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イスラエル中東覇権の確立

2026年9月28日   田中 宇

米国とイスラエルが2月末からイランと戦争している目的は、一直線にイランの政権を転覆することではない。
米イスラエルは、イランを完全転覆する前に、弱体化かつ好戦化したイランがホルムズ海峡を閉鎖するように仕向けた。それにより、サウジアラビアなどペルシャ湾岸アラブ産油国が石油ガスを輸出できなくなった。
(Houthi Ballistic Missiles Hit Fuel Tanks Near Riyadh Airport In War First)

従来なら、サウジなどアラブは安保面で米国に頼れたが、トランプ政権は今回、イランとの戦争で苦戦している状況を演出している。トランプは2期目の就任時から南北米州(米国、北米と中南米)を重視する米州主義を掲げ、中東の安保の世話をすることを軽視する姿勢をとっている。
トランプ政権の安保的な優先順位は、1米国、2南北米州、3アジア太平洋、4欧州、5中東、6アフリカだ。サウジが頼んでも、トランプは米軍を派遣してくれない。
ペルシャ湾岸の米軍基地群がイランに攻撃されたが、米軍は基地の補修よりも、そのまま中東から撤兵していくことを考えている。
(Pentagon weighing smaller U.S. military presence in Gulf once Iran war ends)

サウジは、隣国イエメンでイランの傘下にいるフーシ派の民兵団から攻撃され、ホルムズ迂回路の東西パイプラインを破壊され、その先の輸出海路である紅海出口のバブエルマンデブ海峡もフーシ派に抑えられている。
サウジの権力者MbS皇太子は、米軍がフーシ派を撃破してくれることを望んでいる。だがトランプはMbSの依頼を断った。これは米サウジ関係史上初めてのことだった。トランプはMbSに、米国でなくイスラエルに相談しろという態度をとっている。
(Trump left Saudi Arabia to face Houthis alone)

サウジなどアラブ産油国は昔から、安全保障を米国に依存してきた。米国(米英)はアラブの巨大な石油利権を支配するため、アラブの盟主であるサウジが巨額の石油収入を使って独自の強い軍事力を持つことを許さなかった。
だからサウジは今でも独自の軍事力がとても弱い。サウジは米国から巨額の軍備を買っているが、サウジにある米国製の兵器類を動かしているのは米軍だ。トランプの計画に沿って米軍が中東から出ていくと、サウジなどアラブ産油国は安保的に丸裸の状態に陥る。
(サウジをイスラエルの言いなりにさせていく)

トランプはイスラエルに大量の兵器類を事実上無償で与えて強化している。今後は米国でなくイスラエルが中東最強の国になる。
トランプは以前からサウジなどアラブ諸国に対し、トランプ発案のアブラハム合意に入ってイスラエルと国交正常化し、米軍撤退後はイスラエルに守ってもらえと言い続けてきた。
だがサウジは、イスラエルがパレスチナ国家の建設を認めない限り国交正常化できないと言って拒否してきた。湾岸産油国でアブラハム合意に入ってイスラエルと国交正常化したのはUAEとバーレーンだけだった。
(Saudi Arabia’s security needs expose limits of diplomacy, give Israel an opportunity - analysis)

これまでなら、サウジはイスラエルと国交しなくても問題なかった。だが今後は違う。イランやフーシ派がサウジを攻撃し続けているのに、トランプの米国はサウジを助けてくれず、イスラエルに助けてもらえと言っている。
米イスラエルは、敵であるイランを使ってサウジを困らせている。サウジは今のところ、まだパレスチナ国家にこだわってアブラハム合意への参加(イスラエルとの国交正常化)を拒んでいる。クウェートがアブラハム合意に入りそうだという話も出ているが、話だけで具現化していない。
(Additional country may join Abraham Accords within six months, ambassador to UAE says)

だが今後、時間が経つほど、サウジはイランとフーシ派からの攻撃を受け続け、東西パイプラインや石油積出港などの再破壊もあり得る。石油収入の激減状態が長引いて財政難がひどくなる。イラン戦争後には米軍が出ていく。
イスラエルは西岸とガザのパレスチナ人の虐殺や追い出しを続けており、パレスチナ国家の実現性はどんどん低くなっている。サウジがパレスチナにこだわっても現実は好転しない。むしろサウジ自身の財政難と破壊が進むばかりだ。
サウジは今後どこかの時点で、不本意ながらパレスチナを見捨て、アブラハム合意に入ってイスラエルと国交正常化せざるを得ない。
(Saudi Arabia is nearing the point of no return – and Israel is waiting for it)
(Houthi attacks on Saudi Arabia could revive Israel-Saudi normalization efforts)

この流れは、イスラエルの思惑通りだ。イスラエルはトランプを動員し、イランを弱体化(イスラエルへの反撃を困難に)した上でホルムズ閉鎖を長引かせ、サウジを困らせてアブラハム合意に引っ張り込みたい。その策略は成功している。
トランプはイスラエルの策略に全面協力し、ホルムズ閉鎖を長引かせている。ホルムズ閉鎖の長期化を見て「トランプは失敗した。イランが勝っている。米国は負けた。イスラエルは追い詰められている」と言っている人が多いが、それは間違いだ。
トランプもイスラエルも失敗していない。みんな米イスラエルの策略にすら気づいていない。策略は大成功している。
(計画通りのホルムズ恒久閉鎖)

サウジは、いずれアブラハム合意に入ってイスラエルと国交正常化し、国家と油田の安全を米国でなくイスラエルに守ってもらうようになる。サウジを筆頭に、湾岸産油国のすべてがそうなる。それが具現化する前か後に、トランプの計画通り、米軍が中東から出ていく。
(イラン戦争の膠着化はイスラエル覇権の強化策)

イスラエルは国際プロパガンダ(言論操作)と諜報力を駆使し、今は世界中が軽信しているイランの最高指導者モジタバ・ハメネイの生存が実はウソであり、開戦時の攻撃ですでに死んでいることを露呈させる。
開戦後のイランの権力を握っている革命防衛隊は、モジタバの死を隠し、モジタバが防衛隊に政権運営させているというウソの政体を作っている。それがバレていき、防衛隊政権の正統性が失墜し、イランが政権転覆していく。その後のイランは、イスラエルの傀儡国家になっていく。
(モジタバ・ハメネイはすでに死んでいる)

中東のすべてが、イスラエルの傘下に入る。今すでにエジプト、ヨルダン、シリアがイスラエルの傀儡であり、レバノンも時間の問題だ。
トルコは表向きイスラエルを非難しているが、実際はイスラエルからコーカサス覇権を下請けさせてもらって喜んでいる。パレスチナは消失させられる。
(クルド独立の終わり)

世界最大級の産油国であるサウジが、国家と油田の安全をイスラエルに依存する。サウジ(と傘下の湾岸産油国)は、これまで米国に逆らえなかったように、今後はイスラエルに逆らえない。
かつて米国が持っていた中東の石油利権はイスラエルに移りつつある。トランプは、中東の石油利権をイスラエルに明け渡した。
(リクード系の覇権拡大)

イスラエルはサウジ(湾岸産油国)に、イスラエルを非難する諸国への石油ガスの輸出を止めさせる。すでにその動きが起きている。サウジの国営石油会社アラムコは9月18日、10月分の欧州向けの原油輸出を停止すると、売り先の精油所や石油会社に通告した。英仏西伊奥ポーランド、バルト3国などへの石油が停止される。
(Winter Is Coming: Saudis Warn European Refiners Of Crude Shipment Disruptions Next Month)

すでに東西パイプラインが少しずつ再稼働しており、パイプライン破壊が欧州向けの停止理由ではない。
輸出停止の理由はそこでなく、西欧諸国がパレスチナ人を虐殺するイスラエルを非難し続けているため、その報復として、イスラエル(とトランプ)がサウジに欧州向けの原油を止めさせたのだと推測される。

欧州と一緒にイスラエルのパレスチナ虐殺を非難してきたサウジが、背に腹は代えられず、イスラエルの言いなりになって欧州への制裁をやらされている。
欧州は今冬、厳しいエネルギー危機に陥る。冬に向け、欧州の石油ガス備蓄は決定的に足りない。イスラエルとトランプとプーチンというリクード系の面々が、欧州をエネルギー危機に陥れ、自滅への道を加速させている。これはリクード系による英国系潰しの一環だ。
(EU facing ‘worst energy crisis in history’)

イスラエルを非難する国は石油輸出を止められるが、イスラエル非難をやめた国には石油輸出が再開される。サウジは、欧州向けの原油を止める半面、9月から中国向けの原油輸出を急増している。日韓や印度も、そのおこぼれにあずかっている。
習近平は2023年ごろ、イランとサウジの和解を仲裁したりして、米国が抜けた後の中東の覇権国になりそうな勢いだった。当時は、米覇権衰退後の中東の石油利権が中共に移る流れだった。
(サウジをイランと和解させ対米従属から解放した中国)

しかしそこに、2025年からイスラエルがトランプを擁立して殴り込みをかけた。イスラエルは、諜報作戦として、中国の将軍たちが習近平に逆らっているかのような(濡れ衣の)構図を演出して習近平をビビらせ、中東覇権を放棄させた。
この流れの最新の出来事が、先日の習近平の訪米だ。習近平はトランプの忠告に沿って、非米側を率いて覇権拡大する動きを放棄し、リクード系の軍門にくだることにした。イスラエルは満足し、返礼として、サウジに中国向けの原油輸出を急増させた。
(習近平訪米の意味)

高市化した日本と、極右モディの印度は、いずれもリクード系だ。韓国はイラン戦争への協力を断ったが、以前のイスラエル非難を引っ込めたので、サウジからの原油輸出のおこぼれにあずかった。
日本ではまだ、多くの人がイスラエルとトランプと高市を批判・嫌悪している。そういう人々は、イスラエルとトランプと高市のおかげで日本がエネルギー危機にならずにすんでいることを知らない。
知ったとしても批判・嫌悪するのだろうが、批判しても何も変わらない。イスラエルとトランプと高市(とその後継者たち)による支配はずっと続く。
(日本が高市化した意味)

日本は、米国(グアム島)と中国(台湾)の間の海洋アジア(2本の列島線の間)を影響圏として得る(米国が日本に押し付けている)。中共も、それを認めている。日本は、米国が退却しても中共の属国にならず自立していく。
これから英国系が消失していくと、豪州も日本の側にやってくる。リクード覇権が確定したら、インドネシアもやってくる。日本の未来は意外と明るい。日本人がそれに気づいてないことが最大の問題だ。
(日本の地域覇権「日豪亜」への道再び)

話をイスラエルの石油ガス支配に戻す。湾岸産油国だけでなく、トルコやコーカサスもイスラエル覇権下だ。中央アジアからコーカサス、トルコをパイプラインで通る石油ガスも、イスラエルを非難する諸国(欧州)には送られなくなる。
さらに北方のロシアも、プーチンがイスラエルの言うことをよく聞く。コーカサスは旧ソ連なのでロシアの覇権下だったが、そこに数年前からイスラエルが入ってくると、プーチンはおとなしく覇権を放棄した。
(コーカサスをトルコに与える)

プーチンは、アゼルバイジャンのアリエフと喧嘩した後で和解している。喧嘩をやらせたのはイスラエルだ。
ウクライナ戦争でロシアを勝たせ、英欧を自滅させているのはイスラエル(米諜報界リクード系)の策略であり、プーチンはそれに感謝してイスラエルの覇権拡大に協力している。
(中東に再招待されるロシア)

トランプもイスラエルの言いなりだ。イスラエルはトランプの米州主義を実現するため諜報力を駆使し、中南米諸国の選挙で次々と親トランプ親イスラエルな右派を勝たせ、中南米は丸ごと米イスラエルの傀儡になりつつある。南北米州の石油利権も、イスラエルに紐づいている。
(中南米を右傾化させる)
(イスラエル世界覇権の可能性)

全体像として、イスラエルは、世界中の石油ガス利権を握りつつある。イスラエルに逆らう国は、石油ガスを得られなくなる。
イスラエルのちからの源泉は、中世の宮廷ユダヤ人以来のネットワークが持つ国際諜報力だ。その内部構造は良くわからない。内部構造を外部者に知られたら諜報力=覇権が弱まるので秘匿されている。
良くわからないのだが、ものすごい力を持っている。大英帝国(ロスチャイルドなど)や、その前のスペインポルトガルの世界支配も、ユダヤ人ネットワークの諜報力に依存していた。その諜報力は、米諜報界に継承されている。イスラエルは、それを乗っ取ることで世界を支配し始めている。
(世界帝国から多極化へ)

イスラエル内でも、旧労働党系は英傀儡だった。建国後の50年は、国家運営のノウハウを米英(英国系)から得るため、傀儡にならざるを得なかった。
建国から47年目に労働党のラビン首相が暗殺され、対英独立派のリクードが台頭し、911を誘発して米諜報界に入り込み、25年かけて英国系を追い出して乗っ取り、トランプを擁立してイスラエルを中東の覇権国に押し上げ、多極型世界のすべての国を親イスラエルに転換しつつある。イスラエル建国100周年の2048年までに完成させるのかもしれない。
(911から25年のイスラエル覇権拡大とサウジ潰し)

諜報業界は(ユダヤ人どうしの)騙し合いの世界だ。リクード系は英国系を信用できず共存不能なので、英国系を徹底的に潰そうとしている。英国は国家的にも解体されていく。トランプが煽っている。ドイツのAfDは来春以降、プーチンと話し合ってノルドストリームを再開していく。世界はすごいことになっている。
(英国解体を煽るトランプ)
(AfD Preps Talks With Moscow To Reopen Cheap Gas Flows To Germany)



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