コロナ危機の意図(2)2021年10月21日 田中 宇
この記事は「コロナ危機の意図(1)」の続きです。 日本に住んでいると、コロナ危機の全体像や本質がわかりにくい。日本は先進諸国の中で数少ない、都市閉鎖を全くやってこなかった国だからだ。他の先進国で都市閉鎖をやらなかったのはスウェーデンぐらいだ(世界の全体像が見えにくいので不正確だが)。日本と対照的に、豪州やNZは陽性者が少ないのにとても厳しい都市閉鎖を長く続け、国民の人権をうんと侵害した。豪NZでは街中のあちこちに検問所があり、外出者を取り締まっている。ワクチン非接種者は犯罪者に準じる扱いを受けており、アパルトヘイトの南アフリカみたいだ。豪NZだけでなく英国や米国(知事や市長が民主党の地域)は厳しい都市閉鎖を行なっており、アングロサクソン諸国が最もコロナで経済を自滅させている。独仏伊などNATO諸国も「ナチス顔負け」の抑圧だ(イラクのサダムなどと同様、ナチスも実態より悪く言われているはず)。コロナは国際的な人的交流を大幅に制限しているため、日本にいると、こうした無駄・無意味・抑圧的に厳しい欧米の都市閉鎖のひどさを実感しにくい。 (Sweden avoided hard pandemic lockdowns. Where do they stand now?) (Australians Being Mandated To Provide Police With Geo-Trackable Selfies To Prove They’re Quarantining) コロナ危機が始まった昨年3月、他の先進諸国の多くが(偽陽性だらけのPCR検査を急拡大して感染者の急増を演出し、その対策と称して超愚策な)都市閉鎖を開始する中で、日本政府は都市閉鎖に準じる緊急事態宣言や、それにさらに準じる蔓延防止措置を出すにとどまり、それ以来それらの措置だけでやってきた。当時の安倍政権は、それらの措置を出す判断を日本政府でなく地方自治体にやらせ、首相でなく都知事が「このままではロックダウン(都市閉鎖)が必要になる」と宣言した。WHOから都市閉鎖をやれと加圧されたものの、超愚策な都市閉鎖をやって後で批判されるのが嫌な安倍晋三は、都市閉鎖の宣言役を都道府県の知事に押しつけ、知事たちも記者会見でWHOから命じられた「ロックダウン」を言葉として発しただけで実施しなかった。 (集団免疫でウイルス危機を乗り越える) (安倍から菅への交代の意味) 感染者が多い国は都市閉鎖、少ない国は緊急事態宣言、と考えるのは間違っている。豪NZは日本より陽性者が少ない。豪NZは陽性者ゼロを目標にした「ゼロコロナ策」を展開したため、陽性者が少ないのに厳しい都市閉鎖を敷き、失敗して最近その策をやめた。偽陽性多発のPCR検査に依拠して(偽)陽性者ゼロを目指してもうまくいくはずがない。超愚策である。最初からわかっていたはずなのに、WHOから加圧されて超愚策を延々とやっていた。日本は、無体な米国に従属して鍛えられた敗戦国だけに、WHOの「ご無理ごもっとも」な加圧に対し、かわいそうだけど飲食業界を人柱にしつつ閉鎖っぽい策をやるふりだけして超愚策を最小限にとどめた。「もっと厳しいコロナ対策をやれ。自民党は無能だ」と言ってきた野党やマスコミの方が無能で間抜けだ。 (大リセットで欧米人の怒りを扇動しポピュリズムを勃興、覇権を壊す) (都市閉鎖の愚策にはめられた人類) 日本だけでなく、東アジアでは中国もうまくコロナと付き合っている。中国はコロナ対策で経済を壊していない。中国は新型コロナを発祥させた国なのに、その後は陽性者が減っている。全人民にスマホの追跡アプリを持たせて厳しい感染対策をしているからと言われるが、そうではない。世界的に、陽性者の大半はPCR検査による偽陽性であり、感染対策と関係ない。中国で陽性者が少ないのは、PCRの増幅サイクル数を低めに調整しているからだろう。中共は、ときどき中国のどこかで感染急増が起きるようにして、コロナとの戦いが続いていることを演出している。アングロサクソン独仏など欧米諸国はコロナで経済が自滅したのと対照的に、中国や日本や韓国はコロナによる経済成長が比較的少ない。中国はいま経済が大きく減速しているが、その原因はコロナでなく、新たに起きている恒大集団の破綻を皮切りにした金融危機と、石炭不足などから起こされたエネルギー危機によるものだ。中国の金融危機やエネルギー危機の意味については最近の記事に書いた。 (コロナ、QE、流通崩壊、エネルギー高騰、食糧難・・・多重危機の意味) (恒大破綻から中国の国家リスク上昇、世界金融危機への道) アングロサクソンやNATOは、世界を支配してきた覇権勢力だ。それがなぜコロナで自滅させられているのか。この疑問は私にとって、今回のテーマである「コロナ危機の意図」を考える導入路だ。WHOは最近、中国の影響力が強まっている。WHOだけでなく国連や国際社会の全体で、米国の覇権が低下し、中国が主導する非米諸国が影響力を拡大している。今夏の米欧のアフガン撤兵は、ユーラシアの地政学的な転換と中国側の覇権拡大を加速している。日本や韓国は、表向きの対米従属の継続と裏腹に、本質的に経済面から中国の傘下に入っている。 (中国覇権下に移る日韓) (コロナ帝国と日本) コロナ危機は、欧米を自滅させ米覇権喪失を加速する半面、中国と傘下の日韓では経済成長が保たれている。コロナ危機は、米国(欧米)の覇権が中国に移転する動きを加速している。米国は単独覇権体制だが、中国は多極型の覇権構造を好む。この覇権移転や多極化がコロナ危機の意図でないか、というのが私の以前からの読みだ。これまで何度か書いてきたが、米国の覇権中枢(諜報界、深奥国家)では世界の覇権構造をめぐる百年の暗闘がある。単独覇権派(軍産)と多極派とが、諜報界らしく相互に入り込み、騙し合いながら相克している。コロナ危機は、多極派が中共を引っ張り込み、米国覇権を崩壊させて中国台頭と多極化を進めるために展開している謀略だろう、というのが私の推測だ。 (コロナ大恐慌を長引かせる意味) (新型コロナでリベラル資本主義の世界体制を壊す) 新型コロナは武漢で発祥している。おそらく武漢のウイルス研究所から実験途中のウイルスが漏洩した。研究所の研究者の多くは米国に留学した経験を持ち、米政府も研究支援資金を武漢ウイルス研究所に投入していた。この資金投入を主導していたのが米政府のコロナ対策の最高責任者であるアンソニー・ファウチだった。ファウチは研究者・医者であるが、権威の高さからして諜報界の人だ。武漢の研究所では、生物兵器に転用しうる技術が米中共同で研究されていた。ファウチは、軍産=単独覇権派の人だろう。 (米中共同開発の生物兵器が漏洩して新型コロナに?) (マスク要らない) 武漢研の研究者の中には、米国滞在中に誘われたり脅されたりして米諜報界のスパイになり、そのまま中国に帰国した者もいたはずだ。彼らが、米諜報界に動かされて新型コロナのウイルスを漏洩させたのでないか。それは、米諜報界の単独覇権派が、敵である中国を困らせ経済破綻させるために引き起こした事件のように見える。だが実のところこの事件は、その後の展開を見るとわかるように、米国の覇権を自滅させ、中国の覇権を増大させて多極化を加速している。この事件は、米諜報界の多極派が、単独覇権派のふりをして、または単独覇権派を騙して引き起こしたものだろう。諜報界では、この手の背乗り的な謀略が多い。 (武漢コロナウイルスの周辺) (コロナ独裁談合を離脱する米国) 習近平の中共は、この漏洩事件の被害者である。しかし事件直後、中共が新型ウイルスへの対策をとっている間に、この事件の真の黒幕である米諜報界の多極派が中共中央に連絡をとり、漏洩したウイルスが世界に広がっていく中で欧米を自滅させ、中国への覇権移動と多極化を促進するシナリオを習近平に伝えたはずだ。習近平の中共中央は謀略を理解し、この時点で中共と多極派が裏で同盟する新体制ができあがった。この同盟体が国連のWHOなどを握り、世界のコロナ対策とPCR検査などを使った歪曲策を主導し、今に続くコロナ危機の展開を具現化させている。 (アングロサクソンを自滅させるコロナ危機) (ただの風邪が覇権を転換するコロナ危機) それまで、世界(米国覇権)を運営する主導役は米諜報界の単独覇権派(軍産複合体)だった。しかし、コロナ危機の始まりとともに世界の主導役はコロナ対策を主導する者たち、つまりWHOや国連を牛耳る中共と米諜報界多極派に替わった。単独覇権派・軍産の政治力は大幅に低下した。欧米日の外交官たちは軍産の一部であるが、外交官の権限は、米国のファウチや日本のWHO出身の尾身茂といった各国政府のコロナツァーに奪われている。外交官たちは不満を持っている。 (コロナ危機による国際ネットワークの解体) 中共はコロナ危機の謀略の勝ち組だが、勝ち組であることを人々に悟られないよう、欧米と同様に大変な病気である新型コロナと苦闘している感じを演じている。しかし、欧米の苦闘は経済と覇権の自滅につながっているが、中国の苦闘は中国の台頭とともに演じられている。欧米も中国も広範なワクチン接種を展開しているが、欧米と中国ではワクチンが違う。自然免疫でなおす新型コロナにワクチンが要るのか疑問だが、副作用は欧米と中国で異なる。欧米では、新型コロナのワクチン接種で出現した副作用のうち1%しか報告されず、残りは医師たちによってもみ消されていると言われている。中国がどうなのかは不明だ。 (UK’s Pfizer report reveals SHOCKING VACCINE INJURIES and deaths from the covid jab) (How the West Adopted China-Style Lockdowns) 欧米では最近、ドイツや北欧などが相次いで都市閉鎖など制限的なコロナ対策の終了を打ち出している。豪州とNZもゼロコロナ策を放棄した。日本も緊急事態宣言をすべて解除した。コロナ危機は終わりに向かっている感じが醸成されている。それはワクチン接種が進んだから、とされているが実は違う。米政府の研究機関であるNIH(国立保健研究所)は、世界各国の統計を調べ、ワクチン接種者の比率とコロナ感染者の人数に相関性がなく、接種者が増えるほど感染者が減る状態になっていないと結論づけている。ワクチンは効いていない。副作用をもたらすだけだ。やはりコロナは自然免疫で乗り越える病気である。 (Increases in COVID-19 are unrelated to levels of vaccination across 68 countries and 2947 counties in the United States) (Top scientists release study warning against COVID-19 vaccines, demand an immediate end to vaccinations) コロナ危機が終わりに向かっているのなら、それは国際政治的な意図に基づいていると考えた方が良い。中共は最近、中国の金融危機やエネルギー危機を意図的に悪化させ、自国の経済を自滅させている。欧米経済の自滅は、中共と多極派がWHOを通じて欧米に超愚策なコロナ対策を強要した結果だが、最近の中国の経済自滅は中共が自発的に進めているものだ。一見、不可解である。 (China's economy in the third quarter grew at the slowest pace in a year) 最近の記事に書いたように、これは欧米のエネルギー高騰やインフレ悪化、金融危機からドル崩壊、米覇権の低下につながっていく可能性がある。コロナ危機は、中国を壊すはずが欧米を壊す展開に転換しており、それは中共と多極派の謀略の「成果」だ。今回の中国の金融危機とエネルギー危機も、中国を壊すはずが欧米を壊す結果になる中共と多極派の謀略かもしれない。もしそうなら、これらの新たな謀略が出てきたので、これまでのコロナ危機の謀略を下火にしていくことにしたのかもしれない。なぜコロナ危機の謀略をもっと続けず、ここで下火にするのか分析できていないが、まずは事態の推移を見ていく。 (コロナ、QE、流通崩壊、エネルギー高騰、食糧難・・・多重危機の意味) コロナ危機の意図については、まだ分析すべきことがある。科学の権威を破壊していることなどについてだ。それらは改めて書く。2本続けて無料記事として書いたので、次は有料配信になると思う。 (Why “Science Denial”?)
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