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習近平の北朝鮮訪問へ

2025年5月30日   田中 宇

北朝鮮の平壌で、習近平の訪問を受け入れるための準備が進んでいるようだ。平壌市中心部の金日成広場では5月25-26日ごろから、国賓訪問時の歓迎式典で使う閲兵台などの設営が始まっている。
ロシアのプーチン大統領や、ベラルーシ(露の弟分)のルカシェンコ大統領の訪問時にも金日成広場に閲兵台などが設営されたが、今回の設営の規模はルカシェンコ用のものより大きく、プーチン級だという。習近平の歓迎用な感じだ。
2024年のプーチン訪朝時には、訪中の8日前から設営が始まった(ルカシェンコの時は3日前)。同様の日程なら、習近平の訪朝は6月2日ごろになる。
North Korea appears to be prepping for leader summit amid reports of Xi visit

平壌空港では、外国要人の訪朝時の式典で使う空間を作るため、ふだん駐機している高麗航空の旅客機を事前にどかす作業をやっている。
プーチン訪朝時は9-10日前に14機を移動した。今回は5月28-29日に移動が行われた。こちらからの概算だと、習近平の訪朝は6月6-8日ごろになる。

平壌の動きからみると、習近平の訪朝は確定的な感じだ。習近平の訪朝は、中国と北朝鮮だけの2国間関係の話でなく、米国やロシア、イスラエルも絡んだ世界的、覇権的な話だ。そのことは前回記事の末尾に書いたが、今回も繰り返す。
米露イスラエル覇権の形成

中共はかつてイランやサウジと関係を強化し、イランから石油ガスを安く買う代わりに兵器類を輸出してイランを強化していた。米イスラエルは今回、イラン戦争の結果としてホルムズ海峡の二重閉鎖体制(イランもアラブ諸国も石油ガスを出せない)を作り、イランとの縁を切れと習近平を加圧した。
習近平は、言われるままにイランと縁切りしている。米イスラエルは見返りとして、習近平に、米国と北朝鮮を仲裁して朝鮮半島問題の解決する栄誉を与えた。そのために習近平は今回、米露首脳の相次ぐ訪中で米露と話を詰めた後、訪朝して金正恩とその話を詰める。
ずっと続くイラン戦争

すでに北朝鮮は、韓国を併合する南北統一を国家的な目標から外している。北は今春、韓国を国家として認める旨の憲法改定を行った。今後、習近平の仲裁を受けた米朝と南北、日朝が和解して国交を正常化する流れになる。北は核兵器を持ち続ける。
(トランプの米国はいったん北と国交正常化した後、再び北を敵視して韓国を対米自立に押しやるかもしれない)
North Korea drops reunification goal from constitution

もともと今回の流れを作った立役者は、北朝鮮をウクライナ戦争に協力してもらう見返りに軍事経済の両面で北を支援して大幅に強化したプーチンのロシアだ。
ロシアは北朝鮮と軍事同盟を結び、米韓が北を攻撃できないようにした。ロシアが北を経済支援し続けるので、米国の北制裁も効かなくなった。米韓は北を国家として認めるしかなくなった。
実のところ、覇権放棄屋(多極主義者)のトランプはもともと北を敵視しておらず、秘密の仲間であるプーチンに頼んで北を支援して強化させ、今後の朝鮮半島和解の流れを作った。
北朝鮮とロシア

トランプとプーチンは、イスラエルと仲が良い。プーチンは、イスラエル(リクード系)が作った英欧自滅策としてウクライナ戦争を始め、予定通りゆっくりと勝っている。ウクライナ戦争は、英独仏が完全に自滅するまで続く。
英欧の自滅とともに、米国の外交軍事を握る勢力(諜報界の主導役)が英国系からリクード系に交代した。その傘下にトランプがいて、プーチンも一味に入った。

リクード系は、イスラエルを中東の覇権国にするため、イランを無力化し、ホルムズ海峡を長期閉鎖してサウジ主導のアラブ諸国を無力化している。
かつて(米覇権が英国系だった時)プーチンは英国系(オバマ)に頼まれてイランを軍事支援していたが、米覇権がリクード系にすり替わるとともにプーチンのイラン支援は口だけになった。
プーチンは、米イスラエルに隠然と協力している。現状の世界は「米露イスラエル覇権」になっている。
イスラエル世界覇権の可能性

だがプーチン同時に中共と親密で、中露の結束が上海協力機構やBRICSを主導してきた。BRICSは非米的な多極型世界体制の象徴であり、かつて英国系の時も、今のリクード系でも、米国覇権の対抗馬だ。
プーチンのロシアは、非米側(中共側)と米国側(イスラエル傘下)の両方で重要な役割を演じる二枚舌戦略を採っている。

英国系の単独覇権体制が崩れた後、世界は中共(中露)主導のBRICSの非米的な多極型体制になるはずだった。だが米国がトランプ化するとともに、リクード系が英国系を追い出して米諜報界を乗っ取って覇権をとり、プーチンも誘い込んで米露イスラエル覇権体制を構築した。
人々が気づかないうちに、世界は中共とイスラエルの隠然対立になっている。そして人々が気づかないうちに、ロシアは両方に属している。
UAEのOPEC離脱、サウジ中共の急落

イスラエルが中共を加圧した結果、習近平は譲歩して覇権を手放すことにした。イラン戦争開始前の金相場の暴落に、それが表れている。その前の暴騰は、覇権低下の英国系が、中共に金相場の高騰を許したからだった。
覇権の主役がイスラエルに交代するとともに、金相場の抑止を再開して暴落させ、イスラエルを中東の覇権国に押し上げるイラン戦争が始まり、中共は傍観した。
BRICSも、外相会議でUAE(親イスラエル)とイランが大喧嘩する事態になるなど、崩壊していく方向だ。
Why China now embraces a nuclear North Korea

プーチンは、ウクライナ戦争(米欧との決定的な対立)を利用して北朝鮮をおおっぴらに支援し、米欧と対立したくなかった習近平がやれなかった北朝鮮の大幅な強化を実現した。ロシアは北朝鮮の核武装を容認(むしろ技術支援)した。
追随して中共も最近、北の核武装を容認した。そうせざるを得なくなった。それまで中共は米国の反発を恐れ、北に対して口だけの核廃棄要求を出し続けていた。だから北は、中共に支援されているのに不満だった。同盟国ならオレたちの核武装を祝福しろよ、と。
非米側の防人になった北朝鮮

プーチンは、そんなじれったい状況を全面打破した(トランプとも密談しつつ)。しかも、打破したのに、それを世界に公言していない。
なぜか。北朝鮮と米韓の和解を仲裁して朝鮮半島問題を終わらせていく英雄的な役割を習近平にやってもらうためだ。
今の北朝鮮にとって最大の支援者はロシアだが、北朝鮮は以前も今後も、ロシアでなく中国の影響圏であり続ける。プーチンは、北朝鮮の問題を解決して習近平に恩を売り、米朝和解の仲裁役も習近平にやってもらって花を持たせた。
Why President Xi’s potential North Korea visit carries strategic weight for China and beyond

代わりに習近平は、プーチンの勧めに沿って、リクード系の覇権を容認してイランを見捨て、イスラエルの中東覇権拡大を容認し、トランプの米州主義を受け入れて中南米のエネルギー利権などを手放した。
中共はもともと世界覇権を必要としていない。英国系の覇権低下で穴ができたから埋めただけだ。だから、手放してもかまわない。
習近平とリクード系は、朝鮮半島の安定と、中東のイスラエル覇権とをバーター取引した。これで、中共と米イスラエルの覇権的すり合わせが成立しつつある。
(もしくは、米イスラエルによるホルムズ閉鎖長期化の標的が、英欧の自滅だけでなく中国経済の弱体化も兼ねているなら、それがこれから具現化する)
計画通りのイラン戦争

朝鮮半島問題が解決すると、日韓が米軍が出ていく。その対策として、日本を高市化して、日本に米撤兵後の自立的な防衛強化を進めさせることにした。習近平は大阪領事に「首を切ってやる」発言をさせて日本人の中国敵視と高市支持を誘発するなど、高市の強化に貢献している。
高市首相は先日韓国を訪問したが、これも(トランプに耳打ちされて)これからの米朝和解で必要になる日韓の関係強化のためだ。
北朝鮮は中露に助けられ、韓国は日米と協力する。両者は国交を正常化するがライバル関係は続き、多極型世界の別々の極になる。
日本が高市化した意味

実際に何がどうなるのか、習近平の訪朝が具現化してからでないとわからないことが多い。この話は改めて書く。




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