ネオコンは中道派の別働隊だった?2004年6月19日 田中 宇最近気になっていることの一つに「なぜネオコンは政権から外されないのか」というのがある。ネオコンが開戦事由をでっち上げて挙行したイラク戦争は、アメリカの世界的な信用を傷つけた。米軍がイラクに縛りつけられたことにより、アメリカは軍事的な世界覇権をも失い、それに反比例する形でロシア、中国、北朝鮮、イランなど、アメリカが仮想敵とみなしてきた国々が力をつけている。ネオコンが提唱した単独覇権主義の戦略は完全に破綻し、今やこの戦略を続けるほど、アメリカは軍事力と威信を浪費する体制ができている。 アメリカを自滅させるようなことをしたのに、ネオコンはほとんど誰も辞めさせられていない。外されたのはリチャード・パール(国防政策委員)とアハマド・チャラビ(イラク統治評議会委員)ぐらいだが、パールの地位は国防長官の私的顧問で公職ではない。 チャラビはイラクの首相に据えてもらえるはずが一転して米軍に取り締まられる準犯罪者の立場にされたが、この転換はむしろネオコンの方でチャラビをスケープゴートとしてしっぽ切りした結果と思える。ネオコンの中心であるポール・ウォルフォウィッツ国防副長官、ダグラス・ファイス国防次官、ルイス・リビー副大統領首席補佐官、ジョン・ボルトン国務次官らは、誰一人として解任されず、タカ派的な言動をとり続けている。 最近はロサンゼルス・タイムスにも「ネオコンはブッシュ大統領の信任を失っていない。戦略的に慎重な態度をとっているだけだ。ネオコンの時代は終わったとする左派やリベラル派の見方は希望的観測にすぎない」と指摘する記事が出た。 ▼ネオコンはビルダーバーグの常連 私が「ネオコンは米中枢での信任を失っていない」と強く感じたのは、6月初めにイタリア北部で開かれた「ビルダーバーグ会議」に、ダグラス・ファイス、ロバート・ケーガン(カーネギー国際平和財団上級研究員)、マックス・ブート(外交評議会上級研究員)という、ネオコンとして名が知られた人物が3人も出席したと知ったときだった。(関連記事) ビルダーバーグ会議とは、毎年1回、アメリカ、カナダとヨーロッパ諸国で影響力を持つ約120人が集まり、政治経済や環境問題なども含む多様な国際問題について討議する完全非公開の会合である。会議の関係者には箝口令が敷かれているが、その一方で、この会議の参加者の動向や関連の新聞記事などを詳細にウォッチして集積している市民グループのウェブサイトもあり、この会議の輪郭はおぼろげながら分かっている。会議事務局は1991年以降、毎年の出席者だけは発表しており、それも同サイトで見ることができる。 この会議で話し合ったことはG8やNATOなどの首脳会議の決定に大きな影響を与えるという指摘や、アメリカの外交政策を決める奥の院である「外交評議会」とメンバーがかなり重複しているという指摘がある。1991年の会議には、大統領に当選する前のクリントンが出席している。クリントンは大統領任期中の2000年にも、会議開催中にたまたま近くを通りかかったという名目で、飛び入り参加した。1998年にはイギリスのブレア首相が飛び入り参加している。現職の首脳が参加して意義があるような重要な秘密会合なのである。(関連記事) 今年の会議では、ちょうどミラノ西方の湖畔で会議が行われていた6月5日夜、近くをイタリアとフランスを歴訪中のブッシュ大統領が通りかかっており、公式日程にはないものの、ブッシュはビルダーバーグの会議に飛び入り参加したのではないかとみられている。ブッシュが参加したのなら、イラク復興に対して欧州各国の協力をとりつけるためだったと思われる。(関連記事) ビルダーバーグ会議メンバーの中心は、キッシンジャー元国務長官やデビッド・ロックフェラーなど「中道派」(国際協調主義)である。これまでの会議では、石油や金融などの国際的な取引に課税して国連の予算にする体制を作り、国連を強化して「世界政府」にする構想を考えたり、パレスチナ問題のロードマップを発案したりしたと指摘されている。(関連記事) 会議参加者は毎年アメリカから30人、欧州各国から合計から80人、国際機関などから10人といった感じで、出席者配分からみても欧米間の協調体制を中心に世界を運営していこうとする態勢が感じられる。ビルダーバーグは中道派の大本山のようなものであると思われる。 ▼ネオコンも中道派もそろってイラクを泥沼化 しかしその一方で、中道派の国際協調主義を嫌い、キッシンジャーを敵視していたはずのネオコンは、毎年この会議に呼ばれる常連の勢力である。ウォルフォウィッツは1994、1996、1997、1998、2000、2003年に呼ばれているし、リチャード・パールは2001、2002、2003年に呼ばれている。2003年にはウォルフォウィッツ、パール、ジョン・ボルトンの3人のネオコンが呼ばれた。 ビルダーバーグ会議は、その時々に国際政治に影響を与えている人を呼んでいるが、そうれだけの人はだいたい1回呼ばれて終わりである。ウォルフォウィッツのように毎年呼ばれるケースは、もっとインサイダー的な、コアメンバーとして会議に参加してきたと考える方が自然だ。 ネオコンの単独覇権主義が失敗したのだから、もはやネオコンは「用済み」にされてもいいはずなのに、事態は逆だ。昨年に引き続き今年の会議でも3人のネオコンが呼ばれたということは、むしろネオコンがアメリカをイラク戦争に引きずり込んで失敗させたことは、ビルダーバーグ会議で事前に予測された展開だったのではないかと思える。 (私のような在野のウォッチャーでさえ、イラク戦争は泥沼化すると開戦前から指摘できたのだから、ネオコンにやらせたらイラクは泥沼化するとビルダーバーグの人々は予測していたはずだ)(関連記事) ネオコンはビルダーバーグ会議の意を受けてアメリカの政権中枢に送り込まれ、計画通りにアメリカをイラク戦争の泥沼に引きずり込んだ可能性がある。ネオコンと中道派は対立しているように振る舞ってきたが、実は両者は役割分担していただけではないか、ということだ。そう考えると、イラクが泥沼化してもネオコンがほとんど誰も政権の座から外されていないことも納得できる。 キッシンジャーの弟子で中道派と思われるポール・ブレマーが昨年、米イラク占領軍政府長官に就任早々に旧イラク軍を解散させ、反米ゲリラ勢力を拡大してしまったように、ネオコンだけでなく中道派もイラク情勢を故意に悪化させた経緯があるが、なぜ両者がそろって故意の失策を重ねたのかも、同じ穴のむじなだったのだと考えれば納得がいく。 ▼世界を多極的なシステムに転換する ネオコンや中道派、ビルダーバーグなどがそろって同じ策略を行ってきたのだとすれば、彼らの目指すものは何なのか。私が見るところでは、それは「世界を多極的なシステムに転換する」ことだったのではないかと思われる。 多極型(multi-polarity)の世界システムは、アメリカだけが超大国である一極型のシステムと対立する概念で、アメリカ以外にEU、中国、ロシア、インドなどの大国が並び立ち、それらの間の外交関係や対立によって世界の状態が決まる、というものだ。 冷戦終結から911事件までの世界はアメリカ中心の一極型の国際協調体制だった。911後にはアメリカ一極型の単独覇権主義が強くなり、アメリカがイラクの泥沼に陥った後の世界は、多極型の国際協調体制に向かう傾向が強くなっている。 911以前の一極型国際協調主義は、アメリカは本質的には単独覇権を維持するが、それを声高に言うと世界が協力してくれないので、国際協調を重視するポーズをとることで、国際社会の協力を得ながら、アメリカの国力を無駄にせずに単独覇権主義をやる体制だった。国連やNATO、G7、WTO、IMFといった国際組織は、いずれもアメリカの支配下にあった。EUもロシアも中国も、自国の利権を守るためにときどきアメリカに文句を言うものの、根本的にアメリカに対抗しようとは思わず、アメリカ中心の世界システムにある程度満足していた。 ところが911以降、ネオコンの主導でアメリカは「わが国は超大国なのだから協調関係など無視し、単独で世界を切り盛りした方が良い」という単独覇権主義を強め、この考え方に基づいてイラク侵攻が挙行された。その後イラクが泥沼化し、アメリカにとって国際社会の協力が必要な事態になったが、国際協調を切り捨てて単独覇権主義を宣言した上で陥った泥沼だったので、世界の協力が得にくくなった。 ネオコンがわざわざ単独覇権主義を宣言しなくても、アメリカは以前から事実上単独覇権体制だったのに、ネオコンが不必要に宣言してしまったため、世界の国々はかえってアメリカに協力しにくくなった。 世界の国々の中には、日本など、アメリカ中心の国際協調主義が良いと思っている国がまだ多いが、アブグレイブ刑務所の虐待事件や、アルカイダのテロをめぐる間違った発表など、アメリカに対する信頼性を自滅させる事件が相次ぎ、政府は親米をやりたくても国民は反米感情を強めている国が増えている。 かつてアメリカの傀儡色が強かった国連のアナン事務総長などは、最近ではイラク統治のやり方などに関し、公然とアメリカを非難するようになっている。国連には加盟国からもらう金以外の独自財源がないので独自のパワーがなく、国際政治のバランスを見ながら動くしかない存在だが、その国連のトップが反米的な発言をしているということは、国際的なパワーバランスの中で、アメリカはかなり弱くなっているということである。(関連記事) ▼2004年春は世界史の転換点となる? 今年に入って米政界では、世界戦略を国際協調主義に戻し、世界の中のアメリカの位置づけを立て直そうとする動きが起きている。たとえば「ネオリベラル」と呼ばれている民主党の大統領候補ジョン・ケリーの陣営に結集している人々(クリントン政権の外交政策を作った人々)がそうである。 だが、イラクでこれだけ失敗してしまった以上、国際協調主義であれ、単独覇権主義であれ、もはやアメリカは世界を自国を中心とした一極型に戻すことは難しいのではないか、という見方が最近出てきている。たとえば5月31日の英フィナンシャルタイムス(FT)に「(アメリカの)超大国としての地位はどのように失われたか」(How a Superpower Lost its Stature)という記事が出た。(同じ記事はこちらにもある) この記事は「米軍が勢力の大部分をイラクにつぎ込まざるを得なくなっている状況に加え、アブグレイブ刑務所の虐待事件によるイメージダウンもあり、アメリカはもはや軍事的にも政治的にも威信が失われている」「ネオリベラルの人々は、大統領選挙でケリーが勝ちさえすれば、世界の人々に許してもらって覇権を回復できると思っているが、そうだとしても回復には10年以上かかる」「(後世の歴史家から見ると)イラクでの大失敗が明らかになった2004年春という時期は、世界史の転換点になっているかもしれない」「今後のアメリカは、今までよりもずっと地味な役割しか世界で果たせなくなるだろう」などと主張している。 ケリー候補は「イラク復興を成功させるまでは米軍を撤退させない」と言っており、ケリーもネオコンと同様に「隠れ多極化主義者」「隠れ自滅派」である疑いがある。またケリーはサウジアラビア王室に対し、911事件に関与したとして強い非難の言葉を発している。アメリカが以前の協調体制に戻るつもりなら、アメリカのエネルギー源として重要なサウジと親密な関係を回復する必要があるが、ケリーはブッシュ同様、それとは逆方向に進んでいる。ケリーの外交政策は、キューバやベネズエラなど中南米に対してもアメリカの自滅を招くもので、ブッシュとほとんど変わらない。(関連記事) (アメリカの911真相究明委員会は「サウジ王室は911に関係ない」と発表したが、ケリーはブッシュ同様、この事実を無視している)(関連記事) 以前の記事「だまされた単独覇権主義」で紹介したように、アメリカを911以前と同じ一極型の国際協調主義に戻そうとする勢力の中には「アメリカは覇権力を自滅させる前に、今すぐイラクから米軍を撤退させるべきだ」と主張する人も多いが、ネオコンが政権中枢にいる限り、その主張が通ることはない。 ▼タカ派のふりをしてタカ派を潰す ネオコンが中道派の別働隊だったとして、なぜ中道派は多極型世界を実現する必要があったのか。そして、そのための方法としてなぜネオコンを使う必要があったのか。そのあたりのことは、冷戦以後のアメリカの外交戦略をめぐる議論の流れを見ると、見えてくるものがある。 多極型の世界は、第二次大戦後に作られた国連に安保理常任理事国の5大国制度が設けられて以来の中道派の目標だったが、冷戦開始によって実現が先延ばしされた。冷戦終結後、中道派は、国連の強化や、中国やロシアの改革開放支援などを通じて多極型世界を実現しようとした。 ロックフェラーなどの中道派の資本家が世界多極化に積極的だったのは、ロシアや中国、インドなど大国だが経済発展していない国々を高利回りの新規投資先として生かせるという面があったと思われる(ニューヨークの国連本部の敷地はロックフェラーの寄贈)。 ところが冷戦後のアメリカでは、多極化による自国の覇権縮小を嫌がるタカ派勢力が強くなった。彼らは、たとえば1989年の天安門事件の後、人権問題を理由に中国を攻撃する世論を巻き起こし、アメリカは人権が無視されている国に経済制裁などで圧力をかける人権外交を重視するようになった。アメリカではロシアに対する不信感も解けず、中道派の多極化戦略は行き詰まった。 この後、1990年代の中ごろからアメリカの思想界で強くなったのがネオコンで、彼らはタカ派の一派として拡大し、アメリカの各大手新聞には大体ネオコン系のコラムニストがいるような状態まで強くなった。彼らは「アメリカは、世界を民主化する義務がある」と主張し、ブッシュ政権の中枢に入り込んでタカ派の中心的存在となったが、彼らの人権重視が口だけだったことは、米軍がイラク人の人権を全く無視する作戦をとり続けていることを見れば明らかだ(これは一部兵士の資質の問題ではなく、作戦として行われた)。 ネオコンは、人権重視の単独覇権主義というタカ派の方針を踏襲したふりをしつつ、実際は人権を無視し、国際協調を壊して身勝手な外交を展開することによって、タカ派のふりをしてタカ派の作戦を潰したのだと思われる。イラク占領の泥沼化を機にアメリカは威信を失い、中道派が目指してきた多極型の世界が生まれつつある。 ▼政権転覆は大間違いの戦略 読者の中には「タカ派の人権外交は、世界の抑圧された人々を解放しようとする良いものだったはずだ」「金正日政権が転覆されない限り北朝鮮の人々の苦しみはなくならないが、中道派の方針だと金正日が許されてしまう」などと考える人もいるかもしれない。だが私には、これらの考えは間違いだと思われる。 世界の多くの国々の政府が人権抑圧を行う理由は、国内の政情を安定させるためである。政情を安定させるのは経済発展に不可欠だからで、安定が続いてうまく経済が発展し、最も貧しい階層の人々でさえ生活が少しずつでも豊かになれば、人々の不満は減り、あまり抑圧をしなくても政情が安定するようになる。 この方向に進んでいる例として中国がある。15年前の天安門事件のころに比べ、政治の民主化は進んでいないが、経済発展が実現したため、今では政府に不満を持つ国民はかなり減っている。中国が15年前に共産党独裁を止めていたら、おそらく中国はその後長く政治混乱が続き、経済発展の機会が失われていただろう。(関連記事) 冷戦後、先に政治の解体が進んだロシアでは、最近に至るまでの10年間、政治も経済も不安定さが続いた。最近プーチンが独裁体制を確立し、ようやくロシアは経済発展の可能性が見えている。失われた10年に懲りたロシア人の大半は、プーチンの独裁的なやり方を支持し、欧米に支持された民主化勢力やマスコミを嫌っている。ロシア人は、社会の安定にはある程度の独裁(強い政府)が必要だと感じているのだろう。(関連記事) 北朝鮮の場合も、中国型の「民主化より経済発展を先にやる」という方式が、国民を不幸にしない最善のやり方だと思われる。韓国と中国は、北朝鮮に対してこぶしを振り上げた状態で姿勢をこわばらせているアメリカを尻目に、その方向性で北朝鮮の問題を解決しようとしている。政権転覆を先にやると、その後長く混乱が続き、かえって危険になる。その例はイラクで見ているとおりである。同じ過ちを繰り返してはならない。 北朝鮮が安定した国になったら、核兵器を持っていたとしても、中国やロシアなどと同様、大した脅威ではなくなる。核兵器などない方が良い、北朝鮮はけしからん、とする意見は、それ自体は正しい。だが前回の記事で分析したように、北朝鮮が核兵器開発を再開したのは、自国を攻撃しそうなアメリカとの交渉の道具として使うためであり、事態が悪化したのはアメリカが「先制攻撃」の戦略を宣言したからである。 北朝鮮だけでなく、イランも核兵器の開発疑惑を持たれているが、どこの国であれ、核保有国から「先制攻撃する」と宣言されれば、抑止力として核兵器を開発したくなる。すでに日本でも「北朝鮮に対抗してわが国も核兵器を持つべきだ」という議論がちらほら出ている。先に脅威を与えた方が悪いというのなら、最も悪いのはアメリカである。米政府は、自国や日本などにミサイル防衛構想を配備するため、北朝鮮を挑発して核兵器開発を再開させたのかもしれない。 あらゆる国民には、ナショナリズムの誇りがある。旧政府がいかに腐敗したものだったとしても、外国の都合で政府を壊された国民は大きく傷つく。イラクや東ドイツがその例である。フセイン後のイラクで、米軍を嫌った人々が掲げた国旗は、アメリカが制定した旗ではなく、フセイン時代から使われていた廃止された国旗だった。(日本の敗戦は、天皇制や官僚制を残し、日本人に政権転覆の挫折感を味あわせずに親米にする仕掛けがしてあった) 外からの政権転覆は、たとえ成功したとしても、長期的にはプラスよりマイナスの方が大きい。他国の政権を転覆するのがその国の人々の幸せにつながると考えるのは、大きな間違いである。 ▼予想される中国とロシアの軍拡 話を元に戻す。中道派とネオコンの共同作業によってアメリカの覇権力が低下しても、世界が明らかに多極化したと思える状態になるには、まだかなりの時間がかかる。たとえば最近の記事ではEUの覇権拡大のスピードが落ちたと書いた。 「Power and Interest News Report」というサイトに出た記事「多極化に向かって漂流する世界」(Drifting toward multi-polarity)は、私がもやもやと考えていたのと同じことが文章化されていて興味深かったが、その記事は「アメリカが超大国として再び世界から認められる可能性は低い。世界は多極型に向かってゆっくりと動いていく可能性の方が高い」と予測し「多極型の世界とは、軍事的、経済的に強い国が世界にいくつもできることであり、多極型世界を望む中国やロシアは、経済発展を実現し、稼いだ金で軍事力を強化すると宣言している」と書いている。 中国は経済発展の道筋が見えてきたが、ロシアはまだである。中国には台湾との関係をどうするかという問題が残っている。台湾が中国に併合され、北朝鮮が核兵器を持つようになったら、日本と韓国も核兵器を開発するだろう、と前出の記事は書いている。これらの問題がどうなっていくか、分析が必要になっている。 世界が多極型に移行することを見越して、G8や国連などの国際組織の体制を見直すべきだという主張も出てきている。たとえばFTには「G8に中国、インドを加えてG10にすべきだ」「もしくはアメリカ、EU3カ国(持ち回り)、中国、ロシア、インド、日本、ブラジル、南アフリカでG10というのはどうか」「そこにインドネシア、メキシコ、韓国、サウジアラビアなどを加えてG15という枠組みを作るのも良い」といった記事が出ている。従来のG7では発展途上国の意見が全く反映されないので改革が必要だ、という意見である。 国連にもっと権力を与えるべきだという論評もあちこちから出ており、まだ萌芽段階とはいえ、多極型の世界に向かう動きはいろいろと始まっている。
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