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日本を多極型世界に引き入れるトランプ
2025年12月14日
田中 宇
トランプの米国が、ロシア、中国、印度、日本を誘い、5か国で定例サミットを開いて世界の運営について話し合う国際組織「C5(コア5=中心的な5か国)」を作ろうとしている。C5の初仕事は、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化(アブラハム合意の達成)になる。そういう話が出回っている。
トランプはリベラル系の英欧エリートが嫌いなので、英国系が支配してきたG7を解散し、替わりに、隠れ多極派のトランプが組みたい非米側の諸大国であるロシア中国印度、それから高市政権で英傀儡から離脱してトランプ好みになっていく日本も入れて、C5を作りたい。そういうことらしい。
(Is Trump mulling a new ‘Core 5’ power bloc that includes India?)
米政府は最近、世界戦略をまとめた文書である国家安保戦略(NSS)を発表した。今回のNSSには、発表された正式版よりも量が多い非公式版(発表しない方が良いと判断されて正式版で削られた部分を含むもの)が存在していると、米国の2つのメディアがその存在を報道した。非公式版NSSの中に、正式版で削られた部分として、米国がG7を潰してC5を作る話が出ていると報じられている。
(Is Trump planning a secretive Core-5 superclub with India?)
米大統領府(ホワイトハウス)は、非公式版NSSなど存在しないと全否定している。だが、トランプ政権を良く知る人々は、英欧外しを強め、G7を潰してC5を作ってイスラエルとサウジの和解を進める話は、トランプがやりたいことと合致していると言っている。
これから2-3年かけて具現化していく可能性が高いと感じられる(その間、米露が密談しつつ、英欧自滅策としてウクライナ戦争が続く)。
(How a new Russia-China-US network could work)
日本のマスコミは、今回のC5の話を「米国内での誤報」とみなしてほぼ無視している。そりゃそうだ。米国が英欧を自滅させて疎外し、露中印との談合を強化してそこに日本も引き入れるC5の謀略。その手の英潰しと多極化は、英傀儡である旧来の日本(官僚機構、自民党リベラル系、マスコミ権威筋)が望む流れでないからだ。
英傀儡の旧来日本が望んできたのは、それと正反対の、米国が英傀儡としてNATOやG7、単独覇権を率いて露中敵視を続け、日本は米覇権下で安住する流れだった。だが、ウクライナ戦争やトランプの返り咲きにより、旧来の構図はほぼ完全に崩れた。
(‘Make Europe Great Again’ and more from a longer version of the National Security Strategy)
覇権運営を握る米諜報界では、主導権が英国系からリクード系に完全に移行している。トランプやその後継者たちの共和党はリクード系だ。
英国系である米民主党はバイデン政権以来、リクード系の諜報界から愚策を注入され続けて自滅し続けている(左派の台頭とか過激化とか)。民主党は蘇生しない。米国は英傀儡に戻らない。
(Lavrov praises Trump’s understanding of Ukraine conflict causes)
英国自身(英国やEU、英欧)も、英欧を自滅させる策として行われてきたウクライナ戦争の構図に今後もはめられ続ける。英欧自滅策として用意され、軽信を強要されてきた地球温暖化対策も続けられる。
英国やEUは、旧来の英国系(単独覇権勢力)であるリベラルエリート2大政党の勢力が完全に無力化され、AfDやルペン系など非英的な極右政権が定着するまで、英欧はウクライナ戦争や温暖化対策の自滅構造にはめ込まれ続ける(あと2-5年とか)。
(The C5 Would Be A Pragmatic Format For Managing The Global Systemic Transition)
英国系は、諜報力をリクード系に奪われているので、あらゆる面で正しい判断や戦略立案ができない。諜報力の剥奪自体を知覚できていない。
英仏独EUは、今後も間抜けを露呈しつつ自滅を加速する。米欧日では、英国系であるマスコミや、昔から英国系の道具(敵役)だった左翼とかも、今後ずっと頓珍漢で、自分たちが頓珍漢であること自体に無自覚だ。
(Trump grasps Europe’s ‘civilizational decline’ - Orban)
リクード系で隠れ多極派なトランプは、英国系の反撃力が低下し続ける中、今後も余裕で英国系潰しを続けていく。今はまだ英国系に力が残っているが、現状を維持していれば、英国系は衰退していく。G7の廃止やC5の創設は、今でなくて良い。
米欧日の英国系にどのくらいの力が残っているのかを見るために、今回のNSS非公開版とC5の策が意図的にリークされたのかもしれない。
そもそもG7は、かつてリーマン危機直後に格下げされ、ブッシュ政権の大統領府もそれを公表した。世界経済の問題を協議する最高組織の地位は、G7から、非米側も含むG20に移譲された。G7は、温暖化対策など環境や民主主義の問題に特化した、格下げした組織として残ることになっていた。
(G8からG20への交代)
英国系の欧日諸国は、米国が決めたG7の格下げを無視した。英国系は、G20において非米側との対立を激化させ、G20を機能不全に陥れた。非米側もG20を見捨て、代わりにBRICSに注力した。G7は、ロシアを追い出し、ウクライナ開戦とともに露敵視の冷戦型・英国系の機関として仕立て直された。
だが同時にウクライナ戦争は英国系を自滅させる策でもあった。G7が露敵視をがんばるほど、G7や英国系の自滅が加速する構図にはめ込まれている。G7や英国系の最終的な破綻が、時間の問題になっている。
(トランプは今年の南アフリカでのG20をボイコットし、来年の米国でのG20で南アを出禁にする。南アはイスラエル敵視だからと言いつつ、トランプはG20を破壊している)
いずれ英国系の無力化が完成し、G7は今度こそ役目を完全に終える。そして、トランプはG7の代わりにC5を作ろうと言い続ける。露中印はC5への参加に賛成する。日本は、無視できなくなる。
高市早苗が首相になった過程やその後の流れを見ると、トランプやリクード系が日本であれこれ画策して、日本を英傀儡・英国系から離脱させる流れを作り、いずれ日本が自然にC5に入れるよう準備してくれている感じもする。
リクード系や英国系といった諜報界(ユダヤ人が構築したネットワーク)は、フランス革命やそれ以前から、世界のいろんな諸国の政治を、言論誘導、スキャンダル、クーデター、暗殺、革命などによって動かしてきた。
夏以降、石破前首相が辞意を表明し、自民党内でリベラル派よりも高市ら右派が強まり、野党が結束して玉木雄一郎が勝ちそうになると、不明な理由で(新たなスキャンダルを突きつけられて??)玉木が急にやる気を見せなくなり、高市に勝ちを譲った。就任後の高市は異様な人気だ。
これらがすべて、昔から日本を動かしてきた米諜報界の策略の成果だったとしても、何の不思議もない。
(覇権の起源 : ユダヤ・ネットワーク)
日本外務省はいまだに丸ごと英国系だ。高市でなく、自民党のリベラル派や玉木が首相になっていたら、新政権内で日本外務省など英国系の影響力が残り、米国側で生き残っている英国系と連携し、リクード系(トランプ)による対日工作を妨害したはずだ。
それを防ぐために、リクード系は高市を首相に据えた。高市は就任早々、台湾問題で中共と相互に非難し合う敵対状況を作り出した。これは、これまで日中関係を取り仕切ってきた日本外務省の機能(事実上の権限)を喪失させた。
中共は、高市が台湾発言を撤回しない限り日本との友好を再開しないと言っている。日本外務省(OBなどを通じて発する真意)も、高市に台湾発言の撤回を求めている。撤回したら、高市の権威が失墜して短命政権に終わり、日中関係は再び外務省が独占するようになる。それはダメなので、高市は発言を撤回しない。日中対立はずっと続く。
むしろ高市は、外務省に横取りされていた外交権を奪還するために、台湾発言問題を起こしている。日本のためには、外務省の権限を剥奪するだけでなく、省ごといったん廃止するのが理想だ。外交は、役人でなく政治家がやるものだ。
トランプが、日本を高市にしてC5に入れたいのなら、C5には中共も入るのだから、高市は中国と仲良くすべきじゃないか、という人がいるだろう。しかし、中国と仲良くするのは、いずれC5に入る時で良い。
今はまだそれよりはるかに前の、準備段階の早期だ。まず日本の上層部に巣食う英国系の弱体化、理想的には排除一掃が必要だ。それには時間がかかる。高市は長期政権になる。日中関係はしばらく悪いままだ。それでかまわない。
中共は高市の策略に協力している観があり、トランプが事前に習近平に、しばらく日本と喧嘩しておいてくれと頼んだ感じもある。
(高市を助ける習近平)
C5にはロシアも入る。日露の和解もそのうち起きる。実際にC5が具現化しなくても、高市(やその後)の日本は、中露と向き合う多極型の世界に入っていき、C5と似たような流れになる。
高市支持者の右派の中には中露敵視者が多い。中露敵視は英国系からの洗脳だ。彼らは、高市が中露と仲良くするわけないと思うだろう。それは間違いだ。
トランプは高市を使って、日本を米英傀儡や冷戦構造から解き放つ方向に押し出す。日本の外務省や左翼みたいに中国に媚びるのは良くない。日本国内に住む中国人は、できるだけ帰国させて減らすべきでもある。しかし、日本が「大国」に戻り、大国として、同じ大国のロシアや中国と仲良くするのは良いことだ。
多極型世界における「極」とは、国家主権と独自文明を持った国々である。日本は独自文明を持っているが、戦後、主権国家であることを徹底的にやめ、嬉々として米英傀儡をやってきた。
その結果、日本人は「カス」みたいな人々になり下がっている。外務省やマスコミなど「カス中のカス」な人々は、米英が衰退したら中国の傀儡になろうとしている。
(Multipolarity is not equality, and it shouldn’t be)
日本は、トランプに押されて、これから国家主権を取り戻す試みをやる。成功するかどうか、日本人にやる気があるのかどうか、まだ不明だ。 しかし、リクード系は人々を洗脳するのがうまいし、日本人は嬉々として洗脳されるのがうまい。国家主権の取り戻しは意外と成功するかもしれない。
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