異常なバブル膨張、でもまだ崩壊しない《2》2020年12月24日 田中 宇
この記事は「異常なバブル膨張、でもまだ崩壊しない」の続きです。 ほぼ1年前の今年の正月、今回の記事の前編を書いた。1年もたって続編かよ、という感じだ。今回「すごいバブルだけどまだ崩壊しない」という記事を書こうとして、そういえば前にもこの手の話を書いたなと思って探したら1年前の記事を見つけた。この1年間を振り返る感じでちょうど良いと思い、続編として書くことにした。 (米国の金融バブルはまだ延命しそう) (まだ続く金融バブルの延命) 前編を書いて1か月もしないうちに中国の武漢と湖北省が閉鎖されて、今に続くコロナ危機が起きた。コロナの対策として世界的に行われている都市閉鎖は、新型コロナという病気への対策として効果がとても薄い、あまりに稚拙な愚策だ。都市閉鎖は、コロナ対策を口実に、先進諸国の経済を自滅させるための策略だと感じられる。偽陽性出まくりの高サイクルにしたPCRの検査数を増やすことで(偽)陽性者の統計数を意図的に増やし、これを「感染者の急増」とマスコミに騒がせることで第2波、第3波を誇張的に演出し、都市閉鎖を長期化している。これは世界的な戦略に見えるが、都市閉鎖の悪影響を特に大きく受けているのは欧米など先進諸国だ。米国は、トランプを不正選挙で追い出してバイデン政権になると都市閉鎖を加速し、経済自滅がひどくなる。対照的に、中国はコロナの発祥地だが、早々に都市閉鎖を脱し、今ではこっそり世界最高の経済成長を回復している。 (コロナのインチキが世界的にバレていく) (WHO (finally) admits PCR tests create false positives) (新型コロナ「第2波」の誇張) 日本や韓国、東南アジア諸国などは都市閉鎖の愚策をあまりやらなくて済んでいるが、これは日韓や東南アジアが中国の傘下に入る傾向を強めているのと同期している。日韓と同じアジア諸国の中でも、アングロサクソンの豪州NZは、厳しい都市閉鎖を強要されている。世界に都市閉鎖をやらせている国際的な覇権勢力(国連、WHOなど)は、従来の覇権勢力である米英アングロサクソンや対米従属的なEUの経済を都市閉鎖で自滅させる半面、中国とその傘下の日韓ASEANには、とおりいっぺんの「やったふり」的なコロナ対策で許している。コロナ危機は、隠れ多極主義的な策略として長期化されている感じだ。 (新型コロナでリベラル資本主義の世界体制を壊す) (Mask Mandates Are Futile and Part of the Covid-Psyop) コロナ危機は当初、中国経済を潰すための軍産・米覇権主義的な策略として武漢で起こされたが、これは米英諜報界・覇権勢力内で暗闘する軍産と多極主義の両方が合意できる策略に仕立てるためだ。いったんコロナ危機が起きた後、多極主義の側が本性をあらわし、WHOなどを乗っ取った状態で、欧米諸国が厳格な都市閉鎖で経済的に自滅し、中国とその傘下の諸国が隠然と経済成長を続けて覇権転換を促進する流れが作られた。トランプの米国はWHOを離脱し、中国がWHOを乗っ取るように誘導した。バイデン政権になったら米国がWHOに戻るかもしれないが、すでに国連全体で中国の支配は確立しており、米国は中国に譲歩して国連の主導権の一部を再獲得するのがやっとだ。米国は911以来、中露を敵視する単独覇権主義、覇権を放棄する孤立主義、再び覇権を希求するために世界と再協調する姿勢という3つの間を行ったり来たりして、そのたびに中露の覇権が拡大していく隠れ多極主義的な仕掛けになっている。 (How Belarus Exposes the Lockdown Lie) (都市閉鎖の愚策にはめられた人類) 私は早く(2005年ごろ)からこの流れを感じていたので、これは意図的な多極化戦略だと分析したが、この流れを感じ取れなかった多くの人は、私の分析を妄想の陰謀論だと却下してきた。少なくとも、世界が多極化しているのはもはや不可逆な事実だ。コロナ危機の都市閉鎖が多極化を加速しているのも事実だ。都市閉鎖がコロナの対策としてすごく愚策で、なぜこれを延々と続けるのか合理的な説明がつかないのも事実だ。世界の上の方(米英覇権勢力内)に、多極化を推進している奴らがいる、と考えるのが自然だ。911後のテロ戦争が、当初は米単独覇権体制を再強化する策だったのが、稚拙なイラク戦争などを経て、米国の覇権を自滅させ、中露イランなどがユーラシアや中東の覇権を拡大する多極化の流れに転換していったのと同じだ。911テロ戦争とコロナは同じ隠れ多極主義的な構図だ。 (911とコロナは似ている) (QEの限界で再出するドル崩壊予測) 話がそれた。金融に戻す。コロナ危機は、米日欧の中央銀行群の過剰造幣策であるQEを急増させた。とくに、それまでドルの信用力を温存するためQEの再拡大に消極的だった米連銀(FRB)が、3月後半に欧米全体が都市閉鎖の策を決めた直後からQEを急拡大した。それまでQEは、金融システム安定化だけのための政策だったが、コロナ危機発生後、都市閉鎖で大恐慌になった実体経済の穴埋めをするのもQEの役目になった。米国など先進諸国の政府が赤字国債を大量発行し、それらの大半を中銀群がQEで買い込んでいる。コロナは、経済のマイナスをすべてQEが背負い込む新体制を作った。 (すべてのツケはQEに) (World Bank and IMF offered Belarus $940m bribe to impose extreme lockdown, wear masks…) QEは株や債券の価格をつり上げ、株や債券を持っている金持ち・エスタブ支配層だけにカネを配布する不正な策だ。日銀は、日本株の最大の保有者だ。株式市場から市場原理が消滅して久しい。権威筋の金融分析はウソばかりだ。QEは、借金を「借金でないもの」のように見せる、詐欺的で不健全な政策でもある。国債は国の借金だが、中銀の造幣は通貨供給であって借金でない、と言い張れる。造幣は、国家の信用をお金の形に変える行為であり、過剰発行は国家の信用を落とすはずだ。しかし、主な先進国の多くが談合してQEで過剰造幣すると、すべての国家の信用が同時に過剰発行状態になるわけで、不信を抱いた投資家が代わりに買うものがなくなる。QEの資金は先物相場を使って金地金の価格の引き下げにも使われている。ビットコインを当て馬にして金相場を引き下げる策も再開された。ドルやユーロに不信感を持った投資家が金地金を買うと損をする。ビットコインの相場もいずれ再下落する。資金の逃げ場がない。QEは、自己救済の仕掛けを内包しているので、不健全で不正なのに、リーマン危機後10年以上の長きにわたって続けられている。「QEは、不健全な策なので長く続けられない。続いても数年か」などと、私を含む多くの分析者が書いてきたが、これらは外れている。 (ビットコインと金地金の戦い) (Equity Purchases by the Bank of Japan Reach a New Milestone) QEは10年続けられてきた。しかしコロナ危機の発生とともにQEが背負わされる経済のマイナスが急拡大した。コロナ危機は来年も、たぶん再来年(2022年)も何らかの形で続く。以前より負荷が拡大した状態で、これからさらに何年もQEが続けられるかどうか。コロナは欧米が世界を支配する覇権体制を壊して多極型に転換するための隠れ多極主義策の一つとして画策されているのでないかと上に書いた。だとしたら、コロナ危機でQEの不短を急増させたのも、QEが限界に達してドル崩壊・米国の通貨金融の覇権の崩壊を前倒しするための策略だと考えられる。米国の覇権の源泉となっているのは、よく言われる軍事力よりも、ドルの基軸通貨性である。ドルの基軸通貨性の外縁部に1985年ビッグバンから債券金融システムが作られ、30年間の金融バブル=富の膨張=米覇権維持を実現してきた。08年のリーマン危機は、米金融覇権のぶち壊し策(隠れ多極主義的)の始まりだった。リーマン後、米国の覇権崩壊を前提に、米英中心主義のG7サミットの役割が、多極型のG20に移された。 (やがて破綻するドル) (世界がドルを棄てた日) (破綻するまでバブル膨張することにした米国) しかし、米金融覇権=債券金融システムは、QEによってかたちだけ維持された。リーマン後、債券への実需が戻ってこない分をQEが穴埋めした。数年で限界に達すると思われたQEは、資金の逃げ場をふさぐ自己救済システムのおかげで10年たっても破綻しなかった。「これではいかん」ということで、覇権勢力内の隠れ多極主義者たちが、軍産・単独覇権側を引っ掛けて(中国潰しをやろうぜと言って)昨年末に開始したのがコロナ危機だったのでないか。中国経済を潰すはずの武漢ウィルスは、欧米など世界に拡散し、厳しい都市閉鎖が必要だというWHOのプロパカンダのもと、欧米経済が都市閉鎖で自滅していく流れに転換した。欧米経済が自滅的にへこんだ分の穴埋めはすべて米連銀のQE急増によってまかなわれ、QEに対する負荷が急増させられた。そして今、第3波とか言って、来年もコロナ危機の愚策が続けられることが確実になる中で、さてさて今後どこまでQEが続けられるかお手並み拝見、的な事態になっている。 (急接近するドル崩壊) (「大リセット=新常態=新しい生活様式」のからくり) 覇権放棄屋のトランプが追い出され、米覇権を守りたい軍産系のバイデンが大統領になったら、多極化でなく、米覇権体制の維持が画策されるのでないか、と考えがちだ。だが、今後は地球温暖化対策も米連銀の任務に加えられるという。2酸化炭素の排出を減らすことは経済のコスト増加になり、コロナの都市閉鎖と同様、経済がへこんだ分の穴埋めが必要になる。その穴埋めを米連銀のQEによる造幣で賄おうという話だ。QEに対する負担は、コロナだけでなく温暖化対策の分も加えられていく。これは、QEが限界に達するのを早める策だ。人為説はインチキだ。2酸化炭素の排出を減らしても気候変動に影響しない。2酸化炭素の排出削減は、コロナの都市閉鎖と同様、それを一生懸命にやった国の経済を自滅させる。オバマ政権は、中国に温暖化対策の主導役をおっかぶせた。バイデン政権の温暖化担当になるジョン・ケリーはオバマ時代の国務長官で、中国に温暖化対策の主導役を渡した担当者だ。彼は中国への覇権移譲の続きをやる。主導役をもらった中国と、その傘下の諸国は、温暖化対策をやったふりだけすれば良いから自滅しない。これまたコロナと同じ構図だ。 (Climate Change Is The New Fed Mandate) (地球温暖化問題の裏の裏の裏) クリスマスを前に、日本も北米も大寒波が来て大雪がふった。温暖化人為説の元祖アルゴアは副大統領だった90年代末に「世界が温暖化し、雪はいずれ過去の事象になる」と言ったとか。それから20数年。人々はコロナでクリスマスパーティーをやれなくなったが、まだ雪は世界各地で猛威を振るって大量の積雪をもたらし、トナカイのそりの滑走を可能にしている。メリークリスマス。 (Dr. Fauci Insists He Never Told Americans To Cancel Christmas) まだ書かねばならないことはいくつもあるが、こんなふうに書いた以上、今日中に配信しないと意味がないので、ここでいったん切って配信します。(笑)
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