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計画通りのホルムズ恒久閉鎖

2026年6月4日   田中 宇

米国との戦争でイランがホルムズ海峡を封鎖したままだと、世界の産出量の2-3割を占める中東の石油ガスの大半が輸出できず、世界的に供給不足が続く。
7-8月には世界の石油備蓄が底を尽き、石油ガスの価格高騰と物理的な不足が劇的に強まり、史上最悪のエネルギー危機になる。
Why Oil Markets Could Face A Generational Shock This Summer If US-Iran Talks Fail

危機を防ぐには、トランプ大統領の米国がイランと交渉してホルムズ海峡の自由航行を再開するしかない。トランプ政権は、世界から加圧されてイランと交渉しているが、なかなか話がまとまらない。
U.S. Oil Reserves To Dry Up Before August?

核開発問題(イランが濃縮ウランを手放すかどうか)、イランがホルムズの通行料を徴収し続けると言っている話など、対立点がいくつもあるが、いま最大の難点は、イランの傘下にいるレバノンのシーア派民兵団ヒズボラを、イスラエルが停戦破りして攻撃し続けていることだ。
トランプはイスラエルに頼んで4月からヒズボラと停戦してもらったが、その後もイスラエルは停戦を無視してレバノンを攻撃し続けている。イランは、イスラエルが停戦を守るまで米国との交渉に応じないと言っている。
Tense Trump-Netanyahu Call As US Presses Iran To 'Sign The Document'

トランプはイスラエルのネタニヤフ首相に「停戦を守ってほしい」と何度も電話したが、ネタニヤフは「攻撃をやめたらヒズボラが反撃してきてイスラエルが潰される。攻撃はやめられない」と停戦破りを正当化するばかり。
Israel 'sacrificing global economy' to prolong war on Iran

6月1日には、トランプが電話会談でネタニヤフに「だからイスラエルは世界から嫌われるんだ」と言い放ち、怒鳴り合いの喧嘩になったと報じられた。トランプ自身も、記者との問答で、ネタニヤフと言い合いになったことを認めた。
イスラエル(リクード系)は米諜報界を牛耳り、トランプの米政府を傀儡化している。トランプはネタニヤフに言われるままに、イスラエルの中東覇権を確立するためのイラン戦争に突入し、イランを潰し切れずホルムズ閉鎖で報復されて世界経済をエネルギー危機に陥れる大失敗をやらかした。
Iran rebuilds military industrial base faster than US expected, report says

イランとの交渉も進まず、今や米国とイスラエルは仲間割れに瀕している。イスラエルはなかなかヒズボラを潰せず、レバノン南部をガザみたいに破壊し尽くそうとしている。
トランプは史上最悪の大統領だ。米イスラエルは、イランやヒズボラが弱いと勘違いして開戦し、苦戦している。世界経済は、トランプとネタニヤフの大誤算のせいで危機に陥った ・・・。世の中では、そんな話になっている。
(ここまで、世の中が軽信している常識論の説明)
Iran Has Dug Out More Missile Tunnels Than Previously Thought: Satellite Analysis

私の見立ては、世の中と正反対だ。米イスラエルは意図的に、失敗したように演出している。
米イスラエルは、イランの長距離ミサイルなど大型兵器のほとんどを破壊した。「イランが長距離ミサイルの意外に多くを隠し持っていることがわかった」と報じられているが、これは米諜報界が意図的に流した歪曲情報だ。
イランは、イスラエルを直接攻撃できる大型兵器をもうほとんど持っていないが、諜報界はそれを歪曲報道させ、あたかもイランが強いかのように見せている。イランが強いので交渉でトランプに譲歩せず、ホルムズ海峡がなかなか再開しない構図を作っている。
ずっと続くイラン戦争
計画通りのイラン戦争

米イスラエルは、イランを弱体化した上で、強硬派の革命防衛隊が権力を握ってホルムズ海峡を閉鎖し、米国との交渉で譲歩を拒否するように仕向けている。その上で、トランプとネタニヤフが仲間割れの喧嘩を演じ、イランとうまく交渉できない状況にしている。
米国や世界の産業界や各国政府が、早くホルムズ再開してくれとトランプに加圧・懇願しているが、イランは強硬だしイスラエルも言うことを聞かないので海峡再開が難しい、と言い訳できるようにしている。
Trump ends two-hour Situation Room meeting without final decision on Iran deal, official says
イラン強硬派政権を弱めた上で永続させる?

ホルムズ閉鎖が長引くと、石油ガス産出地域として中東が弱体化する。今夏以降、世界的に石油ガスが続く中、世界の誰に石油ガスを売るか決めるのは、中東以外の大産出国である米国とロシアになる。
「米国も産出量に限界がある」と喧伝されるが、これも歪曲報道かもしれない。本当にそうなるかどうか、今夏以降に危機が具現化してみないとわからない。
U.S. Oil Reserves To Dry Up Before August?

今後の世界体制として見えてきているのは、米諜報界を握るイスラエルが米露を傘下につけて世界を動かす「米露イスラエル覇権体制」だ。
この新たな覇権体制が強化される形で、ホルムズ閉鎖が世界に与える影響に陰影がつけられていく。となれば、米国とロシアが意外と強いエネルギー産出国になるはずだ。
America's LNG Boom Is Real - But China Is Planning Beyond It
米露イスラエル覇権の形成

今年の後半には、石油ガスだけでなく、穀物も供給不足になって世界的な食糧難になると予測されている。これも昔から何度も言われており、歪曲情報の可能性があるが、もし食糧難になると、それも穀物の輸出国である米国とロシアを有利にする。
The Cost Of The Grain That Feeds Half The World Just Posted Biggest Monthly Surge Since 2008

米露イスラエルが凹ましたい諸国は、ひどい目にあっていく。だが、誰が得して、誰がひどい目にあうかも歪曲されてわかりにくくされている。みんな世界の新たな覇権構造を知らないままになる。
これまで中東の国際政治でイスラエルのライバルだったサウジアラビアなどペルシャ湾岸のアラブ産油諸国は、ホルムズ閉鎖の固定化で最もへこまされていく。
Iran war means larger Israeli influence among Arab states, top defense sources say

UAEだけは、早くからイスラエルと親密で協力してきたので、例外的にひどい目に遭わず発展が続く可能性がある。
Iran war pulling some Gulf states toward Israel, while pushing others away

逆にサウジは、イランや中共との接近を試みていたので弱体化される。
中長期的に、アラブ諸国はイスラエルから兵器類を買わざるを得なくなる。トランプはサウジに「早くイスラエルと国交正常化しろ」と加圧し続けている
Trump Ties Iran Deal to Expansion of Abraham Accords

英国と、英傀儡のEU(独仏)という英国系の諸国は、911事件まで米諜報界を牛耳っていた勢力で、イスラエルのライバルなので、入念に弱体化させられる。
英欧はホルムズ閉鎖後、石油もガスも米国に依存する傾向が増している。ロシアからは、今後ますます輸入しなくなる。
英欧は、リクード系に諜報力を剥奪され、エネルギーや軍事など自分たちの安保戦略をうまく立てられなくなり、リクード系にあやつられてロシア敵視を加速する自滅策を続けている。
The US Is Challenging Multipolarity Like Never Before

ウクライナ戦争自体、リクード系の米諜報界が、ロシアを優勢にしつつ、英国系を潰すために起こした。ウクライナ戦争はまだまだ続く。
英欧は、それ以前にも、無根拠な地球温暖化人為説を軽信させられて石油ガス石炭を忌避し、非効率で不安定で無意味で景観破壊な風力や太陽光の発電に注力する超愚策を延々とやってきた(日本にも立ち並ぶ風力発電は、大馬鹿の象徴。それに気づいてないほとんどの人も、大馬鹿な軽信者)。
Tony Blair Calls For UK To Get Closer To Trump And Ease Climate Change Targets

英欧は、新型コロナの超愚策だった都市閉鎖(ロックダウン)も一生懸命にやらされて経済自滅した。いずれも、米諜報界を乗っ取ったリクード系が英国系潰しのためにやった。
世界的に英国系の傀儡勢力であるジャーナリズムやリベラル派は、リクード系から頓珍漢な情報を注入され続け、頓珍漢が増しつつ衰退していく。
ジャーナリズム要らない

イラン戦争によって具現化しつつある米露イスラエル覇権は、イスラエルのライバルであるアラブとイランの産油国、それから英欧を破綻させていく。半面、親イスラエルである米露や印度、高市化した日本、インドネシアなどにとって追い風になる。
日本が高市化した意味

トランプはイラン戦争に入る前、ベネズエラを政権転覆して反米国から米傀儡国に転換し、マドゥロ大統領を拘束する暴力的(リクード的)なやり方が非難された。
だがその後のベネズエラは、滞っていた石油輸出の体制が米国によって蘇生され、石油の輸出量が7年ぶりの多さになっている。ベネズエラは、トランプ(イスラエル)がエネルギー世界支配の道具にするために政権転覆された。
Venezuela Oil Exports Hit 7-Year High
ベネズエラ支配 成功への道

イスラエル覇権が急速に立ち上がる中で、微妙な立場にいたのが中共(中国)だ。中共は一昨年あたりまで、英国系の米覇権に代わって出てきたBRICSなど多極型世界の主導役だった。
中共は、イランやサウジと親密にしたり、英国系から国連や国際社会(非米側)の支配権を継承したり、イスラエルと対立する方向に動いていた。
英国系でイスラエル敵視のバラク・オバマは2009年から、英国系覇権の復活策として、中共に世界の半分(非米側)を渡して米中で世界を二分するG2を提案していた。
当時の中共はトウ小平主義の胡錦涛で準備不足だったので、2013年から習近平に交代して非米側の覇権を取れるようにした。その頂点は、BRICSを拡大した2024年だった。
イスラエル世界覇権の可能性

だがその後、習近平は、覇権新勢力であるイスラエルと対立することの不利を察知し、BRICSや国連に対する主導性を放棄する動きを続けている。
中共は、オバマからもらった世界の半分をネタニヤフに返した。
2020年のコロナ危機は、中共が国連のWHOを牛耳っていることを示したが、中共は最近、WHOに資金を出すのをやめている。WHOだけでなく国連の全体が、かつて米国からの資金で動いていたが、この四半世紀、米国はリクード化するとともに国連にカネを出さなくなり、代わって中共が資金を出す傾向だった。
だが、国連を敵視するトランプやイスラエルから睨まれた中共は最近、WHOなど国連にカネを出さなくなっている。今年8月には国連が破産するとか、資金難で活動停止だとか言われている。
UN Faces Bankruptcy Risk as US, China Withhold Dues: "Cash to Run Out by August"

中共に見放されて資金難に陥ったWHOと傘下のNGOなどは、ハンタウイルスやエボラなど、世界で(少し)問題になった感染症の脅威を誇張する活動を急展開し、誇張を真に受ける諸勢力にカネを出させ、中共からもらえなくなった資金を穴埋めしようとしている。
Ebola Madness!

中共はイスラエルとの対立を避け、意外と従順に、多極型世界の主導役を手放している。中共は、英国系から継承(交代)した多極型世界を放棄して、イスラエル主導の多極型世界の一員(1つの極)になる(成り下がる)ことにしたようだ。
イスラエルは、そんな中共と折り合いをつけたようで、それがトランプとプーチンの連続的な訪中の主目的だったと考えられる。(前回記事で予測した習近平の北朝鮮訪問がまだ具現化していないが)
習近平の北朝鮮訪問へ

米露イスラエル覇権体制の継続には、その中心に位置する米諜報界の継続が必要だ。米諜報界の維持には、米国の金融バブルの延命が必要だ。だから、世界はすごい不況なのに、米国など先進諸国の株価が馬鹿みたいに上昇し続けている。
諜報界は米連銀を動かし、資金注入している。株価の操作は「横ばい」が難しく、下落防止には「上昇」させるしかないので上昇し続けている。

もともと英国系が支配していた米諜報界は、トランプ返り咲きの時点で、まだ英国系(民主党系など)が内部に潜んでいた。トランプは、米軍の諜報担当の経験を持つ元民主党議員のトルシ・ギャバードを諜報長官に就け、諜報界に残存していた民主党系を探し出して追放する策をやった。
それが一段落し、もう誰にも介入されたくないリクード系は最近、トランプを動かしてギャバードを辞めさせた。後継長官(Bill Pulte)は住宅の専門家で、諜報は全くの素人だ。米諜報界は、完全にイスラエルのものになった。
Trump Taps Housing Regulator Bill Pulte As Acting Director Of National Intelligence

トランプはイラン戦争を失策と非難され、支持率が下がっている。だが、トランプとその後継者たちを傀儡として維持したい米諜報界は、得意の情報歪曲やスキャンダル発生策を駆使してライバルの民主党を無力化し続け、必要なら2020年の大統領選で民主党にやらせたような大規模な選挙不正をやって、トランプ派の政権を維持するだろう。
The DNC Finally Releases Its 2024 Autopsy, And It's A Total Whitewash
ずっと続く米国の選挙不正

イランの防衛隊政権は、意外と長く続く可能性がある。今後2-3年とか、もっとかも。イラン政界では、米国との交渉を妥結させたいペゼシキアン大統領などの現実派が、政権の革命防衛隊から辞任圧力をかけられ続けている。米国との交渉は妥結しない。
Iran's president offers resignation, citing total takeover by IRGC commanders

殺された父親を継承して最高指導者になったモジタバ・ハメネイが本当に生きているのか、という疑問もある。ルビオ米国務長官は最近「モジタバは健在で、イランの政策立案に積極関与している」と述べたが、この発言自体が、イランの防衛隊政権を実際より強く見せて長続きさせようとする「ホルムズ閉鎖恒久化計画」の一部にも見える。
Khamenei is increasingly engaged in Iranian gov., Tehran still has drone arsenal, Rubio says



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