導体制へと脱皮していこうとしていると考えられる。脱皮が失敗して一族政治に戻る可能性もあるが、成功した場合には、北朝鮮は内政が安定し、常に米韓との緊張関係を必要とする状態から脱することができ、南北協調や経済発展が可能になる。
イラン選挙騒動の本質 【2009年6月20日】 たとえ実際には選挙不正がなく、ムサビの反政府運動が言いがかりに基づくものでしかないとしても、イラン国民の反政府意識を扇動し、イラン全土を巻き込んで展開されるであろう保守派と改革派との政治闘争の中で改革派が有利になり、最高指導者のポストを改革派が奪取できれば、目的は達成される。実際に不正があったかどうかは、最重要の要素ではない。改革派は、選挙不正に対するイラン国民の怒りを煽り、政権転覆への起爆剤として使っている。
世界不況は終わりつつある?? 【2009年6月16日】 株価の上昇など、G8財務相会合で「景気安定化の兆候」であるとされた金融市場の活況は、米国主導の財政赤字増と量的緩和策、米銀行の決算粉飾や株価てこ入れなどの政策の結果である。もしG8の声明どおり、金融市場の再活性化を世界経済が演出ではなく不況を脱しつつある本当の兆候であると認識し、財政赤字と量的緩和による経済対策をやめたら、金融市場の機能不全が再び顕在化し、金融危機が再燃するとともに、米国主導の世界経済の景気は再び底が抜けて悪化するだろう。
ドル崩壊とBRIC 【2009年6月11日】 ユーラシア大陸の真ん中、ロシア・西シベリアのエカテリンブルグで、ドルの将来を話し合うサミットが開かれる。参加者には、ドルの発行者である米国は含まれていない。ロシア、中国、ブラジル、インドというBRICの4カ国によるサミットである。ドル崩壊感の高まりと、BRICサミットによるSDRを使った基軸通貨の多極化計画の推進からは、今夏、米経済覇権の終焉劇の第2幕が起きそうな感じがする。
朝鮮戦争再発の可能性 【2009年6月9日】 北朝鮮が騒ぐのは米韓などからの経済支援がほしいからであって大戦争など望んでいないし、米国も韓国や中国の経済発展に投資しており極東の大戦争は望まないというのが、従来の構図だった。だから今回も、北の核実験後、海上の南北分界線の周辺で南北が相互に侵犯して緊張が高まっても、本格戦争にはならないという見方もできる。しかし、もっと巨視的な、世界の覇権構造をめぐる米英中枢の暗闘との関係で見ると、今の状況は、朝鮮半島で戦争が起こっても不思議ではない感じがする。
やはり世界経済はデカップリングする? 【2009年6月7日】 中国やインドなど経済新興諸国は従来、欧米先進諸国の産業の下請けや加工組立基地として機能してきたので、先進国が不況になったら新興諸国も不況になるのが常だったが、今後はそうではなく、新興諸国は内需主導型経済になり、先進国とは切り離されたかたちで経済成長していく、という「デカップリング(切り離し)論」が再燃している。ドルが崩壊していくと、代わりの通貨体制の構築が急進展する。世界は、実体経済より先に通貨からデカップリングするかもしれない。
反イスラエルの本性をあらわすアメリカ(2) 【2009年6月5日】 イランが台頭して国際的な反米同盟を形成すると、イスラエルにとって非常に危険だ。イスラエルは従来、ファタハ主導のパレスチナ政府を米国の傀儡として維持し、新生パレスチナ治安部隊も米イスラエルが訓練して監督下に置き、パレスチナ国家ができたとしてもイスラエルの言いなりになる仕掛けを作っていた。ファタハがイランやハマスと組んでしまうと、この仕掛けが崩壊し、パレスチナ国家はイスラエルを敵視する勢力に転換する。オバマ政権は、このような構造転換の裏の流れを知りつつ、イスラエルに「パレスチナ国家の創建に協力しろ」と要求する声を強めている。だからイスラエルは驚愕している。
北朝鮮は核武装、日本は? 【2009年6月2日】 対米従属党の伝統を持つ自民党の上層部が「日本の核武装」イコール「対米従属の終わり」であると気づかないはずがない。自民党内から出てくる核武装論は、米国の覇権衰退が近いことを認識した上で、日本は「アメリカ以後」に備えねばならないという意識の発露であると私には見える。自民党内から「核武装」の議論が出てくるのは、地政学的な転換を意味している。
ドル崩壊の夏になる? 【2009年5月26日】 米国債とドルに対する信用が落ちると、原油、金、穀物など、ドル建て表記されている相場商品の価格が上がる。ドルの刷りすぎと相まって、超インフレになるという指摘があちこちから出ている。「ドルと米国債の崩壊、超インフレ」は、起きるか起きないかではなく、いつ起きるかという話になってきている。米国の投資戦略家は「インフレに備え、相場商品を買い貯めよ」と指摘している。中国などが相場商品を買い漁っているのは、先見の明である。世界の転換を見ようとしない日本人は、自らを時代遅れの衰退勢力におとしめている。
ビルダーバーグと中国 【2009年5月21日】 ビルダーバーグには米欧中枢の資本家が集まるにもかかわらず、彼らの構想は米英中心の世界体制を壊すことだ。これは奇妙に見えるが、資本家が最も重視することが「米欧の発展」「米欧での儲け」ではなく「世界経済の発展」「世界的な儲け」だと考えれば、世界経済の体制が米英中心・途上国抑制の「小均衡」から、途上国の発展度を上げる「大均衡」への転換を好むのは納得できる。彼らは、中国の台頭を隠れた目標にしている観があるが、中国人を何人も常連として議論に招待することはしていない。このことは、中国の台頭という現状が、中国自身の戦略の結果ではなく、米欧資本家の戦略(資本の論理)の結果であることを示している。
連銀という名のバブル 【2009年5月19日】 今回の金融危機に至る過程において、連銀の信用創造機能は、債券化という形で民間に拡大した。連銀が国家の信用力をドルという価値に転換するように、民間企業は自社の信用力を社債という価値に転換できるようになった。信用力のない赤字企業や個人でも、債券化の仕掛けを使えば不動産などの資産を担保に簡単に金を作れる「誰でも連銀」的な事態が生まれ、これが90年代から07年までの米英の経済成長の強力な下支えとなった。今の金融危機は、このシステムの大崩壊である。「誰でも連銀」バブルの崩壊である。
米金融まやかしの健全性 【2009年5月16日】 米当局が5月初めに結果発表した米大手銀行19行に対する健全性調査「ストレス試験」について粉飾を指摘する声が相次いでいる。米投資会社の経営者は「米大手銀行は債務超過に陥っている(それなのに米当局は、銀行はおおむね健全だとする試験結果を出した)。これはインチキだ」と述べた。ドイツのシュタインブリュック財務相は議会で「米政府はストレス試験の結果を粉飾して発表した。試験は無価値だ」と発言した。
非米化するイラクとレバノン 【2009年5月13日】 サドルのイラクとナスララのレバノンは、いずれも内戦になりがちなモザイク状の多民族国家であり、これらの両国で国内の協調体制が成功すれば、そのノウハウは中東全体の協調体制や、シーア派とスンニ派の対立の止揚につながりうる。シーアとスンニの対立は、米英仏による中東支配のために扇動されてきた。米国の影響力低下によってイスラム世界は、内部対立を解消する機会を得ている。
米国より中国が最大貿易相手になるブラジル 【2009年5月11日】 50年前のキューバ危機などの米ソ冷戦は軍事中心で、米ソが自由貿易の競争で覇を競うことはなかった。対照的に、今回の「米英中心主義体制」と「多極主義体制」の対峙はむしろ、自由貿易の分野が重要になっている。ブラジルの最大貿易相手国が米国から中国に代わることは、その象徴の一つだ。オーストラリアが対米従属できなくなって防衛力強化をせざるを得なくなり、その言い訳として、敵対できないはずの中国の脅威を持ち出すことも、軍事と経済のねじれた連携を表している。
反イスラエルの本性をあらわすアメリカ 【2009年5月8日】 5月5日、核拡散防止条約(NPT)締結国の年次総会で米国の代表が演説し、その中で「(NPTに入らず核兵器を開発している)インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルは、NPTに入るべきだ」という趣旨の主張を行った。イスラエルが含まれているのは異例だったので、イスラエルや米国のマスコミやウォッチャーの間に驚きが広がった。米国は従来、イスラエルの「核兵器を保有しつつも、核を持っているかどうかは意図的に曖昧にし、査察を受けたくないのでNPTは署名しない」という曖昧戦略を認知してきた。国連でイスラエルの核兵器が問題になると毎回、米国が出てきて議論をもみ消してくれていた。NPT総会での米代表の発言は、このイスラエルに対する米国の協力体制の終わりを宣言したものではないかとイスラエルは恐れている。
豚インフルエンザの戦時体制 【2009年4月30日】 前代未聞の危険なウイルスが蔓延しているのだから、各国のものものしい対応は当然だと多くの人が無意識のうちに思っているかもしれない。しかし、911を契機に始まった米国と世界の「有事体制」が、実は軍産複合体による権限拡大・世界支配強化策の部分が大きかったように、今回の豚インフルエンザの件も、よく事態を見ていくと、有事体制を作るために必要以上の騒動を作り出している疑いがある。
のし上がる中国 【2009年4月28日】 3月9日に開かれた中国の議会である全人代で、共産党のナンバー2にあたる全人代常務委員長の呉邦国が「複数政党制や三権分立、二院制議会、司法の独立といった欧米型の政治体制は、中国には適さない」「中国には共産党の一党体制の方が適している」「共産党の一党支配がないと、中国のような大きな国は分裂してしまう」「独立した裁判所が法律の正しさを決める司法体制は採らない。法律は共産党が決める」という趣旨の演説を行った。この宣言の意味は、これまで中国の政治に干渉してきた欧米勢力が、金融危機や中東の戦争によって自滅的に弱くなったので、もはや欧米に気兼ねする必要などない、中国のやりたいようにやらせてもらうという表明である。
国際金融危機の再燃が近い? 【2009年4月25日】 米国で、企業の経営者や取締役、創業一族といった、自社の経営の先行きを最もよく把握している人々による自社株売りが急増している。株高の中、経営者が自社株売りに精を出していることは、これから米企業の経営が悪化して株価も急落すると、彼ら自身が予測しているからではないかと懸念されている。
中国のドル離れ 【2009年4月24日】 米中枢の勢力が中国を特に重視する理由は、欧米以外の世界で最も大きな国の一つであり、しかも欧米文明とは異なる文明を持つので、中国を強い国に仕立てれば、世界の成長度を上げるための多極型の世界体制を作りやすいと考えたからだろう。アジアの大国としては日本もあるが、明治維新は英国の肝いりで行われ、その後の日本は欧州列強の一部となる戦略を採り、第2次大戦後は英国(軍産英複合体)の傀儡となったため、日本は多極化戦略にはほとんど使えない国だった。
いつわりの米金融回復 【2009年4月22日】 4月に入って、ゴールドマンサックス、ウェルズファーゴ、JPモルガンチェース、シティ、バンカメといった米国の大手銀行が、今年1-3月期の四半期決算について、次々と意外な好業績を発表した。つい最近まで、もうすぐ潰れるのではないかとみられていた銀行が突如として好業績を発表したものだから、株式市場は好感し、上昇傾向となった。米英のマスコミは「金融危機は山場を越えた」と喧伝した。しかし、これらの銀行決算の多くは、実は粉飾的な操作の結果だったことが明らかになっている。
核の新世界秩序 【2009年4月21日】 核兵器は、米英が第2次大戦中に開発して以来、米英中心の世界体制を維持するために拡散させられてきた。今後、米英中心の体制が崩壊するとしたら、核兵器をめぐる世界情勢も従来と大きく異なるものになる。常識的には、すでに核兵器を持っている国々は、影響力の低下を恐れ、新たな核兵器保有国が増えるのを嫌うと考えられている。しかし、たとえばパキスタンに核兵器技術を漏洩することで、インド植民地独立時に英国が仕掛けた印パ対立の構図を恒久化できる。英米は、核兵器技術を意図的に漏洩させることで、世界の分断支配を維持してきた。
テロ戦争の終わり(2) 【2009年4月16日】 オバマ政権はテロ戦争を終わらせる方向に進んでいるが、それが成功するとは限らない。軍産イスラエル複合体の力は強く、テロ戦争を終わらせようとする動きは阻止される傾向にある。たとえば、米国とイランとの和解は進展しそうに見えるが、実はオバマ政権でイランとの交渉を担当する責任者であるデニス・ロスは、過激な親イスラエル・反イラン派である。ロスはクリントン政権でパレスチナ和平を担当し、表向きはイスラエルを譲歩させるように振る舞いながら、実はイスラエルの言い分をパレスチナ側に押しつけて和平交渉を失敗させる策略をやり、最初から和平を潰すつもりで和平交渉を演じていたと指摘されている。ロスは今回、それと同じことをイランとの交渉でやろうとしている。
テロ戦争の終わり 【2009年4月14日】 米政府は、政権がブッシュからオバマに代わっても、911事件に対する公式見解は変えていない。しかし、ブッシュが開始した「テロ戦争」を、オバマは、目立たないかたちで終わらせる動きを続けている。オバマは「もはやアルカイダは逃げ回っているだけの弱体化した組織なので、オサマ・ビンラディンを殺したり捕まえたりすることを最重要の目標にしておく必要はない」と表明している。ビンラディンはすでに死んでいる可能性が高いのに、オバマが「ビンラディンは死んだ」と言わず「ビンラディンを捕まえなくてもよい」と言う理由は、米国の「軍産複合体」が「テロ産複合体」に発展し、一大産業と化しているため、彼らに配慮したのだろう。
変容する中東政治(2) 【2009年4月9日】 イスラエルは、全方位的に不利になっている。政治面での不利が目立つが、最も重要なのは、実は経済である。世界不況と、世界各国からしだいに強く受けるようになっているボイコット(経済制裁)の影響で輸出が減り、失業や倒産が増え、国家も企業も家計も赤字が増して、イスラエルは今、建国以来の経済危機にある。
変容する中東政治 【2009年4月7日】 サウジアラビア東部から近いイラクでは、中世から03年の米軍侵攻まで、サダム・フセインを頂点とする少数派のスンニ派が、多数派のシーア派を統治してきたが、今では「米国のおかげ」で民主主義が確立され、シーア派主導の国となった。その向こうのイランでは、反米的なアハマディネジャド大統領が米国やイスラエルの戦争犯罪を堂々と指摘し、中東全域で喝采されている。サウジなど他の中東諸国のシーア派は、巡礼としてイラクやイランの聖地を定期的に訪問するが、この時にイラクやイランのシーア派から政治的な影響を受け、母国に帰ってスンニ派主導の政府に対する要求を表明するようになっている。
急落する世界経済とG20 【2009年4月3日】 まだ世の中には「米経済はいずれ回復し、再び世界を牽引する圧倒的な経済大国に戻る」と思う人が多いだろう。だが米オバマ大統領は、G20サミット前日の記者会見で「米国は巨額の財政赤字を抱え、国民の貯蓄率も低いので、今後長いこと、赤字を減らす独力を続けねばならない」「米経済が今後回復するとしても、それは米国自身のために回復するのであって、世界から頼ってもらうために回復するのではない」「世界は、もはや米国を旺盛な消費市場だと思って頼ることはできない」と宣言している。
北朝鮮問題が変える東アジアの枠組み 【2009年3月31日】 北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議が03年に始まってから、早くも6年がすぎた。そして、東アジアの盟主は米国から中国に切り替わりつつある。中国は、米国のように表舞台の華やかな国際会議中心の外交を好まず、もっと隠然とした非公式な外交を好むので、6カ国協議はしだいに重要ではなくなるかも知れない。しかし、外交スタイルは変わっても、米国から中国に東アジアの主導権が移ることには違いない。
顕在化するドルとポンドの崩壊 【2009年3月27日】 ドルは世界の基軸通貨としての地位を失いかけている。「ドルに代わる通貨がないのだから、ドル崩壊はあり得ない。世界がドル崩壊を食い止める」と信じている人がまだ多いが、世界はドル崩壊を食い止められない。代わりの基軸通貨のことなど考えずに、ドルは勝手に崩壊しつつある。
世界がドルを棄てた日(3) 【2009年3月24日】 全米各地で「連邦政府に税金を払う必要はない」「政府は腐敗した銀行家を税金で助けるな」と主張する「ボストン茶会」の運動が始まっている。米国民の怒りはAIGのボーナス問題で煽られ、納税拒否運動は広まる一方だ。税金が集まらなくなると、米政府は窮する。国債の償還が危うくなるので外国人も米国債を買わなくなり、米国は財政破綻が近づき、ドルは世界の基軸通貨として使えなくなる。
世界がドルを棄てた日(2) 【2009年3月21日】・・・やはりG20サミットの底流は「ドル以後の基軸通貨体制の話し合い」であると思わせる出来事が最近あった。ロンドンG20サミットの開催を2週間後に控えた3月18日、国連の「国際通貨改革専門家会議」が、25日の会合で、ドルが国際基軸通貨である従来の状態を棄てて、新たにEUのユーロができる前に採られていたECUやIMFの特別引き出し権のような、世界の諸通貨を加重平均した新しい国際共通通貨を創設すべきだという提案がなされることになった。
国家崩壊に瀕するパキスタン 【2009年3月18日】 アフガンでしだいに弱い立場になる米国が、優勢なタリバンを懐柔しようと譲歩することは、譲歩そのものが失敗するだけでなく、タリバンの優勢を加速してしまい、タリバンを中心とするイスラム主義勢力が、アフガンだけでなくパキスタンでも台頭することに拍車がかかる。パキスタン政界ではザルダリとシャリフの対立が激化して分裂し、タリバンに対抗するどころではない。アフガンでの米国の譲歩は、パキスタンの混乱を助長している。
どうなるオバマの金融救済 【2009年3月16日】 事態の悪化は螺旋状に進んでいくので、まだ人々がパニックに陥る事態にはなっていないが、今年はもう、投資はなるべくしない方がいいだろう。「乱高下する今こそ儲かる」という人もいるが、乱高下の本質は、米英イスラエル中枢の暗闘である。この200年の金融システムを創設した「人々を踊らせる側」「賭博場の胴元」たちの、国家存亡をかけた果たし合いである。彼らに比べたら、日本に住んでいる人々は、大手金融機関の機関投資家でも相場の根幹に存在する国際政治の深いことは知らないので「ど素人」だ。安易な参戦はやめた方が良い。踊らされて大損するだけだ。
米軍イラク撤退の中東波乱 【2009年3月10日】 米軍内の反対を押し切ってイラク撤退を実現するオバマを評価する人は多い。しかし現実的に見ると、18カ月でイラクから米軍の主要部分を撤退させるのは物理的、兵站的に、試みる前からほとんど無理である。米軍は世界中に基地を持つが、多くは恒常施設だ。米軍は、大規模な基地を撤退・閉鎖した経験がない。米軍の実績では、200人が駐屯する基地を閉めるのに2カ月以上かかる。
戦争か対話か・中東戦略の目くらまし 【2009年3月6日】オバマ政権はイランと対話する姿勢を見せながらも、イランを敵視する人材を対話担当者に据え、対話の失敗を運命づけている。その一方で、米国の中東戦略にとって最重要な大統領府の諜報担当責任者に反イスラエル親アラブの人材を据え、イスラエルとの協調をあらかじめ失敗に追い込んでいる。この2つの人事を矛盾なく読み解くことは難しいが、私にはピンとくるものがある。
黒船ならぬ黒テポドン 【2009年3月3日】日本の現状は「黒船来航で開国を迫られて大騒ぎする幕末の江戸城の旗本たち」に見える。殿中の審議で「もう鎖国をやめるしかありませんな」と本音を言ってしまった小沢殿に対して、他の幕臣たちが「なんてことを」「口を慎みなされ」「殿中ですぞ」と大騒ぎしている。他の幕臣にもよい知恵はなく、おろおろしつつ、あたかも黒船など来ていないかのように振る舞うばかりだ。黒船ならぬ黒テポドンという、たった数発の「太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)」によって、日本は今後、幕末的な大転換期に入っていきそうな感じが強まっている。
世界的な「反乱の夏」になる? 【2009年2月26日】英国ロンドンの警察の治安担当幹部が、不況の深刻化による失業増、行政サービスの削減、銀行破綻による預金封鎖などを受け、今年の夏にかけて英国民が政府批判を強め、大規模な反政府活動や暴動が発生して「反乱の夏」になるかもしれないと指摘した。世界不況の震源地である米国も、今年は波乱含みだ。米軍はすでに、米国内での反乱鎮圧の準備を着々と進めている。米国とメキシコが戦争する懸念もある。
「アジアの世紀」の光と影 【2009年2月24日】米欧の分析者の多くが、21世紀は「アジアの世紀」だと感じている。しかし、そこでいう「アジア」は大方の場合、中国のことだ。中国はますます誇り高く、台頭して光り輝くのと対照的に、日本は何とか対米従属を維持しようと息をひそめ、自分から日影の存在を選び、米国の衰退に合わせて自国の身の丈を縮めている。日本はかなりの潜在力があるはずなのに、愚かでもったいない話だ。
揺らぐアメリカの連邦制 【2009年2月18日】これまで米国の景気が良く、ニューヨークの金融家が作った高利回りの国家システムをワシントンの連邦政界が運営し、各州の市民がその恩恵を受けていた間は、州の主権を強く主張する人は少数派だった。しかし、ニューヨーク製の金融システムが崩壊して州政府も州民も困窮し、連邦政府がイラクやアフガンで不必要な戦争の泥沼にはまって世界の反感をかっている今、状況が変わりつつある。各州の人々は、自分たちと連邦政府の間の契約を読み直し始めている。
米露逆転のアフガニスタン 【2009年2月10日】冷戦終結から10年すぎた今、アフガニスタンでの泥沼の占領劇は役者が米露逆転し、米欧(米軍を中心とするNATO軍)が占領の泥沼にはまっている。ロシアは米欧に対し、泥沼から出るための手助けをしても良いと言い出した。ただし、それには条件がある。米欧がロシアに対する敵対的な包囲網を解き、中央アジアやコーカサス、ウクライナなど、ロシアがソ連時代に持っていた周辺地域への覇権(影響圏の設定)の回復を許容するなら助けてやる、とロシアは言っている。
イスラエル戦争の波紋 【2009年2月3日】ダボス会議でイスラエルとトルコの首脳が喧嘩したが、イスラエルはトルコを敵に回すと「亡国」の危険が強まる。トルコは、中東で有数の仲裁力を持った国で、トルコの仲裁でイスラエルとイランとの戦争も回避しえた。しかし、ガザ侵攻でイスラエルが戦争犯罪を重ね、トルコの世論が激しいイスラエル敵視に傾いた今、その状況は去りつつある。イスラエルは国際政治の世界で不利になり、まさにトルコを必要としているときに喧嘩してしまった。
意外にブッシュと変わらないオバマ政権 【2009年1月27日】オバマは、経済面や軍事外交面で失敗した前ブッシュ政権の姿勢を脱却することを意味する「変化(チェンジ)」という標語を掲げて当選した。しかし、就任1週間後の現時点で、オバマはいくつかの点で、すでにブッシュ政権の悪しき政策を継承しており、意外と「変化」に乏しい、人々を失望させる政権になっていく懸念が増している。
911やロンドンのテロで大儲けしていた金融機関【短信】 【2009年1月25日】 ◆日本・中国・サウジアラビアは、いつまで米国債を買うか?
イギリスの崩壊 【2009年1月24日】英国の金融崩壊が急速に進んでいる。昨年9月のリーマン倒産を機に一気に悪化した米国発の国際金融危機は、それまでのレバレッジ金融の金余りによって高値になったロンドンの不動産などの相場を急落させた。その後、昨年末の決算時に英金融機関の資産の時価評価額が減り、いくつもの大手銀行が事実上の債務超過に陥っていることが、今年に入ってわかった。
回復困難なアメリカ経済 【2009年1月20日】覇権研究で有名な米学者ポール・ケネディによると、米政界は景気回復を優先するあまり、財政赤字の急増を容認し、オバマにも追加支出せよと圧力がかかり、非効率で間違った財政の大盤振る舞いに陥りそうだ。財政出動策の効率について、米国内の誰も把握していないのも危険だ。今の米国の財政赤字増はあまりに急速で、長年の大国興亡史研究を経たケネディの目から見て、前代未聞の速さだという。
ガザ戦争で逆転する善悪 【2009年1月13日】1943年には、手榴弾を持ってナチスに立ち向かう青年モルデハイは、ワルシャワのユダヤ人ゲットーにいた。しかし、今のモルデハイは、ユダヤ人ではない。ガザという名のゲットーに住むパレスチナ人である。立ち向かう相手はナチスではなく「ナチス化」したイスラエルである。ハマスを支援してイスラエル軍と戦うガザの無数の青年たちこそ、現在のモルデハイである。
ガザ・中東大戦争の瀬戸際 【2009年1月3日】ハマスの軍事部隊は、一般市民のふりをしてガザ地区内の一般のアパートに分散して入居し、ゲリラ戦の準備をしている。イスラエル軍は、地上軍侵攻してガザ地区の全体を占領した後、ガザを5つのブロックに分割し、パレスチナ人が相互に行き来できないようにして占領すると予測されている。
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