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ニセ現実だらけになった世界

2021年3月5日   田中 宇

最近、世界が「ニセ現実」だらけになっている。コロナ危機を筆頭に、温暖化人為説、QEバブルの金融システム、濡れ衣敵視を延々と続けるNATOや同盟関係といった米国覇権体制、歪曲が多い先進諸国の政府経済統計、信用できる範囲が狭まりつつあるマスコミ報道、不正選挙と認知症隠しの疑いがあるバイデンの政権など、政府やマスコミ・権威筋による情報の誇張や歪曲によって、人類の多くが、実際と異なる現実を信じ込まされている状況が拡大している。マスコミは「ニセ現実」を発信しまくる元凶のくせに、マスコミによるニセ現実の発信を指摘するオルタナティブに対し、逆切れ的に「ニセニュース」のレッテルを貼って誹謗中傷している。マスコミこそニセニュースと化しているのに、多くの人がいまだにマスコミによる歪曲報道を軽信し、ニセ現実をニセモノと気づかずに騙され続けている。 (「事実」の不安定化) (決定不能になっていく米国) (偽ニュース攻撃で自滅する米マスコミ

上に書いたような、私がニセ現実とみなす諸テーマの、何がどう「ニセ」なのかは、すでにこの10年間ほどの私の記事の中で繰り返し書いてきた。今回改めて各テーマについて詳述する前に書いておかねばならないことは、「ニセ現実の流布・定着・長期化は、偶然の産物でなく、意図的に起こされたものだ」という全体的な見立て・分析だ。 (揺らぐ経済指標の信頼性) (インチキが席巻する金融システム

たとえば、コロナ対策として広く行われている都市閉鎖は全く非効率な愚策だが、愚策とわかった上で延々と続けられている。PCR検査は、陽性と判断された人の90%が偽陽性であり、コロナ危機を針小棒大に誇張しているとわかっているのに、コロナ感染を特定する主たる方法として延々と続けられている。PCRで危機を誇張し、その「ニセの危機」への対策と称して、効果が薄い上に経済を破壊する愚鈍な自滅策である都市閉鎖をずっと続けている。コロナはPCRと都市閉鎖を組み合わせた巨大なニセ現実であり、それは先進諸国の経済を自滅させていく。この1年間で、新型コロナの感染状態を特定するもっと良い方法が見つけられたはずだし、一律的な都市閉鎖でなく、もっと効率的な他の対策も行えたはずだが、それらは行われていない。 (永遠のコロナ) (新型コロナでリベラル資本主義の世界体制を壊す

地球温暖化人為説も、米英の権威ある「専門家」たちが、気候変動予測のコンピュータシミュレーションを不正に書き換えて非現実的な予測や分析を不正に出してきたことがずっと前に発覚している。だがこの不正は、報じられた後もそのまま放置され、その一方で「20年以内に温暖化によって地球環境が破壊される」といった過激で極端な予測が無根拠(唯一の根拠が、不正に歪曲されたコンピュータシミュレーション)なまま独り歩きし、世界各国に「温暖化対策をとれ」という強い圧力につながっている。意図的に、温暖化のニセ現実がゴリ押しされている。2酸化炭素などの排出削減が予定通りに進むと、世界経済とくに先進諸国の経済が自滅する。コロナも温暖化人為説も、先進諸国を意図的に潰す流れになっている。 (歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説) (地球温暖化のエセ科学

コロナや温暖化やその他のニセ現実を組み合わせたニセ現実の上位概念的な集大成として、ダボス会議の事務局(世界経済フォーラム・WEF)が提示している「大リセット」もある。ジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984」をパクった感じで、人類を激怒させて世界(先進諸国)をますます混乱・自滅させていく。興味深く(笑)な展開だ。 (大リセットで欧米人の怒りを扇動しポピュリズムを勃興、覇権を壊す) (「大リセット=新常態=新しい生活様式」のからくり

QEバブルの金融システムの構図は、2008年のリーマン危機によって崩壊した米国中心の世界的な債券金融システムを、米日欧の中銀群がQEの資金注入で延命したことから始まった。金融システムは、リーマン危機で崩壊したもののその後自然に蘇生したことになっているが、これはまさにニセ現実だ。本当は自然蘇生などしておらず、QEの資金注入で延命してきた。QEは開始当時から「QEで金融を延命すると金融がQE依存になり、QEをやめたら金融が再崩壊するのでやめられなくなる。最終的に中銀群が大損失を負って通貨ごと破綻しかねない」と警告されていた。中銀内にも反対論が多かったが無視された。金融システムは案の定、不健全なQE依存になったが、当局はそれを隠すため、雇用など政府の経済統計を歪曲したり、マスコミにインチキな解説記事を書かせたりして、QE依存でなく経済状態の好転で金融が蘇生しているかのようなニセ現実を描き、人々に信じこませてきた。このように、QEのニセ現実も意図的に作られたものだ。 (金融バブルを無限に拡大して試す) (出口なきQEで金融破綻に向かう日米

昨春にコロナの都市閉鎖で世界が大恐慌に陥り、株価など金融相場が一時暴落したが、米欧日の当局はQEの資金で株や債券を買い支えて暴落を穴埋めし、コロナ大恐慌が続いているのに相場が史上最高値を更新し続ける頓珍漢な事態を生み出した。最高値はQEが原因なのだがそれは報じられず、ニセ現実の屋上屋が重ねられた。今後は世界的に超インフレになっていきそうだが、それもインフレ関連の経済指標が歪曲されており、超インフレが顕在化する土壇場までデフレ懸念が語られ続ける。いかにもニセ現実な、馬鹿げた展開になる。 (インフレで金利上昇してQEバブル崩壊へ) (米大都市の廃墟化・インフレ激化・銀行やドルの崩壊

米覇権体制に関しては、中国、ロシア、イランなど非米反米諸国を「米国にとって脅威である」とみなしてきたことがニセ現実の始まりだ。これらの諸国は米国より弱く、米国にとって脅威でない(ニセ現実をやりすぎて米国が自滅・弱体化しているので、中国はこれから米国より強い国になっていくが)。イランは核兵器を開発・保有していない(核兵器を開発・保有してきたのは米国にイラン敵視策をやらせてきたイスラエルの方だ)。これも、1979年のイラン革命以来の長いニセ現実だ。 (イラン革命を起こしたアメリカ) (トランプの自滅的な中国敵視を継承したバイデン

ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイへの毒盛り事件など、米国がロシアを経済制裁する根拠になった事件は、米国側が騒いでいるだけの濡れ衣だ(ロシアでなく米英の諜報員が、濡れ衣のロシア敵視策をやるために、昨年のナワリヌイや、2018年のスクリパリ父子や、2006年のリトビネンコらに毒を盛った可能性の方が高い)。ロシアによるクリミア併合は、国家犯罪の侵略行為でなく、ソ連時代の帰属変更にさかのぼる歴史的必然だった。米国がウクライナをそそのかしてクリミアにおけるロシアの権益を侵害したので、ロシアは正当防衛としてクリミアを併合した。昨秋来のソーラーウインズのハック事件も、犯人はロシアでなく米諜報界の自作自演だろう。 (英国の超お粗末な神経ガス攻撃ロシア犯人説) (ウクライナ東部を事実上併合するロシア) (Biden To Impose Navalny & SolarWinds Related Sanctions On Russia This Week

中国は、米国をしのぐ覇権国になりたがっていなかった。中国は、米国覇権体制の中で金儲けするために改革開放をやってきた。これらの全てに関して、米欧日の人々はニセ現実を軽信させられている。 (中国主導の多極型世界を示したダボス会議) (国際政治劇として見るべきコロナ危機

EU独仏や日豪などの同盟諸国の政府は、露中イランが脅威でないと知りつつも、米国の覇権が揺るぎなく強かったトランプ以前は、米国に従属することを最重視し、米国の露中イラン敵視が濡れ衣のニセ現実であることを承知で、米国に追随して敵視策に乗っていた。だがトランプの覇権放棄とコロナの覇権自滅を経た今、米国の覇権は急速に弱まっている半面、コロナ危機からいち早く抜けた中国が、経済と安保の両面で急速に強くなっている。独仏日豪など同盟諸国は、米国追随一辺倒をやめて、中国と仲良くしていきたいと考えている。トランプは覇権放棄屋だったが、バイデンは覇権を大事にして、米覇権の自滅を加速するだけの中国敵視をやめるだろうと期待していた(中国も期待していた)。 (民主や人権の模範でなくなる米国の失墜) (バイデンの認知症

ところが実際にバイデン政権(認知症の大統領自身でなく勝手代弁の側近たち)がやったのは、これまでロシア敵視だけの国際組織だった米欧同盟体のNATOに、中国敵視も担当させることだった。これは独仏にとってとても迷惑な話だ。おまけに米国はニセ現実のロシア敵視を激化させ、独仏がロシアの天然ガスを買うための海底パイプライン「ノルドストリーム2」の敷設工事を、ロシア敵視の一環として中止しろと言ってきている。米国は、自滅して弱体化する中で、欧州を道連れにして露中への敵視を強めている。独仏は、米国についていけなくなっている。独仏や日豪は、表向きの対米従属と、裏側での中国へのすり寄りを同時にやって移行期のバランスをとるようになっている。EUや日豪が目立たないように中国にすり寄り、ロシアとも隠密に和解するほど、世界の覇権構造が多極型に移行する。米国がNATOに中国敵視もやらせる米単独覇権のニセ現実の下で、隠然と多極化が進んでいる。 (Kremlin will realize that the United States is not its principal national security challenge) (Russia Boasts "European Partners" Will Help Defeat US Efforts To Sink Nord Stream 2 Pipeline) (Escobar: Putin, Crusaders, & Barbarians

かつてニセ現実の先輩格として、911からアフガン戦争とイラク侵攻、リビアやシリアの内戦につながる「テロ戦争」があった。911テロ事件は、アルカイダという米諜報界の傀儡勢力が起こした自作自演のニセ現実の事件だ。ブッシュ政権の上層部に巣食った「軍産のふりをした隠れ多極主義者」のネオコン勢力が、テロ戦争のニセ現実策を過激に好戦的にやって、後でウソがバレる構造にしつつイラクに大量破壊兵器の濡れ衣をかけて侵攻し、米国の信用を失墜させて覇権の自滅を引き起こした。 (アルカイダは諜報機関の作りもの) (911事件関係の記事集

911で作られたテロ戦争のニセ現実は、もともと軍産複合体が米国の覇権運営権を(クリントン時代の経済主導体制を壊して)奪還するための策略だった。だがテロ戦争の体制は、ネオコンがイラク侵攻や強制民主化策といった好戦策を過激にやることで、米覇権の自滅という失敗へと転換され、今に続く露中イランの台頭など多極化の流れにつなげられている。米国上層部のエスタブ内部は、覇権国になった第2次大戦直後から、米単独覇権の維持をめざす軍産などと、米覇権を解体して多極化したい勢力との暗闘が続いてきた。2001年の911事件は一見すると、多極派の反対を押し切って軍産が強行した覇権強奪策だ。だがもっと考えると、実は多極派の側も、ブッシュ政権中枢にネオコンを送り込み、911をイラク戦争など覇権自滅策につなげることで多極化する策を最初から持っており、911の発生を容認した可能性かある。911は、20年たっても真相が露呈しない完全犯罪だ。こんな完全犯罪をやるには、米中枢の覇権派と多極派の両方の同意が必要だ。 (CNN is the Real Threat to Democracy) (Central Banks Simply Can't Afford Higher Rates With Global Debt So High) (The Idea Of Secession Isn't Going Away

なぜ911の話をぐだぐだ書いたかというと、911の構図は、コロナや温暖化、QEといったその後のニセ現実のの構図と似ているからだ。コロナも温暖化対策もQEも、最初は米国覇権の維持延命策として始まっている(コロナは中国経済潰し。温暖化対策は先進国による途上国の成長からのピンはね。QEはリーマン危機で傷んだドル覇権体制の延命)。だがその後、コロナは都市閉鎖の愚策で欧米経済が自滅して中露の相対的な台頭の加速につながっている。温暖化対策はCOP15以来、主導権が米国から中国に移っている。QEは金融システムを中毒症状にしてしまい、QEの急増でドルが自滅する流れになっている。 (911とコロナは似ている) (中国の悪さの本質

911からコロナや温暖化、QEに至るまでのニセ現実は、米覇権を延命するはずのものが、米覇権を自滅させる結果になっている。覇権派と多極派という米上層部の2大勢力が談合してこれらのニセ現実を開始し、途中で不合理な過激策がどんどん加速し、米覇権を自滅させて世界を多極化する多極派の目標に合致させられているのでないか、と私は勘ぐっている。2大勢力が呉越同舟で談合しているので、ニセ現実は強力な体制になり、延々と続く。多極派としては、ニセ現実のインチキさが人々に暴露した方が米国の信用を低下させるので好都合だ。インチキさが露呈しても、延々と続く。そのうちに米覇権の低下と、中国など非米側の台頭が加速し、多極派の目標が達成されていく。ニセ現実の長期化と、その後の米覇権自滅や中国の台頭は、全体がひとまとまりの意図的なシナリオとして推進されている観がある。 (コロナのインチキが世界的にバレていく) (田中宇史観:世界帝国から多極化へ



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