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世界はイスラエル覇権体制になった

2026年7月29日   田中 宇

世界は近年、米国主導の米国側(米欧日など先進諸国)と中国(中共)が隠然と主導する非米側(BRICSなど)に分裂し、非米側がしだいに強くなって米国側をしのぐ流れだった。
この流れは2008年のリーマン危機後に始まり、2022年のウクライナ開戦後に強まった。米覇権が縮小して中国やBRICSが台頭し、諸大国のちからが均衡して世界の覇権構造が多極型になる「多極化」が完成していくかに見えた。
リクード系の覇権拡大

だがその後、2025年のトランプ返り咲きとともに、それまで米諜報界(覇権運営機関)で力を持っていたイスラエル(リクード系)が、米国側と非米側の両方に対する影響力を格段に強めた。
米国はトランプ政権下で、ほぼ完全にイスラエルの傀儡になった。米国の政府と議会は、イスラエルが必要とする軍事諜報を米国が提供する義務があると定める新法(情報承認法622条など)を作った。傀儡性は法制化されている。
Section 622 Amendment Makes Israel Intelligence Sharing Harder to Reduce

イスラエルは米諜報界を牛耳り、その諜報力を使って中共の上層部で習近平に対する反逆劇を起こしたり、ロシアを加圧してコーカサス覇権を手放させてイスラエル(の下請けをするトルコの)傘下に組み入れたりしている。
英欧は、イスラエル支配下の米諜報界からウクライナ戦争に関する間違った諜報と戦略を注入され、ロシアに対する敗北が決まっている長い戦争に国力を注ぎ込まされ、自滅への道に入っている。
イスラエルは英欧を自滅させることで、イスラエルが乗っ取る前の米諜報界の支配者だった英国系の勢力を破綻させていく。英国は首相が替わっても挽回できない。英国系による米諜報界の再乗っ取りはない。
中東への関与を下げたロシア

イスラエルは、米諜報界とトランプ政権を牛耳ったことで、多極型世界の全体を隠然支配する新たな覇権国になっている。
イスラエルが中共に覇権放棄させた結果、非米側全体の強さが2024年あたりを頂点として下火になっている。
BRICS参加国のブラジルや南アフリカは以前、ガザ戦争の巨大な人道犯罪でイスラエルを激しく非難・訴追していた。だが、イスラエルは結局何のおとがめも受けず、逆に、ブラジルや南アの発言力や、国際訴追機関(国連傘下のICCとICJ)と国連の政治力の方が弱まっている。
英国系潰し策としてのガザ虐殺

イラン戦争の長期化はトランプ派の人気を下げている。トランプ派が政権を失ったら、イスラエルの米国支配も終わりかねない。
だが、ライバルの民主党は米諜報界の謀略を受けて極左勢力が台頭している。左翼は、トランプよりさらに不人気だ。
民主党内(や英独仏)では10年以上前から、人種や性別や環境問題(温暖化)などに関する歪曲的な「正しさ」を過剰に重視するリベラル左翼の政治運動が強められてきた。この流れは、民主党(や英独仏の2大政党)が有権者に愛想を尽かされて失墜する結果を生むために諜報界(リクード系)が仕組んだ観がある。
民主党のエリート系の中からは、イスラエルにすり寄ってトランプ派から政権を奪還しようとするラーム・エマニュエル(好戦派ユダヤ人)のような勢力も出てきている。米国は、どっちが勝ってもイスラエル傀儡だ。
Eying 2028, Rahm Emanuel test drives tough love message in Israel

イスラエルは、どういう経緯で強大な覇権を手にしたのか。以前から米政界に影響力を持っていたが、どうしてそれが急拡大したのか。
私の見立ては「米国の隠れ多極派の助っ人として911事件を起こして諜報界に入り込んだリクード系が、世界を多極化していく最後の局面で裏切り、起こるはずだったドル崩壊や諜報界の破綻を起こさずに止め、諜報界を居抜きで乗っ取ってイスラエル覇権として仕立て直し、トランプを傘下に入れて返り咲かせて実行犯として使っている」というものだ。
英国系からリクード系に変わる世界

この見立ての前提として、米金融システムはウクライナ開戦後のいずれかの時点(2024-26年あたり?)でリーマン危機を超えるドル崩壊を引き起こすはずだった、という推測がある。
米議会は2022年春に、リーマン危機から断続的に米連銀(FRB)が続けてきた金融テコ入れ策のQE(量的緩和策。造幣による債券の買い支え)を、不健全という理由で連銀にやめさせている。
連銀はQEをやめて、それまでの買い支えで貯め込んだ債券を売却し、代金として得たドル現金を償却して資産勘定を縮小するQT(量的引き締め策)に転換し、現在に至っている。
金融大崩壊か、裏QEへの移行か

リーマン危機前は、民間が債券を買ってバブルを維持していた。債券が信用失墜して売れなくなったのでリーマン危機が起き、連銀は売れなくなった債券を造幣した資金で買い支え、いったん崩壊したバブルを立て直した。それがQEの意味だ。
連銀がQEをやめて債券を放出(QT)し始めたのだから、いずれバブル再崩壊が確実だった。だがその後、今に至るまでバブルは崩壊していない。QE資金がないのに、米国の債券や株は上がり続けている。何が起きたのか?。誰にもわからなかった。

この話と、リクード系による米覇権(諜報界)乗っ取りが関係しているのでないかというのが、私の今回の見立てだ。
2022年春のQE終了とウクライナ開戦は、2つ合わせて、それまで世界を支配してきた米諜報界とその支配者である英国系の勢力を崩壊させ、リーマン危機後に形成されたBRICSなど非米側の勢力(とくに主導役の中共)がその後の世界支配者になるという、多極化の完成局面として用意されたのでないか。
米覇権を支えている最大の柱は、軍事力でなく金融力であり、金融力の根底にあるドルの信用力だ。資金力は諜報力の源泉でもある。リーマン級の危機が再来すると、米国の金融力が失墜し、米国は覇権と諜報力の両方を失い、諜報界も雲散霧消する。
諜報界と米覇権の黒幕だった英国系は、ウクライナでの長い負け戦にはめ込まれて無力化し、米覇権の喪失を傍観するしかない。

第二次大戦後、国連P5に代表される多極型の世界を作りかけた米多極派(ロックフェラーとか)の計画は、英国系によって阻止された。
英国系は、米国側に持ちかけて諜報界を作ってやり(大英帝国は諜報界の先輩)、それを乗っ取って冷戦を起こし、ヤルタ会談で作られた多極型世界を潰した。
多極派は45年かけて冷戦を終わらせ、その後のせめぎ合いに勝って世界を多極化した。その仕上げとして、2022年からのウクライナ戦争とQE終了が挙行された。英国系は無力化した。だが、米金融システムは潰れず、米諜報界はリクード系に乗っ取られた。

リクード系は、多極派が冷戦後のせめぎ合いで英国系に勝つための助っ人、下請けとして、多極派の協力のもとで911テロ事件を起こし、米諜報界に入り込んだ。
リクード系と英国系はユダヤ人で諜報の実働部隊を持つが、多極派(ロックフェラー)はユダヤ人主導でないので諜報の実務が弱い。多極派は、それを補うためにリクードを招き入れた。リクード系の中心は、米国からイスラエルの入植地に「帰国(アリヤ)」したユダヤ人だ。
世界を揺るがすイスラエル入植者

リクード系は多極派の意を受け、ブッシュ政権内のネオコンなどとしてイラク戦争を起こし、米覇権を信用失墜させて多極化に貢献した。
リクード系は多極派の一味に見えたが、実はそうでなく、多極化の最後の局面で米諜報界が崩壊する直前に多極派を裏切り、諜報界の崩壊を止めてそのまま居座り、イスラエル覇権を構築した。

金融崩壊を引き起こすQTは続いているが、リクード系は米諜報界やトランプを動かし、米連銀の政策を捻じ曲げて裏帳簿的なやり方で金融界に資金注入し、債券やドルの崩壊を止め、バブルを維持し、相場を続騰させている。
リクード系が米覇権を乗っ取る前は、多極派が米金融バブルと米覇権を崩壊させて世界を多極化するという話だったから、非米側など多くの投資家が、ドルの究極のライバルである金地金を買う動きを増し、金相場が高騰した。
金相場はまだ上がるのか?

金相場は2016年ごろまで、諜報界(の傘下の金融界)の英国系が、ドル防衛策として、信用取引を使った上昇抑止を続けていた。しかしその後、多極派とリクード系によって英国系が潰されるとともに、金相場の抑止力が失われ、金相場の高騰に拍車をかけた。
だがこの面でも、多極派を裏切ったリクード系は、イラン戦争を始める直前のタイミングで、以前に英国系が手掛けていた信用取引による金相場の抑止策を復活し、金相場を暴落させた。
金相場の上昇を阻止している資金と、株や債券をつり上げている資金は、いずれも米連銀の簿外資金的なもので、同じ資金源だ。
金相場抑圧の終わり

基本的に、今の金融高騰と金相場の上昇抑止は、イスラエルが何らかの理由で覇権を失うまで続くと考えられる。
中共が、イスラエル覇権に立ち向かうことはない。英国系も無力だ。イスラエル覇権を倒せる他の勢力は存在しない。イスラエル覇権が崩壊するとしたら、金融の需給バランスの大幅な崩壊など、内発的な動きぐらいしかない。
金融界は諜報界の一部であり、金融界の誰かが意図的にバブル崩壊を引き起こそうとしても、リクード系に察知される。リーマン危機は誘発された部分があるが、同じ構図の危機は再発しにくい。
イスラエル覇権は、一時的でなく、もしかしたら英国系の覇権みたいに長く続く。(今のインチキなバブル維持が百年続くとか考えにくいが)
イスラエルと中国の暗闘

最近、米国などでAI株バブルの崩壊が予測されている。それが具現化するとしたら、イスラエルの金融覇権は私の見立てよりも弱いことになる。私の見立てが正しいなら、金融危機は起きそうで起きない。
金相場も、多分ずっと上がらない。以前の記事で、トランプが世界的な石油ガス支配にこだわっているので、金融(ペーパーマネー)が崩壊して金資源類(コモディティ)が高騰する予兆かもと書いた。
しかし再考してみると、トランプ(イスラエル)の石油ガス支配は、金融の話でなく、政治的な世界支配の戦略だ。言うことを聞かない国は石油ガスが輸入できないようにしてやる、的な。
金相場の再抑止はいつまで続くか

イスラエルは、ガザでの巨大な人道犯罪など、世界から敵視される戦略をわざとやっている。その意図として、英国系覇権の人道主義の体制を破壊するとか、リベラル派(英国系)のユダヤ人がイスラエル覇権運営に入って隠然妨害するのを防ぐとか、いくつか考えられる。
敵が多いほど、イスラエルは覇権にしがみつかざるを得ない。覇権を失ったら潰されるからだ。
イスラエルには、世界覇権でなく中東地域覇権で十分だと考える勢力もいるだろうが、そういう勢力を無力化するために、イスラエル本国側でなく、米国側(ディアスポラ側)のシオニストが、ガザ戦争を巨大な人道犯罪に仕立て、イスラエルに世界覇権を強要しているのかもしれない。
世界を敵に回すイスラエルの策

世界から嫌われているイスラエルは、覇権を失ったら潰されるから、覇権を永続させるために全力を尽くさねばならない。イスラエル覇権と、米金融のバブル延命が長期化しそうな理由はそこにもある。
そうなると、金相場はずっと上がらない。中国人民銀行など非米側の中銀群は、金地金を買い漁っている。いずれイスラエル覇権とドルが破綻して金地金が再騰すると予測しているのだろうが、それはかなり先かもしれない。
私の予測は良く外れる。外れたら、その理由を考える。



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