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米露が和解していく

2026年9月10日   田中 宇

11月18日に中国の深圳で行われるAPECサミットで、米露中の3か国の首脳会談が開かれる可能性が高まっている。9月1日にキルギスで行われた上海機構サミットのかたわらでプーチンと習近平が会談し、深圳APECサミットでトランプも入れた3者の首脳会談の開催が検討された。
中露首脳は深圳に来て会うが、トランプが来るかどうかまだ不確定だ。米政府は何も発表していない。しかしトランプは最近、直接・間接にプーチンと交渉し、ウクライナを停戦して米露和解を実現したいと何度も言っている。トランプはプーチンに会いたいはずだ。
Kremlin says Putin, Xi and Trump may hold a trilateral meeting in November

米国が仲裁するウクライナの停戦交渉は10月までに始まる。何か妥結するとしたら来春以降だ(ウクライナのゼレンスキーやブダノフ大統領府長官がそう言っている)。
11月だとウクライナ和平はまだ妥結していないが、妥結に向けて交渉中だ。米露関係も和解交渉中になるので、トランプはプーチンに会いやすい。米欧の英国系は米露首脳会談に文句を言えない。
Ukraine cannot halt fighting now and war will continue into winter
Russia looking forward to revival of trilateral Ukraine talks

9月24日はワシントンDCで米中が首脳会談する。最近の記事に書いたように、大した問題解決は望めないが、関係悪化する可能性も低い。見栄っ張りなトランプは、習近平との会談成功を誇示するだろう。
この流れで、習近平が「次は11月の深圳サミットにいらっしゃい。プーチンと3人で会おう」とトランプを誘っても不思議でない(プーチンは9月1日に習近平にその役目を頼んだとか?)。
腑抜けた習近平

中露首脳は、以前から仲が良い(裏では石油ガス販売価格交渉など確執もあるが、リクード系に監視され覇権自粛を強制されている習近平は、リクード系に重用されているプーチンを頼る傾向)。
米露中の3つの関係は、いずれも緊密化する方向にある。だから、11月18日の米露中首脳会談は実現する可能性が高い。
Trump told Putin he wants swift end to Ukraine war and US-Russia ties restored, Kremlin says

米露中、もしくは米ソ中の3者首脳会談は、これまで一度も開かれたことがない。第二次大戦中やそれ以前にさかのぼっても、ヤルタ会談が米ソ(+英)、カイロ会談が米中(+英)であるなど、連合国の米ソ中の首脳が一堂に会したことはない。
中露は3者首脳会談をやりたい感じを見せている。トランプは深圳に行くだけで、史上初の米露中首脳会談を実現した米大統領になれる。見栄っ張りのトランプが、行かないはずがない。
世界のデザインをめぐる200年の暗闘

冷戦開始以来、米国が英欧を率いて(実は英国系が米欧を傀儡化して)ロシアと恒久対立し、中国も包囲する策略を弄してきた英国系は、米露中の結束が示されて英欧が冷や飯を食わされる3者首脳会談を阻止したい。
しかし反英的(リクード系)なトランプは、各方面で英国系を自滅させて勝っている。3者首脳会談はたぶん阻止されずに挙行される。
英国系(欧米日のマスコミ専門家など)は「3者首脳会談が行われたがほとんど何も決められなかった。写真撮影会であり無意味だ」などと過剰に軽視し、NATOなど米(英)同盟システムの延命につとめるだろう。
日本などのマスコミは現時点で、キルギスでの露中首脳会談後の露政府の発表を受け、3者首脳会談の可能性自体は報じたが、それが実現したら史上初であることは報じていない。意図的に軽視している。
Trump and Putin may hold trilateral meeting at next Apec forum, Kremlin says

3者首脳会談は、行われるが軽視される。トランプは何か自慢しそうだが、米政府としては軽視される状況を黙認する。それは、前回書いたトランプの「2層化した欧露戦略」の一部だ。
3者首脳会談は2層目の、先日のウィトコフらの訪露に始まるウクライナ終戦交渉と対露和解への流れの一つだ。
しかしトランプは、対露和解の流れと別に、ロシアが今にも英欧との対立を戦争へと拡大しそうだという話を煽る目くらましな1層目の策をやっている。
トランプの2層化した欧露戦略

その結果、対露和解の流れは隠され、英国系は米国の対露和解を阻止できず、英国系自身がロシアと戦争する準備に奔走し疲弊する。
英欧諸国の有権者たちは、自国の英国系エリートの露敵視の妄想にうんざりし、ロシアと現実的な協調関係を結ぼうとする独AfDや仏ルペンなどの極右勢力への支持を強め、極右への政権交代と英国系エリートの失権が進む。
European leaders trying to 'buy time' for Kiev with ceasefire calls - Lavrov

1層目がなく2層目だけだと、英国系の勢力がトランプにすり寄って、協力するふりをしつつ対露和解を破壊する策をやりかねない。
ヤルタ会談以来、英国系はずっとその手の策を米国にやり続けてきた。だからトランプは戦略を2層化し、英国系がすり寄ってきたら1層目を押し出し、まず英国政府の軍事費を増やせ、まず英国がウクライナへの軍事支援を増やせ(そしてロシアから反撃されて潰れろ)と言える。
CIA長官訪露と欧露戦争の拡大

米戦争省のコルビー次官が9月8日に「トランプの和平努力にもかかわらず、ロシアは戦争能力を強化している。戦場は膠着している。和平は難しく、ウクライナ戦争が終わる見通しが立たない」「欧州は長期戦に備えねばならない」という趣旨を述べた。この手の発言は1層目戦略の一つだ。
Remarks by Under Secretary of War for Policy Elbridge Colby at the Ukraine Defense Contact Group
Pentagon Informs Allies Prepare For "Protracted" War In Ukraine

EU上層部は英傀儡だが、トランプを丸め込むことをしだいにあきらめ、トランプ敵視に向かっている。EUの加盟国拡大担当のマルタ・コス(Marta Kos)は9月8日、トランプのMAGA運動が欧州文明を凋落させようとしている、と述べ、EUに新規加盟を希望する諸国(セルビアなど)は、MAGA運動やロシアといった欧州に敵対する諸勢力との縁を切るべきだと発言した。
コスは以前からMAGA敵視だった。EU上層部がトランプとロシアを束ねて敵視しているのが象徴的だ。
Cut ties with MAGA to join EU, says Brussels
Cut ties with MAGA to join - EU to bloc hopefuls

米露中の首脳会談や結束について、トランプとプーチンは同程度に強く希望している。米露結束はリクード系の覇権体制の確立にもなる。
習近平は米露より複雑な立場だ。中共は2024年ごろまで、米覇権を肩代わりする非米側の覇権国になりつつあったが、トランプ返り咲きとともに出てきたリクード系に脅されて覇権放棄に追い込まれた。今はリクード系との関係修復を目指し、9月の米中首脳会談や、11月の米露中首脳会談に臨んでいる。
今の米露中の結束は、米露が主導役で、中国は追随している。だから私は、米中露でなく米露中と書いている。
東アジアだけ戦争にならない理由

▼プーチンの択捉訪問の理由も見えた

最近の米露和解への流れの開始を見ると、なぜ8月12日にプーチンが択捉島に行ったかという理由も見えてくる。
プーチンの択捉訪問について、プーチン側近群の一人であるアジア専門家のゲオルギー・トロラヤが最近「中長期的に、米国や日本が極東でロシアと軍事対立を強める流れを誘発してしまった」とやんわり批判する論文を、権威あるバルダイクラブに発表した。
What the Iturup Shock Means for Asia

米国が今後もずっと露敵視であり続けるなら、トロラヤの見方が正しい。しかし、9月になってトランプがウクライナ和平や対露和解に動き出した。少なくとも11月に史上初の米露中首脳会談が行われ、米露関係の対立が減るのは間違いない。
プーチンは諜報界の人だしリクード系と仲良しだから、8月12日に択捉島を訪問したとき、すでにトランプが対露和解に動き出すことを察知していたはずだ。
プーチン択捉訪問から深読みする世界

プーチンの択捉訪問は、来年に向けた米露和解の流れを先取りして挙行された。米露が和解すると、日本は二島返還で満足しようとした1956年の日ソ共同宣言前に戻ることになる。択捉訪問批判を書いたトロラヤは、そこまでわかっていない。
プーチンは正しい。含み笑いしつつ、択捉のイクラをうまそうにほおばっている。
Russia's Top Expert On Asia Constructively Critiqued Putin's Trip To Iturup



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