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中国でなく日本がイラン原油を買う?
2026年7月5日
田中 宇
トランプ大統領の米国は、イランとの停戦の一環で、6月22日から60日間の期限つきで(8月21日まで)イランに対する海上封鎖と経済制裁を解除した。
イランは、2月末から米軍に海上封鎖され、主な輸出品として政府収入の45%を占める石油ガスを輸出できなくなっていた。100日以上輸出できず、自動的に油井から出てくる原油がタンクにあふれ、油田をダメにする油井の閉鎖を余儀なくされていた。
(ホルムズ開閉繰り返しで中東の油井を破壊する?)
米イスラエルはイランを困窮させたいので、海上封鎖を長期化してイランに収入断絶と油田劣化をもたらすのは好ましいことだった。
それなのにトランプは、6月18日にイランと覚書を締結して停戦し、海上封鎖と経済制裁を60日間解除して、イランに原油などの輸出再開を許した。
輸出許容は、敵を強化する愚策でないのか??。いやいや、イランの油田ガス田の大半がすでに閉鎖されているなら、再開を許してもイランは備蓄分以外の石油ガスを出せないのでトランプの策は合理的かも、とか私はウロウロ考えて前回の記事を書いた。
(米イランは和解しない)
その後、新たな別の事態も起きていることがわかった。イランは輸出を許されてからの2週間で、20隻以上の大型タンカーに合計4000万バレルの原油を積み込んでアジア方面に出航した。イラン政府は、原油を開戦前より2割高く売るんだと自信満々だった。
開戦前には、イラン原油の90%を中国が輸入していた。今回も、イランを出航したタンカーのほとんどが中国に行くのかと思われた。だが、そうではなかった。
(Iran says it is selling oil at 20% premium as end of U.S. blockade sees 40 million barrels exported)
中国は、イランの原油を買わなくなっていた。中国の中小の独立系(非政府系)の精油所は、毎週1隻分程度のイラン原油を買っているが、大手の政府系の精油所は、国内需要の減少を(表向きの)理由に、イラン原油を買わなくなった。
中国は経済が減速しており、原油輸入は前年比3割減になっている。だが、中国の不景気と石油の関係は順番が逆だ。
イラン開戦前、中国はイランやロシアの石油を格安で買い込み、その燃料安が中国製品の国際競争力になり、中国の景気を押し上げていた。
ホルムズ閉鎖によって中国は安い石油が買えなくなり、ロシアも便乗値上げし始め、燃料安による底上げが失われ、中国経済が悪化した。
今回、イランが輸出を再開したのだから、中国はそれを積極的に安く買うことで経済力をいくらか取り戻せるはずだ。しかし、中国はイラン原油を買っていない。
(Iran's unsold oil piles up at sea as buyers stay wary)
中国がイラン原油を買わなくなった最大の理由は、国内景気でなく、米イスラエル(諜報界)からのしっぺ返しを恐れてのことだ。
中共の上層部では2024年あたりから、習近平体制への反逆めいた動きを理由に、幹部の更迭や粛清が続いたが、これは米諜報界が以前から中共上層部に仕込んだ要員網を動かして習近平を脅す目的があったと考えられる。
それまで米国は、諜報界を主導していた英国系の弱体化で覇権が低下し、習近平はBRICSなど非米諸国を率いて米英の空白を埋めて覇権を拡大した。
だが、トランプが返り咲く過程でイスラエル(リクード系)が911以来の英国系との諜報界の争奪戦に勝って主導権を握るとともに、米諜報界の在中国スパイ網を活用して習近平を脅し、中国に非米側の覇権を放棄させ、イスラエルが英国系と非米側を押しのけ、トランプやプーチンを従えてイスラエルの新覇権体制を作り始めた。
(米露イスラエル覇権の形成)
習近平は、国際的な覇権拡大よりも、独裁による中国国内の安定をはるかに重視しているようで、イスラエルから求められるままに非米側の覇権を放棄した。
中共は以前、イラン(ヒズボラ、アサド、ハマス)を強化してイスラエル包囲網を作ろうとした米オバマ政権(英国系)に誘われるままにイランをテコ入れし、原油を格安で買う代わりにイランに兵器類からインフラ整備まで供給していた。
だが2024年以降イスラエルは、イラン勢を破壊する戦争を加速し、習近平を脅してイラン支援をやめさせ、今回のイラン戦争で、イランだけでなくアラブも石油を出せないようにして、中東(と世界)でのイスラエル覇権を確立しようとしている。
(イスラエル世界覇権の可能性)
中共は、表面上の言葉を越えたイラン支援を控え、実質的な支援を何もしていない。今回のイラン原油の輸出再開に対しても、国内景気の悪化や電気自動車の普及によるガソリン需要減少などを理由に、ほとんど原油を買っていない。
途中の洋上でイランのタンカーから他の国の船に原油を積み替え、出所をごまかした上で中国が輸入するという説も出てきそうだが、中国の動きを監視するのは世界最強の米諜報界であり、積み替えはバレる。睨まれている習近平は高リスクなことをしない。
(Why China is buying less Iranian oil - explained in charts)
中国政府系の最大手精油所の一つである恒力石化は開戦までイラン原油を積極的に輸入しており、最近、米国から制裁対象に加えられた。
その直後、恒力石化は、イランなど中東と西アフリカからの600万バレルの石油輸入の契約を、国内需要の減退を理由にキャンセルした。精油所の稼働率も昨年の半分になっている。大手の精油所が輸入をキャンセルするのは異例だ。
イランだけでなく中東と西アフリカ全体からの輸入を止めたのは、米イスラエルに睨まれないようにするための中共の覇権縮小と連動している観がある。
習近平は昨年からアフリカでのエネルギー利権を放棄し、ロシアやイスラエルがその穴を埋めている。
(China's Hengli scraps West African, Mideast oil purchases and cuts output, sources say)
中国が買ってくれないので、イランがアジア方面に送り出したタンカー積みの原油のほとんどが売り先の決まらないまま、インド洋から太平洋にかけての海域を漂っている。
イランは、制裁解除以降に積み出した4000万バレルの他に、それ以前に(米軍の封鎖をくぐり抜け)出航した2000万バレル前後も洋上か寄港地にある。合計5800万-6800万バレル(大型タンカー30隻前後)の90%が、買い手がつかない状態だ。
(Iran Runs Into Big Problem: No Buyers For Its Oil, As Full Tankers Pile Up Off China)
中国がダメなら印度はどうか。イラン政府は外相を印度に派遣して売り込んだ。だが印度政府は、すでにロシアから原油を買う契約を結んでいるから要りません、と返答した。
イランが米国の許可を得てドル建て決済で買えるなら考えても良い(ロシアも米国に制裁されてドル建て決済できないので)と印度政府は言ったが、それは無理だろう。
英国やEUは、まだイランを制裁したままなので買えない。イラン側は日本と韓国にも打診したが断られた(7月2日までの話)。
(Iran’s floating oil stockpile swells as major buyers stay away)
8月21日までに買い手が見つからない原油は、8月22日に予定通り米国が再びイラン原油を制裁対象に戻すと、もっと売れなくなる。
今回の話を知るまで私は、トランプがなぜ敵のイランに高額収入をもたらす制裁解除をしたのか腑に落ちないところがあったが、買い手がいなければイラン政府は焦るばかりだ。トランプはすごい、という話になる。
米イスラエルは事前に、イラン原油の買い手がいないことを把握し、その上でイランに輸出再開を認めた。
(Iran Has Oil to Sell, But Asia Is Not Bidding)
6000万バレルの原油はどうなるのか。ここで、意外な勢力が出てきた。それは、わが日本だ。
7月3日、買い手のつかないイラン原油の一部を日本企業が買う案が報じられた。すでにイラン側が日本の3社と交渉を開始している。
日本側は、米国がイラン制裁を解除している期間中に取引を終えられるのか、日本までのタンカー航行の安全が保証される(米イスラエルから攻撃されない)のか、という2点を気にしているという。
(6000万バレルは、すでにホルムズ海峡を通過してインド洋以東にある。日本で報じられている、ホルムズ航行時の安全が問題という話は間違いだろう)
(Japan Weighs Resuming Iranian Oil Imports After Six Years)
問題の2点は、イランでなく米国が決めることだ。日本勢が買う案は米イスラエル発祥(日本からは怖くて言えない)の可能性が高いので、2点は大した問題でない。
今回のイラン原油は、とても安く買える。開戦前、中共はイラン原油を1バレル10–15ドルで買っていたと言われているが、今回は販売期限もあり、さらに安く買えるはずだ。
高市化した日本は、トランプやイスラエルに好かれている。日本だけで交渉しても買い叩けないが、米イスラエルの発案でトランプが協力するなら安く買える。
(Iran exploring oil sales to Japan, buyers seek longer sanctions waiver, sources say)
中共寄りの自民党リベラル派を引き剥がし、日本を高市化したのは米イスラエルだった。高市化は、日本を中共に対抗できる勢力にするのが目的だ(戦争でなく切磋琢磨の共存)。
米イスラエルは、習近平を脅して覇権放棄させる半面、日本を高市化して中共のライバルに育て、日中間の形勢転換を手掛けている。米イスラエルに楯突かない中共は、高市を敵視して日本人の高市支持を強め、高市化に協力している。
安値のイラン原油を中国に買わせず、買い叩いて日本に売らせると、経済面で日中の形勢逆転に貢献できる。日本に原油を安く買わせる分、米国の兵器を多めに売り込める。
(日本の地域覇権「日豪亜」への道再び)
(日本が高市化した意味)
8月21日までに取引を完了できないなら、米国がイラン制裁の解除を延長できる。日本が買えば、同じ仕掛けを使って韓国や東南アジアも買える。
中国が買うと、以前と同じ人民元の非ドル決済になって米国が把握しにくい。日本に買わせれば、米NY連銀を通るドル決済になるので監視しやすい。
洋上にあるイラン原油は、いずれ誰かが買わねばならない。それなら米イスラエルの傘下に入った高市の日本に安く買わせるのが良い。そういう話になっても不思議でない。
何かの理由で話が消えるかもしれない。どうなるか、時間が経てば見えてくる。
("Iran Begins Preliminary Talks on Crude Oil Exports with Three Japanese Companies")
イランは、ハメネイの葬式に、新指導者で息子のモジタバが出てこないことが確定した。出てくるとイスラエルに殺されるかもしれないから。
しかしこれで、モジタバがすでに死んでいるのに生きていることにして防衛隊政権が成り立ち、その状態が米イスラエルにとっても好都合だ、という可能性が増した。この件はあらためて書く。
(Mojtaba Khamenei banned from attending his father's funeral due to regime's assassination concerns)
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