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習近平訪米の意味

2026年9月26日   田中 宇


トランプ米大統領は、9月23-25日に訪米した中国の習近平主席を大歓迎したが、米中は結局ほとんど何も決められず成果が少なかったと報じられている。
たしかに、発表された成果は少ない。習近平はトランプに、台湾独立への反対を表明してくれと求めたが断られた。トランプは米中企業間の新契約を期待したが、習近平が中国の財界人を同行しなかったので米中企業間の交渉自体が行われなかった。
("More Signaling, Less Substance": Barclays Pours Cold Water On Trump-Xi Summit)

それなのにトランプは満足している感じだ。いろいろ推測や洞察(妄想)してみると、今回の米中首脳の3日間の会合は、発表されていない機密の部分に巨大な成果があったようだ。
それは一言でいうと「トランプが習近平を、世界的に形成されつつあるイスラエル(リクード系)の覇権体制に引っ張り込めた」ことだ。その見返りに習近平は「リクード系(米諜報界)が中共の中国支配体制を破壊せず永続的な安定を容認する保障」を得た。
(Deep Divides and Missed Deals Cloud Trump-Xi Visit)

2008年リーマン危機で、米国の金融覇権(債券金融システム)がいずれ崩壊することが露呈した後、中共は他の非米側の諸大国と結束してBRICSを新設し、中共が率いる非米側が、米国(米英=米諜報界の英国系)中心の世界体制をしのいでいく流れが始まった。
世界的に非米側が強まるほど、既存の米英覇権体制が崩れ、BRICSの非米諸国が並び立つ多極型の世界に転換していく多極化が進んだ。
それは、米国のロックフェラーなど「隠れ多極主義者」たち(多極派)が第二次大戦中から希求しつつも、英国系に冷戦構造を作られ妨害されて具現化できなかった体制でもあった。リーマン危機後、ロックフェラーが中国共産党をそそのかして非米側を強化し、世界の多極化が進んだ。結果的に見ると、BRICSが拡大した2023-24年ごろが非米側の国際力の頂点だった。
(世界はイスラエル覇権体制になった)

だが、2025年のトランプ返り咲きとともに、トランプの背後にいるリクード系が911事件以来の米諜報界の乗っ取りを完成させ、諜報力を駆使して、英国系と非米側の両方の諸国を、次々にリクード系の側になびかせたり選挙で政権転覆し始めた。
非米側にいたロシアや印度が、リクード側に入った。トランプの米州主義にリクード系が協力し、中南米で左翼(反米)政権が次々と転覆され、極右などの親米親イスラエル政権に転換した。
(Foreign Capital Returns To Brazil As Goldman Clients See 20% Stock Rally If Bolsonaro Defeats Socialist)

中東ではイスラエルが、シリア、レバノン、パレスチナなどのイスラエル敵視勢力(政権や民兵団)を次々と潰した。イランとサウジアラビアは今のイラン戦争で弱体化し、トルコはイスラエルの隠然傀儡になった(エジプトとヨルダンは1980年代からイスラエル傀儡)。
欧州の英国系諸国(英仏独EU北欧バルトなど)は、リクード系が誘発したウクライナ戦争や、インチキな地球温暖化対策によって自滅させられている。欧州では、英国系エリート2大政党制が崩れ、独AfDや仏ルペン(NF)など極右で親露親イスラエルな勢力が政権をとりつつある。
(サウジをイスラエルの言いなりにさせていく)

リクード系は世界を傘下に入れていく一方で、非米側を率いていた中共の上層部で米諜報界のスパイ網を活用して習近平への反逆を誘発し、習近平に対して「非米側を主導するのをやめろ」と加圧した。
もともとリクード系を米諜報界に引っ張り込んだのは、英国系を無力化したかった多極派であり、その経緯から、リクード系は多極型の世界体制を尊重している。リクード系のトランプが米州主義を推進しているのも、米州主義が多極型の世界体制の一部だからだ。
イスラエル(リクード系)は、多極型の世界を構成するすべての国が「親イスラエル」になる(反イスラエル諸国をすべて政権転覆する)ことを目標にしている。

多極派の本質は「資本家」なので、世界最大の市場である中国の繁栄を望んでいる。リクード系は政権転覆が得意なので、やろうと思えば中共を転換できるが、一党独裁の中共を潰すと中国が国家崩壊して内戦になり、資本家が大好きな中国市場が失われてしまう。
多極派を尊重するリクード系は、中共を潰せない。代替策として、米諜報界(リクード系)が中共上層部の反乱を誘発して習近平を脅しつつ、同時にトランプが習近平にすり寄って説得する「アメとムチ」の2面作戦で、習近平を非米側からリクード側に引っ張り込もうとしている。
トランプが習近平にすり寄って説得したのが、今回の習近平の訪米であり、今年5月のトランプの訪中だった。
(腑抜けた習近平)

トランプは、習近平が非米側の主導役を放棄してリクード側(イスラエル覇権下の多極型世界)に入ることを了承したら、すでにリクード側にいるロシアのプーチンも入れて米中露の首脳会談を定期的に開催したい。
米中露の3極体制は、リクード系が形成しつつある「親イスラエル諸国ばかりになった多極型の世界体制」の主導役になる。米中露が、リクード系の新世界秩序を安定させていく。これがトランプの次の課題だ。
史上初の米中露の3極首脳会談は、11月18日に中国の深圳で行われるAPECサミットのかたわらで挙行される予定だ。9月1日の上海機構サミットで習近平とプーチンが会談し、その場でプーチンが習近平に11月の米中露首脳会談を提案した。
習近平は「トランプ(と米諜報界、リクード系)が恒久的に中国の安定を保障してくれるなら」という条件で基本的に了承したと考えられる。
(米露が和解していく)

そして今回。トランプが習近平を滑走路まで出迎えたり、習近平を絶賛したことから考えて、トランプの説得は成功したのだろう。
習近平は非米側の覇権を放棄する(すでに放棄している)が、もともと非米側の覇権はロックフェラーなど多極派から棚ぼたでもらったものであり、習近平や中共が戦って獲得したものでない。
習近平としては、もらいものの覇権を手放しても、中共と中国の恒久的な安定が保障されるなら、その方が良い。
世界が米中露の3極体制になることで、中国は、以前の非米側覇権で得られていた国際利権と似たもの(もしくはそれ以上の利得)を中長期的に得られる話になっているのでないか。
(Putin, Trump Discussed Potential Trilateral Meeting With Xi Jinping: Kremlin)

今回の米中首脳会談は表向きの成果が少なかったが、それは11月の米中露首脳会談がまだ実現していないからだ。米中露首脳会談が実現したら、という条件で、今回トランプと習近平がいろんな成果を密約した可能性がある。

トランプは今年5月にも習近平と北京で会談している。トランプは5月13-15日に訪中したが、その直後の5月19-20日にプーチンがロシアから訪中している。トランプは、プーチンの訪中に自分の訪中をぶつけた。
ここからは邪推なのだが、トランプは5月の訪中前にも習近平に米中露首脳会談を提案したのでないか。習近平が了承したら、トランプは自分の訪中の日程をプーチンの訪中と合わせ、5月に米中露首脳会談を実現するつもりだったのでないか。
習近平が渋ったので5月の米中露首脳会談は実現せず、プーチンとトランプは別々の日に訪中した。
(米露イスラエル覇権の形成)

当時はイラン戦争が始まっており、米イスラエルの侵略的なイラン攻撃の極悪性をイスラム世界など非米諸国が非難する中で、習近平は、米イスラエルの軍門にくだる米中露首脳会談の開催に否定的だった。
だから断ったのだが、それに対するリクード系(米イスラエル)の事実上の「中国制裁」が、ホルムズ海峡の二重封鎖の長期化だった。
トランプがイラン沖に空母を派遣し、イランを海上封鎖して中国への原油輸出を止め、その報復でイランがホルムズ海峡を封鎖してサウジやイラクから中国などへの原油輸出が急減した。この二重封鎖と二重禁輸が、その後ずっと続いている。
(ホルムズ海峡の騙し)

この二重封鎖は、イスラエルのライバルだったイランとサウジを弱体化させるのが主目的だったが、裏の大事な目的として、イスラエルの軍門に下らない中国への経済制裁でもあった。
リクード系はとんでもないことをする。習近平は驚愕しつつ困窮し、仕方がないのでトランプとプーチンの提案を聞き入れてイスラエルの軍門に下り、米中露首脳会談を中国で行うことに同意した。

今回の習近平の訪米の概要が決まり、トランプから習近平への説得の成功が内定した8月中旬以降、トランプから習近平へのご褒美であるかのように、サウジの超大型タンカー群がホルムズ海峡を通ってオマーン沖まで原油を運び出すことをイランが黙認し始め、オマーン沖で積み替えた原油が中国へと運ばれる動きが再開され始めた。
サウジから中国への原油の流れは、習近平の訪米直前の9月中旬から急増している。米国と親しい日本や韓国や印度にも、この原油の一部が輸出されている。
(Aramco to boost Gulf exports to 60 million barrels in September, October, traders say)

11月に深圳で米中露首脳会談が実現したら、習近平(とプーチン)が米イラン間を仲裁し、イラン戦争が終わっていく流れも始まるかもしれない。
イランは「許される」ように見えるが、多分そうではなく、モジタバ・ハメネイが実はすでに死んでいるのに革命防衛隊がウソをついて政権をとっていることがバレていき、防衛隊政権の正統性が失われて政権転覆していく可能性が高い。
イラン戦争が終わると、米軍の中東撤退が始まる。サウジ(などペルシャ湾岸産油国)は安全保障の大黒柱だった米軍を失い、イスラエルに助けを求めるしかなくなり、アブラハム合意に加盟してイスラエルと国交正常化していく。リクード系の世界覇権が確立していく。
以前の私は、イスラエルの目的を「サウジ潰し」かと思っていたが、そこまでいかず「サウジを弱体化してイスラエルの傘下に入れる」のが目的かもしれない。よく考えたら、サウジを潰して内戦状態の失敗国家にしてしまうとアルカイダが繁茂してむしろイスラエルの脅威になる。
(モジタバ・ハメネイはすでに死んでいる)

米露中3極体制はヤルタ体制になるので、日本からみると「米国から外されてまた敗戦国ですか」となる。しかし今回はイスラエル傘下の3極であり、日本はすでに高市化でリクード系(トランプ)の傘下に入っている。日本でなく英国系(英欧独仏EU)が敗戦国である。ドイツはまたもや敗戦国だが、日本は違う。



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