安倍に中国包囲網を主導させ対米自立に導くトランプ2017年11月13日 田中 宇米国の対中包囲網は従来、中国という共通の敵を置くことで、日本などアジア諸国の対米従属を維持するための策だった。今回の記事の題名を見て「安倍に中国包囲網を主導させ『対米従属』に導くトランプ」の間違いでないかと思った人もいたかもしれない。たしかに、トランプが今回のアジア歴訪で言い出した新概念「インド太平洋地域」は、中国包囲網の色彩を持っている。だが、トランプがやっていることをよく見ると、これは中国包囲網のふりをしたアジア諸国の対米自立を誘導する策だとわかる。 米政府はこれまで「アジア太平洋地域(Asia-Pacific)」という概念を使っていたが、それに代わって今回初めて「インド太平洋地域(Indo-Pacific)」という概念を大々的に使い始めた。ブッシュ政権はこの言葉を全く使わず、オバマ政権もほとんど使っていない。アジア太平洋という地理概念は、アジア東部の内陸部と太平洋沿いの地域、オセアニアの範囲を指し、中国が含まれている。だがインド太平洋(意味として正確な訳語は「インド洋・西太平洋地域」)という地理概念は、西太平洋とインド洋の沿岸地域を指し、中国の沿岸や台湾、香港が含まれるが、内陸部は入らない。たぶん朝鮮半島も入らない。 (The Trump administration made a subtle shift in its language on the Asia-Pacific and it could unnerve China) 「インド太平洋」は、ユーラシア大陸の沿岸部の航路に沿って支配を拡大した昔の英国(大英帝国)が、自分らの手が届きにくく、ロシア帝国が南下し、清朝の中華帝国が弱体化しつつ残っているユーラシア内陸部を封じ込める戦略(=地政学)を持っていた時に、自分たちの支配地域に対してつけた名称だ。第二次大戦後に英国から覇権をもらった米国も、同時に英国が扇動して作った冷戦構造を背負い込んだ結果、ユーラシア内陸部(ソ連、中国)を封じ込める英国の戦略を継承した。 (田中宇史観:世界帝国から多極化へ) インド太平洋という概念には「海洋側の勢力である英米が、内陸側(中露)を敵視し封じ込める」という戦略がまとわりついている。トランプは、アジアを歴訪しつつ「インド太平洋」という言葉を初めて頻発することで、中国敵視がやりたいことであるかのように振る舞った。マスコミは、「中身がない」などと批判しつつ、この言葉をトランプの中国包囲網の新戦略として喧伝した。 (Trump gives glimpse of ‘Indo-Pacific’ strategy to counter China) (Trump crosses Asia touting a 'free and open Indo-Pacific,' a shift in rhetoric if not actual strategy) しかし実のところ「インド太平洋」は、トランプが作った戦略でない。米国製ですらない。近年、この概念を最初に戦略として打ち出したのは、日本の安倍首相だった。安倍は、前回首相をしていた2007年に、米国(ブッシュ政権の実権を握っていたチェイニー副大統領)から「対米従属だけでなく、日本も独自のアジア戦略を打ち出せ」とけしかけられ、日本、米国、豪州、インドが安全保障(軍事協力)や経済(貿易、投資)の関係を強化する「インド太平洋地域の戦略的ダイヤモンド」の戦略を打ち出した。民主主義、人権重視、法治国家の4か国が、一党独裁で人権無視で人治の中国を包囲する構図だった。 (A free and open Indo Pacific, a key message for Trump's Asia trip?) 当時すでに中国は、インド洋に面したミャンマー、スリランカ、セーシェル、パキスタンなどの港を中国海軍の拠点として借用し、それらをつないでインドを包囲する「真珠の首飾り戦略(String of Pearls)」を展開していた(今の一帯一路戦略の「一路」の前身)。安倍の「戦略ダイヤモンド」は、日本、米国、豪州、インドという地図上の菱型(ダイヤモンド型)という意味に加え、中国の「真珠」に対抗する日米の「ダイヤモンド」という意味もあった。 (Democratic alliance of the US, India, Japan and Australia wants to work with China – not contain it) 07年3月には、日本と豪州が史上初めて安保協定を結び、5月には初の4か国の安保対話がマニラで行われ、同年夏には日本とインドも安保協定した。同年9月にはベンガル湾で初の日米豪印の4か国合同軍事演習も行われた。チェイニーは4か国連合を絶賛した。だが同時期に安倍自身が選挙敗北後の政争で辞任し、07年末には豪州の総選挙に勝って就任した労働党の親中国的なラッド政権が4か国連合を脱退し、安倍の戦略ダイヤモンドはいったん崩壊した。 (Quad redux: A new agenda for Asia's maritime democracies) 安倍は、12年に首相に復権するとすぐ、4か国のダイヤモンド戦略の復活を宣言した。だが日本は昨春、豪州との実質的な安保提携の基礎となる潜水艦技術の日豪共有(豪州の新型潜水艦を日本勢が受注する話)に失敗した(対米従属一本槍に固執する日本外務省がわざと下手な売り込みをやる妨害をした疑いあり)。日豪は安保関係を強化できないでいる。インドは、貿易相手が中国に偏重している豪州に不信感を持っている。トランプ就任後、安倍は何とかトランプのお気に入りになれたが、米豪関係は悪化した。4か国連合は機能しなかった。 (The Indo Pacific, a security diamond, a 10-year Quad?) (潜水艦とともに消えた日豪亜同盟) ▼生徒の宿題でしかない安倍のインド太平洋戦略をそのまま米国の戦略にしたトランプ そのように死に体となっていた安倍発案のインド太平洋の4か国連合の戦略を今回、突如としてトランプ政権が引っ張り出し、米国のアジア戦略の中心に据えた。トランプのアジア歴訪を2週間後にひかえた10月18日、ティラーソン米国務長官が米シンクタンクCSISでアジア戦略に関する講演「自由で開かれたインド太平洋戦略」を行ったが、その中身は安倍のインド太平洋戦略とそっくりだった。この講演後、トランプ政権は、従来の「アジア太平洋」に代わって「インド太平洋」の用語を使うようになった。ティラーソン演説の1週間後、米国務省と日本外務省が、ほぼ同時に、インド太平洋の4か国連合を、4か国の正式な戦略にすると表明した。この1週間で、4か国間の事前の根回しが完了したと考えられる。 (Trump’s Asia strategy strongly resembles Abe’s “security diamond”) 今回のトランプのアジア歴訪は、中国の習近平が自分の権限を強化した共産党大会の後のタイミングに設定されている。APECや東アジアサミットも、それに合わせて開催日程を決めた。安倍は、今回のトランプの訪日で、自分がインド太平洋戦略の主導役になる前に、自らの権力を強化しておこうと、衆議院選挙を前倒しした。小池と前原の策動で、危うく負けるところだったが、小池が(安倍を支援するための米国からの圧力を受けて??)左派の自陣営入りを断る自滅策をやったおかげで、安倍は首相の座と議会過半数を維持した。 トランプがアジア歴訪に際し、突如として安倍のインド太平洋戦略を全面的に借用して米国の中心的な戦略として使い始めたことは、米国の外交専門家たちに大きな意外感と当惑を与えた。覇権国を70年もやっている米国には、アジア戦略を独自に立案できる専門家がたくさんおり、素案も無数にある。それなのに、なぜわざわざ対米傀儡国の日本が米国から与えられた宿題への対応として昔に作った戦略を、米国の基幹戦略として使わねばならないのか。しかもトランプは、民主主義や人権を外交の道具に使うことを嫌っているのに、民主や人権を重視する4か国が民主や人権を軽視する中国を包囲するという安倍の戦略を借用している。この点もおかしい。 (Take Note: Asia's 'Quad' Is Back) また、もともとの安倍のインド太平洋戦略は、日米豪印4か国の、安保協力だけでなく自由貿易圏の設立など経済協力も掲げていた。日米豪が入っているTPPの自由貿易協定が、その具体化の第一弾になるはずだった。だがトランプは就任早々、TPPから離脱している。今回のアジア歴訪でも「多国間の貿易協定はやらならい。2国間も、相手国が(完全に)公正でない限りダメだ」と明確に宣言した。インド太平洋の経済戦略は、米国抜きでやらねばならない。トランプが借用したのは、安倍の戦略の安保部分だけだ。 (Trump Offers Trade to Asian Nations But Only If They Play Fair) トランプの政敵たちは、あんな日本の戦略を借用するのはおかしいと言って、この件をトランプたたきに使っている。トランプは就任直後から安倍と異様に親しい関係を構築し、米政界では「トランプは安倍の言うことだけは何でも聞き、言いなりになる」と揶揄されている。反日感情を強める韓国政府は「トランプのインド太平洋戦略は日本が作ったものなので、韓国は参加しません」と言っている。 (韓国大統領府「インド太平洋戦略参加、米国と同意していない」) トランプは、安倍のことを大好きになったので、安倍の戦略を借用したのか。そうではない。安倍がトランプに切望することはTPPへの復帰だ。トランプが安倍を大好きなら、就任翌日にTPPを離脱しない。トランプは、安倍が大好きなふりをしているだけだ。その目的は何か。 一つ考えられるのは、米国の覇権運営の負担を減らすため、米国自身がやるべき中国敵視戦略をまるごと安倍の日本に押しつけて肩代わりさせることを画策し、そのために生徒の宿題でしかない安倍のインド太平洋戦略をそのまま米国の戦略にして、中国敵視を米国でなく日本が主導するかたちを作ったのでないか、ということだ。 近年の米国は、この手の覇権分散・多極化戦略をよくやっている。ブッシュ政権は、それまで米国が主導してきた北朝鮮との交渉を放棄し、6か国協議の枠組みを新設して主導役を中国に押しつけた。オバマ政権は、シリア内戦で米軍派兵の泥沼にはまりたくなかったので、ロシアに丸投げした。トランプは中東で、イラン敵視戦略を、サウジアラビアとイスラエルにやらせようとしてきた。 (イランを共通の敵としてアラブとイスラエルを和解させる) とはいえ安倍も、米国から言われて中国包囲網の主導役をやる姿勢を、07年と今回の2回、見せているものの、それを引き受けるたびに、安倍は、中国に対して敵視していませんという信号を送り、日中関係を悪化させないようにしている。07年には中国の要望に応え、日中で戦略パートナー関係を結んだ。安倍は今回、トランプのアジア歴訪前の9月末に、首相として15年ぶりに、東京の中国大使館の国慶節(建国記念日)の祝賀会にとつぜん出席し、中国に融和姿勢をみせた。11月11日のベトナムでのAPECサミットの傍らで日中首脳会談が行われたが、習近平は安倍に対し、非常に友好的な態度をとった。 (Are China and Japan Moving Towards a Rapprochement?) (北朝鮮危機のゆくえ) 安倍は、米国から中国敵視の主導役を肩代わりしろと命じられると色よい返事をするが、実際には中国を敵視せず、融和してしまうことを繰り返している。米国側は、安倍が二枚舌であることをよく知っているはずなのに、今回も安倍に中国敵視役を頼んでいる。その一方でトランプ自身は、中国を訪問して習近平を偉大な指導者だと持ち上げ、中国と仲良くしてしまっている。現実としては、安倍もトランプも中国を敵視していない。中国敵視は、安倍とトランプが演じる政治の茶番劇を真に受けて報道している日米のマスコミ報道の中にあるだけだ。 (中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本) ▼中国人は習近平の「中国の夢」。トランプが海洋アジア人に見させたい「インド太平洋の夢」 そもそも、中国包囲網がトランプのやりたいことかどうかも大きな疑問だ。中国やロシア、イランに対する包囲網や敵視策は、軍産複合体の覇権戦略であり、トランプは軍産支配の体制を壊すために大統領になった。依然として米国中枢では軍産の支配力が強く、トランプは苦戦しているが、負けてもいない。トランプが安倍に中国包囲網を肩代わりさせ、安倍がそれを引き受けつつも、目立たないように中国と融和し、軍産の傀儡であるマスコミは日米による中国包囲網を喧伝するが、実際は誰も中国を包囲してないし敵視もしていない。こうした現状の全体が、トランプのやりたいことの具現化であるとも考えられる。 (NAFTAを潰して加・墨を日本主導のTPP11に押しやるトランプ) トランプは、ベトナムのダナンで行われたAPECサミットでの演説の中で、本音と思われるものの一端を披露している。トランプは演説で、米国の主権を大事にしたいので、主権を侵害される多国間貿易協定(=TPP、NAFTA)に入らないと明言した後、インド太平洋諸国が自立性や主権を守ろうとする姿勢は尊重すると述べ、インド太平洋諸国が、それぞれの歴史に根ざした、主体的な姿勢をもって強く繁栄していくことを望んでおり、そのようなインド太平洋諸国と長く仲良くしていきたいと述べている。トランプは、米国を含むインド太平洋諸国が、それぞれの歴史に根ざした主体的な繁栄を互いに実現しつつ仲良くしていく状態を「インド太平洋の夢」と呼ぶ、と宣言する一方で、現状は夢の実現からほど遠く、貿易ルールが守られていないと言っている。 (Remarks by President Trump at APEC CEO Summit) このトランプの演説のくだりの何が驚きかというと、彼が唐突に「インド太平洋の夢」と呼び表したものが、中国の習近平が中国の大国化・地域覇権国化の戦略を表すために使っている標語「中国の夢」と対応するものである点だ。習近平は、中国が、(欧米の真似でない)中国自身の歴史に根ざした、主体的な(米欧に従属するのでない)姿勢をもって強く繁栄するのだという目標設定の宣言として「中国の夢(の実現)」と言っている。 (In APEC Speech, Trump Slams China, WTO And TPP For Holding Back His "Indo-Pacific Dream") (世界資本家とコラボする習近平の中国) トランプは「インド太平洋の夢」という、今まで聞いたこともない標語を演説の中に入れたが、これは、インド太平洋諸国(中国以外のアジアとオセアニアの国々=海洋アジア諸国)に対し、中国の習近平の目標設定に学び、対米従属や欧米の真似でない、アジアの歴史に根ざした発展をしなさい、米国はそんなアジアと仲良くしたいです、という意味だ。トランプはアジアの人々に「対米従属なんかやめちまえ。もっと自分らしく生きた方が発展できるよ」と言ったわけだ(トランプは尊敬に値する)。この姿勢は実のところ、第二次大戦前(軍産支配以前)の米国の、アジアに対する姿勢でもある。軍産の傀儡であるマスコミは、トランプの演説のこのくだりを全く報じていない。各国の政府を牛耳る対米従属派も、聞こえないふりをしている。 (Trump Offers Trade to Asian Nations But Only If They Play Fair) インド太平洋地域の歴史を振り返ると、英米が世界覇権を握るまで、インド太平洋諸国、つまり海洋アジア諸国が、内陸の帝国(海洋軽視)の傾向が強かった歴代王朝の中国を、海対陸の関係で敵対したことは一度もない。中国やロシアを包囲敵視する戦略はアングロサクソン人のものであり、アジア人のものでない(豪州とNZはアングロサクソンだが親中国的で、国家戦略をアジア的にしている)。 その一方で、歴史上、内陸の中華帝国と、海洋アジア諸国がコラボ・協力したことは何度かある。その一つは、13-15世紀にインド洋から南シナ海まで広がってきた貿易立脚の海洋イスラム勢力が、明朝の中華帝国と協力関係を築いたことだ。15世紀前半に明朝が派遣した「鄭和の航海」は、中華とイスラムのコラボの結実だ(鄭和はイスラム教徒だった)。 (世界史解読:モンゴル帝国とイスラム) (人類初の世界一周は中国人?) 陸の中国と海のアジア勢とのもうひとつのコラボは、琉球王国(今の沖縄)だ。中国の明朝が、海賊(多くが日本人)や反乱軍、密貿易への対策として14世紀以来、海上交通を禁じる「海禁」の政策を断続的に採ったのに対し、15世紀に王朝を創建した琉球が、明朝や清朝の臣下(冊封国)となって貿易許可を受け、中国と日本や東南アジアとの中継ぎ貿易を行っていた。海洋立国である琉球王国と、海禁を続ける内陸志向の中華帝国との協力関係があった。琉球王国は、中国に従属する一方、日本(薩摩藩)にも江戸開幕後に攻められ、日中両方に従属していた。中国と日本の両方にいい顔をしていた琉球王国は、米国と中国の両方にいい顔をしている現代の安倍晋三と似ている(安倍は、琉球に米軍基地を押しつけて虐めまくっているが)。 (沖縄の歴史から考える) トランプはインド太平洋(海洋アジア諸国)に対し、自分たちの歴史に根ざした姿勢をとるのが良いと言っている。上記の歴史に根ざすなら、海のアジアは中国と敵対せず、相互に協調する。現実を見ると、すでに海のアジアと中国は、目立たないように隠然と協調している。その一つは、日豪が主導する海洋アジア諸国の自由貿易圏として、米国抜きのTPP11が結成されつつある一方、中国が主導するアジア太平洋諸国(中日韓+ASEAN+豪NZ印)の自由貿易圏としてRCEPが結成されつつあり、それらは対立するのでなく、協調関係になりそうなことだ。 (RCEP ushers transition to China’s order in East Asia) (トランプの東アジア新秩序と日本) 日豪は、TPPとRCEPの両方に加盟している。日豪とも経済面では、中国と対立する気が全くない。自国企業に中国で儲けてもらいたい。自由貿易圏は経済発展・金儲けが目的だから、対立するより協力したほうが儲かるとなれば、自然と協力関係になる。今回、ベトナムでAPEC、フィリピンで東アジアサミット(EAS)が連続的に開かれ、APECの傍らでTPP11が、EASの傍らでRCEPの交渉が行われ、両方とも来年に成立していきそうだ。そしてTPPにもRCEPにも、米国は入っていない。 (日豪亜同盟としてのTPP11:対米従属より対中競争の安倍政権) (アジアFTAの時代へ) 中国は、自国中心の経済圏として、ユーラシア広域の経済開発事業である「一帯一路」も推進している。安倍は、今年6月5日に行った講演で、日本が主導するTPP11と、中国が主導する一帯一路の貿易圏を融合させることを提唱している。海洋アジアと中国は、範囲が隣接しているが、重なってはいない。南シナ海と東シナ海に領有権紛争があるが、東シナ海(日中。尖閣)は紛争の棚上げが可能で、南シナ海の方は多くを中国が占領してしまう形で決着がつきかけている。米国がアジア支配をやめていくほど、日本など海洋アジア(インド太平洋)の諸国は、中国と対立せず共存し、住み分けする傾向を強める。日本は海洋アジア諸国(日豪亜)の主導役に押し上げられていく。 (中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本) (Beijing seen poised for fresh South China Sea assertiveness) トランプは表向き、マスコミに対する演出・軍産に対する目くらましとして、中国包囲網をやっているように演じながら、米国がTPPを離脱し、2国間貿易協定もやりたがらないことによって、日本など海洋アジア諸国を対米自立の方に追いやり、米国がアジアから出て行く中で、海洋アジアと中国が接近・協力していくように仕向けている。トランプが安倍から借用して開始したインド太平洋戦略は、中国敵視に見せかけた、アジアの自立誘導策、世界の多極化推進策となっている。 安倍は、今年中に日中韓の首相会合を日本で開き、来年には習近平(中国皇帝)に訪日してもらいたい。対米従属したまま中国と協調したがる安倍の策は、琉球王国的な「米中両属」なのか。それとも日本を、米国と中国の間に位置する海洋アジア圏(日豪亜+印?)の(豪州などと並ぶ)盟主として位置づけ、日本が米中と肩を並べうる大国として生きていくことを意味するのか。繁栄を維持するには後者の方だ。 だが、戦後教育(大東亜共栄圏=極悪)を信じる日本人は、国際影響圏の設定などとんでもないと言うだろう。その姿勢を変えないなら、前者の琉球型になる。日本は、世界の10か国ぐらいになりそうな大国の一つでなく、その下の、地域覇権国(東アジアは中国)に支配される、中規模な国家の一つになる。今後、米国覇権の衰退が進むだろうから、米中両属は、対中従属に変質していく。日本人は、中国人より劣等・格下になる。日本人は、その屈辱に耐えられるか?。若い世代は、お得意の「見ないふり(自主的視野狭窄)」で対応するから大丈夫か(笑)。生まれた時から日本が中国より格下なら何とも思わないだろうし。「戦後教育」の人々は、これからお墓の中だから関係ないね(後輩たちに偉そうなことを言いつつ年金基金を使い切り、逃げ切る全共闘世代)。悲しき日本人。
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