|
各国の選挙でイスラエル覇権を強化する
2026年10月6日
田中 宇
10月4日、南米ブラジルの大統領選挙の1回戦が行われ、右派のフラビオ・ボルソナロ上院議員が47%を得票し、現職で左派のルラ・ダシルバの45%を上回った。過半数の獲得者がいないため、2人は10月25日の決選投票に臨む。
ボルソナロ上院議員は、ジャイル・ボルソナロ前大統領の長男。父ジャイルは2022年の大統領選挙でルラと戦って敗れ、不正選挙だったと主張したことがクーデター企図とみなされて刑事起訴されて有罪になり、2025年から服役している。
フラビオは「不正に有罪にされた」父のかたきを討つために大統領選に出馬し、世論調査での支持率がしだいにルラに接近、投票日直前に拮抗し、実際の1回目投票ではルラを抜いた。
(In run for Brazil’s presidency, Flavio Bolsonaro tests staying power of his father’s legacy)
ボルソナロは、優勢が増す傾向がこのまま続くと、決選投票でルラを破って大統領になれる。そして私から見ると、ボルソナロが勝ちそうな理由はそれだけでない。トランプ米大統領とイスラエルから強い支持を受けていることも、ボルソナロが勝ちそうな理由だ。
ルラ陣営は、米国とイスラエルの政府や諜報界がボルソナロを勝たせるため、ブラジルに不正な選挙介入をしていると主張してきた。
7月25日にボルソナロが大統領候補に指名された自由党の党大会では、イスラエルのネタニヤフ首相の動画メッセージが上映された。
(Flavio Bolsonaro launches Brazil presidential campaign, touts support from Milei, Netanyahu)
ルラは左派なのでパレスチナ支持で、ガザや西岸でのイスラエルの人道犯罪を非難してきた。今後の多極型の世界を親イスラエルな諸国の集まりにしたいトランプやネタニヤフは、ボルソナロを勝たせ、ルラを蹴落としたい。
ユダヤ人のネットワークは政治をねじ曲げるのが得意技だ。違法行為でも、うまく隠せれば反逆されない。
ブラジルは、多極型世界の基盤を非米側で作ったBRICSの創設メンバーだ。BRICS内では現在、印度が露骨な親イスラエルで、ロシア(プーチン)も隠然と親イスラエルだ。習近平はリクード系に嫌がらせされて不承不承イスラエル覇権を受け入れた(それをトランプが祝賀したのが先日の習近平の訪米)。
ブラジルと南アフリカは反イスラエルだ。今回の選挙で大統領がボルソナロになると、ブラジルは親イスラエルに転換する。これは大事だ。ユダヤネットワークの総力を結集して介入し、ボルソナロを勝たせたい。金融市場もボルソナロ寄りだ。
(Foreign Capital Returns To Brazil As Goldman Clients See 20% Stock Rally If Bolsonaro Defeats Socialist)
中南米は植民地にされた後、旧宗主国のスペインとポルトガルで貿易金融・国際戦略の力を持っていたユダヤ人が新大陸各地に移住してネットワークを張った。
中南米諸国は、フランス革命(人々を国家の主人にして貢献させる新体制)で強力な軍隊を持ったナポレオンが1808年にスペインに侵攻して王位を奪った後、各地で独立運動を起こした。
当時、ユダヤネットワーク(ロスチャイルドなど)の協力を得て覇権国になりつつあった英国は、独立後の中南米が巨大な強国にならぬよう、スペイン植民地の中の各地をバラバラに独立させ、相互の戦争を誘発して今の細分化された中小の国家群にした。その際に活躍したのが、中南米にもネットワークを持っていたユダヤ勢力だった。
(ユダヤ人は昔も今も戦争を誘発して国際政治を動かす。だから世界は戦争が絶えない)
(覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク)
ナポレオンはスペインと同時にポルトガルにも侵攻した。その際ポルトガル王室は、植民地だったブラジルに逃げた。ナポレオン戦争の終了後、国王はポルトガルに戻ったが、王子の1人がブラジルに残って独立を宣言した。スペイン領は英国系によって細分化されたが、ポルトガル領はそのまま巨大なブラジルになった。
ユダヤネットワークは当時から現在まで、中南米全体で力を持っている。今のネットワークの中心である米諜報界は、911後の四半世紀で主導役が英国系からリクード系に代わり、トランプとイスラエルが世界の体制を転換している。中南米もその流れの中にある。
(以前の米諜報界の主だった英国系は、米国が米州主義に戻れずユーラシアに拘泥せざるを得ない状態にするため、中南米を左翼と右翼の恒久的な乱闘の場に陥れ、麻薬取り締まりと言いつつ麻薬組織を繁茂させる意図的失策も続け、中南米を自滅させてきた。その構図を壊しているのがトランプだ。米国で今後トランプ系が負けて民主党(英傀儡)が復権すると、再び中南米が自滅させられ得る)
(中南米を右傾化させる)
中南米諸国では近年、大統領選挙で政権が左派から右派に交代し、トランプやイスラエルに接近する国が増えている。これは、政治をねじ曲げるリクード系の諜報戦略の成果だ。
2023年10-11月の選挙で勝ったアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領が最も強くイスラエルとトランプを支持している。2024年5月のパナマ、2025年10月のボリビア、2025年11-12月のチリ、2025年11月のホンジュラス、2026年4-6月のペルー、2026年5-6月のコロンビアでも、大統領選挙で右派が左派に勝ち、程度の差はいろいろだが、右派の新政権が親トランプ・親イスラエルの傾向になっている。ブラジルの大統領選も、多分このパターンになる。
(‘Paraguay is in Jerusalem because it believes in Israel,’ envoy says, as Israel ties deepen)
産油国のベネズエラは2026年1月、左派のマドゥロ大統領が米軍に拉致され、表向き左派政権のまま米国の傀儡になった(石油利権の獲得と蘇生が目的)。
トランプは、ベネズエラだけでなく、キューバやコロンビアの左派政権も転覆するぞと言い出した。この展開を見て、コロンビアの左派のペトロ前大統領はトランプに接近し、一定の和解を得た。コロンビアは、左派のまま親トランプにすり寄った。
しかし結局、コロンビアの左派政権は5-6月の大統領選挙で敗北し、親トランプな右派デラエスプリエジャの政権に代わった。コロンビアの選挙でも米イスラエル諜報界からの不正介入が指摘されている。
(Trump threatens military operation against Colombia, after Venezuela raid)
(Colombia's Petro accuses Israeli cyberfirm BlackCore of election interference)
キューバの左派政権は、ベネズエラ転覆後も、反米を掲げたまま頑張り続け、国内消費燃料のほとんどを占めるベネズエラからの石油供給を絶たれて全土が停電している。時間の問題だ。
選挙による(表向き)自主的な政権転換か、もしくは米軍の侵攻とかトランプの強引な外交による強制的な転換か。どちらにしても全体として、トランプとイスラエルは中南米の権力者たちの間で支持を強めている。
(Cuba plunges into darkness amid nationwide blackout)
詳細に見ていくと、近年の中南米の選挙は左派から右派への転換だけでない。逆もある。2023年6-8月のグアテマラ大統領選や、2024年10-11月のウルグアイ大統領選は逆方向で、それまでの右派政権が倒されて左派が大統領になっている。2024年6月のメキシコ大統領選は左派政権を維持した。
2023年4月のパラグアイ、2024年2月のエルサルバドル、2025年4月のエクアドルの大統領選は右派政権が継承された。
中道やポピュリストなど、単純に右派と左派に区分すべきでない勢力もある。複雑な状況だ。ブラジルも10月末の決選投票でルラが勝ち、イスラエル覇権体制の構築に時間がかかる可能性もある。
だが、それだと2028年の自分の任期末までに米州主義をある程度完成したいと考えているトランプが困る。世界的にも、ブラジルが今後の4年間ルラのままだとBRICSの反イスラエル勢力が残り、いったんはイスラエル覇権の軍門にくだることを覚悟した習近平が再び揺れ出すかもしれない。
非米側と英国系の結束が復活し、リクード系との暗闘が強まり、欧露間などで世界大戦になりかねない。覇権転換を円滑に、ある程度平和裏に(ウクライナや中東の地域戦争だけで)進めるには、ボルソナロの勝利が必要だ。
(習近平訪米の意味)
イスラエル覇権の円滑な形成のためには、ブラジルで10月末にボルソナロが勝つだけでなく、11月3日の米国の中間選挙でトランプの共和党が連邦議会の上下両院の多数派を維持することも必要だ。
中間選挙で共和党が負け、下院の多数派を民主党に取られたりすると、米州主義や米欧分離、中東のイスラエル覇権化などのトランプの世界戦略がうまく進まなくなる。
(Will the Iran War Cause a GOP Bloodbath in November?)
10月27日には、イスラエル自身の議会選挙もある。ネタニヤフの極右リクードが議席を減らすと、アイズンコットやベネットといった中道勢力が政権をとる可能性が増す。
リクードでも中道でも、表向きのイランやパレスチナに対する政策は大きな違いがない。だが、実際に政権をとったらどうなるかわからない。ネタニヤフが続投しない場合、不確定な部分が大きくなる。
(Who will succeed Netanyahu? Likud members back Ohana as party primaries loom)
イスラエル政界で英国系の残党が妨害したりして中東のイスラエル覇権がうまく形成されず、戦争が長引いたり国家崩壊(シリアなど)が進み、危険な状態になりうる。
中東と世界のイスラエル覇権の形成には、ネタニヤフの続投が必要だ。ネタニヤフを操る背後の勢力は昔から、議会でのネタニヤフ政権の多数派形成の余裕を1-2議席という僅差にしておき、言ったとおりにやらないと下野させるぞと脅し続けてきた。
今回の選挙でも、ネタニヤフは負けそうな状況に置かれている。しかし実際は、またもや僅差で勝って連立政権を組み続けるのでないかとも思える。
(Ben-Gvir demands Defense Ministry, Tally Gotliv for justice minister in next gov’t)
来年4月18日と5月2日のフランス大統領選挙も重要だ。極右のマリーヌ・ルペンが仏大統領になると、欧州の中心で英傀儡のエリート支配が崩れ、フランスがプーチンやイスラエルの方に寄っていく。
フランスでは暴動や破壊活動が拡大している。教育環境に対する高校生の不満からの暴動と報じられているが実はそうでなく、若い移民たちが破壊活動しているという説がある。
(France Erupts Into Chaos As "Rioting Migrant" Kids Torch Schools And Busses)
フランスなど西欧では、エリート政権が中東からの違法移民(偽装難民)を大量に受け入れ続け、それが破壊活動や強姦多発など社会の崩壊を招いている。そう考える市民が増えた。彼らは仏ルペンや独AfDを支持する。
西欧に流入する違法移民の中に、犯罪の常習犯や凶悪犯、テロリストを紛れ込ませていく。それが諜報戦略として意図的に行われ続けてきたとしたらどうだろう。
911以前からのお家芸として、イスラエル諜報界はそれを上手にやれる。地政学的ライバルの西欧を弱体化したいトルコ(隠然イスラエル傀儡)の諜報界も加担している。
('Great Replacement' Fears Soar In Belgium)
そして、移民流入から10年後とかに西欧社会が崩壊し、人々は違法移民を受容し続けてきた英傀儡の左右中道リベラルのエリートたちを嫌悪し、ルペンなど極右を支持する。リクード系のライバルだった英国系が自滅していく。
移民だけでなく地球温暖化対策、ロシア敵視も同様の自滅策だ。これが偶然の動きでなく、20年がかりのリクード系による英欧潰しの策だとしたら・・・。
(The French Never Wanted Mass Immigration)
ドイツのメルツ政権も、いずれ極右のAfDに取って代わられる。独仏が極右化すると、EU上層部の英傀儡エリート群も放逐されていく。
独仏の極右政権は、エリート側から妨害されて国家運営をうまくやれないかもしれない(諜報界は極右を助ける)。だが少なくとも、欧州を英国系から引き剥がすという目標は達成される。ウクライナ戦争の目的が達成され、終戦に向かう。欧露関係が改善し、ノルドストリームが再稼働して天然ガスが送られる。
("The Political Shift Is Inevitable": AfD Leader Weidel Heralds New Polling High For Party)
(From market to military: Germany’s private sector is imploding.)
トランプ(やその後継者)は、高市化した日本に対してやっているように、米軍を撤退させるが、友好国としていろいろ支援(取引)することは、極右化した欧州に対してもやる。
来春の仏大統領選でルペンでなく、マクロンの後継者(アタルやフィリップ)が勝つと、欧州の英国系エリート支配が延命し、ウクライナ戦争が長期化する。米露の正式な和解も先送りされる(米露隠然同盟が続く)。
好戦的なリクード系が覇権体制を円滑に構築できるほど、世界各地の戦争が早く終わる(もともと戦争を起こしたのも彼らだけど)。無茶苦茶だが、それが現実だ。
(米露が和解していく)
選挙で誰が勝つかは有権者が決めるんだ。リクード系とかユダヤとか、誰であれ、民主主義を踏みにじるのは許さない。そう思う人が多いかもしれない。しかし、許されなくても現実は進む。それに、多くの人々の善悪観はずっと前から歪曲されている。
日本は、昨秋の自民党の党内選挙(総裁選)だけでリクード化(高市化)した。高市は今年2月の解散総選挙でも圧勝した。日本の大転換はすんなり進んだ。だから人々は、これを転換だと気づかない。
日本の英傀儡なマスコミ権威筋リベラル左翼は高市を誹謗中傷する(右翼の多くも勘違い)。だが諜報分析から見ると、今の高市は安定して強い。
今回の日本は「歴史の正しい側」にいる。今の日本人は恵まれている。日本人は頓珍漢なままで良い。身体に悪い(健康保険が無駄遣いされる)ので、悲観するのはやめた方が良いが。
(東アジアだけ戦争にならない理由)
田中宇の国際ニュース解説・メインページへ
|