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敵対扇動で日本を極に引っ張り上げる中共

2025年12月24日  田中 宇 

私は高市政権の成立以来、中国に対して攻撃的な姿勢をとる高市早苗が売ってくる喧嘩を中共が積極的に買うことで、中共は、日本人の中共敵視と高市支持を扇動し、高市をこっそり加勢・支援しているのでないかと考えてきた。
この私の見方が正しいとしたら、なぜ中共は反中国的な高市を支援するのか?。その理由を考えねばならない。中共がこっそり高市を支援する合理的な理由があるなら、私の仮説の合理性も増す。
高市を助ける習近平

そもそも、今後の多極型世界における中共の国際戦略(地域覇権戦略、世界戦略)はどのようなものなのか。中共の国際戦略がわかれば、高市の日本に対する中共の戦略が推測できる。
しかし実のところ、多極型世界における中共の国際戦略は、不明な部分が大きい(中国だけでなく、米国やロシアなど、他の「極」の諸国の今の国際戦略も不透明だ)。
日本も韓国も核武装しそう

台湾海峡問題や、東シナ海紛争(尖閣など対日)、南シナ海紛争(対ASEAN)、中国と印度の国境紛争などが、中国が抱える国際問題として有名だが、これらはいずれも国境線の問題だ。覇権戦略でなく国境紛争である。
台湾問題はもともと、台湾独立とか国境紛争ですらなく、共産党と国民党が内戦した「国内問題」である(内戦に負けた国民党を、反共主義になった米国が支援して台湾に立てこもらせたことを考えると、米国が中国の内戦に介入した米中関係になるが)。

国境紛争は、国際戦略の最上位の問題でない。最上位の国際問題は、国境を接していない遠方の諸国との関係をどうするか、国際社会(世界とか東アジアとか)をどのくらい支配(覇権行使)したいのか、という覇権の話だ。
中国は、ミャンマーやラオス、カンボジア、ネパール、パキスタン、中央アジア諸国、モンゴルなどに対して覇権を持っている。しかし、これらの諸国はすべて中国と国境を接しているか、それに近い状態だ。中共は、国境を安定させるために、不安定になりがちな弱小な近隣諸国に対して覇権を行使して面倒を見てきた。これまた覇権というよりも国境戦略だ。
中国の近隣諸国への覇権戦略は、米国が日韓や欧州を覇権下に入れてきたのとは、全く次元が違う話だ。中国の近隣覇権は自国の安定のために行われてきたが、米国の世界覇権はそうでない(米国は、英国の世界覇権を無理やり継承させられた)。

日本や韓国は、中国と国境(領海)を接している。日本や韓国が、不安定になりがちな弱小国なら、ラオスやミャンマーのように、中国が覇権を行使して面倒を見ることで国境地帯(中国の沿海部)を安定させるという戦略があり得る。
しかし実際は、日本も韓国も弱小国でなく、自力で自国を安定させられる財力と技能を持っている。日韓は、中国が近隣覇権戦略の枠組みでお世話すべき国々でない。

近隣戦略でない覇権戦略の枠組みで、中共が日本や韓国を支配することはあり得るのか。この疑問が出てきた時点で、中共が自国の覇権戦略を明らかにしていないこと(孫子の兵法)が問題になる。
中共の覇権戦略らしきものとして、一帯一路がある。一帯一路は、シルクロード沿いなど遠方の諸国との関係を含んでおり、その点で覇権戦略だ。しかし私から見ると、中共は一帯一路の真の目的を明確にしていない。
一帯一路は、シルクロード沿いなどの諸国のインフラ整備や産業振興に中国が投資する計画で、中共は経済面の話だけ喧伝しており、政治面の中共の利得や狙いが何であるかは隠されている。
中国の一帯一路と中東

中共は「帝国主義(他国に対する顕然支配)と覇権(他国に対する隠然支配)に反対する」と言い続けており、一帯一路に対する中共の政治野心も存在しない(支配でなくウィンウィン=共存共栄だ)と言っている。
しかし、そもそも覇権とは隠然と企画され行使されるものであり、表向きの中共の宣言が本心である可能性は低い。(米国は戦後、世界に対する覇権を半ば顕然と行使してきたが、あれは本来覇権と呼ぶべきものでなく、帝国主義に似た支配である)
日本の戦前のアジア支配も「大東亜共栄圏」と呼ばれ、ウィンウィン戦略のふりをしていた。中共は、戦前の日本政府よりも奸佞である(日本は奸佞さが足りなかったので敗戦した)。
しかも一帯一路は、中国より西の地域の諸国との関係性であり、日韓など東アジアを含んでいない。
国民国家制の超越としての一帯一路やEU

「中共は米欧日を倒して全世界を支配したいに決まってるじゃないか」とか思っている人がいるかもしれない。しかし実際の中共は、オバマやトランプの時、米国から「米中で世界を二分割して運営支配しよう」と「G2体制」を提案されたのに断っている。
中共が世界支配したいなら、米国が世界の半分をくれると言った時に、何らかの形で乗ったはずだ。中共は、米国からのG2提案自体を繰り返し断っている。
(G2は、中共を内部崩壊させるための英国系の陰謀だったのかも。トランプが最近言ってるG2は、それを踏まえた反英的なジョークだ)
米単独覇権が崩れた後の世界は、2極のG2でなく、もっと多極型になる。中共はG2でなく多極型を望んでいる。
米国と肩を並べていく中国

そもそも、第二次大戦で英覇権(大英帝国)が解体された時、米国は、ソ連を誘って多極型のヤルタ体制(国連安保理常任理事国のP5体制)を作った。
米諜報界を作ってやると言って米上層部を乗っ取り、冷戦を誘発してP5を機能不全に陥れ、米英単独覇権に切り替えたのは英国だ。だが、英国系の支配はトランプ台頭で終わり、世界は再び多極化した。
中国は大戦時、日本の侵攻と内戦で国家崩壊していたのにP5に入れてもらった。中共はそれ以来、多極型世界の信奉者であると推測できる(中共は、基本理念を堅持する傾向があるので)。
アメリカが中国を覇権国に仕立てる

多極型世界において、極でない諸国は、近くの極(地域覇権国)に従属する子分になるしかない。ラオスやミャンマーは多分、中国の支援が必要なので子分で良いと思っている(ベトナムは中国の子分になりたくない)。日本は、中国の子分になりたいか??。中国は、日本を子分にしたいのか??。

極の国は、自分の地域を安定・発展させる責務がある。治安維持、テロ対策、航路安全確保など、いろんな費用がかかる。日本が中国の子分になると、日本はその費用をあまり負担しなくて良い。中国の負担になる。
中共は、その状態を望むか??。望まないはずだ。中共は、日本も極に押し上げ、東アジアやインド太平洋地域の安定や発展のために、日本も働かせたい(中共は韓国や豪州にも期待している)。
中国人(漢民族)は強欲で身勝手で、ひどい民族だ。お人好しで軽信的(間抜け)な日本人と全く違う悪どさだ。中共は、中国人に秩序を守らせる国内の安定を維持するだけで、かなり大変だ。だから中共は、国内だけでなく広域アジアの安定まで独力でやりたくない。日本や韓国などに協力してもらいたい。
日本を多極型世界に引き入れるトランプ

ソマリア沖に海賊が出没した時、米国は日中を加圧して、インド洋の航路の安全確保の作業に参加させた。日中は協働して航路を守った。あのような体制を維持するなら、米覇権亡きあと、中国は日本を極に押し上げるしかない。アジアを安定・発展させるために、中共が日本に協力させたい事項はたくさんある。
中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本

だから中共は、日本を極に押し上げるために高市が首相になって動き出した時に、それを鼓舞する意味で日中の対立を扇動し、高市の人気や権限が強まるように助け続けている。
日本外務省などが、官僚独裁を守るために、日本が極になるのを国内で阻止したい(極になると国家運営時の権力を政治家に奪われる)と考え、中共にすり寄ってきても、中共はそれを歓迎しない。

中共は近年、モディの印度に対しても、中国敵視を扇動することで、印度が中国に対抗して国際戦略を拡大し、極になっていく方向に誘導してきた。
習近平とモディは、数年前から個人的に仲良くなっているが、中印両国は表向きの対立の演技を続け、印度は中国敵視をバネに国際的に台頭して極になった。
印度が十分に台頭したので、中印は昨年あたりから公式に仲良くなっている。
中国を使ってインドを引っぱり上げる

印度は、かつて国民会議派の時に英傀儡から抜け出せず、印度独自の覇権拡大をほとんど放棄していたが、極右的なヒンドゥーナショナリストのモディが権力を握ってから方向転換し、中国からの扇動策を活用して見事に国際台頭して世界の極の一つになった。
高市になった今後の日本は、印度と似たような台頭をしていくかもしれない。中共はそれを期待して、日中関係を意図的に敵対させている。トランプはそれを後押ししている。プーチンも後ろで含み笑いしつつ、日露和解のタイミングを測っている。
ちゃっかり繁栄する印度、しない日本



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