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日本も韓国も核武装しそう
2025年12月23日
田中 宇
世界の多極化(米英覇権体制が崩れて多極型世界が出現する、この20年ぐらいの流れ)を分析するドイツ人が最近、ロシアのニュースサイトRTに出した分析記事で「多極型世界は、弱肉強食の世界だ。大国も小国も対等だという、国連が掲げたような理想主義の世界とは全く違う。独自の文明を持ち、自国の国際戦略を自由に決められ、核武装している国だけが、多極型世界の極になれる。その他の諸国は、近くの極の国に従属するしかない」と書いていた。
(Multipolarity is not equality, and it shouldn’t be)
RTはロシア政府系だ。露政府が望まない分析を出さない。極=核武装国は、露政府が了承している見方であるはずだ。
ロシアの上層部は、多極型世界をどういうものにしたらいいか、多極化が加速したウクライナ開戦後、積極的に考え続けてきた。私もその関係のモスクワでの会議に一度だけ呼ばれ、面白い話を傍聴して記事にした。極=文明、という考え方は、そこで初めて知った。
そんなロシアが、極=核武装という考え方を政府系のメディアに出した。これは重要だ。
(多極型世界システムを考案するロシア)
極=核武装の記事が出たのは「トランプ米大統領が露中印と日本を誘い、米露中印日の5カ国を、多極型世界の極となるC5とみなして定例サミットを開きたがっている」という話が流布した直後だった。
(日本を多極型世界に引き入れるトランプ)
C5のうち米露中印は、核兵器を持っている。独自の文明も持っている。国際戦略を自由に立案できる。RTの記事にある「極」の条件を全部満たしている。
だが、日本だけは違う。独自文明もあるし、米国が許せば国際戦略を自由に立案できる。しかし、核兵器を持っていない。
C5はトランプの案(とされる不確定情報)である一方、極=核武装はロシア系の考察だ。米露が別々に言っている話をつなげて考えるのは無理があるか??。
いやいや、トランプとプーチンは多極化の隠然同志であり、多極型世界のあり方について何度も話しているはずだ。C5と極=核武装は、つなげて考えて良い。
(そもそも共産党などの同志は、革命家としての自分たちの本性を隠しており、隠然同志だし)
(トランプの多極型世界戦略)
日本がC5に入るには、核武装が必要だ。米露は、日本の核武装を容認している??。トランプが高市を首相に仕立てて日本が核武装していくことを、ロシア(や中国)も黙認している??。中国が高市に噛みつくほど、高市は日本で強くなり、リベラル系の世論を押しのけて核武装に向かえる。習近平も日本の核武装を黙認、というより隠然支援している??
(高市を助ける習近平)
などなど妄想していたら、高市の日本政府が、核武装すべきだという観測気球みたいな発言を流し始めた。やっぱりそうなんだ。
キッシンジャーも亡くなる直前の一昨年、日本は5年以内(2028年まで)に核武装すると予言していたし。
その後、2024年に核兵器に反対してきた広島の団体にノーベル平和賞がおくられたのも、多極化して日本も核武装していくことを阻止しようとする英国系(米英覇権の永続を企図する諜報界の勢力)の意図だった。とか??。
おそらくトランプは高市に、早く核武装しろ。そうすれば今後の多極型世界で極=一流国になれる。核武装しなければ、中国の属国になるしかない。核武装して、独自の国際戦略を考える癖をつけて、極になれ。これからの日本はそれしかない。日本が自立して極になるなら、オレや、後続のJDバンスは応援し続けるぞ、とせっついている。
日本が独自の大国になると、日本の権力は、これまでの官僚機構から政治家に移転する。外務省など官僚機構は、戦後の日本を握ってきた米国の「通訳」のふりをした「米国の威を借る狐」として、政治家を従属させてきた。
官僚機構は、日本が核武装して戦略的に対米自立すると、権力を政治家たちに奪われるので、日米同盟や「びんのふた」に固執し、傘下のマスコミや左翼リベラルたちを鼓舞し、核武装に反対してきた。
米国がトランプになり、プーチンらとこっそり組んで世界を強制的に多極型にしようとしている。日本の官僚機構は、中国にすり寄り、日本を対米従属から対中従属に転換し「中共の威を借る狐」として政治家を従属させ、官僚独裁を続けようとした。
トランプは高市を首相にして、高市はすぐに台湾問題で中共を怒らせる発言を連発し、外務省などが中共の傀儡として機能しつつある体制を破壊した。
トランプ自身は中立を装うことで、高市の日本が独自に中共と対立している構図を作った。今までの対米従属体制下での「米日vs中共」の構図でなく、米国と関係なく日本が中共と対立する。これは日本の自立の第一歩になっている。(自立は、和解からでなく対立からの方がはるかにやりやすい)
中共は、高市が売ってきた喧嘩を買うことで、高市が日本の官僚独裁を破壊しつつ、対米自立して極になっていくことを、隠然と支援している。
世界で極になりそうな諸国の中には、核兵器を持っていないところもたくさんある。トルコとか。サウジとか。南アフリカもエチオピアもブラジルも持っていない。インドネシアとかも。
日本が核兵器を持たないまま極になることも可能かもしれない。しかしその一方で、トルコやサウジはいずれ核武装しそうな観もある。
韓国やトルコでは、国民の7割とかが自国の核武装に賛成している。世界が黙認してくれるなら、すぐにでも核武装したい感じだ。
日本が核武装すると、韓国も核武装したがる。歴史的な経緯があるので、韓国は日本傘下の国と思われたくない。日本が極なら、朝鮮半島も日本と対等な極であるべきだと、朝鮮の人々は思う。朝鮮は日本と異なる独自の文明でもある。
北朝鮮は核兵器を持っている。国是として主体思想を掲げ、独自の文明と戦略を持っている。経済はとても貧弱だが、意外なことに、極になる条件を満たしている。
北朝鮮と韓国が統合し、北の核兵器を統一朝鮮の核兵器にする、という話もあるが、具現化する可能性はない。韓国が独自の核兵器を持たないと、北朝鮮は韓国を対等な交渉相手とみなさない。
今後の多極型世界では、韓国が核武装した上で北と和解し、別々の国として共存していくしかない。すでに核武装している印度とパキスタンも同様だ。
アジア太平洋では、オーストラリアも、旧宗主国の英国が今よりさらに自滅していくので、独自の極として核武装する話が出てくる。
人類が核兵器を持つこと自体が間違っているのだから、極の諸国に全部核兵器を持たせるのでなく、逆に、今核兵器を持っている国にすべて核廃絶させるべきだとと言う人が多いだろう。
それが実現するなら素晴らしいが、実際には実現しない。かつて国連の安保理常任理事国(P5)を作った時も、米ソは、その時点で核兵器を持っていなかったフランスや中共に核兵器を作らせて核武装させた。
多極型のP5は、核武装国の集まりになった。今回も、それに似た流れになるのでないか。
日本の核武装に対し、すでに米国は大賛成、中露は表向きだけ反対だが実際は黙認のようだ。日本は意外にするすると核武装していく可能性がある。
米諜報界の主役が英国系だった従来は、世界的に、リベラルの市民運動やマスコミが強かったが、リクード系が諜報界を乗っ取った今は、反対運動も抑止されて強まらない。理想主義は妄想主義になっていく。
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