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日本の地域覇権「日豪亜」への道再び

2026年6月18日   田中 宇

日本は、安倍晋三政権(2012-2020年)の後半期、米国の覇権領域の縮小を目指したトランプ大統領にけしかけられ、西太平洋地域の米国と中国の間に、日本の地域覇権領域を作ることを構想していた。
西太平洋地域には、地政学的に2つの「列島線」が存在している。第1列島線は、南西諸島の西沖、台湾の東沖、南シナ海をつなぐ線で、中共はこの線の西側を自国の領海・近海と主張している。
米国の中国敵視に追随せず対中和解した安倍の日本

第2列島線は、小笠原諸島の東沖からグアム島をつなぐ線で、米国はこの線の東側を自国の領海・影響圏とみなしている。
2つの列島線の間は、日本からフィリピン、インドネシア、豪州をつなぐ海域だが、この海域にある「日豪亜」の諸国はすべて戦後ずっと対米従属で、日豪亜の海域も米国の影響圏だった。
日本が南シナ海で中国を挑発する日

この海域の地政学的な様相が変化し始めたのは、2008年のリーマン危機で米国の経済覇権(債券金融バブル)が崩れ出し(その後QEで延命するも本質的な崩壊はすでに不可逆)、2013年から中共の指導者が習近平になって覇権拡大や米中対等化、世界の多極化と非米化(BRICS台頭)を目指してからだ。
中共は、米国の崩壊と中共の台頭が続くなら、中国の防衛領域を第1列島線から第2列島線へと東方拡大するぞと示唆し始めた。
中国が防衛領域を拡大すると、2つの列島線の間にある日本やフィリピン(インドネシア、豪州)は、米国の傘下から中国の傘下に移されてしまう。
日豪は太平洋の第3極になるか

そんなこと米国が許すわけないと高をくくっていると、2017年から米国の政権を握ったトランプが、同盟諸国に防衛負担の急増を迫って拒否されると邪険にして米覇権下から追い出すような覇権放棄策をやり出した。
世界的に中共の台頭と米国の覇権放棄が進むなか、フィリピンなどASEAN諸国は米中間のバランスで生きていたのが崩れて中共覇権下に入った感じになり、日本や豪州も中共に媚を売らざるを得なくなった。
見えてきた日本の新たな姿

そんなとき、トランプは当選後に寄ってきた安倍晋三と親しくなり、これまで米国が主導していた米日豪印4か国(クワッド)の中国包囲網「インド太平洋」や、アジア太平洋の貿易圏TPPの主導役を安倍にやらせる流れを作った。
トランプは、クアッドやTPPを安倍に主導させることで、日本が2つの列島線の間にある日豪亜の諸国をまとめる地域覇権国になっていくことを期待した。
日本が日豪亜をまとめてくれれば、日豪亜が米中間の緩衝役になり、いずれ米国がもっと衰退しても中共がグアム島の近くまで押し出してこない。覇権放棄屋のトランプにとって好都合だった。
世界と日本を変えるトランプ

しかも、そもそも中共は日豪亜を自国の傘下に入れたいと思っていなかった。中共は、自分の国の支配で手一杯だ。中国人(漢民族)は強欲すぎて、国内が民主化されたら政治家たちが選挙を利権拡大に使い過ぎ、共産党への反逆が多発し、国内分裂になる。中共は、国内を民主化できない。猛烈な独裁で中国を統治するしかない。
国内がそんな状態なのに、中共は、高度な民主主義の謀略をやっている大型(中規模)の国である日本や豪州などを傘下に入れて支配できない。中共が支配できる(面倒を見られる)外国は、ラオスやミャンマー、カザフスタン、パキスタンなど、中国に隣接した、独裁に近い体制を持つ小規模な諸国だけで、しかも相手国が望んだ場合だけだ。
世界資本家とコラボする習近平の中国

中共は基本的に覇権拡大に消極的だ。リーマン危機後、世界が米国側と非米側に二分されていく中で、中共がBRICSやG77など非米側を主導して世界(の半分)的な覇権国になったのは、英国系(オバマやバイデンの米民主党など)が自分たちの覇権の延命のために中国に半分を押しつけたからだ。
日豪亜に対する中共の態度も同様だ。中共が、2段階の防衛圏として2つの列島線を設定したのは、日豪を傘下に入れるためでなく、逆に、日豪に独自の影響圏(地域覇権=日豪亜)を作らせるためだった。日豪が独自の覇権地域にならない場合、食ってしまう(傘下に入れる)ぞと脅したのだ。
安倍は、それを知っていた。クワッドやTPPは中国敵視策として作られていたが、トランプからクワッドとTPPの主導役を任された安倍は、中共に接近し、TPPと一帯一路をつなげるとか調子の良いことを言いつつ、中共の容認下で日豪亜を形成していこうとした。
中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本

しかし結局、日豪亜は形成されなかった。豪州は、本質的に英国の一部であり、英国は日豪を英国系の傘下に残しつつ英国系の復活を画策していた。豪州は最初から日本との同盟強化に消極的で、日豪の同盟強化の第一歩になるはずだった豪州の2016年の潜水艦受注は、日本でなくフランスに与えられた。
潜水艦とともに消えた日豪亜同盟

2020年の選挙でトランプは(民主党の不正によって)負けて下野し、2022年には安倍も英国系(米諜報界、傘下の日本官界も共犯)によって殺された。
プロの真犯人が別のところから射殺し、安倍を貫通した銃弾は行方不明のまま問題にもされず、真相究明しようとした自民党議員は黙らされた。
日本のマスコミ(官界傘下の英傀儡)は、安倍殺害をめぐる謎を解明するどころか統一教会と自民党の関係で空騒ぎし、殺された安倍が悪いみたいな話にすり替えた。
安倍元首相殺害の深層

日豪亜は、安倍とともに葬り去られたかに見えたが、そうでなかった。2025年にトランプが返り咲いて半年後、日本の首相が安倍の遺志を継ぐ高市早苗になった。
日本の高市化は、米国でトランプの返り咲きとともに米上層部(諜報界)をイスラエルのリクード系が完全に握ったことと関連している。
米露イスラエル覇権の形成

世界は、リーマン危機までの英国系の単独覇権体制から、2008-2024年ぐらいの米国側(英国系)と非米側(中共主導)の二分(多極化)体制を経て、リクード系中心の多極型体制になった。
米諜報界(覇権運営機関)では、2001年の911テロ事件以来リクード系が入り込み、それまでの支配者だった英国系を20年かけて追い出した。
2024年にトランプの返り咲きが決まったころから、それまで米諜報界に隠然と存在していたリクード系が姿を現して顕在化した。
リクード系は、トランプだけでなくプーチンとも組み(傘下に入れ)、英国系の衰退ですでに多極型になっている世界の中心に米露イスラエルの隠然同盟を据えた。
イスラエル世界覇権の可能性

リクード系は中東をイスラエル覇権体制に再編するために、(1)ガザ戦争(パレスチナ抹消)、(2)シリア・レバノン・イランのイラン系勢力の破壊、(3)イラン戦争でホルムズ閉鎖を誘発することによるアラブ産油国潰し、(4)広義の中東であるコーカサスのイスラエル覇権化(アルメニアやアゼルバイジャンの変化)などを進めている。
同時にリクード系は、仇敵である英国系と、ここ10余年の多極化の中で強くなった中共を弱体化する策も進めている。英国系(英欧)は、プーチンが担当するウクライナ戦争の長期化によって自滅を加速し、ホルムズ閉鎖の悪影響も大きく受けるように設定されている。
イスラエルの覇権拡大

リクード系は、米諜報界が長い時間をかけて中共上層部(軍内など)に仕込んだ要員網を操って習近平への反逆を連発し、習近平がビビってリクード系の言いなりになるようにした。
もともと中共の覇権拡大は、衰退する英国系から移譲されて引き受けただけであり、中共にとって運営コストもかかる。中共は、自国の周辺が安定していれば満足だ。遠くは支配しなくて良い。
習近平は、世界支配を望む謀略組織リクード系と戦わず和解し、中共の覇権を自主的に縮小した。アフリカの資源利権を手放し、イランへの支援を減らし、BRICSの主導役を放棄した。
イスラエルと中国の暗闘

リクード系は、世界戦略の一環として日本を高市化して傘下に入れた。日本でそれまで強かった英国系(自民党リベラル派や官界)の勢力を押しのけて、トランプやリクード系の言うことを聞く高市に権力を握らせた。
リクード系が日本を高市化したのは、国際政治的に日本を中共に対抗できる国に仕立て、中共の覇権拡大を止める策の一翼を担わせるためだった。
それまでの日本の上層部は、上司である英国系が衰退して覇権を中共側に移譲していくのに合わせ、日本を中共の傘下に入れていく準備をしていた。リクード系は、日本の中共傀儡化の流れを止めるために、英国系の石破を辞めさせて高市に替えた。
中共はすでにリクード系と談合し、自主的に覇権を縮小しているので、リクード系が日本を高市化することにも協力した。中共は、台湾防衛に言及した高市を口汚く攻撃し、日本人が中共を嫌って高市を支持する流れを加速させた。
日本が高市化した意味

日本の上層部(外務省など官界や、その傘下のマスコミ権威筋など)は、いまだに英国系と中共の共存体制の復活を望んでいる。日本のマスコミは、リクード系の勢力であるトランプや高市を悪者として歪曲報道し続けている。
高市は目くらましの策として、同じリクード系であるプーチンとの和解を先延ばしし、英国やEUなど英国系の勢力と仲良くする演技も続けている。だが本質として、日本はすでに英国系からリクード系へと加入先を転換している(国民の意志と関係なく)。
敵対扇動で日本を極に引っ張り上げる中共

5月29-31日に、シンガポールに日中や東南アジアなどアジア太平洋諸国や米欧の国防相らが集まる、年次のシャングリラ会議(アジア安全保障会議)が開かれた。
この会議は英国のシンクタンクIISSが主催者で、英国系が黒幕だ(開催地であるシンガポールも英国系の国)。中共は2007年から招待され、その後、中共の覇権拡大とともに、この会議は、米国と中共とアジア諸国の思惑を英国系が調整する場になっている。
China's defence minister to skip Shangri-La Dialogue for second year

今年の会議に、日本からは小泉防衛大臣が出席したが、中共の国防相は2年連続で欠席した。中共は2年連続で、下っ端の人々ばかり派遣してきた。
習近平は、覇権の自主的な縮小策として、昨年のBRICSサミットを完全欠席(動画参加もなし)した。今回のシャングリラへの国防相の連続欠席も同様に、中共の自主的な覇権縮小策と考えられる。
Japan Is Becoming the Superpower of the Middle Powers

米国からはヘグセス戦争長官が出席した。ヘグセスは演説で、米国の軍事力の強さを強調する一方で「ルールに基づく秩序」など英国系のグローバリズムに対する嫌悪感を表明し、シャングリラ会議そのものを否定した。
ヘグセスは、戦争で重要なのは対話でなく武力の強さだと強調した。米国は西半球の国になったと宣言しつつ、太平洋地域でも武力を維持すると付け加えた。
米国は以前のシャングリラ会議で、参加諸国間の仲裁役、仕切り役をよくやっていたが、今回はほとんどしなかった。米国に代わり、日本と豪州が仕切り役になった。
What Shangri-La 2026 Revealed About the Future Regional Order

シャングリラ会議は、米中の覇権のせめぎあいを調整する場でもあった。中共国防相の欠席により、米中の軍事面の調整ができなくなった。それを補うための場として、シャングリラ会議とほとんど同じ日程の5月28-29日に、米中間の軍事的な意思疎通を改善する場として、米中の軍の実務者どうしがハワイに集まり「軍事海上協議協定に基づく作業部会」が開かれた。
US and China hold ‘candid’ maritime military safety talks in Hawaii

中共は、リクード系に加圧されてシャングリラ会議を欠席したが、これだと米国との調整の場がなくなる。中共の懸念に応えた米国が、定例の軍事調整の会合を同時期にハワイで開いた、と考えられる。
トランプは中共を敵視していない。単独覇権を復活したい英国系のシャングリラ会議は破壊するが、別途、英国系がいない場で、米中だけで2国間会合し、中共の懸念を取り去ってやっている。
US and China hold ‘candid’ maritime military safety talks in Hawaii

英国系が事務局で米中とアジア(日豪亜)をまとめる場だったシャングリラ会議は、中共の欠席と米国の離脱姿勢により、日豪がアジア(亜)をまとめる場に変質している。
中共の国防相は来年以降、再参加するかもしれない。だが、中共の自主的な覇権縮小策は今後も続くと考えられる(さもないとリクード系にまたやられる)。ならば、ずっと欠席かもしれない。
米国は、民主党(英国系)の自滅により今後もずっとトランプ派が強いだろうから、シャングリラからの離脱姿勢は変わらない。
米中が抜けたシャングリラ会議は、日本と豪州が海洋アジアをまとめて地域覇権領域にする、かつて安倍晋三がトランプに頼まれて作りかけた「日豪亜」を蘇生・継承する場になっている。
Japan’s Middle Power Arms Strategy in the Indo-Pacific

トランプの差し金で、日本の権力者が安倍の遺志を継ぐ高市になり、米中覇権行使の場だったシャングリラ会議も、米中のはからいで、安倍の「日豪亜」が蘇生する場になっている。
高市化した日本は、フィリピンやインドネシアとの軍事関係も強化し、少しずつ日豪亜への道を進んでいる。安倍のころ、安保面の日豪亜と並んで、経済の話として、トランプの米国が抜けた後のTPPを日本主導で進める話があった。最近、日豪亜の話が復活するとともに、韓国がTPPに入るなど、TPPの方も動きが再開されている。
TPP11:トランプに押されて非米化する日本

シャングリラ会議の欠席を超えて、中共は東南アジアの覇権を放棄していくのか??。米中の覇権のせめぎあいの場だった東南アジアから、米中両方が抜けていき、敗戦以来対米従属一本槍で独自覇権などめっそうもないと言っていた日本が、米中から頼まれて東南アジアへの覇権を80年ぶりにそろそろと復活するのか??。考えにくいことだが。
米国も中国も、東南アジアからいなくなることはない。これまで完全に米国の傘下にいて、独自の国際行動を全くやらなかった日本が、少しずつ独自行動をやり、日本が米中と立ち並ぶような方向に近づいていく、という程度のことかもしれない。
Thailand and Cambodia ink ceasefire deal

東南アジアのうち、ラオスとカンボジアとミャンマーは、今後も中共の覇権下だろう。トランプはカンボジアにちょっかいを出し、タイと和解させたがっており、中共覇権下から引っこ抜きたいのかもしれない。
それ以外のASEAN諸国、とくにインドネシアとベトナムは、日本と並び、アジアで中共と対抗できる中型国として、イスラエルからもガザ平和評議会に入ってくれと秋波を送られたりしている。
トランプの平和評議会はイスラエル覇権機関

豪州は、本質的に英国の一部だったが、これから英国の衰退が不可逆的に明確化する中で、豪州がどのような国になっていくのか、まだ見えてこない。豪州は英国系としてパレスチナ支持だが、リクード系に加圧された豪政府は、パレスチナ支持を取り下げない代わりにイランを非難することでイスラエルと折り合いをつけようとした。
Was Mossad involved in getting Iran booted out of Australia?

豪州では2025年12月に、イスラム過激派の印度人がユダヤ人の集会に対して銃を乱射したボンダイビーチ事件が起きている。イスラエルはこの事件を逆利用し、豪州が反ユダヤ主義を黙認してきたと非難して、豪州をへこまして言いなりにさせようとする策略につなげてきた。豪州はイスラエルにへこまされてパレスチナ支持を言えなくなり、イランを非難して許してもらおうとしている。リクード系は強まり、英国系が弱まっている。
2025 Bondi Beach shooting

かつてニュージーランドは、アダーン政権下でコロナの自滅策を機にリベラル全体主義の巣窟になったが、英国系の世界的な凋落とともに、近年のNZはほとんどいないふり戦略になっている。英国系だった豪NZの今後を見ていく必要がある。
エスタブ自滅策全体主義の実験場NZ



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