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敵を次々でっち上げ監視と支配を維持する米諜報界

2021年7月6日  田中 宇

今年1月6日、紛糾した大統領選挙の手続きとして次期大統領を正式決定する両院合同会議が開かれていた米ワシントンDCの連邦議事堂に、共和党のトランプ支持者らが入り込んだ「連邦議事堂襲撃事件」が起きた。この事件は、その後成立したバイデン大統領の民主党政権が、共和党の大半を占めるトランプ支持者たちを「国内テロリスト」とみなして攻撃する、今に続く米国の「国内テロ戦争」の発端となった。当時任期末だったトランプは、この「襲撃事件」を扇動したと非難され、米議会で弾劾決議を出されたが不成立に終わった。共和党側は、この襲撃事件を「トランプを敵視する民主党と諜報界・軍産マスコミによる濡れ衣のでっちあげだ」と指摘してきた。 (米議事堂乱入事件とトランプ弾劾の意味

(共和党の上層部は今年1月まで、トランプ派と軍産エスタブ派が暗闘しており、軍産エスタブ派は民主党と一緒になってトランプを非難したが、民主党側が共和党側をテロリスト扱いした後、共和党内の軍産エスタブ派はほとんど消失し、今や共和党はトランプ派だけになっている) (軍産や米覇権を壊す共和党

6月17日、共和党系のFOXテレビの政治評論家タッカー・カールソンが自分の番組で、議事堂襲撃事件はFBI(連邦捜査局。米諜報界に属する捜査機関)の要員たちがトランプ支持派の組織に入り込んで扇動して引き起こした可能性が高いと指摘し始めた。カールソンは、共和党系のネットメディアであるリボルバー・ニュース( <URL> )の調査報道を引用するかたちで、1月6日に議事堂に入り込んだ(乱入した)トランプ派のデモ隊(群衆)の中で最も積極的に乱入を引率・扇動していた20人ほどの人々はFBIに拘束されておらず、彼らはFBIのエージェントだった疑いがあると指摘した。彼らの多くは、トランプを支持する3つの市民運動の指導部に入り込んでおり、FBIは3つの市民運動を内側から扇動して議事堂襲撃を誘発した疑いがある。 (FBI Operatives Likely 'Unindicted Co-Conspirators', Organizers Of Capitol Riot: Report) (Unindicted Co-Conspirators in 1/6 Cases Raise Disturbing Questions of Federal Foreknowledge

1月6日の両院合同会議は、昨秋からの紛糾した大統領選挙の結果が最終的に決まった会合で、当日は連邦議事堂の周辺を民主・共和両党の各種のデモ隊が埋め尽くしていたが、なぜかその中の共和党トランプ派の勢力だけが、議事堂警備当局に招き切れられたかのようにすんなり議事堂に入り(乱入というよりも迷い込んだ)、約30人が当局に逮捕されて「襲撃事件」なった。当時すでに米司法省のバー長官や共和党上院議員の重鎮らがトランプを裏切ったことが明確になっており、事件直後から「諜報界・軍産エスタブがトランプと支持者を陥れるために、警備当局に、議事堂近くにいたトランプ派を議事堂内に招き入れることをやらせ、襲撃事件をでっち上げたのだろう」と言われていた。その後、この襲撃事件がトランプ弾劾劇や国内テロ戦争の構図に発展し、トランプ支持者たちは米国でその後何も過激な行為をしていないのに米軍が何週間もワシントンDCに駐留する異例の事態が続き「諜報界によるでっち上げ」が濃厚になった(過激行為や破壊はすべてBLMやアンティファなど民主党の「覚醒運動」の犯行)。 (トランプ排除やコロナは米欧覇権とエスタブ支配を破壊する) (Tucker Carlson Reveals FBI’s Color Revolution, Also Known as the Capitol Riot

カールソンやリボルバーの指摘は確定的な話でないものの、米諜報界がトランプ派を「テロリスト」に仕立てて「国内テロ戦争」を起こすために、1月6日の混乱の中で議事堂近くにいたトランプ支持者を議事堂内に引き入れて襲撃事件としてでっち上げたという、これまでの疑惑に合致するものとなっている。また1993年のNYCの世界貿易センタービル爆破未遂事件や95年のオクラホマ連邦ビル爆破事件に見られるように、FBIが「おとり捜査」ためと称して政治運動組織の中に入り込ませた要員に扇動や誘導の行為をやらせ、もともとその組織がやるつもりのなかった爆破事件やテロ事件を起こしてしまうことは、過去に何回もあった。 (仕組まれた9・11--オクラホマ爆破事件と911) (サウジアラビアとアメリカ

911テロ事件も犯人が未確定なままで、米議会に何度「真相究明委員会」が何度作られても真相が究明されないので、FBIなど米諜報界によるやらせ事件だった可能性が高い(1963年のケネディ暗殺も)。911事件は、軍産・諜報界によるイスラム敵視の「テロ戦争」の世界支配の体制をクーデター的に作るために自作自演された事件だったと考えられる。こうした歴史を見ると、トランプ支持組織にFBIの要員が入り込んで議事堂襲撃事件を誘発し、それを機にトランプ派を最大の敵とする「国内テロ戦争」の体制を作る計画だったのでないかと疑うのが自然だ。 (仕組まれた911

タッカー・カールソンが議事堂襲撃事件がFBI要員によって誘発された「やらせ事件」だったことを指摘した2週間後、FBIなど諜報界がカールソンの電話やメールなどを盗聴・盗み見されていることが発覚した。諜報界は、諜報界や政界の誰がカールソンに情報提供しているのかを調べる「ネタ元探し」をしている。ネタ元探しが必要なほど、カールソンの発言は諜報界にとって脅威であり、事実性が高い話なのだ。 (Tucker joins calls for probe into NSA spying on him; says Biden 'redefining' dissidents as extremists

民主党やマスコミ(諜報界傘下の組織)は、カールソンらが発した「議事堂襲撃事件FBIやらせ説」を無根拠な陰謀論と嘲笑しているが、無根拠な陰謀論ならFBIがカールソンを盗聴する必要などない。FBIやらせ説が事実なので、FBIは脅威を感じてカールソンを盗聴している。盗聴が発覚し、カールソンを支持する共和党議員たちがFBIを攻撃し始めている。CDCのファウチと中国との癒着問題に続き、共和党からバイデン政権への反撃がまた一つ増えた。 (コロナ独裁談合を離脱する米国

米諜報界は、トランプ派を敵(テロリスト)とする「国内テロ戦争」の体制を作りたくて議事堂襲撃事件をでっち上げたと考えられるが、このでっち上げ作戦は失敗している。その後トランプ派が全く過激な行動をせず、テロリストの濡れ衣を着せられなかったからだ。米諜報界による国内テロ戦争でっち上げの試みは、失敗した上にカールソンら共和党側に暴露されていきそうだ。 (The Criminalization Of Dissent

ここで、今回の本題である新たな疑問が出てくる。米諜報界は、なぜ「国内テロ戦争」の体制を捏造してまで作る必要があったのか。この疑問は、911のテロ戦争についてもいえる。また、なぜ全く濡れ衣の「ロシアのスパイ」という容疑がトランプ陣営にかけられ続けたのかという疑問についても同じ答えにいきつく。それらの答えは「米諜報界が米国民を監視・盗聴できるのは、その国民が外国のスパイである疑いがあるか、有事・非常事態の時だけと法律で定められているから」である。諜報界は、トランプ派やその他の米国内の敵性勢力に対して「国内テロリスト」や「ロシアのスパイ」や「アルカイダ=イスラム主義テロリスト」のレッテルを貼ることで盗聴や監視を行い、弱みを握って潰すことができる。何もレッテルを貼らなければ監視・盗聴できない。 (The New Domestic War on Terror Has Already Begun -- Even Without the New Laws Biden Wants

諜報界は正式には、大統領や議会の命令に従う政府機関の一つである。だが実際には、政府高官や議員らの通信や行動を監視・盗聴し、誰が諜報界の敵であるかを把握し、政策決定の流れについてもこっそり知り、諜報界の言いなりになる議員を当選させ続けていくことで、諜報界が政府や議会を隠然と牛耳って支配する体制を作っている。諜報界は、監視・盗聴によって得た機密情報を源泉として権力・覇権を維持し、選挙の洗礼も受けずに何十年も米国を裏から支配し続ける「深奥国家(ディープ・ステイト)」になっている。この状態は1950年代からのことだ。 (Shockingly Expected: US NSA & Danish Intelligence Spied On "EU Allies"

米国の諜報界は、第二次大戦中に英国の勧めで創設された。英国は第二次大戦でドイツに負けそうだったが、米国に覇権国の座をゆずる条件で米国に参戦してもらって戦勝した。英国は米国に「覇権国になるのだから世界をスパイする諜報機関が必要だ」と持ちかけた(当時の英国は世界でダントツに強いMI6などの諜報機関を持っていた)。米国はCIAなど諜報機関を新設したが、諜報機関が(英国の代理勢力として)米国内をスパイして政治力を持つことを懸念し、諜報機関が米国民をスパイすることを禁じた。英国が諜報界を通じて米国を隠然支配する道は絶たれたかに見えたが、英国側は戦後、「ソ連や中国が、米国や同盟諸国を政権転覆して共産化しようとしている」という脅威の扇動を行って米国に冷戦の有事体制を採らせ、米国民がソ連など敵国のスパイになっていないか調べるのも諜報界の仕事だと言って米国民へのスパイ禁止の原則に抜け穴を作った(諜報界は米国民を監視・盗聴する前にFISA法廷の審査で許可を得る必要がある)。 (米英諜報界内部の暗闘としてのトランプのスキャンダル

(米国に諜報界が作られる前からの支配層・エスタブ=ロックフェラーなどは、米国が英国から譲り受けた世界覇権を国連P5などの場でソ連や中国にも分割し、世界経済の均一な発展を望める多極型の覇権構造を作りかけたが、英国から米諜報界に入り込んで牛耳った勢力は、米英が中ソと長期に対立する冷戦構造を作り、多極型を破壊して米英単独覇権に戻した。これ以来、覇権構造をめぐる暗闘が続いている) (Bill Maher now admits Russiagate was 'reported erroneously'

米諜報機関による米国内に対するスパイ活動は、英国が米国をスパイすることでもあった。この機能は1990年の冷戦終結後に低下したが、その後2001年に諜報界のイスラエル系の勢力が911事件を起こして「テロ戦争」の体制を作り、英国に代わってイスラエルが米国をスパイする機能を乗っ取った。テロ戦争は正式な終結が宣言されていないものの、2011年にオバマがビンラディンを殺す演技を行い、その後トランプがイスラエルとサウジアラビア(=アルカイダ)を和合させてテロ戦争の根幹にあった対立構造を終わらせ、最近ネタニヤフも失脚したことで、事実上すでに終わっている。 (トランプのエルサレム首都宣言の意図

諜報界は、自分たちに楯突く人々に「ソ連のスパイ」などの濡れ衣のレッテルを貼って盗聴・監視を強め、弱みを握って政治的に抹殺してきた。トランプが2016年の当選以来「ロシアのスパイ」の濡れ衣を延々とかけられたのも、諜報界がトランプを潰すために監視・盗聴しやすい状況を作るためだった。最近、米企業のサーバーが相次いで不正侵入(ハッキング)され、すべてロシア政府傘下のハッカーの仕業とされているが、ロシア犯人説の根拠が薄い。最近の米国では何でもかんでも「ロシアのせい」にする風潮がある。米諜報界や傘下のマスコミは、ロシアが犯人でないいろんな事件をロシアのせいにして、この事件の捜査のために必要だという名目で諜報界に楯突く米国内の人々に「ロシアのスパイ」の濡れ衣をかけて監視している疑いが強い。実際の犯人が米諜報界である「自作自演」の疑いすらある。 (トランプと諜報機関の戦い

米諜報界が「ロシアのスパイ」をでっち上げて自らの権力を拡大してきた動きの源流は冷戦にある。諜報界は冷戦など「戦争」「有事」を自ら醸成し続けることで、諜報界が米国民(とくに政治家や政府高官、各種の権威者たち)を監視・盗聴しても良い「常に例外状態」の体制を維持した。常に戦争体制を必要とする諜報界は、軍事産業と結託して冷戦や地域紛争を扇動し(有事を永続させるため失敗を意図的に頻発させつつ)、マスコミや議員にも好戦的な態度をとらせる「軍産複合体」として機能した。 (コロナの歪曲とトランプvs軍産の関係

諜報界と戦った最初の米大統領はケネディで、彼が諜報界に殺された後、歴代の大統領たちは諜報界を潰そうとするのでなく出し抜いて自分の戦略を展開した。ニクソンが米中和解、レーガンが米ソ和解を実現して冷戦体制を壊した。有事体制が終わり、諜報界のちからが低下した。そこに横から入ってきたのが諜報界のイスラエル系の勢力で、彼らはアルカイダへのおとり捜査を悪用して911テロ事件を起こし、「テロ戦争」の有事体制が作られ、諜報界の支配力を復活させた。イスラエルは、アラブやイスラムの盟主で大金持ちのサウジアラビアの上層部から出てきたオサマ・ビンラディンのアルカイダを、テロ戦争の最大の敵として据えることで、イスラエルが中東のライバルであるサウジを常に監視して弱められる構図を作った。 (ビンラディン殺害の意味

911後、英国勢に代わってイスラエル系の勢力が米諜報界を乗っ取ったが、その中にもネオコンなど隠れ多極主義の勢力が入り込んでいて過激な自滅策を展開した。中東の戦争ばかりが重視されたテロ戦争は、イラク戦争やリビアやシリアの内戦など意図的な失敗の繰り返しによって失敗していき、その末に隠れ多極主義のトランプが出てきて政権に就き、諜報界に喧嘩を売りつつ、米中分離など事実上の多極化策を推進した。 (覚醒運動を過激化し米国を壊す諜報界

トランプは昨秋の大統領選で民主党側に選挙不正をやられて「敗北」したが、投票機のバックドアなどを使った「選挙不正」も、諜報界の米国支配の裏技の一つだと考えられる。子ブッシュが「勝利」した2000年の大統領選など、以前から米選挙で不正が行われてきた兆候があるが、選挙不正は米政界と諜報界が談合して政権を決めるプロセスの一つだったのでマスコミぐるみで隠蔽され、問題にならなかったのだろう。 (The American Cyber Stasi Will Suppress All Digital Dissent In Biden's Dystopia

米諜報界は、選挙不正によって仇敵であるトランプの再選を阻み、1月6日にトランプ支持のデモ隊を連邦議事堂内に引き入れて「襲撃」事件を演出してトランプ敵視の「国内テロ戦争」の構図を作り、任期切れ直前のトランプを議会に弾劾させることまでやってトランプ側を潰そうとした。しかしその結果、共和党支持者の大半が選挙不正など諜報界(深奥国家。軍産マスコミ、民主党)のインチキに気づき、怒った支持者たちがトランプのもとに結集して共和党が異様な政治力を発揮する展開を生んでしまった。トランプは、不正選挙で潰される前よりも強い政治家として復活しつつある。これは諜報界にとって自滅的だ。不正選挙でトランプを追い落とす策略自体、諜報界の中に巣食う隠れ多極主義者の陰謀な感じがする。トランプは先日、2024年の大統領選への出馬を表明した。コロナ対策や違法移民対策、インフレなどに関するバイデン政権の失策もあり、2022年の中間選挙と24年の大統領選はトランプ率いる共和党の優勢になりそうだ。トランプvs諜報界の果し合いが、トランプ優勢の形で再開される。 (Trump Has Confirmed That He Is Running Again In 2024

共和党は、以前のようなエスタブ(諜報界傀儡)と草の根トランプ支持者が内紛する烏合の衆でなく、諜報界による支配を許さない草の根のトランプ支持者の政党として再生した。諜報界は、自分たちに立ち向かってくる共和党側の草の根パワーを覚醒させてしまった。 (If You Voted for Trump, You’re officially a White Supremacist

諜報界=軍産マスコミ、エスタブ権威筋は「深奥国家」として、これまで米国と世界(米覇権体制)をこっそり非民主的なやり方で支配してきた。米国の政治体制は諜報界による隠然独裁である。民主制度の米国2大政党制も、選挙不正や盗聴監視に基づくスキャンダル誘発、ホロコーストや人権擁護、差別撤廃、環境保護などを自称する歪曲された政治運動による加圧、政治献金などを通して、この諜報独裁体制に組み入れられてきた。そしてこれまでは諜報界傘下のマスコミによるプロパガンダが奏功し、米国民のほとんどがこの独裁体制に気づかず、自国を民主主義の模範だと思い込み、ニセの誇りを抱いてきた。日本など世界中の人々も、米国は素晴らしいと軽信してきた。 (Maricopa County Elections Witness Testifies that Dominion Ran Entire Election

だが、昨年の米大統領選の選挙不正以降、米国民の半分を占める共和党支持者が、米国の諜報独裁体制に気づき、自国の独裁体制を壊そうと戦ってきたトランプを支持する姿勢を強めた。諜報界マスコミ民主党側はBLMなど自称左翼運動の言動を「覚醒運動」と称賛しているが、実のところこの左翼運動体は、諜報界(隠れ多極主義側)のうっかり傀儡であり、暴動や、性別・人種などをめぐる混乱と対立の醸成、白人や男性への劣等感植え付け・民族劣化教育(日本人が75年間やられてきたことと同等)、違法移民や「温暖化対策」によって米国を自滅させてきた。覚醒運動でなく混濁運動だ。米国と同盟諸国を諜報界が支配してきたことに気づいた共和党側の草の根運動の方が「覚醒運動」と呼ぶにふさわしいが、マスコミは共和党側を陰謀論者やテロリスト扱いしている。米欧日などのマスコミ自体が「人道上の罪」の犯罪組織である。 (Gen Z Is Anything But Politically Ill-Informed) (How American Journalism Became a Mouthpiece of the Deep State

この話は現在進行形だ。これを書いている間にも、いくつか新しいことが起きている。それらはあらためて書く。



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