中華世界を読み解く
田中 宇
私がこれまでに書いた記事のうち、中国・台湾・香港など中華世界に関するものの一覧です。複雑に入り組んだ中華世界の実情がわかると思います。
中露の大国化、世界の多極化(2) 【2007年6月12日】 すでに政治や軍事の分野では、ロシアと中国、中央アジア、南アジア、イランを束ねる「上海協力機構」が強化されている。上海協力機構の枠組みが経済の分野に拡大されれば、ユーラシア版WTOとして機能しうる。欧米諸国の消費力は低下し、代わりに中国やインド、中近東諸国の消費力が上がっている。製造業の面では中国が台頭しているし、エネルギーは中東とロシアにある。ユーラシア諸国は、欧米を無視した経済運営が可能になっている。
中国の大国化、世界の多極化 【2007年6月5日】 世界経済が、消費大国としての中国を必要としているということは、もはやアメリカが中国を、軍事攻撃や謀略的な争乱醸成によって政権転覆して潰すことはあり得ないだろう、ということでもある。中国を政権転覆して潰したら、中国は大混乱になり、消費を拡大するどころではなくなる。先進国は年3%しか経済成長していないが、中国は10%の成長を続けている。この成長は世界経済にとって必要不可欠になっている。
改善しそうな日中関係 【2007年4月12日】 日本の世論は、小泉時代に扇動されたままの「反中国・反朝鮮」だが、アメリカが作った今後の枠組みの中では、日本は中国だけでなく、北朝鮮とも仲良くしなければならないことが、すでに決められている。日本人がこの多極化のシナリオに従うのがいやなら「反米・反中国」の再鎖国路線もありうるが、貿易上不利になり、貧しさに耐えねばならず、かなりの覚悟が必要だ。
中国の台頭と日本の未来 【2006年11月21日】 かつて、アジア・アフリカなどの多くの発展途上国にとって、日本は発展のモデルだった。世界には、欧米文明以外の文明に立脚している国が多いが、日本が、日本的なものを残したまま、欧米の技術やノウハウを取り入れて発展に成功したことは、同様に富国強兵を目指す非欧米系の国々にとってお手本だった。ところが今、多くの途上国にとって、日本をしのぐ発展のお手本になりつつある国がある。それは、中国である。
中国が北朝鮮を政権転覆する? 【2006年10月19日】 中国政府が北朝鮮に対する態度を硬化させたのは、核実験が実施されたことが最大の原因ではない。核実験は、態度硬化のきっかけでしかない。中国が北朝鮮を批判したり、政権転覆支援を示唆したりする本質的な理由はおそらく、中国が北朝鮮にアドバイスした経済開放政策が進まず、中国が目指してきた「北朝鮮を中国のような社会主義市場経済に軟着陸させていく」という目標が実現していないからである。
安倍訪中と北朝鮮の核実験 【2006年10月17日】 北朝鮮の核実験が不可避になった時点で、中国側は金正日に「中国が良いと言ってから実験を実施せよ」と命じる一方、アメリカに「核実験後の北朝鮮との交渉に中国が責任を持つから、その代わり日本の安倍に、首相になったらすぐ中国に来いと言ってほしい」と求め、かねがね中国に責任を持たせたいと思っていたアメリカは中国の提案に応じ、安倍に「もうすぐ北朝鮮が核実験するから、早く中国との関係を改善しなきゃダメだ」と強く言って訪中を実現させ、中国は北朝鮮に「安倍が中国を離れたら核実験しても良い」とゴーサインを出し、核実験は安倍が北京から離れた半日後に実施された、というのが私の仮説である。
ウォール街と中国 【2006年7月14日】 ブッシュ政権の残りの2年間で経済政策がうまく行く可能性は低いのに、財務長官への就任をポールソンが引き受けたのは、何か隠れたメリットがあるからに違いない。私が疑っているのは「ポールソンは、中国の経済発展で儲けているウォール街(アメリカの金融業界)を代表して財務長官になり、中国経済の発展を阻害しないかたちで人民元の切り上げを実現しようとしているのではないか」ということである。
中国経済の危機 【2006年6月27日】 不動産や鉄鋼、自動車、エアコンなどに対する過剰投資の状態が起きていることは、中国の経済成長の質に大きな影を落としている。ここ数年の中国の経済成長を見ると、全体としての成長率は8−10%だが、その要因の6−7割は、固定資本形成、つまりビルや道路、工場設備などを作ることによる経済成長である。ビルや工場設備への投資の中には、使われない、売れない過剰投資が多い。この過剰な部分は近い将来、確実に減少すると予測される。投資バブルの崩壊である。
日本を不幸にする中国の民主化 【2006年3月7日】 中国で共産党の独裁が崩壊しても、その後、日本にとって好都合な内部分裂した状態がずっと続くとは限らない。独裁が崩壊して民主化した後、カリスマ的な政治家が登場し、中国内部を再統合するために、極度の反日感情を扇動し、日本製品を中国市場から完全に締め出したり、日本に戦争を仕掛けるようなことをやり出したら、日本に悪影響しか及ぼさない。
新しい中国包囲網の虚実 【2005年12月8日】 日本は、中国包囲網に参加したはずが、中東で無駄金を使わされるという外交的詐欺に遭いかねない。その原因は、日本の外交を考える外務省、学者、記者などの知識人が、自分の頭で世界情勢を分析せず、アメリカの高官や学者、記者が発する言論を、絶対の真実として信じてしまうという「知的対米従属」に長く陥っているからである。権威あるアメリカ人がどのように言っているかを正確に把握することだけが重視される、悪しき「翻訳主義」である。
中国・胡錦涛の戦略 【2005年10月18日】・・・なぜ中国政府は、欧米の新聞に「中国は崩壊しそうだ」と書かれるような発表をわざわざ行うのかと思っていたら、最近その謎が解ける出来事があった。中国の胡錦涛政権が、10月中旬に開いた共産党の代表者会議(5中全会)で、これまで大都市の経済を中心に政府がテコ入れしていたのを転換し、今後は農村経済へのテコ入れを強化するという「5カ年計画」を決定したのである・・・
アジアでも米中の覇権のババ抜き 【2005年8月3日】 アメリカのライス国務長官がASEAN地域フォーラムを欠席し「東南アジアは中国やインドにあげますよ」というメッセージを発したのに対し、中国やインドは「いやいや、それはご遠慮いたします」とばかり、自分たちも逃げ出した。
短かった日中対話の春 【2005年5月24日】 4月23日のジャカルタ会談で始まった日中対話の動きは、ちょうど1カ月後の5月23日、訪日していた中国の呉儀副首相が小泉首相に会う直前に突然帰国したことで、急にしぼんでしまった。中国側の真意は、小泉の個別の発言が問題なのではなく、日本が成り行き上、中国との戦略対話をすることにしたものの、できればやりたくないと思っていることに中国側が気づき、続けても意味がないので、打ち切りにすることにしたのだと思われる。
台湾政治の逆流(2) 【2005年5月10日】 胡錦涛は、台湾という魚を、湾の中の養殖場に閉じ込めて生かしておきたい方針であると感じられる。魚が海に逃げていかないよう「反分裂国家法」という「仕切り」を作る一方、魚が最小限泳いで生きていける生け簀的な政治空間を「一中各表」の枠組みとして与えている。中国側が無理なく台湾を併合できる日がくるまで、台湾を生け捕りにしておこうという戦略である。
台湾政治の逆流 【2005年5月7日】 反分裂国家法の制定によって、台湾の世論は反中国の傾向を増すのではないか、陳水扁もその民意に乗って再び独立の方向に戻るのではないか、と一時は予測されたが、その読みは間違っていた。アメリカの後ろ盾が失われている以上、もはや台湾の指導者たちには、独立の方向に戻ることが選択肢として残されていなかった。
アメリカの衰退と日中関係 【2005年4月20日】 欧米諸国は、人民元の為替を上昇させることで中国人の国際的な購買力を高め、アメリカの2億人の購買力が飽和した分を、中国沿岸部の2億人の購買力(そしていずれは中国全土の13億人の市場)で補うことで、世界経済を回して行こうとしている。だが、日本人にはそれが見えていない。
中台関係と日本の憲法改定 【2005年3月1日】 日本政府には、中国や韓国、北朝鮮と対立しなければならない特段の事情でもあるのだろうか、と思っていたところ、国会で出てきたのが、日本国憲法改定のために必要な国民投票を行う構想であった。国民投票を成功させるには、日本周辺の脅威が大きい方が好都合だ。小泉政権は、憲法9条改定のために、周辺諸国との関係を悪化させる方向へと事態を微妙に動かしてきたのだと思われる。
上海ビジネスの世界をかいま見る 【2005年2月1日】・・・このナイトクラブには上海市政府などの中国側の役人も接待されてやって来る。上海市政府に渡りをつけたい台湾商人は、民進党に頼むとこの店に出入りする人脈から共産党のお偉方を紹介してもらえる。接待に使うお店は繁盛し、ビジネスが成功すれば共産党に賄賂が入り、民進党には献金が入る。みんなハッピー、というわけだ。
600年ぶりの中国の世界覇権 【2005年1月29日】 アメリカの多極主義者は中国を世界の覇権国の一つに持ち上げたいようだが、中国はまだ覇権国になるには早い。農村の問題や経済バブル、法治制度の未整備などがあって国内が不安定で、国内問題に注力しなければならない段階なのに、世界の事情がそれを許さない。中国政府の本音としては、アメリカが衰退した後のアジア地域の安定策について、日本に協力してもらいたいはずである。
経済発展が始まりそうな北朝鮮 【2005年1月13日】 北朝鮮の山間部などでは、飢餓状態の人がかなりいるのは事実だろうが、その一方で、都会では経済自由化の恩恵を受ける人も増えている。平壌市内では、夜遅くまで開いているレストランや商店が増え、市内を走る自家用車の数が増え、あちこちに外国製品の広告看板が立つようになった。北朝鮮経済のここ2−3年の変化は、それ以前の50年間の変化よりも大きいといわれる。韓国の統一相は、今年末までには北朝鮮の人々の間に経済市場主義の考え方が定着すると予測している。
台湾の選挙と独立 【2004年12月27日】 理想的には「台湾独立」だが、現実的には「現状維持」であるという、理想と現実を区別して考える現実主義的な意識が台湾の人々の中にあり、そのため民進党など与党緑色連合の支持者のかなりの部分が「台湾独立」を声高に掲げすぎる陳水扁と李登輝のやり方を敬遠し、12月11日の立法院選挙で投票を棄権した。これに対し、国民党の支持者は党本部から必ず投票せよと動員をかけられて従った結果、国民党が意外に健闘する結果となった。
中国による隠然とした香港支配 【2004年12月8日】 昨年夏に香港の首長である董建華・行政長官のやり方に反対する市民が50万人規模の反政府デモを繰り広げ、野党の「民主党」など民主諸派の力が強くなってから、今年9月の議会(立法会)選挙で民主党がふるわず、その半面で親中国派の「民主建港連盟」が議席を伸ばす結果に終わるまでの1年半の流れを見ると、香港社会において親中国派が巧妙に民意を取り込んでいることが感じられる。
潜水艦侵入問題と日中関係 【2004年11月19日】 日本がこれまで東シナ海における中国の侵犯行為を黙認する傾向があったのは、日本政府が中国に気兼ねしすぎていたからだ、という見方もあるが、私はむしろ、日本政府はこれまで中国を敵視する必要がなかったのが、ここに来て仮想敵を新たに設定する必要が持ち上がり、そのために中国に対する敵視が強められたのだと考える。仮想敵を必要とする原因を作ったのは、日本に対するアメリカの軍事的な関与が変化していることである。
台湾を見捨てるアメリカ 【2004年11月2日】 アメリカの次期政権は、台湾問題に対する政策を変える可能性が高い。中台の関係者は「アメリカは今後、台中双方にはっきりものを言う『双方向明晰化』の傾向を強め、中国には台湾を武力侵攻するな、台湾には独立傾向を強めるなと、従来よりはっきりした口調で要求するようになるだろう」と分析している。明晰化は台湾にとって危険であり、アメリカに見捨てられることになりかねない。
中国人民元がドルを抜く日 【2004年10月12日】 最近G7が再び人民元切り上げ圧力を中国にかけている背景には、世界経済を消費面から牽引してきたアメリカ経済の消費力がもはや限界に達しつつある状況がある。その一方で、中国の大都市では中産階級と呼べる集団が育っている。この層に世界からの輸入品を買ってもらい、アメリカに代わって消費面でも中国が世界経済の牽引役になれば良い。それには人民元を切り上げて中国人が輸入品を安く買えるようにすることが必要だ、というのがG7の考えである。
対立を演出する中国の政治 【2004年8月24日】 中国共産党は、内部での「胡錦涛・江沢民」の対立と、外部との「中国・台湾・アメリカ」という三角対立の2つを演じている。一触即発のように見える台中関係の深層には(1)アメリカは中国が求める「一つの中国」を支持し、台湾独立を許さない、(2)中国は台湾を威嚇しても良いが、実際に軍事侵攻してはならない、(3)台湾はアメリカに現状維持を守ってもらう代わりに、アメリカから武器を買わねばならない、という三者の了解事項がありそうだ。
自立を求められる日本 【2004年8月17日】 最近感じられ始めたことは、アメリカは日本にも、自国を牽制する「非米同盟」諸国の一つになってほしいと考えているのではないか、ということである。日本はアメリカのくびきから自らを解き放ち、日本らしい独自の外交戦略を実行してほしい、というのがパウエルやアーミテージの「憲法9条を捨てよ」という発言の真意ではないか。
台湾の外交攻勢とアジア 【2004年8月11日】 東南アジアと並んで、陳水扁政権の台湾は日本にも外交攻勢をかけている。日米安保体制を、中国を仮想敵とした防衛同盟として再編してもらい、米台関係の基本を定めたアメリカの「台湾関係法」と連携させることで、台湾・アメリカ・日本の3国防衛同盟へと発展させることが目標だ。日本の上層部では、戦後の繁栄の基礎となった日米安保体制を今後も維持したいという考え方が強く、台湾側はそこを狙っている。だがアメリカが中国を仮想敵と考えていないため、この考え方には無理がある。
中国の勃興と台湾 【2004年8月2日】 中国の中枢からは「武力で台湾を併合することも辞さない」といった言説がよく聞こえてくる。だが私が見るところ、中国はそんなことをできる状態にない。今の中国にとって最も大事なことは、世界における立場を強化することと、国内の政情を安定させることであるが、台湾への侵攻はその両方を破滅させかねない。
中国人民元と「アメリカ以後」 【2004年2月17日】 アメリカは、中国に対して「アジアの覇権国にしてあげるから」という交換条件をつけて、アジア諸国が躊躇した「アジア通貨バスケット」(ACB)の構想を、中国に推進させようとしているのかもしれない。中国がACBを自国通貨の相場の決定に使えば、他のアジア諸国にも同様の傾向が広まり、自然とアジアの基軸通貨はドルからACBに変わっていく。日本でも円ドル為替のみに固執する状態は変わるだろう。
柔らかくなった北京の表情 【2003年10月16日】 北京の人々の表情からはぎすぎすした感じが抜け、生活に余裕が感じられるようになった。人々が最低限の生活を強いられ政治闘争も続いた文化大革命が終わった後、経済発展の時代が始まり、人々の表情から刺々しさが抜けていったのだと思われる。今の中国は「拝金主義」だという批判があるが、北京市民の表情から読み取る限りでは、社会主義より拝金主義の方がましなのだろう。
人民元切り上げ問題にみる米中新時代 【2003年9月16日】 ブッシュ政権は9月上旬、財務長官を中国に派遣し、中国政府に人民元を切り上げるよう圧力をかけるそぶりを見せた。ところがこれは「そぶり」だけだった。ブッシュを支持するアメリカの大企業の多くは、中国を生産拠点として活用しており、人民元が安いことが儲けを増やしていたため、ブッシュに「中国に圧力をかけるな」と求めた。
北朝鮮問題で始まる東アジアの再編 【2003年9月3日】 北朝鮮の核兵器開発宣言は、戦争を誘発しなかった。むしろアメリカはその後、自ら北朝鮮と交渉することを避け、交渉の主導権を中国に与えた。中国は朝鮮半島に大きな影響力を持つことになった。中韓が協力して北朝鮮をなだめ、問題を解決できたら、中韓朝3カ国は親密な同盟体になるだろう。そのとき、アメリカは東アジアに対する影響力を失っている。北朝鮮問題を中国にやらせることは、汚れ仕事を下請けに押しつけるようなものではなく、逆にアメリカが東アジア支配から手を引く第一歩となる可能性が大きい。
静かに進むアジアの統合 【2003年7月18日】 アメリカ市場が飽和状態なら「アジアが作った工業製品をアメリカが買う。アメリカの金融商品をアジアが買う」という相互依存は将来性がない。そのためアメリカは、アジアの経済統合を認める代わりに、アジアがアメリカ市場に頼らなくても経済成長していけるようにした上、その一方で為替を今よりかなりドル安に持っていき、アメリカの製品がアジアやヨーロッパでも売れるようにしてアメリカ経済を救う、というシナリオかもしれない。
チベットは見捨てられるのか 【2003年7月1日】 チベット難民に対するネパールの政策が中国寄りになったり、インド(アメリカ)寄りになったりするのは、中国に対するアメリカの政策が揺れている結果であろう。チベット人は中国の圧政下で不幸な生活を送ってきたが、その一方で、圧政から逃れるためにはアメリカの世界支配の道具になることが必要だった。
米中関係とネオコンの行方 【2003年6月17日】 ブッシュ政権中枢の内部抗争は、ネオコンがイラク侵攻を戦勝に導いた時点で「ネオコン勝利」で終わったはずだ。だが、その後の現実は逆の方向に進んでいる。むしろパウエルら中道派は今もアメリカの外交政策を主導しているか、もしくは政権内での抗争はまだ続き、折衷的な外交政策がとられている。その一つの例が、6月1日の胡錦涛会談と、それに続くPNAC(ネオコン系シンクタンク)のブッシュ批判に表れている。
中国を混乱させる首脳人事 【2002年8月28日】 胡錦濤は、トウ(ケ)小平に「次世代の後継者」として選ばれて以来、なるべく目立たないように準備をしていた。胡錦濤に対する外国マスコミの評価は「オーソドックスな発言しかしない」というものが多い。だがその陰で、彼は自分の派閥を全中国に構築していた。いよいよ胡錦濤の時代が近づいた昨年末、各地の党書記や省知事たちは、自分の副官である副書記や副知事が胡錦濤の一派であることに気づき、焦りだした。
人類初の世界一周は中国人? 【2002年5月2日】 歴史の教科書では、人類で初めて世界一周の航海をしたのは1522年、マゼランのスペイン艦隊だったということになっている。しかし最近、マゼランよりも100年ほど前の1423年ごろ、中国人の艦隊が世界一周していたという調査結果をイギリス人の研究者が発表し、論争を巻き起こした。
「仕組まれた9・11」と中国 【2002年3月25日】中国共産党はかつて貧農と労働者のための党だったが、いまや国家制度を早く資本主義化して全体を豊かにしようとするあまり、貧しい人々を最も苦しめる結果となっている。党大会前の微妙な人事抗争、失業者の反乱、そしてアメリカによる台湾を使った軍事対立の扇動が重なり、中国共産党は存亡の危機を迎えている。
米中台・解かれたキッシンジャーの呪い
【2002年3月18日】1971年にキッシンジャーと周恩来の会談以来、アメリカ政府は中国には「台湾を見捨てる」と約束する一方で、ロビー活動などが功を奏してアメリカに「台湾関係法」を作らせた台湾に対しては「見捨てない」と約束するという二枚舌の状態になった。ブッシュ政権は911以降、この関係を塗り替えようとしている。
アメリカの挑発に乗れない中国
【2002年3月15日】米中間の緊張関係を考えると、中国の国家主席専用機に盗聴器を仕掛けたのはCIAやNSAだというのが最もありそうな筋書きだろう。そして中国側は、自国の軍幹部が横領したという問題はありつつも、アメリカを強く非難して当然と思われる。だが、盗聴器が見つかった後の展開は、それとはまったく違っていた。しかも、アメリカが中国を挑発し、中国がそれを受け流すという米中関係は、すでに何回か繰り返されている。
台湾と中国:政治で勝ち、経済で負ける
【2001年12月17日】 台湾経済の前途には難問が山積みだ。WTOに加盟した台湾の最大の脅威は、中国から安い農産物や軽工業品が流入すること。ところが台湾は独自の対策を用意している。中国が台湾をWTOに提訴したら「台湾は中国の一部だ」という、これまでの中国の主張と矛盾する。だから台湾が強硬姿勢をとっても、中国から提訴されにくいと考えられている。
台湾の政治を揺さぶるマスコミ
【2001年9月10日】 台湾のマスコミの多くは、いまだに外省系の勢力が経営権を握っている。かつて台湾ではあらゆる権力を国民党が握り、それは学界や報道界にも及び、人口の1割しかいない外省人でないとマスコミの幹部や権威ある学者になることは難しかった。自由化が進んだ今では、マスコミでも多くの本省人が働いているが、経営トップはそうではない。
経済難にあえぐ台湾
【2001年9月3日】 ついこの間まで台湾の技術者たちは、わざわざ中国大陸まで行って仕事を探す必要はなかった。だが台湾では今春以降、未曾有の不況に陥った。あちこちで工場が閉鎖され、職を失った技術者や経営幹部らが、今では大陸の台湾企業を回って職探しをしている。
米中関係と靖国問題
【2001年8月7日】 中曽根公式参拝から16年、日本が中国を敵視するアメリカの軍事政策の「槍の穂先」になるつもりなら、中国の非難を押し切って首相の靖国参拝が復活することは、アメリカには喜ばれるかもしれない。しかし、日本にとってはリスクの大きな賭けになる。
アメリカが描く「第2冷戦」
【2001年6月18日】 3月21日、ホワイトハウスにおいて、ラムズフェルド国防長官がブッシュ大統領に対し、アメリカ軍の大規模な戦略転換についての計画を説明した。これはブッシュ政権が初めて米軍の全体戦略について再検討するものだったが、その内容は第2次大戦から50年間続いてきた米軍の戦略を根本から変えるものだった・・・
アメリカを出し抜く中国外交
【2001年6月12日】 ここ数年、アメリカや西欧諸国は、人権侵害を理由に発展途上国の政治に干渉し「言うことを聞かねば援助を削る」と脅す「人権外交」を展開している。パキスタンやミャンマー、南太平洋諸国に対する中国の援助の拡大は、この人権外交に風穴を開け、無効にしてしまう効果を持っている。
アメリカのアジア支配と沖縄
【2001年6月5日】 ・・・ランド研究所が報告書を発表した2日後、フィリピンでの合同軍事演習から沖縄本島に戻る途中のヘリ部隊が、再び下地島空港に飛来した。最初の飛来のとき、下地島の関係者は「なぜここを使うのか分からない」と困惑したが、2回目には、もはやアメリカ側の意図は明らかだった。
北朝鮮を中国式に考え直す (2001年2月5日)
活気あふれる中国(5)発展の裏側 (2001年1月1日)
活気あふれる中国(4)台湾の存在感 (2000年12月25日)
活気あふれる中国(3)国有企業の挑戦 (12月18日)
ハーバードのアジア研究がつまらない理由 (12月14日)
活気あふれる中国(2)過激な問屋街 (12月11日)
活気あふれる中国(1)賑わう消費 (12月4日)
移民問題:アメリカをめざす中国人
【2000年9月11日】 福建省の沿岸部が移民を輩出した歴史は、今も続いている。ヨーロッパで検挙される不正移民のうち、8割前後は中国人であるが、そのうち7−8割は福建省の沿岸部、特に福州市近郊の人々だ。一族の中に1人でも欧米に渡った人がいると、一族全体の信用度が上がり、名士になれるため、人々は渡航する。だが、密航の旅は危険と苦痛に満ちている。
激動続く台湾:中華民国の終わり
【2000年5月8日】 李登輝は権力の頂点に登りつめながら、民主化の逆戻りを防ぐため、政治的に「自爆」することで、国民党政権を潰してしまった。「これはまさに、戦争中の日本の特攻隊精神だ、やっぱり李登輝は半分日本人だったんだ、と外省人や共産党は思っていますよ」と、台北の知日派が語っていた。
台湾人の独立精神
【2000年4月10日】 台湾の「独立宣言」は、1回目が17世紀の鄭成功の時、2回目が1895年の「台湾民主国」、そして3回目は1947年「228事件」後の自治要求である。いずれも、前の外来権力が去った後に出され、次の外来権力によって弾圧され、終わっている。その意味で、先の総統選挙で民進党の陳水扁が勝ったことは、4回目の独立の意思表明ともいえる。
台湾・第2の光復(2)日本の統治を考える 【2000年4月6日】
台湾・第2の光復(1)親日の謎を解く紀念館
【2000年3月30日】 植民地支配されるのは嫌なことであるはずなのに、台湾の人々はなぜ親日なのだろう。その答えかもしれない考え方を、台北市の中心部にある「228紀念館」で得た。民進党の陳水扁が台北市長だった時に作られ、国民党政府による弾圧を批判する展示館なのだが、そこで読んだ台湾独自の歴史観の中に、日本の植民地支配に対する肯定が盛り込まれていた。
台湾選挙(3)李登輝辞任のいきさつ
【2000年3月23日】 李登輝が陳水扁を支持していたとしたら、その理由は国民党を「浄化」しようと思っていたからだ。だが陳水扁の勝利は党内の外省人勢力を力づけ、李登輝は辞任に追い込まれた。今後の主導権争いで外省人勢力が勝ったら、国民党は陳水扁政権に全面抵抗し、台湾の政治は不安定になる。
台湾選挙の興奮(2)
【2000年3月20日】 台湾は今回初めて、国民党の一党支配が終わる可能性を持った選挙を経験した。人々は、国民党の圧政時代に感じてきた重荷から解放されるという喜びを感じているようだった。そこに暗い影を落としているのが、中国からの威嚇であり、それを避けようとする人々が、独立系の宋楚瑜候補を支持していた。
興奮高まる台湾選挙
【2000年3月17日】 投票を間近に控えた台湾は、選挙一色の状態とは聞いていたが、これほどとは思わなかった。新聞はどこも、報道ページの半分以上が全面、選挙に関することだ。一般の台湾の人々も、選挙に対する熱意はすさまじい。3月18日の選挙の一週間ほど前から、主要3候補は連日のように、10万-40万人規模の大集会を開いている。
難航する中国のWTO加盟
【2000年2月28日】 中国とアメリカの関係はここ2年ほど、恋愛ドラマのように、土壇場の大逆転、憎悪と親近感の交錯などの連続だ。その象徴が、中国のWTO加盟をめぐる交渉である。WTO加盟の前提となる米中間の貿易協約は、99年11月に何とか締結したが、その後アメリカの政局は選挙モードに入り、議会が批准しないまま、棚上げ状態が続いている。
「負けるが勝ち」の台湾国民党
【2000年2月24日】 台湾で50年近く与党の座にあった国民党は、3月18日の総統(大統領)選挙で、民進党など他の候補に破れる可能性が出ているのだが、国民党の上層部は「選挙に負けても良い」と思っているふしがある。選挙で「政権交代」があれば、立派な民主主義国として国際社会も無視できなくなるからだ。
暗闘うず巻くチベット活仏の亡命
【2000年1月24日】 チベットの活仏、カルマパラマが、中国統治下のチベットから、インド北部の亡命チベット人地域へと移ってきたことは、中国の圧政に嫌気がさしたことによる「亡命」と報じられている。だがその経緯を仔細に検証すると、むしろ「亡命」と見せかけて、ダライラマを頂点とするインドの亡命チベット人社会での権力奪取を目指す勢力があるかもしれない、と思えてくる。
マカオ返還の裏で進む暴力団との戦い
【1999年12月21日】 マカオ経済を支えるカジノの裏には、暴力団組織がうごめいている。中国への返還を控え、マカオのカジノ利権を求める暴力団が、香港や台湾、中国大陸から流入し、熾烈な抗争が展開された。当局が取り締まりに入ると、当局対暴力団の死闘に展開した。
マカオの500年をふりかえる
【1999年12月20日】 ポルトガルから中国に返還されたマカオの最盛期は、日本と中国との間の貿易が富の源泉だったが、それは日本の鎖国によって失われた。ポルトガルは、イギリスのような植民地経営の戦略を持たず、行き当たりばったりで、最後の30年間は中国政府の言いなりだった。だがイギリス人のような人種差別をしないという寛容さもあった。
ディズニーランドは香港を救うか
【1999年11月18日】 中国への返還後、アイデンティティの転換を迫られている香港が、国際都市の新たな象徴として誘致したのが、ディズニーランドだった。行政府が建設費の9割を負担し、直営とする力の入れようだ。入場者の7割以上は中国大陸からと予測されるが、中国ではすでに無数のテーマパークが破綻している上、日本の自治体系パークの失敗を考えると、役人が経営するエンターテイメントが面白いのかという疑問も湧く。
台湾の客家に学ぶ
【1999年9月15日】 客家は、長い中国の歴史の中で、よそもの扱いされた経緯が長く、少数派として不利益を蒙りやすい立場にあった。そのため古くから、子供たちに知的資産をつけて生きる力をつけさせようと、教育熱心な親が多かったといわれる。そうした伝統は、葉一族の中にも生かされていた。
驚きの多言語社会・台湾
【1999年9月15日】 台湾の客家、羅慶飛さんの一族には、客家、ビン南人、外省人、そして先住民の人もいて、母語が違うので、家族や親戚の中ですら「国連のような」多言語社会になっている。そして羅慶飛さん夫妻の会話の中心は客家語だが、その中によく日本語が混じる。息子の羅吉昌さんの奥さんはビン南人、娘の羅瑞媛さんの旦那さんは外省人だった。
台湾人のアイデンティティ
【1999年8月30日】 台湾では、李登輝総統の時代になってから、政治・社会の自由化が急速に進んだ。だがそれは、国民党独裁時代に弾圧されながら民主化を推進した、民主進歩党のオリジナルメンバーたちの意図を超える速さでもあった。その表れの一つが、台湾語より北京語の方がカッコ良いと思う若者や、本省人なのに台湾語が話せない若者が増えたことだった。
台湾の日本ブーム
【1999年8月23日】 日本にいると、アメリカ文化の方が進んでいると思いがちなだけに、日本の音楽が台湾で「洋物」音楽の世界をアメリカと二分しているという現状は意外だった。しかも最近では、アメリカより日本の音楽の人気が高いという。
自立したい台湾、追いすがる中国
【1999年8月9日】 台湾は中国から攻撃されるおそれが強いのに、軍隊を縮小している。そんな中、台湾の李登輝総統は「今後は、中国と台湾が特殊な国と国との関係であることを中国が認めない限り、中国との交渉は行わない」と発言した。中国は武力で台湾を威嚇する姿勢をみせたが、李登輝発言の背景をみていくと、実際に中国が台湾を武力侵攻するとは考えにくい。
「誤爆」が照らした米中の二重対立 1999.6.15
「民主」が「愛国」に塗り替えられた中国の十年 1999.6.11
欧米の製薬会社に蝕まれる中国の医療体制 98.12.7
難所にきた中国改革(3):ノンバンク錬金術の終わり 98.11.17
難所に来た中国の改革(2):債務超過に陥る銀行業界 98.11.13
難所にきた中国の改革:「希望の星」朱鎔基のかげり 98.11.6
香港金融市場・世紀の大決戦 98.9.20
大中華の未来を築けるか : 変容する台湾問題 98.7.7
燃え上がるチベット人の怒り 98.5.13
香港市民をパニックに陥れた「鶏インフルエンザ」 97.12.19
中国よりアメリカの一部になりたい台湾 97.12.11
日本の次は中国か ? :アジア経済危機 97.12.3
人口爆発より高齢化が心配な中国、一人っ子政策を見直し 97.11.1
返還から100日、香港の意外な安定 97.10.14
中国から香港への密出国者が急増 97.6.30
広州市内でニセ証明書が横行 97.6.30
上海に「たまごっち」旋風 97.6.5
上海からの手紙・赤いネッカチーフの進学競争 97.2.18
上海で始まった「失業」めぐる実験 97.2.9
チャン女史は香港の自由度を判断するカナリヤ 97.2.17
返還控えイヤ〜ナ感じ 97.2.16
反中国の会社がつぶされ始めた 97.1.29
労働運動の危機 97.1.26
中国で増える内陸から沿海地域への出稼ぎ 96.12.23
世紀末の中国でキリスト教の大流行 96.11.19
尖閣諸島紛争を考える 96.10.04
台湾で暴力団が作った政党の名は「正義党」 96.8.13
台湾のモンゴル承認は独立への観測気球 96.8.5
中国のパレスチナ、新疆の悲劇 96.7.10
家内工業の街から頭脳都市に変わりゆく香港 96.7.11
香港歌手のトークは要注意 96.7.16
マンション買ったら上海居住権をプレゼント 96.8.4
中国で頻発する人さらい 96.7.13
産み分けで崩れる中国の男女バランス 96.7.29
売れない中国の国債 96.7.8
上海で吹き出すミネラルウォーター戦争 96.7.6
小船で欧州へ向かう中国人 96.6.20
中国でもイベントバブル 96.6.25
ルポ・台湾の原発(88年8月)
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