コロナの次は温暖化ディストピア2021年6月30日 田中 宇国連の気候変動問題特使で元英中銀総裁のマーク・カーニーが最近、新著などで「地球は、人類が出す二酸化炭素など温室効果ガス排出が原因で、放置すると2050年までにひどい温暖化になり、新型コロナよりも多くの人々が死ぬ。人為の排出を減らすため、世界的に、飛行機の利用を大幅に制限したり、肉類の消費を減らす(家畜の飼育は排出増になるので)など、人々の生活を強制的に不便に、貧乏にしていく必要がある」といった主張を展開している。温暖化問題はこれまで「排出削減が必要だ」といった大枠の話だけだったが、最近はそれが外出禁止や休業強制マスク義務といったコロナの強制策(いずれも愚策)に触発され、人々の生活を強制的に劣化させて排出削減すべきだという「温暖化ディストピア」を意図的に出現させる展開になっている。 (Mark Carney, man of destiny, arises to revolutionize society. It won't be pleasant) コロナ対策(超愚策)として行われてきた都市閉鎖を、温暖化対策として続けるべきだという主張も出ている。都市閉鎖で経済活動を制限すると、人為の排出も減るので温暖化対策になるという理屈だ。都市閉鎖によって世界の多くの人が仕事を失って貧困になったが、それはコロナの蔓延防止のためにやむを得ないことだとされている(権威筋やエスタブがそう言っている)。今回カーニーは、排出削減のために経済活動を制限し、多くの人が仕事を失って貧困になるが、それは温暖化を防止するためにやむを得ないことだと言っている。コロナで出現したディストピアが、温暖化対策として継承されようとしている。カーニーらが温暖化対策の一つとして出している飛行機、とくに国際線の飛行機の利用制限も、コロナの対策と重複している。 (Climate is the new Covid) (Biden’s Climate Requirements: Cut 90% of Red Meat From Diet; Americans Can Only Eat One Burger Per Month) もし本当に人為の排出が原因で2050年までにひどい温暖化になって地球がものすごく住みにくくなるなら、カーニーらが提案する人類の生活水準の強制的な引き下げも合理的な選択肢の一つになる。だが実のところ、人為の排出を地球温暖化の主因と考える人為説は、きちんとした根拠が示されていない。英米の気候学者がコンピューターのシミュレーションを歪曲して人為説の根拠だと言っているだけの「詐欺」だ。この詐欺の手口は2009年に「クライメートゲート」として暴露されたが、その後もマスコミ権威筋は人為説を合理的な説であるかのように言い続けている。人為の排出が温暖化の原因であると考えられる合理的な根拠は何もない。2050年までに地球が急速に温暖化しそうだと考えられる根拠もない。太陽活動の変化などの影響で、多少の気候変動が続くだけだ。報じられているような地球温暖化問題の危機は捏造されたウソである。 (地球温暖化めぐる歪曲と暗闘) (歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説) なぜウソをついて人々を貧困や困窮に追い込むディストピアを出現させるのか。カーニーは、英国とカナダの中銀総裁を歴任した、米英覇権の中枢にいるエスタブだ。米英覇権勢力が、温暖化のウソをついて自分たちの国々の経済を自滅させている。なぜなのか。地球温暖化問題は2009年ごろまで、覇権国である米英など先進諸国が、中国など新興諸国の経済的な台頭を防ぐため、排出量が多い新興諸国に排出権を買わせてカネを出させる覇権維持のためのピンはね作戦だった。この作戦なら、英米の覇権維持策として合理的だった。だが2009年のCOP15以来、温暖化問題の主導役は中国など非米的な新興諸国の側になり、中国が先進諸国に石火燃料の使用制限などをさせる「逆ピンはね」の策になっている。中国自身も排出削減を約束しているものの、具体策を出さず、石炭や石油を使い続けている。中国は口だけだが、強国になりつつあるので誰も中国に排出削減を強制できない。先進諸国だけ排出削減を強要され、一方的に無駄な自滅をやらされている。 (新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題) (Eating less meat won’t save the planet. Here’s why.) (China Has A Grand Carbon Neutrality Target... But Where Is The Plan?) 米国の左翼が推進する自滅戦略である覚醒運動は、米国の大企業を巻き込んでいる。マスコミも米民主党も、覚醒運動や民主党に賛成する企業は「良い会社」であり、賛成しない企業、共和党支持の企業は「悪い会社」であるとする風潮を喧伝している。カーニーは、温暖化問題で同様のことを世界的に展開している。排出削減に積極的な企業が優良で、消極的な企業は悪だという風潮だ。この風潮は、かなり前から存在している。カーニーは、温暖化対策に消極的な「悪い会社」の商品を標的に不買運動を起こすべきだと言っている。 (覚醒運動を過激化し米国を壊す諜報界) (Mark Carney – ‘Divest’ from companies without credible net zero plans) 温暖化人為説は無根拠なので、この善悪観はまったくトンデモな大間違いなのだが、すでに温暖化人為説の根拠性に疑問を持つことすら「悪」のレッテルを張られるため、イメージの良さをとても重視するほとんどの企業は、人為説の真贋性などすっ飛ばし、排出削減をやりますと大声で宣言する以外の姿勢をとれない。多くの大企業が、温暖化対策を進める勢力にカネを出し、巨額の資金をかけて温暖化人為説のプロパガンダが喧伝され、ほとんどの人々に大ウソを信じ込ませている。 (Wall Street’s Favorite Climate Solution Is Mired in Disagreements) (Our sun is going into hibernation and that means more temperature drops) カーニーは、マルクスなど左翼の思想を参考にして温暖化ディストピア運動を展開している。温暖化問題も覚醒運動も、米欧の左翼の運動として行われている。1970年代までの左翼運動と大きく違う点は2つある。一つは、かつての運動が大企業を敵視し資産没収の対象とみなしていたのに対し、今の運動は大企業を仲間として巻き込んでいることだ。米国の大企業の多くが覚醒運動と温暖化対策をものすごく積極的に推進し、民主党を支援している。カーニーは、温暖化問題は大企業が大儲けする好機だと言って企業を誘っている。新旧のもう一つの相違点は、かつての運動が民衆を豊かにする名目で行われていたのに対し、今のカーニーの温暖化ディストピア運動は民衆を貧しくするとはっきり宣言していることだ。温暖化ディストピア運動は、大企業を大儲けさせ、庶民を貧しくする。昔も今も「革命」は実のところ詐欺である。 (Mark Carney: Climate crisis is great commercial opportunity) (Peter Foster: A challenge to Mark Carney — let's talk it out) 温暖化問題と同様、新型コロナも、ウソや歪曲によって被害が誇張され、先進諸国が経済を自滅させられる流れだ。コロナ危機は、PCR検査を過度に増幅させて偽陽性だらけにして、別な病気の人々をコロナと誤診させることで危機を誇張してきた。中国はWHOを握り、親中国な非米諸国は都市閉鎖の自滅をあまりやらずにすませている。日本も自民党政権が隠れ親中国なので軽度な非常事態ですんでいる。無理して東京五輪をやるのも、冬季五輪をやりたい中国のためだ。コロナと温暖化問題は、ダボス会議が発案した自滅型ディストピア政策の集合体である「大リセット」の2本柱だ。リベラル左派の過激化を扇動して欧米社会の内部分裂を悪化させて社会崩壊へと誘導するの覚醒運動も含め、大リセットのメニューの多くは、米欧先進諸国の経済と社会を自滅させ、中国やその傘下の非米諸国の台頭を誘発する内容だ。温暖化問題、新型コロナ、覚醒運動、大リセットは、いずれも隠れ多極主義の策略だ。 (東京五輪森喜朗舌禍事件の意味) (大リセットで欧米人の怒りを扇動しポピュリズムを勃興、覇権を壊す) 世界の覇権構造を多極化するには、米英覇権を低下させるため、覇権勢力(米英諜報界=深奥国家)が世界に張り巡らしている諜報網を壊す必要がある。諜報網を壊すためには、中国などにインターネットなど通信網への監視を強めさせると同時に、国際的な航空路線を長期に停止させて人的交流を絶ち、世界各地に散らばっているスパイたちを連絡不能な状況に追い込み、資金供給の流れも止めてしまうことが必要だ。コロナの蔓延防止や温暖化防止を口実に、飛行機の国際線を止め続けている理由はそこにある。 (コロナ危機による国際ネットワークの解体) (At global climate summit, China, Russia pledge to cut emissions, but offer no specifics) 温暖化問題に熱心な欧米諸国は、世界中に持っていた石油やガスの利権を軽視し、放棄していく。欧米が放棄した世界中の石油ガス利権を、中国やロシア、サウジアラビアなどの非米諸国が拾い集めていく。世界の石油ガスの利権が、欧米から非米諸国に移っていく。いずれ温暖化人為説がインチキとわかり、石油やガスを燃やしてもかまわない時代が再び来る。欧米人は、石油ガスが一番便利だと改めて気づく。だがそのころには、世界の石油ガス利権が中露など非米諸国のものになっており、欧米は中露から高値で石油ガスを買わねばならなくなる。欧米の覇権低下に拍車がかかる。世界は不可逆的に多極化する。めでたしめでたし。 (Saudi And Russian Oil Producers Benefit From "Climate Activism" Lobbed At Western Producers) (地球温暖化の国際政治学) これらの点を踏まえて、本記事の冒頭で紹介した、温暖化ディストピア策を提唱している国連気候変動特使のマーク・カーニーのことを再度見てみると、彼が隠れ多極主義者であることが感じられる。カーニーは英国の中銀総裁だった2019年夏、中銀群の政策会議である米ジャクソンホール会議で、ドルの基軸通貨制度を続けるのはリスクが大きすぎるので、主要諸国の諸通貨をデジタル化した上で基軸通貨を複数化・多極化し、IMFが新基軸体制を統括することを提案した。これは通貨の分野における米国覇権解体・多極化の提案であり、リーマン危機後に提案された多極化と同じものだった。その後、通貨のデジタル化が最も進んでいるのは中国であり、基軸通貨の多極化は中国の台頭に拍車をかける。カーニーは、温暖化対策だけでなく覚醒運動の推進もやるべきだと言っており、大リセットの欧米自滅の策を進める旗手の一人になっている。 (基軸通貨の多極化を提案した英中銀の意図) (米国覇権が崩れ、多極型の世界体制ができる) カーニーは、隠れ多極主義者らしく、温暖化とコロナの両方が同根な歪曲であると知っている人にだけ皮肉な冗談だとわかる暗号的なメッセージも発している。その一つは「2050年までに、温暖化による致死率がコロナの致死率と同じになる」というカーニーの予測だ。この予測は、コロナの致死率がものすごく高いと思っている多数派の人々には「温暖化は、とてもたくさんの人が死ぬ大惨事になる」というメッセージになる。だが実のところ、統計上のコロナの死者のほとんどは、他の死因の人々をコロナによる死亡と意図的に「誤診」した結果であり、本当のコロナの死者はほとんどいない(だから多くの国は年間の総死者数が増えない)。それをふまえてカーニーの予測を見直すと「温暖化もコロナ同様、たくさんの人が死ぬように見せかけつつ、ほとんど人を死なせない。コロナも温暖化も致死率はとても低い。温暖化の大惨事は歪曲報道でしかなく、実際には起こらない」というメッセージになる。 (Mark Carney: Climate crisis deaths 'will be worse than Covid') (「大リセット=新常態=新しい生活様式」のからくり) 英国の中枢にいるカーニーが、英米覇権を自滅させて多極化を進めたがるはずがない、と思うかもしれない。だが実のところ、大英帝国を破綻させて広大な植民地(今の途上諸国)を帝国の支配から解放して人々を豊かにし、世界経済を高度成長させたいと最初に考え、隠れ多極主義の源流となったのは、第一次大戦前の英国の資本家たちだった。それ以来、英米覇権中枢では、覇権(帝国)を自滅させて多極化したいと目論む世界資本家の「資本の論理」と、帝国や覇権の永続を目論む軍産などの「帝国の論理」がずっと暗闘・相克してきた。カーニーは、資本家のエージェントであり、温暖化問題など大リセットは非米諸国の発展の誘発という「資本の論理」で読み解くべきものだ。先進諸国(米覇権体制)を自滅させないと、非米諸国に対する抑圧・発展阻止策が解消されない。 (資本の論理と帝国の論理) (地球温暖化問題の裏の裏の裏) 先日のG7サミットでも温暖化問題が、コロナ対策と並ぶ主要議題となった。温暖化とコロナは、先進諸国の自滅策として定着していく。コロナ危機は、ワクチン接種の拡大で一段落しているが、デルタ変異種はワクチンに関係なく感染拡大するという話になっており、接種しても変異種があるのでマスク義務は必要だとか、変異種が蔓延するので都市閉鎖の再開が必須だといった、冬に向けたコロナ危機扇動の次のシナリオが始まっている。WHOは、コロナワクチンを子供に接種しない方が良い(効かない)という趣旨のことを言い始めている。コロナよりワクチン接種での死亡率の方が高いこともわかってきた。人々が発熱などのリスクをおかして接種を終えた後になって、人々の堪忍袋や従順さや間抜けさを試すかのように、ワクチンは効かないという「事実」が浮上してくる。これはたぶん意図的な展開だ。 (Norway Says Risk Of Dying From AstraZeneca CoviShield Vaccine Higher Than Of COVID-19) (WHO Official Says Mask Mandates & Social Distancing Should Continue Indefinitely) 先進諸国の中でも、米国と欧州と日本では、温暖化とコロナをめぐる自滅策への対応が異なる。最も馬鹿正直に自滅策をやり続けているのは欧州だ。米国は、バイデン政権など民主党は欧州と同様に自滅策を馬鹿正直にやりたがるが、共和党は温暖化とコロナの両方のインチキさを看破しており、自滅策を避け、自滅をやりたがる民主党や欧州諸国への批判を強めている。米国は2大政党の対立激化で分裂が進んでいる。米国は今後、共和党が強くなって政権を奪回する流れが予測されるが、そうなると米国は、温暖化やコロナの自滅策に参加しなくなり、トランプ前政権の時と同様、欧州とも疎遠になってG7やNATOを再び軽視する。共和党は、同盟諸国が支えてきた米国覇権を放棄していく。日本は、菅政権が「いないふり」の国際戦略をとり続け、温暖化は約束するが守らない姿勢で、コロナに対しては都市閉鎖より軽度な非常事態の手法を続ける。 (コロナ独裁談合を離脱する米国) (軍産や米覇権を壊す共和党)
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