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欧米の自滅と多極化を招く温暖化対策

2021年10月31日  田中 宇 

10月31日から英国で地球温暖化(気候変動)対策のための国連の国際会議COP26が開かれる。先進諸国の政府やマスコミ権威筋やエスタブ群、左翼リベラルの活動家や政治屋たちは「この会議がうまくいかなければ地球の温暖化が加速してひどい旱魃や飢饉や水没や戦争やテロが起こり、人類が破滅する」みたいに言って騒いでいる。温暖化人為説の騒動は30年前から続いているが、その間、地球が温暖化しているのかどうか、気候変動の主たる理由が化石燃料使用による二酸化炭素排出など人為なのかどうか、といった根本的な疑問に対して権威筋からは説得力のある説明が行われていない。 (U.N. Warns of Global ‘Famine, Chaos, Terrorism and… War’ if COP26 Climate Summit Fails) (What To Expect From The COP26 Climate Summit

地球が人為のせいで温暖化している、という「温暖化人為説」は、政府マスコミ権威筋リベラル左翼の人々にとって「疑い余地のない絶対の真実」とみなされ、いまさら人為説に疑問を持つ人は「頭のおかしい妄想家、危険人物」として扱われている。人為説に疑問を呈する意見は「妄想」とされてマスコミにも学術誌にも載らず、排除されている。その上で「学術誌の論文の99%が人為説を正しいものと考えているのだから、人為説は科学的な真実だ」という公式論が席巻している(99%の状況は科学でなく、異論を排除した非科学的・歪曲的で不正な政治の結果にすぎないのだが)。そして、人為説に立脚した「化石燃料(石油ガス石炭)の使用を世界的に厳しく急減して温暖化を止める」政策の推進を目標に、これまでCOPなど国際会議が何度も開かれてきた。先進諸国が目標の達成に消極的だと言って、グレタ・トゥンベリに象徴される活動家(=諜報界のうっかり傀儡)たちが怒りを演出してきた。 (Climate change really is our fault: More than 99.9% of studies agree that global warming is mainly caused by humans) (U.N. panel says it can't rule on climate case brought by Thunberg

私自身は1997年ごろから温暖化問題の騒動・政治運動に胡散臭さを感じており「人為説について調べるほど根拠が薄いと判明していく」「今の地球が温暖化傾向にあるとも言い難い」と考えてきた。京都議定書の騒動があった1990年代、すでに「化石燃料の使用を世界的に厳しく急減しないと、20年以内に地球環境が破壊され人類が滅亡する」といった「予測」が公式論として仰々しく展開されていた。あれからすでに20年以上経ち、温暖化対策はあまり進んでいないが、地球環境は20年前と大して変わらない豊潤な美しさを保ち、人類もまあまあ元気に生きている(コロナという別のインチキによるマスク常用、外食禁止、危険なワクチン強要で疲弊しているが)。 (地球温暖化京都会議への消えない疑問) (地球温暖化問題の歪曲

20年前に地球と人類の破滅を予言していた権威筋や活動家たちは、20年経って予言が外れているのにそれを無視して、今も「化石燃料をやめないと20年後に滅亡だ」と騒ぎ続けている。人類はこの20年間に少しは(もしくは、ある程度の)温暖化対策をやってきたが、それが実際の気候変動をどのくらい止めたのかについても確定的な説明が行われていない(止めてないから説明できない。人為は温暖化にほとんど関係ない)。いつも過去を棚上げして「さもないと20年後に世界が滅びるぞ」という脅しばかりだ。これは詐欺である。そして、ほとんど誰も「これは詐欺じゃないのか」と指摘しない(指摘しているのは米国の右派ぐらい)。地球温暖化問題は、人類規模の詐欺だ。いろいろ読んだ上で私個人の理性で考えると、地球の気候変動の最大の原因は太陽の変化であり、続いて噴火など地球の変化だ。化石燃料の使用などの人為は、気候変動の原因全体の1%以下だろう。人類が使う火が気候を変えているという大それた発想は、天を恐れぬ破廉恥である(うっかり傀儡の左翼リベラルは無神論=詐欺を科学と間違えて軽信する信仰)。 (Why The Swiss Electorate Put The Brakes On Climate Policy) (Why "Science Denial"?

地球温暖化問題を国際政治の表舞台に出したのは、1990年代の米英の左翼リベラル政権(米クリントンと英ブレア)だった。当初は「これから経済発展する中国インドなど新興諸国の儲けを、米英側(先進諸国)がピンはねするための詐欺構造」として考えられたようだ。当時は冷戦構造が解体した直後で、中国を筆頭にBRICSが経済発展・台頭して世界が多極型になっていく流れが始まっていた。旧覇権国の米英(欧米)が、新覇権諸国の中国などからピンはねして多極化を遅延する策として温暖化問題が考案・捏造された。人為説歪曲の発信元が英国の大学であることから考えて、英国側が考案して米国側に売り込んだのだろう。 (地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(1)) (地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(2)

しかしその後、新興諸国側が「これから発展=排出するわれわれが温暖化対策のカネを出すのでなく、これまでに排出した先進諸国がカネを出せ」と反論して乱闘になった。京都議定書は先進諸国が先に排出削減する話になり、共和党ブッシュ政権になった米国は加盟せず、議定書は失敗した。次に政権を民主党に戻したオバマはCOP15で温暖化問題の主導権を中国に移譲し「中国など新興諸国の好きなようにやって良いから、先進諸国だけがつけ払いする構図にしないでくれ」と頼んだ。中共は、人為説が英諜報界の捏造物だと知っているから「主導するふり」を開始した。これ以来、温暖化問題は「すべての諸国がやるふりだけして実際は何も進まない体制」になっている。 (新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題) (地球温暖化のエセ科学

2020年、コロナ危機の開始とともに、英米諜報界(多極派?)の筋(ダボス会議事務局のWEFなど)から「大リセット」のシナリオが出てきて、その中に温暖化対策として化石燃料の使用を世界的に(主に先進諸国が)急減する話が盛り込まれていた。米国では政権が温暖化対策拒否の共和党トランプから対策推進の民主党バイデンに替わり、今回のCOP26につながる盛り上がり・騒動の再燃が始まった。新たな騒動は、それまでの膠着状態を終わらせ、代わりに「先進諸国、とくに欧米が無意味な温暖化対策を過激に続けて自滅していく」新態勢を作っている。 (地球温暖化問題の裏の裏の裏

今回の新たな騒動における温暖化対策のシナリオは、自滅的・超愚策なコロナ対策を温暖化対策として継続・拡大するものだ。コロナ対策としての強制的な都市閉鎖や国際旅客機の停止によって化石燃料の使用が世界的に減ったが、これは温室効果ガスの人為の排出が減って温暖化対策になっている。この構図を活用し、コロナ危機がいずれ終わった後も同様の経済活動の強制的な縮小を温暖化対策として世界的に続ける筋書きがCOPで議論されている。 (まだ続く地球温暖化の歪曲

この欧米自滅案を考えたのは英国とカナダの中央銀行総裁を歴任したマーク・カーニーらで、カーニーはCOP26の議長をつとめる英国政府の顧問にもなっている。カーニーは2019年に英中銀総裁として「世界の基軸通貨を米ドル単独型から有力諸通貨の多極型に転換すべきだ」と提案した多極主義者である。これまで何度か書いているように、コロナ対策は、欧米先進諸国だけに本気でやらせ、欧米の経済を自滅させる半面、中国など新興諸国や中国傘下に入った日韓など東アジア諸国では「やったふり」の対策だけになる傾向で、コロナ危機は米国覇権の自滅と中国などの台頭、覇権多極化を推進するものになっている。コロナ発生後の新たな温暖化対策も、この延長で、欧米諸国だけが対策を本気でやらされて経済を自滅する半面、中国など非米側は対策をやるふりだけして経済を自滅させず、多極化を進めるものになっている。 (コロナの次は温暖化ディストピア

COPなどの温暖化対策の議論では、2酸化炭素を出す石油ガス石炭といった化石燃料を敵視し、代わりに太陽光や風力など自然エネルギーによる発電を増やし、世界の発電量の半分以上にすることが目標だ。しかし自然エネルギー発電は、これまで20年以上の努力で先進諸国の発電総量の2割程度までしか増えておらず、今後も急増が望めない。目標との乖離を放置するのでなく、コロナ対策の超愚策と同じように強制的な経済活動の削減によって社会的に使用電力を減らし、化石燃料の使用を減らすしかないと、温暖化対策の推進派たちは言っている。欧米諸国はすでに油田やガス田の開発に消極的になっている。 (The true feasibility of moving away from fossil fuels

この話の隠れた要点は「欧米諸国は石油ガスを捨て、世界中で持っていた油田ガス田の利権を手放し、エネルギー消費を強制的に減らして2酸化炭素の排出を減らそうとするが、中国ロシアなど非米反米多極型の諸国は排出削減をやったふりしかせず、欧米が捨てた油田ガス田の利権を拾い集めつつ、引き続き石油ガス石炭をガンガン燃やし、自己抑制せず経済発展し続ける」ということと「欧米が無理して2酸化炭素排出を減らしても、そもそもそれは温暖化の原因でないし、実際の気候変動自体が人類にとって脅威になるひどさでないので、排出削減は無意味で間抜けな努力であり、欧米が経済を自滅させ中露など非米側の台頭を招くだけ」ということだ。 ('World's Worst Offenders' Putin & Xi Skip Climate Summit Dubbed "Humanity's Last Chance"

COPの温暖化対策が順調に具現化していくと、欧米の市民は強制的に生活水準を引き下げられる。これは「人権侵害」でなく、コロナのワクチン強制と同様、人類にとって必要な対策なのだ、とマスコミで喧伝される。欧米では、この体制に逆らう者たち、人為説やコロナ危機はインチキだと叫ぶ者たちは犯罪者のレッテルを貼られ、失職させられ、幽閉される。自滅していく欧米と対照的に、中露は温暖化対策を「やるふり」すらしだいにやめていく傾向で、中国の習近平やロシアのプーチンはCOP26の会合を欠席する。 (Biden's Climate Financing Plan Won't Help Climate, But Will Push Country To Totalitarianism: Experts

いずれ温暖化人為説が事実でない(英米諜報界による詐欺だった)ことがバレていくと、欧米も再び石油ガスをどんどん燃やしてかまわないんだと気づくが、その時には、世界の石油ガスの利権を握る勢力が、これまでの欧米から、中露など非米側に替わってしまっている。かつて「世界の石油ガス利権を握る者が覇権を牛耳る」と言われていた。温暖化騒動とともにこの定理が忘れられているが、いずれ温暖化が詐欺話であるとわかり、石油ガス利権を握るものが覇権を握ると欧米人が再び気づいた時には、石油ガス利権を握る者=覇権勢力は、すでに欧米から中露など非米側に移転している。 (歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説

世界最大の産油国であるサウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国(GCC)は、これまで対米従属の姿勢をとり、米国が中東の石油ガス利権=覇権を握ることに貢献してきた。しかし今、米国が温暖化対策で石油ガスを敵視しつつ、アフガニスタンやイラクなど中東の覇権を安保軍事的にも手放している。サウジGCCイラクなど、対米従属していた中東の産油国は、米国から疎遠にされている。同時に、中露イランが中東での影響力を拡大し、サウジGCCイラクなどは米国側から中露側に転じる流れをたどっている。かつて米国の言いなりだった産油諸国の組織OPECは、今や非米化したサウジと反米的なロシアが主導するOPCE+に変身している。 ("The Revenge Of The Fossil Fuels"

かつて時々ひかるメディアだった(今はくだらない)FTは、世界の石油利権が米国側から非米側に移っていくと予測する鋭い記事を2007年に出した。私は感動してそれを紹介する記事を書いた。なつかしい(笑)。 (反米諸国に移る石油利権

9月以来、中国や欧州でエネルギー危機が起きている。中国では、突然に火力発電用の石炭が足りなくなって電力危機が起き、中国勢が世界の石炭を買いあさったので欧州などで石炭が足りなくなり、欧州も電力危機になった。欧州ではドイツが、ロシアから天然ガスを輸入する新パイプラインのノルドストリーム2を完成させたのに(米国からの圧力を受けて)認可に手間取っていると、なぜかロシアから欧州への天然ガスの輸送量が急減し、欧州のエネルギー危機に発展した(ロシア側は、欧州への天然ガスの輸送量を減らしてないと言っているが、欧米側は懐疑的)。石油ガスの国際価格が高騰し、欧米などのインフレに拍車をかけている。 (コロナ、QE、流通崩壊、エネルギー高騰、食糧難・・・多重危機の意味) (European Gas Prices Hit Escape Velocity After Russian Gas Supplies Plunge By 57% Overnight

これはうがった見方をすると、中露が、COP26の温暖化対策によって欧米が自発的に引き起こすエネルギー不足を先取り・前夜祭的に誘発したものだ。中露は、COP26開催前に世界的なエネルギー危機を誘発することによって、COP26の目標が推進されて欧米のエネルギー体制が脆弱になると欧州はもっとひどいことになるよと警告した感じだ。中国から石炭不足を感染させられ、ロシアからの天然ガス送付も減った欧州では「敵・害悪」のはずの石炭を各国が探して右往左往する光景が展開され、まだまだ石炭への依存が強いこと、石炭依存から脱却できない現実が露呈した。 (COP26 & The Great Reset: The Not-So-Glorious Prospect Of Owning Nothing & Passing A Cold, Dark Winter

今秋は中国自身も石炭不足や電力危機になったが、中国は国際的に石油ガスの利権をたくさん持っており、国内で石炭の増産も手がけてきた(中国は表向きの排出規制の姿勢と裏腹に石炭火力発電所を積極的に増やし続けており、石炭の確保は十分なはずだ)。中国の石炭不足や電力危機は、危機を欧米に波及させて欧米を苦しめる策の下ごしらえであり、中国自身は危機になっていない。世界では、コロナに続いて温暖化でも多極化がどんどん進められている。 ("How Dare You?" - These Countries Are The Most Committed To Coal



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