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米覇権衰退で総和解があり得る中東

2021年12月30日  田中 宇 

米国の覇権が衰退して、対立だらけだった中東が総和解の状態に転換し得る。私は以前からそんなシナリオの記事を何度か書いてきた。マスコミしか読んでいない人々から見ると「米国の覇権は中東を安定させており、米覇権がなくなると中東各地の地域紛争やテロ行為が増え、総和解どころか総戦争になる。そもそも米国の覇権は衰退などしていない」といった反応になる。私の「米覇権衰退で中東の総和解」は妄想とみなされてきた。 (解体していく中東の敵対関係) (イスラエルが対立構造から解放される日) (米国から露中への中東覇権の移転が加速

しかし今、米覇権が衰退している感じは前よりずっと強まっている。米軍はアフガニスタンを放棄して撤退し、アフガンは静かに中露イラン側の国になっている。バイデン政権は、イラン核協定(JCPOA)に戻るか戻らないかの瀬戸際にいる。米国がJCPOAに戻れば、イランが中露の傘下で中東の地域覇権を拡大した多極化の現状を米国が容認することになり、米国の威信が低下する。戻らず米国がイランを制裁し続ければ、イランはますます中露の傘下に入って非米化しつつ中東の地域覇権を維持し、その分米国の中東覇権の縮小が確定する。米国のJCPOA復帰問題で、イラン中露は何も失わない。米国(欧米)側だけが、どのような形での覇権縮小を選ぶのかという失敗の選択肢の前で迷っている。 (Taliban to form new armed forces including former regime troops) (アフガニスタンを中露側に押しやる米国

「米覇権がなくなると中東は混乱する」という考え方はマスコミ軍産のプロパガンダだ。アルカイダやISIS(イスラム国)といったテロ組織をテコ入れ強化して虐殺を横行させたのは米国だ。イラクに大量破壊兵器の濡れ衣をかけて侵攻して大破壊と大量虐殺をやったのも米国だ。ISカイダにシリア内戦を開始させたのも米国。サウジ王政を騙してイエメン戦争に陥らせたのも米国。イランに核兵器開発の濡れ衣をかけて不正に経済制裁してきたのも米国。リビアの国家を破壊したのも米国だ。米国は911以来、中東を混乱・破壊することばかりやってきた(それらは諜報界の隠れ多極主義者たちが米覇権を自滅させるために意図的にやった策略だ)。米国が中東を支配しなくなると、中東は安定と和解に向かう。「イランや中露といった『悪』をのさばらせるべきでない」といった考え方もマスコミ軍産のプロパガンダだ。最大の『悪』は米国である。中露イランは中東を安定させているので、むしろ『善』である。 (続くイスラエルとイランの善悪逆転) (中国の悪さの本質) (プーチンが中東を平和にする

▼イスラエル、イラン、サウジの三角和解になる、ならない、なる、ならない

実際に最近の中東では、イスラエルとイラン、イスラエルとサウジUAE、イランとサウジUAEという3角形・3つ巴の緊張緩和が進んでいる。イスラエルは最近、今にもイランの核施設を空爆して戦争を始めそうな言動を続けている。だがその裏で、UAEなどに仲裁してもらってイランと和解していくことも同時に模索している。12月13日、イスラエルのベネット首相が、首脳として史上初のUAE訪問を行ったが、それより数日前、UAEの安保担当責任者(Tahnoun bin Zayed al-Nahyan TbZ)がイランを訪問し、ライシ大統領と会って話をしている。UAEは、イランから話を聞いた上でイスラエルと話をしている。UAEが、イスラエルとイランを仲裁している。UAEは仲裁役といってもイランと国交があるわけでない。UAEとイランの関係改善もまだ未完成な途上だ。UAEは、イランとイスラエルの両方と同時進行で和解していく流れにいる。 (Bennett commits to partnership with Emirates on UAE visit) (Iran-Saudi Diplomacy Intensifies as Nuclear Talks See Momentum) (Israeli PM pays landmark visit to UAE

UAEはサウジアラビアの子分だ。サウジとイスラエルはトランプ米前大統領の仲裁で、数年前から非公式な和解を進めてきた。サウジは先日から、イスラエル民間機が領空を通過することを許可するようになった。和解は進行中だ。サウジは同時に、イランとの和解も、イラクやヨルダンの仲裁で進めている。サウジもまた、イスラエルとイランと両方と、同時進行で和解交渉している。 (Bennett sketches path for Israeli-Saudi normalization @BenCaspit) (UAE, Saudis seek détente with Tehran, fed up with US-Israel slow motion on nuclear-armed Iran) (Saudis open airspace to Israeli flights, maintain aerial blockade on Yemen

親分子分なサウジUAE、イラン(とその傘下のイラク)、そしてイスラエルという、中東の3大勢力が、3つどもえの和解に向けて進んでいる。この傾向はトランプの時から感じられていたが、いつも「間もなく全面展開して正式な和解になりそうな感じ」と「永久に和解せず対立し続ける感じ」が併存している。今もそうだ。この間、米国の覇権はどんどん低下して中露の台頭が加速し、米国を牛耳ってきたイスラエルが弱くなり、中露の傘下に入ったイランが強くなり、米国の傀儡だったサウジUAEが中露の側に転じる傾向を増している。 (イランとサウジが和解。イスラエルは?) (ロシア、イスラエル、イランによる中東新秩序) (Tehran-Riyadh detente could mark the end for Israel’s anti-Iran coalition

サウジは、民主党左派の人権重視策(笑)の影響で米国からパトリオって迎撃ミサイルを売ってもらえなくなり、イエメン戦争の続行が難しくなり、中国から弾道ミサイルの技術を買って自作し始めている。UAEも、米国からF35戦闘機を買うのをやめたり、中国から兵器を買うそぶりを見せている。 (UAE Threatens To Walk Away From $23 Billion US Arms Deal) (Saudi Arabia Is Building Ballistic Missiles With China's Help

米国の覇権低下は来年さらに加速しそうなので、サウジ・イラン・イスラエルの三角和解が達成される可能性も強くなる。サウジはアラブ諸国の盟主なので、サウジがイスラエルと和解すると、パレスチナ和平も解決しやすくなる。イランは、レバノンやシリアやガザ(ハマス)に影響力を持っているので、イランとイスラエルが和解すると、イスラエルと周辺諸勢力との和解もしやすくなる。サウジとイランが和解すると、イエメン戦争を終わりにできる。中東のすべての問題が解決しやすくなる。中露が中東の安定を望んでいるので、中露の傘下にいるイランも現実的な姿勢になる。ムスリム同胞団を擁立するトルコも、同胞団敵視だったUAEサウジ側との和解を進めている。サウジ・イラン・イスラエルにトルコを入れた4極が中東の最終的な覇権体制だ。 (Escobar: Russia Is Primed For A Persian Gulf Security 'Makeover') (The Geopolitical Game That Could Transform Gas Markets) (Saudis, UAE suddenly abandon Red Sea coast to Iranian-Houthi control – a shocker for US and allies

▼米覇権が衰退したら中東和平が難問でなくなる

昔から米国上層部を牛耳ってきたイスラエルは最近、米政府に圧力をかけてイランの核施設を空爆させようとしたが断られている。イスラエル単独では、イランの核施設を攻撃して戦争になった場合に勝てない。近年のイランは、ロシアや中国から新型兵器を仕入れて強くなっている。イスラエル単独でイランを空爆するには、最新型の空中給油機ボーイングKC46が必要だとされている。イスラエルは現在60年前に作られた給油機KC707を9機持っており、2023年からこれを8機のKC46に替えていく話を米国側と進めてきた。イスラエルは今年10月、KC46の配備が23年では遅すぎるので今すぐ2機を前倒しで売ってほしいと米国側に要請した。KC46がイラン核施設の攻撃用に使われることは明白なので、米政府は前倒しを断った。 (Israel’s endless saga of KC-46 refuelers and Iran) (Israel’s request for early KC-46 delivery rejected by the US

そういう話が出回っているものの、それは歪曲話だという説もある。イスラエルが米国からKC46を買っても、新型機で確実に空中給油するためのパイロットらの訓練に時間がかかり、すぐにイランを空爆できない。イスラエル軍は先日、イラン核施設空爆の計画を政府に提出し、政府が許可したらすぐにイランを空爆できる状態だとされているが、イランの核施設は大深度地下にある、イスラエルが持っていないバンカーバスターでないと破壊できない。新型給油機KC46もない状態で、イスラエルの「間もなくイラン空爆」は口だけだと言われている。対抗してイラン軍部(革命防衛隊)は、イスラエルのディモナ核施設を空爆して破壊する軍事演習を大々的に行った。イランもイスラエルも口だけだ。 (Israeli Military Presents Government With Plans to Strike Iran) (Israel-Iran balance of terror. Israel loath to accept solo role for action against a nuclear Iran

イスラエルは、米国を動かしてイランと戦争させることもできず、単独でイランを倒すこともできないとなれば、あとはイランと和解していくしかない。イスラエルとイランは、今にも戦争しそうな感じを互いに演出しつつ、その裏で、UAE(やその後ろにいるかもしれない兄貴分のサウジ)に仲裁してもらって間接的な和解交渉を始めている。さいきんCIAやモサドの幹部が相次いで、イランが核兵器を開発していないことを認める発言をあえて公式に放ち、米イスラエルがイランと戦争せねばならない状況を終わらせようとしたりしている。 (Former Mossad chief says Iran ‘no closer than before’ to obtaining nukes) (CIA Chief: No Evidence Iran Has Decided to Develop a Nuclear Weapon) (Israel hampered in its Iran policy by bitter top-level wrangling

イスラエルが、シリアのイラン系の軍事拠点を何度も空爆しているのは事実だ。この点では、すでにイスラエルがイラン側に戦争を仕掛けている。12月28日にもイスラエル軍機がシリアのラタキア港のコンテナ貯蔵施設を空爆した。そこにはイランが運び込んだ武器弾薬が貯蔵してあり、それがイスラエルへの攻撃に使われる前に破壊したのだとイスラエル側は言っている。しかし、ラタキアの近くに駐留して迎撃ミサイルS400も配備しているロシア軍は、イスラエル軍機の今回の攻撃に対してS400で迎撃せず黙認した。どうやら、イスラエルは事前にロシアに通告した上で空爆を挙行したらしい。ロシアは、イスラエルの隣国であるシリアにイランが持ち込んだ武器弾薬を、イスラエルが空爆して破壊することを、イスラエルによる防衛措置とみなし、黙認したのでないか。 (The Latakia doctrine puts Russia in a bind - analysis) (Biden Admin Rejects Israel's Urging For Joint Plan To Attack Iran's Nuclear Facilities

イランがシリアに持ち込んだ武器弾薬は、シリア内戦の最中に、米トルコから武器弾薬を供給されていたISカイダの軍勢と戦うシリア政府軍を、イラン系民兵団が助けるために使われていた。その時には正当防衛用の武器弾薬だった。しかし、シリア内戦が終わっている今、イランはこの武器弾薬をイスラエルに対する攻撃用に使う可能性がある。そうなると防衛用でなく攻撃用になるとロシアは判断し、イスラエルによる破壊を認めたと考えられる。中東の安定を好むロシアは、イランとイスラエルが戦争するのを好まない。 (Iran: Israel seeks own security through fomenting insecurity in region) (As Vienna talks continue, Israel prepares for possible war against Iran, Hezbollah @BenCaspit

イスラエルとイランの隠然和解や、イスラエルとサウジUAEの正式和解を阻む最大の要因はパレスチナ問題だ。パレスチナ国家を創設してパレスチナ問題を解決することはイスラム世界の大義である。イランもサウジも、パレスチナ国家の本格稼働にめどが立たない限り、イスラエルと正式に和解するわけにいかない。パレスチナ国家になるはずのヨルダン川西岸には蚕食的にイスラエル入植者が40万人も住み着いており、イスラエルにどんな政府ができようが、彼らを全員立ち退かせることは不可能だ。入植者の多くは右派政党リクードの支持者であり、リクードはネタニヤフを首相に擁立して今年6月まで15年間、イスラエルの与党だった。 (世界を揺るがすイスラエル入植者) (入植地を撤去できないイスラエル

ネタニヤフやリクード系の勢力は米国の軍産複合体と結託し、米国の仲裁でパレスチナ和平(中東和平)を進めるふりをしつつ進めない状態を続けてきた(私も彼らには延々と騙された)。中東和平が進まない限り、イスラエルはアラブやイランなどイスラム側と和解できず敵対し続け、イスラエルが米国を牛耳って米軍を中東に恒久駐留させる軍産好みの体制が維持される。米国が強い間は、イスラエル全体としてもこれで良かったが、今のように米国の覇権が弱体化してイスラエルにとって頼れる存在でなくなると、リクードの戦略はイスラエルの自滅になる。 (イスラエル右派を訪ねて) (続くイスラエルとイランの善悪逆転

イスラエルの中道派は政治力が弱く、好戦性で人気を集めるネタニヤフのリクードに長くかなわなかった。だが、連立不成立の選挙を何度もやった後、今年6月にようやく8党連立のベネット政権が何とか作られ、ネタニヤフとリクードを追い出した体制が始まっている。前述のように、ベネットはUAEを初訪問し、イランとの隠然和解を進めようとしている。またベネット政権のガンツ国防相(連立時の約束で次期首相になると決まっている)が12月29日、パレスチナ自治政府のアッバース議長(大統領)をイスラエル側の自宅に招待して会談した。2人は8月にも会談している。パレスチナとイスラエルの高官協議は数年ぶりだ。米国の覇権衰退が加速する中、イスラエルはリクードを追い出し、イランやアラブとの和解と、パレスチナ問題の解決を模索している観がある。 (Israel's Gantz announces confidence-building measures after hosting Palestinian President Abbas) (イスラエルのパレスチナ解体計画

西岸と東エルサレムの入植地は、ベネット政権の就任後も拡大している。入植地への支持はイスラエル国内でかなり強く、誰が政権に就こうが少なくとも表向きは入植地を支持しないとうまくいかない。「入植地がある限り中東和平が進むわけがない」と思う人が多いかもしれない。だが、西岸の入植地の大半をイスラエル側に編入し、代わりに同じ面積のイスラエルの土地(荒地などだが)をパレスチナ側に編入することで入植地問題を迂回するやり方が「オルメルト案」や「トランプ案」の中に盛り込まれている。アラブ側が「入植地は西岸の良い土地にあり、それを荒地と交換するのは絶対ダメだ」と突っぱねない限り、土地の交換で入植地問題を迂回できる。 (よみがえる中東和平) (没原稿:パレスチナ和平の蘇生

従来、米軍産とイスラエルが結託して覇権国の米国を牛耳って中東和平をやるふりだけして進めないのだから、中東和平が進む前提で考えても無駄だった。そのため、アラブやイランなどイスラム側は、土地交換に賛成せず、理想論を言って最大限の要求をし続けていた。その方が自国内の人気取りになって好都合だった。しかし、米覇権が衰退してイスラム側とイスラエルが米国抜きで自力で向きあうようになる今後は、中東和平を本気で解決し、中東の安定を実現した方が得策だ。土地交換や難民帰還権の放棄など、中東和平問題でこれまで「絶対ダメ」とされてきたことが「場合によっては支持できる」ことに変わりつつある。 (Saudi diplomat says Iran 'playing games' in regional talks) (ネタニヤフが延命のためガザで戦争

イスラム側が最後まで譲れない点は「東エルサレムをパレスチナ国家の首都とする」ことだろう。神殿の丘や旧市街に関してイスラエルの譲歩が必要だ。東エルサレム市域の範囲の問題はイスラム側が譲歩できる。双方の譲歩によって、中東和平は2国式による解決が可能だ。米国の覇権衰退によって双方の態度が現実的になり、以前は不可能だった譲歩が可能になる。いろんな譲歩を組み合わせると、現実的な中東和平案は、トランプ前大統領がオルメルト案を焼き直して提案したトランプ案に近いものになる。 (イスラエルとトランプの暗闘

トランプは2024年の大統領返り咲きを狙っている。民主党のバイデン政権がコロナや温暖化、インフレなどへの対策の失敗(超愚策の露呈)によって人気をどんどん下げている中、来年の中間選挙で共和党が勝ち、24年の大統領選でトランプが返り咲く可能性が高まっている(民主党が軍産マスコミと結託して再び選挙不正をやると話が変わってくるが)。トランプは最近「ネタニヤフは中東和平を進める気がなくてダメだった。パレスチナ自治政府のアッバースは和平を進める気があるので良い」と述べている。「米国のユダヤ人はイスラエルを愛していない。彼らは、イスラエルを敵視する民主党を支持してバイデン政権を作り、米議会に対するイスラエルの影響力を低下させてしまった」とも言っている。トランプは、イスラエルが米議会を牛耳ってきたことを暴露している。トランプは多極化を進める人なので、彼が返り咲くと、多極型世界でイスラエルを存続させるため、現実的な中東和平を進めるだろう。 (Trump says Jewish Americans 'don't like Israel') (Trump Claims Israel's Netanyahu 'Never Wanted Peace' With Palestinians) (イスラエル傀儡をやめる米政界

イスラエルでは、米覇権衰退を受けてイスラム側との隠然和解を進めるベネットらの現政権と、米軍産と結託して和解を阻止しようとするネタニヤフのリクードとの政争が続いている。イスラエル政府は最近、コロナのオミクロンの流行を理由に、イスラエル人が米国や欧州諸国に渡航することを禁じた。これはコロナ対策のふりをして、リクード系の人々が渡米して米国の軍産系の人々と作戦を練って隠然和解策を潰そうとするのを、渡航禁止によって阻もうとしているのかもしれない。イスラエル諜報界が、極左勢力をリクードに新規加入させて送り込み、リクードを破壊しようとする動きもある。ネタニヤフの力はしだいに弱まっている。 (Israel set to ban travel to US as Covid curbs widen) (Netanyahu battles over Likud control, campaigns to remove liberal members) (Scandal threatens political ambitions of former Mossad Chief Yossi Cohen @BenCaspit

今後、米国覇権の衰退が早いほど、中東の総和解も速く進む。QEの行き詰まりによる金融とドル基軸制が崩壊すると、覇権衰退が決定的になる。コロナやインフレの愚策に人々が怒って米国内の政治対立や内戦状態がひどくなることも覇権衰退を加速する。来年はQEとコロナで米覇権崩壊が進みそうな感じだ。 (QE減額は本当かも

▼これまでのあらすじ

以下、米イスラエル関係の「これまでのあらすじ」的な考察だ。以下の部分は当初、この記事の冒頭の書き出しだったのだが、延々と過去の話から書き始めるのも何だかなあと思い、いったんボツにした後、蛇足的にここにつけることにした。 (ロシアの中東覇権を好むイスラエル

1990年代末・クリントン政権の末期から、米国の安全保障戦略はイスラエル系の勢力(イスラエル右派と、ユダヤ人が多い米国の軍産マスコミ権威筋)に牛耳られてきた。彼らは「人権外交」や911テロ事件などを通じて、アルカイダなどイスラム主義勢力を米国の主要な敵に仕立て、恒久的にイスラム側との低強度戦争をすることが米国の世界戦略の大黒柱になり、中東各地に米軍が配備されてイスラエルの「衛兵」として機能するように仕向けられた。米英イスラエル諜報界は、裏からこっそりイスラム主義勢力を加勢して「敵方」の勢力が落ちないよう維持してやった。アルカイダが下火になると、米諜報界がISISを作って新たな「強敵」に仕立てた。マッチポンプの大量殺戮が4半世紀続いてきたが、それを指摘する人々は、頭のおかしな陰謀論者とレッテル貼りされた。NYタイムスを筆頭に、米国中心の国際マスコミも、この人道犯罪の推進者だった。中東情勢が、国際マスコミが報じる世界の出来事の中心だった。 (Trump says American Jews 'no longer love Israel' and Jewish people 'run The New York Times') (イスラエルとロスチャイルドの百年戦争

こうした「テロ戦争」の構図が成功裏に続いていたら、少なくともイスラエルは安泰だった。だが、米国の政策立案者・諜報界たちの中に、ネオコンやタカ派など、テロ戦争を過激に稚拙にやって失敗させる勢力がいた。イスラエル側はイラク戦争前から「イラクを政権転覆したら、すぐにイランも潰さないと、大産油国イラクの多数派であるシーア派と、シーア派のイスラム主義国であるイランが結束し、強大な敵を作ってしまうことになる」と警告していたのに、ネオコンらの失敗の結果、イスラエルが懸念したとおりの展開になった。そのうちに中露が台頭してきてイランを傘下に入れ始め、米国がイランに核兵器開発の濡れ衣をかけて経済制裁しても効果が薄くなった。ドル崩壊の始まりであるリーマンショックも起こり、米国の覇権崩壊の懸念が拡大した。 (ネオコンは中道派の別働隊だった?) (国家と戦争、軍産イスラエル

その後出てきた米民主党のオバマ政権は、イランを米国覇権下に引き戻すために核交渉(JCPOA)を妥結したが、これは米民主党とイスラエルとの仲たがいになった。オバマはイラクからの米軍撤退を進め、オサマビンラディンの殺害劇も演じて、米国の覇権を自滅させていく失策と化していたテロ戦争の終わらせて米覇権を再建しようとした。米上層部の軍産イスラエルは、オバマのテロ戦争終結の試みに隠然かつ猛然と抵抗した。米諜報界は、アルカイダに替わるイスラム主義のテロリスト集団であるISIS(イスラム国)を創設して米軍イラク撤退を阻止し、テロ戦争の新たな舞台としてのシリア内戦やリビア内戦も引き起こした。米イスラエル同盟内は暗闘が激化した。イスラエルは安泰でなくなり、中東イスラム諸国の人々もひどい目にあい続けた。 (イスラエルとの闘いの熾烈化) (反イスラエルの本性をあらわすアメリカ

オバマ民主党とイスラエルとの対立は、2016年の共和党トランプの当選につながった。トランプは「史上最も親イスラエルな政権」を自称し、JCPOAを離脱し、イスラエルが希望したサウジアラビアとの和解を仲裁した。だが同時にトランプは、NATOなど中東以外の同盟諸国に喧嘩をふっかけ、ロシアとの和解を目指して軍産の米覇権戦略を壊そうとしたため、その点で軍産マスコミ・米諜報界と猛烈な喧嘩を引き起こした。諜報界は民主党をけしかけ、2020年の選挙で郵送投票制度を悪用した開票時の不正をやらせ、トランプを不正に落選させ、バイデン政権を作った。バイデンの後ろにはオバマがいる。バイデン政権の政策立案者の多くはオバマ時代からの再登板だ。トランプを追い出したらオバマが戻ってきてしまい、米イスラエル関係は再び隠然と対立的になった。 (イランを共通の敵としてアラブとイスラエルを和解させる) (軍産複合体と闘うオバマ

バイデン政権は今年初めの就任後、トランプが離脱したイラン核協定JCPOAに復帰するためイランと交渉を再開した。11月には、交渉が妥結して米国がJCPOAに復帰する見通しが立ちそうなところまで進んだ。この後、今回の記事に書いた展開が始まっている。



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