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トランプ快勝の裏側
2024年11月10日
田中 宇
11月5日の米大統領選挙でトランプが快勝した。共和党は、連邦議会の上下院の多数派も取って圧勝した。開票は円滑で、選挙結果への不満や拒否も表明されていない。
2020年の前回大統領選や、2022年の中間選挙ではいずれも、投票日夜の開票作業中に各地の開票所で不可解な出来事が連続し、翌日になっても結果が確定しなかった。
だが今回は不可解な出来事がほとんど起こらず、投票終了から8時間ぐらい後の翌日の未明(PST)にはトランプの勝利が確定していた。米国にしては珍しく、開票時の騒動がなかった。やればできるじゃん(笑)。
("You Still Don't Understand How You Lost")
トランプは、米国の上層部を支配する諜報界(深奥国家=DS)を潰すために大統領になった。諜報界には、こっそり米覇権を崩して世界を多極化したい勢力もいて、彼らが米上層を騙して2016年にトランプを初当選させた。諜報界や傘下の民主党やマスコミ権威筋はトランプの無力化を試み、激しい政争が続いた。
トランプvsバイデンになった2020年の大統領選では、開票作業中の深夜に、5つ以上の接戦州の開票所に、遅れて到着した郵送票の束を偽装して大量の偽造バイデン票が持ち込まれ、それまでのトランプ優勢がバイデン優勢へと不正に覆された。直前に、開票所にいた共和党側(RENO)の監視役が色んな理由をつけて追い出された。
(米民主党の選挙不正)
(不正選挙を覆せずもがくトランプ)
共和党支持者の大半が不正の存在に気づいていた(共和党内には諜報界の傀儡であるエスタブ系=RENOも多かった)。米日などのマスコミ権威筋は民主党側の不正行為を無視し、不正の指摘を偽情報と決めつけて抑止・攻撃した。
2022年の中間選挙(議会・州知事)でも、郵送票や電子投票機を使った民主党側の選挙不正が繰り返され、連邦議会で共和党が盛り返すのを防いだ。
(米中間選挙で大規模不正の可能性)
(ずっと続く米国の選挙不正)
選挙不正の手口である郵送票や電子投票機をめぐる状況は、その後もあまり変わらなかった。共和党側が改善を求めてもなかなか通らないし、裁判しても民主党寄り(ソロス傀儡)の判事に退けられた。民主党・諜報界は、不正する気が満々に見えた。
トランプ陣営は1期目の4年の経験があり、諜報界潰しの技能が向上している。1期目は諜報界がトランプの攻撃をかわし、選挙で不正に落選させて退けたが、次の勝負はトランプが勝ち、諜報界が無力化(というよりトランプ化)される可能性が高い。だから今回の選挙は民主党が不正をする可能性がとても高かった。
トランプ陣営(MAGA)は、民主党側が今秋も選挙不正をやることを前提に「不正を乗り越えて巨大に結集・得票する(Too big to rig)」という標語を今春から掲げていた。
(Tell the world 2024 was ‘TOO BIG TO RIG’… Buy the epic shirt and hat now!)
(Trump is back, and this time it’s different)
だが実際は、11月6日の選挙で不正が行われた兆候がない。不正するには、11月6日深夜の開票作業中に、ニセの郵送票を大量に入れるとか、投票機のシステムに侵入・改竄して投票結果を書き換えねばならず、開票作業を遅延させ、混乱を醸成してその中で不正をする必要があった。
だが実際は、開票作業の遅延も混乱も、ほとんど発生しなかった。民主党側が不正したが、それを乗り越える投票数を共和党側が得たのではない。民主党側が不正しようしたが共和党側が阻止したのでもない。民主党側が不正をしていない。
比喩的に言うと、事故現場にブレーキ痕がない。ブレーキを踏んだが遅すぎたとか、踏み込みが足りなかったとか、ではない。そもそも、乗っていた車にブレーキがついていたのかどうか??。
共和党側は不正に敏感なので、開票作業の遅延や混乱が発生したら、オルトメディアで喧伝するはずだ。だが、発生が伝えられたのは、コロラド州デンバーで署名が一致しない郵送票が見つかり、不正の疑いがあるとされた件ぐらいだ。
(Officials Investigating Potential Voter Fraud, Ballot Fraud in Denver)
(Harris Was Always Doomed)
10月末にミシガン州で、投票機のシステムに入るパスワードが大量漏洩する事件があった。だが、漏洩したパスワードを使って不正が行われた形跡は、今のところない。
有権者登録における本人確認の甘さを悪用し、違法移民に投票させて民主党の得票を水増しした手口はやれる。その手口の水増しだけでは選挙結果を覆せなかったのだろう。
全体として、今回の選挙は不正疑惑が少ないまま終わった。だからトランプが快勝した。
(Michigan Says 'Nationwide Issue' With Certain Dominion Machines, While Colorado SoS Leaked Voting System Passwords)
(Radical Left Activates Anti-Trump Protests As AOC Riles Up Rioters)
トランプが非常にあっけなく勝ったので、BLMやアンティファなど、詐欺的・暴力的で悪質な民主党の左派勢力も、ほとんど暴動を起こさずに終わった。シアトルやシカゴで数百から数千人が集まった程度だ。
選挙に負けた民主党が大きな暴動や内戦を起こしてトランプを妨害する、というオルトメディアに出回った予測は外れた。ハリスが敗北を認め、選挙は順調に終わった。
私は、民主党が不正をやるがトランプの優勢が維持され、開票に何日もかかり、ハリスが敗北を認めない中で左派が暴動を起こし、混乱の中で最終的にトランプの勝ちが決まるが、米国内の対立はずっと続く、といった展開を予想していたが、全く外れた。
(Is The Left Preparing For War If Trump Wins?)
(Martin Armstrong Sees Trump "Landslide"; Fears Desperate Deep State Wants War & Martial Law)
なぜハリス陣営は大胆な選挙不正をしなかったのか。トランプとの得票差があまりに大きく、不正をやっても結果を覆せない(Too big to rig)と判断し、不正を中止したとか??。2020年の先例を見ると、それは考えにくい。
2020年の大統領選では、バイデンがどのくらい劣勢になるか予測が難しかったので、民主党側は大量の偽造郵送票を注入し、結果的にバイデンの(不正な)圧勝になった。ハリスの劣勢がとても大きくても、とりあえず注入できる最大数の偽造郵送票を注入するのでないか??。
注入には開票作業を止める必要があり、その時点で共和党側が不正に気づくが、そんな事態にはなっていない。開票時の不正は行われていない。
("How Did You Spend $1 Billion And Not Win? What The F**k?" Infighting Breaks Out Between Harris, Biden Camps Over Loss)
ハリスは不正しないと勝てなかった。ハリスが不正しなかったからトランプが圧勝した。なぜハリスは不正しなかったのか。ハリスを操っていた深奥国家(DS)は何をしたいのか??。疑問が残るままだ・・・。オルトメディアの分析者ぺぺ・エスコバルも、そんな風に書いている。
('Fasten Your Seatbelts' - Pepe Escobar Explores The 'Trumpquake')
私の新しい推測は、不正しなかったのでなく、できなかった、というものだ。
ハリスが大統領候補になったのは、今年6-7月に民主党の上層部でバイデンをトランプとの討論会に引っ張り出して認知症を露呈させ、立候補を取り下げさせるクーデター的な謀略が挙行されたからだ。
バイデンは2020年に大規模な選挙不正をやって当選した。彼は、今年の選挙でも不正を繰り返せば再選できると考えていたはずだが、それまで党ぐるみで隠してきた認知症を露呈させる反逆集団が出現した。
バイデンは渋々立候補を取り下げたが、激怒し、選挙不正のやり方の詳細を後継のハリス陣営に教えなかったのでないか。選挙不正のやり方が党上層部で共有されていたのなら、ハリス陣営が同じ手口で不正して当選を目指したはずだ。不正の手口は共有されず、バイデンと、周りの親密な側近だけが知っていたと考えられる。
(降りないバイデンを降ろす)
無能で口下手なハリスは、不正しなければ勝てないのだが、マスコミを動員してハリス礼賛の報道を連発したり、巨額の運動資金を投入したりすれば不正なしで勝てる、といった勘違いな戦略が立てられ、ハリスの選挙運動が開始された。結果は惨敗で、トランプの圧勝だった。
バイデンの認知症を暴露して引きずり下ろし、後継のハリスに不正なしで選挙に臨ませて惨敗させ、トランプを圧勝させる。誰がこんなシナリオを作って進めたのか??。
私が疑っているのは、米諜報界から民主党上層部に入っているイスラエル系・リクード系の勢力だ。彼らは、イスラエルのネタニヤフ政権と連動している。
(Harris and Biden aides trade blame for losing to Trump)
ネタニヤフとトランプは提携している。トランプは、ネタニヤフのイスラエルが、米国の資金や兵器や諜報を使って自由に戦争するのを許している。イスラエルは、ガザで虐殺をやってパレスチナの抹消を進め、ヒズボラを潰し、イランやシリアを空爆などで脅してヒズボラ支援をやめさせて、イスラエル周辺に迫っていたイラン系の諸勢力を大幅に後退させている。
米民主党政権は、イスラエルを加圧してパレスチナ国家の建設に協力させようとしてきた。英米はイスラエルの建国直後から、イスラエル(英米を牛耳るユダヤ人)を弱めるために2国式を強要してきた。
(トランプ返り咲きの周辺<1>)
トランプは、そのような加圧や強要を全くやらない。1期目に進めたアブラハム合意案(最小限の2国式)も、イスラエルの好みに合わせて作ったものだ(ネタニヤフは最終的に、最小限の2国式でなく、昨秋のガザ開戦に始まるパレスチナの完全抹消を選んだ)。
トランプが甘やかしてくれる見返りにネタニヤフは、米諜報界のイスラエル系を動かして、民主党を惨敗に誘導するバイデン外しの謀略を展開し、トランプに圧勝を与えた。議会多数派も全て共和党になった。
(トランプの有罪)
(The 2nd Trump Admin Is Staffed With MAGA Talent Pool Which Knows How Levers Of Power Work)
民主党など従来の米英エスタブは、ネタニヤフに加圧するためイスラエル野党の中道派・旧労働党を支援し、ネタニヤフは常に政争に苦戦してきた。
ネタニヤフ政権には、リクードだが中道派のギャラント国防相が入閣しており、ネタニヤフのガザ戦争(パレスチナ抹消)策に対して(米英がイスラエルを抑制する線に沿った)反対論・制限案を言い続けてきた。ネタニヤフは昨年春にいったんギャラントの更迭を発表したが、中道派と背後のバイデン政権が反対し、更迭の撤回に追い込まれた。
今回ネタニヤフは、米大統領選の投票日にギャラントの更迭を再び発表した。イスラエル国内の中道派は猛反対したが、背後にいた米民主党は惨敗が確定して無力になっていた。米国がトランプになったおかげで、ネタニヤフは国内の政争から解放され、自由にパレスチナ潰しをやれるようになった。
(Protests Explode In Tel Aviv After Netanyahu Fires Defense Minister Gallant)
(Netanyahu fires Israeli defense minister)
中東ではもう一つ、イスラエルに宣戦布告して、世界の貿易の3割が通る紅海を航行する米欧系の船舶を攻撃し、非米側の船だけ通していたイエメンのフーシ派が、トランプの当選確定直後に、一方的に停戦を宣言した。
この件も、ネタニヤフからトランプへの贈り物だ。イスラエルは、自国周辺の脅威を減らすため、ヒズボラを潰し、イランを武力で脅しつつ非公式に交渉してヒズボラ支援をやめさせる策を展開し、かなり成功している。
ネタニヤフはイランとの非公式交渉の中で、イランの傘下にいるフーシ派がイスラエルに宣戦布告して紅海の船舶を攻撃している件について、トランプの当選日に停戦を宣言するようフーシ派に命じろとイランに要求し、認めさせたと考えられる。レーガン当選時のオクトーバーサプライズを思い出す。
トランプは、米国が関与している世界中の戦争をやめていくことを公約にしており、ネタニヤフはトランプの公約実現に協力した。
(Iran-Backed Houthis Reportedly Declare Ceasefire Shortly After Trump Victory)
1期目のトランプは、諜報界と対決して潰すことを目指し、諜報界から濡れ衣のロシアゲートなどの反撃を起こされ、最終的に諜報界がバイデンに選挙不正を手ほどきしてトランプを落選させた。
今後の2期目のトランプは、諜報界を潰すのでなく、諜報界で従来から強かったリクード系と組み、リクード系がトランプの代官として諜報界の反トランプ勢力を抑止・改悛・転向させ、諜報界をトランプの策に協力するように仕向けるのでないか。
リクード系が、諜報界やマスコミ権威筋でトランプを敵視してきた勢力をあぶり出し、潰していく。潰されたくないので親トランプに転向する勢力は許されるが、こっそり反逆するかもしれないのでリクード系の監視下に置かれる。
リクード系が、米諜報界をトランプ化に変身させる。これからのトランプ政権は実質的に「トランプとリクードの連立政権」のように思われる。
(Behind the Curtain: The most powerful Republican president of the modern era)
(Trump Outlines Plan To Decimate The Deep State)
イスラエルのリクードといえば、米国をイラク戦争に導いたブッシュ政権のネオコンに象徴される好戦派・軍産複合体・米単独覇権派として有名だ。共和党を追い出されて民主党に移ったネオコンは、トランプ敵視の筆頭だ。
世界中で米国の戦争を終わらせると公約した覇権放棄屋のトランプと、軍産で単独覇権派のリクードが協力するはずがないとか、トランプは好戦派に転向したのか??、なとど思われそうだ。
(Trump must end wars – veteran US politician)
たしかにリクードは領土拡張主義の好戦派で、パレスチナ抹消・民族浄化のガザ戦争も、ヒズボラとの猛烈な戦争も、彼らが推進している。だが、ガザやヒズボラの戦争は「約束の地」の拡張主義を実現するための策であり、それがある程度実現すれば戦争の段階は終わり、安定化の段階に入る。
イスラエルにとっての「約束の地」のうち、すでにヨルダンとエジプトはイスラエルの傀儡だ。レバノンとシリアは、今の戦争でイランの影響力が弱まれば調整期に入る。サウジは、今後何らかの形でイスラエルと和解する(サウジ子分のUAEはすでにイスラエルと国交)。
リクードの拡張主義は、かなり実現している。今後のトランプ(やその次のバンスとか?の)政権下で、米国が中東覇権を手放してイスラエルに渡し、中東がイスラエル、サウジ、イラン、トルコの4極体制に移行していく流れがありうる。そうなるとリクードは戦争屋でなくなる。
(Trump wins US presidency: As it happened)
1970年代に作られた大イスラエル主義のリクードは、冷戦後の1990年代に米英からイスラエルへの2国式推進の加圧が強まり、ライバルの労働党がアラファトとオスロ合意を結んだことを脅威と感じ、対抗策として冷戦後に縮小・弱体化していた軍産複合体に「居抜き」で入り込み、そこから米諜報界で大きな力を持ち、その力を使ってイスラエルで台頭して労働党を潰した。
リクード系は自作自演の911テロ戦争を起こし、軍産が米上層部を牛耳る体制を作ったが、リクード系のネオコンは隠れ多極派(ロックフェラーとか)に入り込まれており、テロ戦争は米覇権自滅のイラク戦争の大失敗を引き起こした。
(Western liberalism has ‘degenerated’ - Putin)
トランプ自身も、対中制裁と称して米中間の経済関係を断絶し、経済的に対米従属してきた中国を無理矢理に対米自立させて非米側を強化し、冷戦後の米覇権体制の要諦だった経済グローバリゼーションの解体を目論む隠れ多極主義者である。
ネオコンはトランプを敵視するが、実のところ両者は隠れ多極派の「こっそり同志」で、ネオコンとトランプの対立自体が演出策っぽい。
好戦的なイスラエルは、トランプの覇権放棄に協力しつつ、非米的な中東4極体制の一角に入っていく。
(Trump Has Sweeping Plans For His 2nd Administration: Here's What He Has Proposed)
リクードとトランプは、リベラル派の敵である点でも同志だ。トランプの圧勝は、冷戦後の米英リベラル覇権体制の終わりを示している。
トランプ快勝を誘発した勢力は、リベラル派やマスコミ権威筋を完敗させることで、米英覇権の強みだったリベラル主義を自滅・抹消させている。それは、リベラル派を「敵潰し」に熱中させて全体主義に変質させて自滅させたのと同根な策だ。
マスコミやジャーナリズムという、米英覇権の傀儡も無力化していく。良いことだ。マスコミだけでなく、ジャーナリズム自体がインチキな(うっかり)傀儡だった(私も間抜けで、ずっと騙されてきたが)。たとえば、ジャーナリズムの輝かしい業績であるウォーターゲート事件は、隠れ多極派のニクソンを潰すために単独覇権派が起こしたものだ。
(Goodbye to the liberal elites: Trump’s no savior, but he correctly identified America’s biggest problem)
('Russia, Russia, Russia' Again: Bob Woodward Claims Trump Being 'Blackmailed' By Putin)
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