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中露が金地金で米覇権を倒す
2024年10月24日
田中 宇
イスラエルのエルサレムポストが、金相場や米覇権、BRICSの関係について興味深い記事を出してきた。
中露がBRICSを率いて金地金の現物を買い漁る勢いを増大し、米欧の銀行群が続けてきた信用取引の売りによる金相場の上昇抑止策を上回る上昇力を金相場に持たせ、信用売りを破綻させて米欧の金融危機を誘発し、ドル基軸や債券金融システムを壊して米覇権を潰し、覇権を多極化して世界経済の中心を非米側に移す策略を始めた、という指摘だ。
(As BRICS Accumulate Gold, Western Banks Continue to Short Sell)
この記事は、私にとって画期的だ。私はリーマン倒産直後から、米英銀行が信用売りを悪用してドルの究極のライバルである金地金の価格上昇を抑止し、ドル基軸と米覇権を延命させていると指摘してきた。オルトメディアでは、この手の指摘がときどき見られ、私の見立ても、オルトメディア群の指摘が正しいと感じたところから発祥している。
(操作される金相場)
この見方は、マスコミや金融専門家の分野では全否定・無視されてきた。だが今回めずらしく、イスラエルを代表するエルサレムポストがこの見方を肯定した。しかも、中露がBRICSを率いて米英による金上昇抑止策を潰し、覇権の多極化や非米化を実現していくシナリオまで示している。
私はこれまで、米英による金相場の上昇抑止と、BRICSの金地金買い漁り、それから非米化や多極化をつなげて考えたことがなかったが、Jポストはそれらを見事につなげてくれた。やっぱりユダヤ人はすごい。
(Once We Get North of $3,000, Gold Prices are 'Going Parabolic': Peter Schiff)
Jポストの記事は10月14日付けで、10月22-24日にロシアのカザン市で開かれたBRICSサミットでこの議題が話されるので、事前の準備会合などで語られた情報を獲得して報道したようだ。
BRICSは、ドル米国債やSWIFT、IMFなど、米国側の金融経済のシステムに頼らない、非米側の自前のシステムをいろいろ構築している。
中露は、BRICSで非米側独自の経済システムを作って運用し、米国側のシステムが壊れてもかまわないようにした上で金相場を上昇させ、米国側の金融経済をバブル崩壊させて米覇権を葬り去り、世界を非米側主導の多極型に転換させていく。田中宇の妄想と言われていた多極化が現実になる。
(BRICS signals shift from US dominated financial system)
Jポストによると、記事発表当時の1オンス2600ドルの金相場でも、信用売りをしている米英銀行群は、すでに含み損を出し続けている。非米側の現物買いが米国側の信用売りを凌駕し、金相場はじわじわと上がっている。
上昇するほど、米英銀行群は損失が膨らみ、いずれ損切りの買い戻しをして撤退していく。そうなると金相場は抑止を解かれ、どんどん上昇していく。その結果、どこまで上がるのか??。Jポストの記事は「想像を絶する高値まで上がりうる」(potentially pushing gold to unimaginable heights)と書いている。
(米英の金相場抑止とロシア)
「想像を絶する高値」とは、いくらのことか。数年前に1オンス1100ドルだった金相場は今、2.5倍の2700ドルだ。今年末に3000ドルになると予測されている。そこから何年かかけて、さらに2.5倍の7500ドル。そのくらいまでは想像の範囲かも。想像を絶する場合、1オンス1万ドル以上とかになりそうだ。
地金信者・金の虫たちは数年前、1オンス5000ドルまで上がると予測し、専門家・権威筋・多数派な株債券の信奉者・紙切れ信者たちに妄信だと馬鹿にされていた。だが、3000ドル間近まで高騰した今、来年末あたり5000ドルは妄信でなく、現実的な予測だ。
(Peter Schiff Exclusive: Gold To $26,000?)
(ずっと世界恐慌、いずれドル安、インフレ、金高騰、金融破綻)
採掘量が限られている金地金と、人々の軽信度に応じていくらでも発行できる株や債券を比べると、当然ながら、これまでは株債券の方が圧倒的に強かった。いま起きていることは、金地金の逆襲でなく、株債券の神通力・詐欺力・ねずみ講の、限界露呈・崩壊・過剰発行による自滅である。中露はそこに便乗している。
米当局と金融界は、急増する米政府の財政赤字の一部を金融システムに注入し、QE終了後のバブル膨張の維持費にしている。だが、米政府は赤字を増やしすぎ、3.8%だった10年米国債の金利が4.3%まで急上昇している。
このまま上がっていくと、とても危険だ。米政府の利払い総額が急増し、米財政支出の中で、防衛費を超えて最高額の費目になってしまった。長期金利の上昇は、米国やドルに対する信用の低下だ。
(金融バブル延命の仕掛け)
中国は従来、世界最大の米国債保有者だった。ウクライナ開戦後、米国側と非米側が決定的に分裂する中で、ロシアに接近して非米側の雄になった中国は、米国債を売り放つ傾向だ。もしかすると、米国債を売って米国の金利をじわじわと上昇させることも、中共の戦略かもしれない。
米国長期金利が上がる(ドルの信用が下がる)ほど、ドルの仇敵である地金の相場が上がる。
(Goodbye Digital, Hello Physical)
Jポスト記事の視点に立って予測すると、中共は米覇権を崩壊させるために、金相場と米金利をじわじわと押し上げ続ける。これは習近平の策略であり、ドル崩壊までずっと続く。
米国の金利上昇・米国債の安値は、ある程度まで、欧日から米国への資金流入を招いてドル高になるが、やがてドルの信用不安へと反転する。
(Record High Gold Price Signals "Fragmenting Global System"; El-Erian Warns)
米国側の投資家は、金相場が抑止を解かれて上がり続けるのを見て、あわてて金地金の現物をかき集めようとしている。だが、受取証書と紐付けられているはずの現物の地金は、すでに中国印度など非米側に売り払われており、米国側に存在しない。
金の取り付け騒ぎ・地金の売り切れが起きていることがJポストにも書かれている。中国で買われている金価格は、プレミアムがついて欧米より10%ぐらい高い。業者たちが、地金を欧米で買い、中国で売って差益を儲けている。この動きが続くほど、欧米は地金の現物が払底し、高騰してみんなが買いたくなるころには、金の売り切れが常態化してパニックを起こす。
(金地金の売り切れが起きる?)
ウクライナ開戦後、金地金だけでなく資源類・コモディティの全体で、欧米人が買いたがるころにはモノがない・売り切れ状態になる仕掛けが設定されている。欧米人は、温暖化人為説(これ自体が詐欺)に基づいて石油ガスなど「化石燃料」の使用を禁じ、世界的に欧米が持っていた石油ガス利権は安値で手放され、中露BRICSの非米側に安く買い取られている。
(制裁されるほど強くなるロシア非米側の金資源本位制)
欧米人は、風力や太陽光など自然エネルギーが主流になるから石油ガスは要らないと言ってきた。だが最近、風力も太陽光も安定供給ができず、代替エネルギーとして使い物にならないことが露呈している。
そして、いずれ温暖化人為説も、米英の権威ある学者たちがインチキなシミュレーションを作って人類を騙した巨大詐欺であることがバレていく。米英の不正行為である金相場の上昇抑止が今回のJポスト記事で暴露されたように、人為説のウソも露呈する。
(気候危機の捏造)
欧米人は、自然エネルギーに頼れず、人為説自体も詐欺とわかり、再び石油ガスをほしがる。だがそのころには、石油ガス利権のほとんどが非米側に握られている。
欧米が誇っていた債券金融の資金力(リーマン危機後の延命力)も、金高騰と並行して起きる金融崩壊によって失われ、欧米は一文無しになる(米国は、国内に石油ガスがあるので覇権喪失してもトランプ的な孤立主義で生きていくが、欧州は(今すでに)お陀仏だ。
(欧米の自滅と多極化を招く温暖化対策)
ウクライナ開戦後、中露BRICSが結束して非米側が形成され、米国側との分裂が決定的になった。非米側は現物・資源類・実需・保守思想を代表し、米国側は株債券・金融バブル・リベラル(全体主義)を代表している。
そして、当初は圧倒的な強さを持っていた米国側の諸資産が、2年後の最近になって崩壊し始め、ゴミだと思われていた非米側の諸資産が輝き出している。
米国側のマスコミ権威筋は自分たちの自滅や不利を無視し、非米側を誹謗し続けているので、欧米日の人々は転換に気づかない間抜けのままだ。
(リベラル全体主義・リベ全の強まり)
(現物側が金融側を下克上する)
米国の選挙では、トランプが石油ガスや保守的思想やオルトメディア、ハリスが温暖化対策やリベラル全体主義やマスコミを体現している。世界的な趨勢に沿うなら、トランプの側が勝つ。温暖化対策やマスコミは力を失う。
米選挙に関して、私は、2020や22年の米選挙で民主党側が巨大な不正をやってトランプを阻止し、今年も不正があると言っている少数派だ。私なりに言わせてもらえば、金相場の上昇抑止も、多極化も、温暖化人為説の詐欺性も、私の妄想でなく現実だと判明していく流れの中にあるのだから、米国で選挙不正が行われてきたことも妄想でなく現実だ。
(Trump Likely to Win in All Swing States)
(米大統領選、裏の仕掛け)
米vs非米の対照性で言うと、米国側はNATOに象徴されるガチガチの条約機構で、対米従属しか許されない全体主義だが、非米側はゆるやかなつながりだ。
今回、BRICSの中で、中国とロシアはドルや米覇権の引き倒しに積極的だが、印度はBRICSサミットに出てきた外相が、我が国はドルを敵視しませんと宣言した。BRICS内で、印度は親イスラエルだが、他の多くの参加国は親パレスチナだ。中国と印度は国境紛争もある。
これらを見て、米国側のマスコミ権威筋は「ほらみろ、BRICSはバラバラで機能してないぞ。NATOやG7の方がしっかりしている。多極化は妄想だよ」と豪語する。
だが、実際は違う。NATOは、ウクライナ戦争で米国が欧州に対露の負けいくさを強要し、欧州化自滅させられてNATO自体が崩壊寸前だ。強要するから失敗する。
(自滅させられた欧州)
トルコはNATO加盟国なのにBRICSに入る。トルコはNATOにいても対米従属でなく勝手にやっているのでBRICSに入れてもらえる。米国やNATO事務局は、トルコのBRICS加盟を許せないはずだが黙っている。それだけNATOや米覇権が弱体化しているということだ。
(Turkey’s entry to BRICS to benefit entire world)
ガチガチ米英vsゆるゆる非米側の対称性で見ると、米覇権下で採用された金本位制は、ドルと金地金の交換価格が一定で厳密だった。一方、今後の非米側は、ガチガチの金本位制をたぶん採用しない。
今後の世界で、金地金は価値の王様になる。だが、金相場は今後も変動制だろう。中露が金地金を使って米覇権を壊そうとしていること自体、中露自身は隠している。孫子的な習近平が主導し、言いたがり屋のプーチンに箝口令を敷いている。
(多極世界でロシアから中国を見る)
最近の記事に書いたように、中共は昨年、英LBMAの金価格の談合抑止体制から離脱した。習近平は、その時から金相場を使った米国潰しを目指していたと考えられる。だが、公式論の世界では、中国の銀行群がLBMAを離脱した理由自体が謎のままだ。習近平の秘密主義は徹底しており、党内の専門家たちも習近平の意図をほとんど知らされていない。
(金地金高騰の背景)
今回の記事を出したJポスト、つまりイスラエルは、中露が金相場(やその他の手段)を使って米覇権を引き倒しに掛かっていることを熟知している。イスラエルはBRICS加盟国でない。最近の虐殺行為をBRICSサミットで非難される「敵方」だ。
だが、BRICSの今年の議長国であるロシアの上層部にはユダヤ人が多いし、プーチン自身、目立たないようにしつつ一貫して親イスラエルだ。習近平も、表ではパレスチナ支持だが本質は親イスラエルだ。BRICSは今後もイスラエルとこっそり連携し続ける。
(Why Do False Perceptions About Russian Policy Towards Israel Continue To Proliferate?)
イスラエルが米欧に軍事支援を強要しつつガザやレバノンで続けている人道犯罪・虐殺の戦争は、米英覇権の基盤にあった人道重視外交のふりをした敵国制裁・世界支配を無効にしている。
イスラエルは虐殺戦争を隠さず大仰に展開することで、米覇権を引き倒して中露BRICS主導の世界に転換する流れに貢献している。世界的な先行き不透明感を醸成し、金相場上昇の要因を作っている。
イスラエル自身はこの戦争によって、パレスチナを消滅させて国土を拡張し、脅威だったイラン系の勢力をレバノンやシリアから駆逐している。プーチンも習近平も、本質的にイスラエルの戦争を容認している。ロシアはイスラエルに重要物資を輸出し続けている。
(戦争の今後)
妄想と言われていたが正確な予測だったぞ、とか豪語しておいていまさらだが、私の妄想に依拠して投資しないでくださいね。いつものように話半分で。(笑)
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