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米露対決の場になるマケドニア

2015年5月26日   田中 宇

 東欧バルカン半島の小国マケドニアが、新たな米露対決の場になっている。米国の国務省や投資家ジョージ・ソロスなどが、マケドニアの親露政権を倒そうとする野党の反政府運動を支援し、首都スコピエなどで、反政府派と親政府派の群衆が対立している。マケドニア国民の3割は、隣国であるアルバニアやコソボと同じアルバニア系で、彼らはマケドニアの混乱に乗じて分離独立し、アルバニアに統合して「大アルバニア」を建国しようとしている。 (The Destabilization of Macedonia? Greater Albania and the Process of "Kosovization"

 コソボのアルバニア系の軍事勢力KLAがマケドニアに越境侵攻し、マケドニアの治安部隊と交戦になっている。マケドニアの野党がKLAの軍事支援を受け、5月18日に、クーデターを計画していたが、事前にマケドニア当局の知るところとなり、阻止された。KLAは、98年のコソボ紛争の際、米英軍に訓練されて強くなった。今回のマケドニア危機は、04年からのウクライナ危機の構図(米露対決)と、98年のコソボ危機の構図(米軍産が欧州周縁部を不安定化する)の両方を受け継ぎ、米露対決の新たな展開になっている。 (Failure Of The US Coup D'Etat In Macedonia - Thierry Meyssan

 マケドニアの混乱のきっかけは今年2月、野党のSDSM(民主社会同盟)の党首ゾラン・ザエフ(Zoran Zaev)が、グルエフスキ首相や政府高官らの電話の会話の録音を次々と発表したことだ。電話の会話は、グルエフスキ政権がマスコミや野党に圧力をかけるものや、選挙不正の相談とおぼしきもので、いくつものスキャンダルの種になりうる内容だった。その後、野党主導の反政府運動が強まり、5月中旬にはスコピエなどで5万−10万人規模の反政府デモが行われた。対抗して政府支持者による30万人規模のデモも行われ、騒然とした事態になっている(マケドニアの人口は200万人)。 (Fears for Macedonia's fragile democracy amid 'coup' and wiretap claims 27 February 2015

 グルエフスキ首相は、公開された同首相の電話会話とされる録音が、確かに自分の声であると認めたが、録音が切り貼りで編集され、会話の内容が歪曲されていると抗弁している。問題は、野党がどこからこの録音を入手したかだ。野党のザエフは、2万の電話番号から発信された合計67万件の会話の録音ファイルを持っていると公言している。 (Macedonia: massive protest amid astonishing wire-tap scandal

 このような広範な電話盗聴ができるのは、マケドニア当局よりも、米国のNSAなどの諜報機関か、米国から頼まれたドイツの諜報機関ぐらいしかない。ドイツは、ウクライナで米国の好戦策につき合って懲りたので、今の時期に欧州でこの手の混乱を起こしたくないはずだから、首相ら政府高官の電話を盗聴し、その録音を野党に渡したのは米当局の可能性が最も大きい。 (The Color Revolution in Macedonia Is Underway

 野党のSDSMや党首のザエフは、ジョージ・ソロスの「オープンソサエティ協会(OSI)」から資金をもらっている。ロシアを敵視するソロスのOSIは、冷戦終結前後から、旧ソ連・東欧諸国の民主化運動を支援し、旧ソ連東欧諸国の民主的に選出された親露的な政権を、その国の民主化運動の市民団体が反政府運動を起こして転覆する「カラー革命」を、ウクライナ、グルジア、ベラルーシ、セルビアなどで支援してきた。 (コーカサス安定化作戦) (ウクライナ民主主義の戦いのウソ

 OSIは、1991年にマケドニアが旧ユーゴスラビアから独立した直後から、マケドニアで活動し、野党の政治家などを支援してきた。マケドニアのテレビ局であるテルマ(Telma)や24ベスチ(24 Vesti)も、マケドニアの民主化に貢献しているとして、OSIから資金援助を受けている。これらのテレビ局は今回、反政府運動を積極的に支援する立場で報道を続けている。OSIが「民主化運動」を支援してきたことはマケドニアで広く知られ、OSIの息のかかった人々は「ソロサイト(Sorosites)」と呼ばれている。 (George Soros, NATO, US Color Revolution Machine Behind Unrest in Macedonia) (The Color Revolution in Macedonia Is Underway

 野党のSDSMは冷戦時代に共産党だった政党で、冷戦後、資本主義の信奉者へと転換し、一度は政権を持ったが、06年以来、3回連続で総選挙に敗退し、議席が大幅に縮小してきた。与党のVMRO−DPMNE(統一民主党・内部革命組織)が親露的な外交政策を掲げているため、ソロスの基金は落ち目のSDSMに2011年ごろから政府攻撃や政権転覆の策動を強硬にやらせ、今回の大きな反政府運動に結びつけた。弱体化した組織を傀儡化し、意図的に混乱をひどくするやり方は、国際諜報の策謀としてよくある手だ。 (The Next Ukraine - The regime-changers are busy in the Balkans) (Social Democratic Alliance of Macedonia, SDSM

 ソロスのOSIは、2000年にセルビアで米国に楯突くミロシェビッチ大統領を倒す反政府運動を成功させたのを皮切りに、政権転覆の扇動者として有名になった。セルビアもマケドニアも、国民の多数派は民族的に「南スラブ人」だ。OSIは今回、セルビアで政権転覆を成功させた反政府団体「オトポール」の後継組織である「カンバス」に、マケドニアの野党SDSMに政権転覆のやり方を伝授するよう依頼し、SDSMを強化した。 (How CIA and Soros Openly Finance Destabilization of Macedonia) (ソーシャルメディア革命の裏側

 ソロスのOSIに属する言論人たちは最近、マケドニアの政権転覆を支援する文章を、客観性を装いつつ、さかんに執筆している。「民主化」「人権」を強調しつつ、倒そうとする相手の政権をうまいこと酷評・非難し、読者を軽信させようとする。このプロパガンダの手法は、民主化運動で反米非米の政権を転覆しようとするOSIやその他の米英系のNGOや政治運動家によって、冷戦後10年以上、繰り返されてきた。当初は、読者の多くがプロパガンダを軽信していた。だが、イラクやウクライナなど、多くのケースで、米国が扇動した政権転覆が混乱しか生んでいないのを見て、今では世界的に多くの人が、この手のプロパガンダを軽信しないようになっている(ほとんどの人は無視するようになっただけで、米国勢の実は非人道的な「人道策」のインチキに憤る人はまだ少ない)。 (Saving Macedonia

 昨年ウクライナで親露的なヤヌコビッチ政権が転覆されたのは、ソロスのOSIのほか、ビクトリア・ヌーランド国務次官補ら米国務省が反政府運動を支援したからだったが、ヌーランドは昨秋マケドニアを訪問してザエフら野党人士と会談し、マケドニア政府が米国に対する警戒を強めた。その後、マケドニア政府がザエフを反乱罪容疑で起訴すると、ヌーランドはマケドニアを非難した。親露政権の転覆をソロスや米国務省が扇動するカラー革命の構図が、マケドニアで開花しようとしている。 (George Soros, NATO, US Color Revolution Machine Behind Unrest in Macedonia) (危うい米国のウクライナ地政学火遊び

 米国勢が今の時期にマケドニアの親露政権を倒そうとしている理由は、ウクライナ危機により、ウクライナ経由で欧州に天然ガスを輸出するパイプラインを絶たれたロシア(露国営企業のガスプロム)が、トルコ、ギリシャ、マケドニア、セルビアといった親露政権がある国々を経由してガスを欧州に送れるパイプライン(トルコストリーム)を新設しようとしているからだ。米国勢が扇動し、ウクライナの親露政権を転覆して反露政権に替えれば、ロシアの新パイプライン構想を阻める。 (Why Does Putin Care Who Runs a Tiny Balkan Nation? Gas Pipelines) (A tiny European country is making Russia extremely nervous

 ロシアだけでなく中国も、地政学的にマケドニアを重視している。ギリシャのアテネの外港であるピレウス港を買収した中国勢は、ピレウスからマケドニア、セルビアを経由してハンガリーで西欧の鉄道網に結節する高速鉄道の建設を計画している。中国の習近平政権は、この建設を国家的なシルクロードのインフラ整備(一帯一路)事業の一環として重視している。米国勢は、マケドニアの政権を転覆することで、欧州に影響力を拡大しようとする露中の建設計画を阻止しようとしている。 (The Color Revolution in Macedonia Is Underway) (Orban hails Belgrade-Budapest EU-China cooperation on rail link

 マケドニアは05年以来、EUとNATOに加盟することを、EUや米国と交渉している。グルエフスキ政権はロシア寄りなので、EUやNATOの東進を嫌うロシアに配慮する面があるが、マケドニアの政権が反露側に転覆すると、EUやNATOに急いで加盟する話が出て、その点もロシアにとって脅威だ。米議会では、早くマケドニアの政権を転覆してEUやNATOへの加盟交渉を再開しようという呼びかけが渦巻いている。ウクライナと同様の状況だ。 (Crisis in Macedonia Requires Meaningful and Swift Measures

 米国勢によるマケドニアの政権転覆策は、露中との地政学的な陣取り合戦を超えた、バルカン諸国を民族間の殺し合いや政治混乱に陥れる危険をはらんでいる。諸民族が殺し合った98年のコソボ紛争の再燃があり得る。マケドニアの混乱に乗じて、アルバニアの首相が「いずれコソボを併合する」と、大アルバニア主義を示唆する発言を放ち、セルビアが猛反発し、EUはうろたえている。 (EU says Albania comment on Kosovo unification 'not acceptable'

 マケドニアで政権転覆をめざす人々は、グルエフスキ政権を倒した後、多民族国家であるマケドニアの各民族がそれぞれ代表を出して話し合う連立政権を作ることで、政治を再び安定させると言っている。だが、マケドニア国民の3割を占めるアルバニア系を代表する組織(非合法化されていたはずの民族解放軍NLAなど)は、グルエフスキ政権を倒した後、アルバニア系住民が多い北西部の地域だけマケドニアから分離独立して、東隣のアルバニア、北隣のコソボと一緒になる策略を持ち、その策略をやるために政権転覆に協力している。

 国家解体に反対するマケドニアのスラブ系は、アルバニア系と交戦し、内戦になる。政権転覆は、マケドニアを分裂させ、内戦に陥らせる。西隣のブルガリアは、アルバニア系が分離独立した後のスラブ系中心のマケドニアを、自国に併合しようとしている。ブルガリア語とマケドニア語は言語的に近いので、ブルガリアには以前からマケドニアを自国の一部になるべき地域だと主張する人々がいる。マケドニアが政権転覆した場合、混乱はマケドニアだけにとどまらない。コソボとセルビアの内戦が再発する可能性が強い。 (Bulgaria rejects Russian claim that it wants to dismember Macedonia

 マケドニアのアルバニア系の分離独立傾向は、北隣のアルバニア系の新興国(08年に独立宣言)であるコソボ共和国の勢力によって煽られている。4月21日、40人のコソボの武装勢力が国境を越えてマケドニア北西部の村(Gosnince)に侵攻し、マケドニアの国境警備隊と銃撃戦になり、双方に死者が出た。コソボの勢力は、99年のコソボ紛争終結後に非合法化されたKLA(コソボ解放軍、セルビア語でOVK、アルバニア語でUCK)の制服を着ていた。 ("Terrorists with UCK insignia" seize police outpost) (The Next Ukraine - The regime-changers are busy in the Balkans

 マケドニアのアルバニア系住民による分離独立運動は、コソボ紛争が終結に向かった99年から激しくなった。コソボ紛争の解決とともにKLAが解散・非合法化され、まだ紛争をやりたい勢力は、コソボだけでなくマケドニア北西部もアルバニアに併合する「大アルバニア主義」を掲げ、隣国マケドニアに入り込んでアルバニア系の武装勢力NLAを作り、マケドニアを内戦に陥らせようとした。反乱はEUなどの介入で回避され、01年にマケドニア政府がアルバニア系住民に自治拡大を認めるオフリド合意(Ohrid)が締結され、NLAは解散・非合法化された。しかし今回、KLAとNLAが14年ぶりによみがえり、マケドニア野党SDSMと組んで、マケドニアを再び内戦に陥らせようとしている。 (国家存亡の危機に立つマケドニア

 マケドニア当局によると、彼らは5月18日にクーデターを計画していた。野党SDSMが首都スコピエなどで大規模な反政府デモを行い、同時にKLAやNLAがマケドニア系住民の多い北西部などで武装蜂起する計画だった。当局は、昨年9月ごろからこの計画を察知していたという。当局は5月8日、北西部の町クマノボにあるNLA・KLAの拠点(隠れ家)を襲撃し、銃撃戦の末、武装勢力を逮捕・殺害し、隠れ家を潰した。5月18日、野党SDSMは予定どおり反政府デモを行ったが、武装蜂起は行われず、政権転覆の画策は長期化することになった。 (Failure Of The US Coup D'Etat In Macedonia) (Macedonia: The Ghost of a New Balkan War

 KLAやNLAは、なぜ非合法化されてから14年も経った今ごろになって再び動き出したのか。おそらく、その答えは「米国に扇動されたから」である。マケドニアの野党SDSMや反政府系のメディアが、ソロスのOSIなど米国勢から援助され、米国のロシア敵視策の一環として親露的なマケドニアの政権を転覆しようとしていることはすでに書いた。同様の構図が、KLAやNLAにも当てはまる。KLAは、旧ユーゴスラビアの解体が始まった1998年、米国と英国の諜報機関がアルバニア政府に用意させたアルバニア北部の訓練所で軍事訓練をほどこされた。セルビア(コソボ)のアルバニア系住民を武装させ「大アルバニア主義」を扇動してセルビア政府と戦わせ、ボスニア人など旧ユーゴの他の勢力の分離独立運動も容認し、旧ユーゴを解体・混乱に導くのが、コソボ紛争当時の米国の戦略で、KLAはその道具の一つだった。 (Is Albania Sponsoring `Freedom Fighters' Next Door? October 31, 2003) (バルカン半島を破滅に導くアメリカの誤算

 すでに述べたように、コソボ紛争が終わると内戦がマケドニアに飛び火したが、マケドニア内戦を煽っていたのは、米国の軍産複合体の一部である傭兵会社MPRI(Military Professional Resources)だった。MPRIは、マケドニア政府軍の顧問をすると同時にKLAやNLAを支援し、政府軍の動向をKLA側に漏洩し、政府軍と反政府軍の両方を加勢してマケドニアを内戦化しようとした。 (The Color Revolution in Macedonia Is Underway) (US Finances Ethnic Warfare in the Balkans

 軍産複合体は、今もKLAの味方だ。5月8日、マケドニア当局が北西部の町クマノボでKLAの隠れ家を襲撃すると、すぐにNATOのストルテンベルグ事務局長がマケドニア政府を非難し、アルバニア系住民の正当な権利主張を弾圧すべきでないと主張する声明を発表した。クマノボの隠れ家にいた勢力のほとんどはマケドニア人でなくKLAのメンバーだったコソボ人で、ストルテンベルグが言うような正当な権利主張でなく、マケドニア政府が取り締まって当然の外国勢力による軍事行動だった。 (Failure Of The US Coup D'Etat In Macedonia) (Obama disrespects NATO chief, raising questions about his commitment to the alliance

 ストルテンベルグは元ノルウェー首相だが、EUの軍事統合に反対し、欧州の対米従属の永続化を望む軍産複合体系の人物だ。彼は今年3月、訪米してオバマ大統領に面会を求めたが、オバマは要請を無視し、事実上面会を拒否した。米議会の軍産複合体系の政治家たちが、面会拒否のオバマを非難した。以前の記事に書いたように、オバマは昨秋来、イランやロシア、ISIS(イスラム国)、イスラエルに対する策をめぐり、軍産複合体と対立を激化させている。 (イランとオバマとプーチンの勝利) (ますます好戦的になる米政界

 マケドニアの野党とアルバニア系を扇動し、政権転覆の混乱を引き起こそうとしている黒幕は、米国の軍産複合体である可能性が強い。軍産が今の時期にマケドニアを混乱させる理由として、ロシアの天然ガスパイプライン計画を阻止するロシア敵視策が考えられることも書いた。しかしその一方で、オバマ政権のケリー国務長官は先日2年ぶりに訪露し、プーチン大統領と4時間も話し合い、米露協調を印象づけた。米国はケリー訪露時に、ウクライナ問題でロシア主導のミンスク停戦合意を初めて支持したうえ、イランやシリアなど中東の問題でロシアが主導権を発揮することを要請した。米国はロシアとの敵対を、やめたいのか、それとも拡大したいのか。 (負けるためにやる露中イランとの新冷戦) (US Launches New Assault Against Russia

 私は、これらの米国の態度の全体が、国際社会でのロシアの台頭を誘発する、オバマ政権の多極化戦略であると推測している。オバマは一方で、ウクライナ、中東などの国際政治でロシアが台頭することを容認・支持しつつ、他方でマケドニアを混乱させている。マケドニアの政権転覆を防げるのは、ロシアだけだ。ドイツなどEU諸国は、コソボ紛争など90年代の米国主導の旧ユーゴ解体・不安定化策以来、バルカンの紛争について腰が引けており、米国の好戦策を看過し、混乱に直面しても右往左往するだけだ。 (プーチンを敵視して強化してやる米国

 ロシアは、コソボ紛争当時はエリツィン政権で、冷戦直後の混乱が続き、弱体化しており、親露的なセルビアが米国にひどい目に遭わされても、ほとんど何もできなかった。しかし、今のロシアは違う。米国が起こしたウクライナ危機を、米英抜きのミンスク停戦合意によって独仏と協調しつつ何とかおさえ、中東ではイランやシリアに対する影響力を拡大している。経済面でも、中国との同盟を強め、QEで金融覇権が弱体化している米国に、中露結束で対抗できる力をつけつつある。ウクライナ危機勃発以来の1年あまりで、プーチンのロシアは国際社会で大きく台頭した。 (中露結束は長期化する

 ロシアが急台頭する中で、オバマが軍産複合体をけしかけて新たにプーチンの前にどすんと置いたのが、マケドニア問題だ。もしプーチンがマケドニアのグルエフスキ政権を政治的に支援して政権転覆を防ぎ、事態を安定化できたら、その後のバルカン・東欧地域は、親露性がぐんと強まる。今年に入ってギリシャが政権交代で親露的になったし、ハンガリーやチェコ、セルビア、トルコは以前から親露的だ。マケドニア問題をプーチンが制すると、ブルガリアやアルバニアも反露的な姿勢を捨てざるを得ない。私は、近いうちにマケドニア問題にプーチンがもっと首を突っ込んで来るのでないかと予測している。マケドニアを取ることでバルカン東欧を傘下に入れたらどうですかとプーチンに手招きしているのはオバマだ。 (プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動

 ソロスの昔からロシア敵視も、実はロシアを再び世界に引っ張り出すための隠れ多極主義策かもしれない。そのように考えると、ソロスがロシア周辺の国々だけでなく、ファーグソンなど米国内の反政府運動の活動家たちに資金を出していることに説明がつく。 (国内の反乱を煽る米政府

 ポーランドでは、日曜日の大統領選挙で反EU的なアンジェイ・ドゥダが勝った。彼は「親露」でないが、反EU(反独)の策略をやるには、ギリシャのように、プーチンに接近してみせるのが手っ取り早い。プーチンは、ポーランドの大統領選挙の結果を歓迎すると表明している。 (Russia welcomes Poland opposition leader election win) (ギリシャから欧州新革命が始まる?) (EU統合加速の発火点になるギリシャ

 ドイツなどEUは、対米従属を続けていると、EUの影響圏になるはずの東欧バルカンや中東を、どんどんロシアに奪われてしまう。すでに独仏は、自滅的な好戦策をやめない米国につき合うことに疲れている。それでも独仏は対米従属から離脱せず、米国がウクライナやマケドニアを混乱させるのを看過している。いずれ、独仏は米国を見放さざるを得ないが、それがいつになるのかまだ見えてこない。 (茶番な好戦策で欧露を結束させる米国

 オバマの対露戦略でもう一つ興味深いのが、ビクトリア・ヌーランド国務次官補の役割だ。ヌーランドはロシア語が堪能だが、反露的で好戦的なネオコンに属し、ウクライナを政権転覆に誘導し、マケドニアの転覆も支援している軍産系の人物だ。プーチンなどロシア上層部がヌーランを毛嫌いしていることは間違いない。しかし彼女は、ケリー訪露の後、米政府を代表してロシアとの連絡役になるようオバマから命じられた。 (`Bigger role' for US in Minsk II accords: Are you sure, Ms. Nuland?) (US Blinks in Face-Off with Russia

 プーチンらは、オバマが反露的なヌーランを対露連絡役に任命したのを見て、オバマがケリー訪露で見せた対露協調姿勢は米国の弱体化を表すものの、米国が本気でロシアと協調する気などないと思っただろう。これも、プーチンが米国との協調を完全にあきらめ、中国など非米同盟の強化や、ロシアの影響圏の拡大、ドル崩壊の誘発などに力を入れることにつながり、プーチンに多極化の先導役をさせようとするオバマの策であると、私は勘ぐっている。 (多極化の申し子プーチン



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