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ポスト真実の覇権暗闘

2018年7月8日   田中 宇

「ポスト真実(Post-truth)」という言葉がある。辞書的には「事実が重視されなくなっている政治状況」といった解釈になっている。私の解釈は「情報の発信者であるマスコミや権威筋、ネット上で影響力を持つ勢力が、事実や善悪の価値観を歪曲する度合いが増し、受け手である人々が騙されている状況」だ。情報の受け手が事実を重視しなくなったのでなく、発信者が意図的に事実を歪曲している。私はこれまでの記事で、マスコミや権威筋による善悪観や価値観の歪曲について、何度も書いている。「ポスト真実」とは、権威筋による価値観歪曲策のことだ。

(日本の権威筋による訳語は「ポスト真実」だが「真実」は「物事の本質」という思想・価値判断的な意味が含まれてしまい不適切だ。事実性のみを問う「ポスト事実」の方がしっくりくる。言葉の訳し方についてばかり議論するのも間抜けなので、今回は「ポスト真実」のまま使う) (Post-truth politics Wikipedia

 「Post-truth」は古くからあった言葉のようだが、米英などでこの言葉が頻出し始めたのは2016年からだ。この年、6月に英国が国民投票でEUからの離脱を決め、11月に米国の大統領選挙でトランプが当選した。英米のマスコミや諜報界の主流派を握る軍産複合体・エスタブリッシュメントは英離脱とトランプに反対していた(英EU残留とクリントン当選を望んでいた)。英国民投票も米大統領選挙も、直前まで、残留派とクリントンが圧勝するに決まっていると喧伝されていた。だが、これは軍産エスタブの非主流派による歪曲戦法だったようで、実際には残留派もクリントンも僅差で負けた。このあと、軍産エスタブ内の主流派(残留・クリントン支持)が、非主流派(離脱・トランプ支持)を非難酷評(誹謗中傷)する言葉として「離脱トランプ支持派は、事実をねじ曲げて人々を信じ込ませ、投票結果を操作した」という意味で「ポスト真実」や「偽(フェイク)ニュース」の概念を流布した。 (Hypocrisy? Experts slam Tories fake news security unit as govt ‘peddles misinformation’

 英離脱派とトランプの勝利は連動した動きだ。英離脱派とトランプは、米英の軍産エスタブ主流派が戦後ずっと維持してきた米英覇権体制(米単独覇権体制の黒幕を英国がつとめる)を壊すために出てきた。トランプの前には、レーガンやニクソンがいて、それぞれ米ソ冷戦終結と、米中和解・金ドル交換停止によって、トランプと同様に、米覇権体制を壊す動きをした。戦後の米英覇権体制の最上層部では、覇権を維持しようとする主流派(軍産)と、壊そうとする非主流派(ニクソンレーガントランプなど多極主義者。CFRやネオコンも?)との暗闘・内戦が、断続的に続いてきた(多極化した方が世界の実体経済の長期的な成長につながる)。 (トランプ政権の本質

 英国は、米国が覇権体制の上手な運営から(多極主義者がわざと)逸脱するたびに、英米同盟やG7などの構図を使って米国の政策を立て直してきた。ニクソンがドルを壊した後、英国主導でG5やG7が作られ、日独にドルを下支えさせた。ブッシュ政権(ネオコン)がイラク侵攻で濡れ衣戦争を稚拙に展開して米国の信用を(わざと)落とした時は、終始英国が米国についていき、米国の軌道修正を試みた(英国は失敗し、ブレア首相が悪者にされた)。16年に、トランプが当選して覇権放棄策を始める前に、英国はEU離脱を決めてしまい、英国が欧州勢を率いて米国覇権体制(G7的な米同盟諸国の国際協調体制)を維持することを先制的に不可能にした。英国がEU離脱で国際政治的に自滅していなかったら、英国は、トランプと軍産の闘いで軍産に加勢し、トランプを今よりもっと不利にしていたはずだ。英国が自滅しているので、トランプは軍産に勝っている。その意味で、英EU離脱とトランプ当選は連動している。 (英国の離脱はトランプ人気に連動

 ポスト真実や偽ニュースは、米覇権主義者(主流派、軍産)と多極主義者(非主流派、トランプ)との、覇権体制をめぐる暗闘の中で、英離脱決定とトランプの勝利によって台頭してきた多極派に対する、米覇権派からの攻撃策の一つである。「ポスト真実」は、軍産がトランプを非難する際に使う用語だが、もともと「ポスト真実」的な善悪歪曲・事実歪曲の策略を、戦後ずっとガンガンやり続けてきたのは軍産の方だ。 (The "Fake News" Story Is Fake News

 冷戦時代から続くロシアや中国に対する敵視策は、露中が本当に極悪だから敵視しているのでなく、露中への敵視を通じて親米諸国の対米従属の結束が強まり、米英覇権が強化されるからだ。米欧日の露中敵視は70年前から続く「ポスト真実」的な事実歪曲だ。同様に、イラクのフセイン、シリアのアサド、イランの聖職者政権、リビアのカダフィなどを極悪に描写し、米軍による政権転覆を正当化してきたのもポスト真実的な善悪歪曲策だ。これらの中東イスラム敵視策の出発点となった01年の911事件も、アルカイダを犯人とみなすには無理な状況が多数あり、恒久的・第2冷戦的なテロ戦争の体制を作ることを目的にした、軍産による犯人捏造・自作自演的な事実歪曲だ。 (911事件関係の記事集

 これらの軍産によるポスト真実の戦略は、これらを事実として軽信せず疑問を呈する人々に対し、誹謗中傷的な悪しざまなレッテルを貼る点でも共通している。911事件を米当局の謀略だと言う人は「陰謀論者」だし、露中敵視を歪曲だと言う人は「アカ」だし、イラクやイラン敵視を事実の歪曲だという人は「反米論者」として攻撃される。権威ある学者など「専門家」は、軍産によるポスト真実の戦略に楯突くと、権威や職を失うことになりかねないので、権威ある人々は楯突かず(善意ある人は黙る)、むしろ自らの権威を維持増強するために積極的にポスト真実の戦略に乗って軍産的な歪曲解説を声高に言う人が目立つようになる。大学や学術界の知的な価値が大きく下がった。マスコミの多くは、軍産傀儡の「専門家」ばかりを使うようになり、そういった専門家の権威が上昇し、反逆者の権威が剥奪され、軍産による事実歪曲はますます強固になった。

▼史上最も成功したポスト真実策は日独戦犯、2番目は温暖化人為説、3番目は911テロ戦争?

 経済分野では、リーマン危機後の中央銀行群による、通貨発行で債券を買い支えるQEの金融延命策と、それによる株価の上昇を正当化するため、景気が良くなっていないのに良くなっているのが「事実」だと歪曲する体制の維持が、米覇権勢力(軍産というより金融界)によるポスト真実の策略だ。経済分野は、政治分野よりもさらに権威主義が強く、QEを批判したり、景気が良くなっていないと言う者たちは「無知な素人」のレッテルを貼られる。経済新聞など権威筋は歪曲報道を永続し、それらの歪曲報道しか情報源がないほとんどの人々は、報道がいくら実態からかけ離れても簡単に軽信させられ、歪曲に全く気づかない。バブル膨張が続き、いずれこの体制は破綻する(その意味でQEは隠れ多極主義的な策だ)が、破綻回避に必要な関係者の警告も非常に少ない。 (米国の金融システムはすでに崩壊している

 地球温暖化人為説も、ポスト真実の一つだ。ウィキペディアにもそう書いてある。だが、私の見立てはウィキペディアと逆方向だ。リベラル(米民主党)系の米マスコミなど言論界の主流では、トランプや米共和党筋が地球人為説を否定していることを「ポスト真実」の象徴の一つに挙げている。日本などでは、温暖化人為説の否定が、知識界のタブーになっている。「地球が人為によって温暖化していることが専門家のコンセンサスになっているのに、トランプや共和党筋は、石油会社などと結託し、歪曲的な理屈を展開し、人為説や温暖化傾向を否定している」という説が権威を持っている。しかし、すでに述べたように「専門家のコンセンサス」というのは、誰に権威を付与するかを決めている軍産エスタブ・マスコミによる策略の結果であり、温暖化人為説を信奉する学者に優先的に権威・地位・資金を与える策を20年以上続けたからにすぎない。温暖化人為説は、考え方の説得性でなく、恫喝による権威筋のコンセンサス形成と、懐疑論者への攻撃によって政治力を獲得している。 (Post-truth politics Wikipedia

 人為説は、いまだに説得力が弱いままなのに、それを指摘することは「禁止」されている。議論はすでに、人為説が決定的に正しいということで確定的な結論が出ていることになっており、いまさら議論したがる奴らの方が間違っているというのが、権威ある「事実」になっている。だが、この「事実」自体が間違いであり、間違いだと指摘する者は「トンデモ」扱いされる。こうした言論独裁的な状況が「自由世界(笑)」の「ポスト真実」の政治体制である。マスコミが流布するトランプらによる「人為説の否定」でなく、正反対に、マスコミ自身による「人為説を事実として定着させたこと」の方が「悪しきポスト真実」の象徴である。「悪しきポスト真実」を言い出した軍産側は、これをトランプ攻撃の言葉として使い出したが、実際には、マスコミなど軍産側自身の方が「悪しきポスト真実」をやりまくっている。 (まだ続く地球温暖化の歪曲

 地球温暖化人為説はもともと、工業化の段階を終えて二酸化炭素を排出しなくなった先進諸国が、これから工業化して二酸化炭素を排出する中国など新興諸国から、炭素税などの名目で巨額の資金をピンはねするために捏造された、米国覇権維持・多極化妨害のための理論戦略である。中国が主導する新興諸国は、この構図にはめられることを拒否し続けた。オバマは09年のCOP15で中国側に大譲歩し、中国側が温暖化人為説を「確立した結論」として受け入れる代わりに、先進国が新興国からピンはねするのでなく、正反対に、先進国が新興国に温暖化対策の費用を支援する体制へとすり替えた。金を出す側に転換させられた先進諸国は黙った。それ以来、温暖化問題の議論は終息し、人為説が政治的な最終結論となっている。 (新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題

 人は皆、世界(や国内)の状況を把握しようと思ったら、ネットやマスコミ報道など間接情報に頼るしかない。それらは、さまざまな歪曲度合いのものが、歪曲を見分けにくい形で流入してくる。歪曲度合いの判別が困難な中で私が見てきたことは、その情報の価値観(善悪観)に異論を呈している人々の言論が、どんな扱いを受けているか、だった。異論が事実上全く許されていない場合は、歪曲度合いが高いのでないかと疑われる。 (戦争とマスコミ

 今が「ポスト真実」の時代なら、昔はもっと理想的な「真実」の時代だったのかというと、全くそうでない。ポスト真実的な、マスコミを使った価値観歪曲の体制は、マスコミの発祥とともに古い。米国で最も古い濡れ衣戦争は、1898年のメーン号の犯人歪曲を開戦事由とした米西戦争だ。人類史上、善悪歪曲が最も成功したのは、第2次世界大戦の戦勝国が、英国の発案で、敗戦諸国、とくにドイツに対して貼った「恒久極悪」のレッテルだ。地球温暖化人為説に疑問を呈しても(今のところ)投獄させられないが、ホロコーストに疑問を呈すると投獄されたり、モサドに人さらいされて気がつくとイスラエルの法廷に立たされていたりする。まさに命がけだ。最近のイスラエルによる人殺しこそ「人道上の犯罪」そのものなのに。ヒステリックな温暖化人為説信奉者は少し前まで「人為説否定論者を、ホロコースト否定論者と同じ目にあわせるべきだ」と、勝ち誇った感じで言いまくっていた。これが、終戦以来続く「ポスト真実」の真実である。 (ホロコーストをめぐる戦い) (イスラエルとの闘いの熾烈化

 ジョージ・オーウェルのデストピアな小説「1984」は、いまから70年前の1948年に書かれたが、当時すでに、英軍産による巨大かつ恒久的な善悪歪曲策である「冷戦」が始まろうとしており、今と変わらぬ「ポスト真実」の状況が見えていた。今や市街地のいたるところにある監視カメラや、グーグルアップルNSAによる全人類のスマホに対する検閲など、1984年的なデストピアが現実化している。いずれ世界が多極化しても、中国は米欧日以上の露骨で強固な検閲監視・言論統制の独裁体制であり、他の非米的な諸国の政府は中国の統制システムを喜んで取り入れつつある。抜け道や希望はない。

 とはいえ、グーグルアップルNSAが全人類を検閲してきたのに対し、中国共産党が検閲しているのは中国人民だけだ。中国は最近、グーグルアップルNSAの検閲をシステム的に拒絶している。覇権の多極化は、デストピア運営者の多極化でもある(日本官僚機構も、ドコモのスマホ独自OSだったタイゼンなどを潰さず育てていたら、いずれ世界が多極化した時に、独自のデストピアを作れたのだが)。

▼ポスト真実の歪曲策の基本目的は米英覇権強化だが、稚拙にやって覇権を自滅させる隠れ多極主義者もいる

 ポスト真実・善悪歪曲は基本的に(発祥時点で)、米英覇権体制を強化・永続化するための策である。敗戦した日独を極悪に描くことは、国際政治的に日独が再び力を持って英米に立ち向かうことを防ぐための策だった。(戦後の日本に米国傀儡の官僚機構の隠然独裁政権を作られたことも、日本を恒久的に対米従属の状態にしておく米英覇権維持策だ。日本の権力機構は、日本が米国より経済的に強くなりそうになると、90年代のバブル崩壊を引き起こして日本経済を自滅させたり、ゆとり教育など日本人の能力を意図的に下げる長期政策を展開した。その結果、日本人の能力は、今や中国韓国人より低くなる傾向だ) (日本の官僚支配と沖縄米軍

 しかし終戦後、ポスト真実・善悪歪曲をめぐる戦後の歴史は、複雑なものになった。それは、第2次大戦への参戦と引き換えに英国から覇権を移譲された米国が、単独覇権国となることを望んでいなかったからだ。米国は、英国から譲り受けた覇権を解体し、ソ連や中国などに分け与えて覇権構造を多極化しようとした。ソ連の影響圏を認めたヤルタ体制や、国連安保理常任理事国のP5体制が、米国が望んだ多極型世界を象徴している。英国は、米国の軍産複合体を引っ張り込んでソ連や中国を敵視する冷戦体制を作り、多極型の世界を西側と東側に二分し、米英が西側世界の覇権国となって東側(ソ連中国)と恒久対立することで、擬似的に単独覇権体制を再建した。米国は、冷戦開始とともに軍産に乗っ取られた。冷戦構造の維持のために、英軍産は、ソ連中国に対する過剰な、善悪歪曲・ポスト真実的な敵視策を続けた。 (田中宇史観:世界帝国から多極化へ

 米国のエスタブ内のもともとの主流派は、多極型の覇権構造を望んでいた多極主義の勢力(ロックフェラーなど)だったが、彼らは英軍産によって冷戦を起こされて覇権運営権を乗っ取られてしまった。戦後の米国は、英軍産の隠善独裁体制となった。多極主義の勢力は、表向き英軍産と同じ単独覇権主義者(冷戦派)に鞍替えしたように振る舞って米国エスタブ界で延命しつつ、多極化への転換をこっそり狙う「隠れ多極主義者」になった。彼らは、米国で覇権の戦略立案や運営を担う役割を続けつつ、米国覇権や冷戦体制の維持強化のための戦略を、運用段階で意図的に失敗させて、逆に覇権低下や冷戦体制解体につなげる策略を断続的に続けた。 (世界のデザインをめぐる200年の暗闘) (多極化の本質を考える

 その一つが、60-70年代のベトナム戦争の失敗だ。朝鮮戦争後のベトナム戦争は、中国の北側の朝鮮半島と、中国の南側のベトナムの両方に分断国家を作って南半分を米国傀儡国家にして、恒久的な中国包囲網にするための濡れ衣戦争だった。米国は、とても稚拙にこの戦争を展開して意図的に負けた。開戦時のトンキン湾事件は濡れ衣だったと暴露された。ベトナムは旧フランス領で、英国は泥沼化を恐れて参戦しなかった。英国が米国と一緒に参戦していたら、米国の意図的に稚拙な戦略を修正して軟着陸させていたはずだ。ベトナム戦争は、米国の覇権を浪費し、終戦時にはニクソンが中国訪問・米中和解までやって冷戦体制に風穴を開けた。ベトナム戦争は、ポスト真実的な米覇権維持のための戦争が、多極化のために使われる結果になった戦争のはしりである。03年のイラク戦争も、よく似た構造を持っている。 (歴史を繰り返させる人々

 その後、米国ではレーガン政権が出てきてソ連と和解し、冷戦を終わらせた。冷戦終結はソ連側(ゴルバチョフ)が望んだことだったが、隠れ多極主義的なレーガンは、それに便乗して米ソ首脳会談を繰り返し、ポスト真実的な価値歪曲・敵味方捏造の構造だった冷戦を終わらせた。相手方からの和解提案に便乗して、軍産が作った歪曲型の敵対構造を終わらせるやり方は、今年、トランプが踏襲して米朝首脳会談を実現した。ニクソン(対中国)、レーガン(対ソ連)、トランプ(対朝、対ロシア)は、いずれも軍産の価値歪曲型の敵対構造を、敵方との首脳会談で破壊した。 (ニクソン、レーガン、そしてトランプ

 軍産(諜報界、マスコミ、議会主流の超党派)はこれに対抗し、ニクソンに対してウォーターゲート事件、レーガンにイラン・コントラ事件、トランプにロシアゲート事件を、いずれも針小棒大・誇大に大騒ぎして引き起こし、3人を弾劾しようとした。いずれも、軍産が多極派を潰そうとしたポスト真実・誇張的な策略だった。ニクソンは辞任したが、レーガンは軍産に勝ち、米政界の英雄になった。トランプも、ロシアゲートで軍産に勝っている。 (ロシアゲートで軍産に反撃するトランプ共和党

 90年にレーガンに冷戦構造を破壊された後、軍産はしばらく冷や飯を食わされ、米軍事産業は合理化させられた。英国は、米国から金融の利権(レーガンの金融自由化の一環として、ロンドンをNYと並ぶ世界の債券金融システムの国際的中心に据えてもらった)を与えられる見返りに、軍産を見放した。そんな軍産が劇的にカムバックして米政権を再奪取したのが、01年の米諜報界による自作自演的な911テロ事件だった。大したことないテロ組織だったアルカイダが911を起こしたという、まさにポスト真実的な作り話を軍産マスコミ諜報界が流布し、人類を軽信させた。911をめぐる公式説明に疑問を呈する者は陰謀論者扱いされ、言論界で無力化された。日独戦犯や地球温暖化人為説と同質の構図だ。 (米英金融革命の終わり

 隠然クーデターともいうべき911で、冷戦型の米国の軍産独裁が復活し、テロ戦争(=軍産支配)の世界体制が何十年も続くと軍産系勢力が豪語した。だがその後、軍産の中に入り込んでいた隠れ多極主義勢力のネオコンが、わざと稚拙に残虐なイラク戦争を引き起こし、意図的に米国の国際信用を低下させる自滅策を展開した。米国は、リビアやシリアでも、同様の形式の政権転覆戦争を展開して失敗し、米国と同盟諸国の両方の上層部でテロ戦争の体制への批判が強まった。

 オバマ政権の時代から、米国は、シリア問題解決のロシアへの丸投げ、イラン核協定の締結、イラク駐留米軍の撤退など、テロ戦争の体制を解消する策を開始した。トランプはそれを加速し、イラン核協定から米国が離脱することで核協定(イランと仲良くする役)をロシアやEUに押し付けることや、北朝鮮やロシアとの首脳会談による敵対解消をやり、今後はシリアやリビアの再建の主導役をロシアに任せることもトランプの動きとして予測される。トランプは、サウジのMbS皇太子をけしかけて社会のリベラル化を進めさせことで、アルカイダやISの原動力になっていたサウジのイスラム主義の文化を薄めることもやり、ポスト真実的なテロ戦争の構造を破壊している。 (シリアをロシアに任せる米国

・・などなど、911からトランプにかけてのポスト真実の策略をめぐる話は、たくさんある。ポスト真実の構造を増設する軍産と、自滅・破壊・棚上げするトランプやネオコンなどとの暗闘的な相互の動きが、この四半世紀の国際情勢の中心と言っても良い。今回、記事2本分の長さを書いてもまだ書ききれないので、続きは次回に書く。



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