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降りないバイデンを降ろす
2024年7月10日
田中 宇
この記事は「米民主党内乱、トランプ勝算の急増」の続報です。
米バイデン大統領は、せっかく側近やマスコミを巻き込んでこれまで認知症を隠してきたのに、6月27日にトランプとテレビ討論会をやってしまったばかりに認知症がバレて、立候補を取り下げろと民主党内の議員や大口献金者たちに強く要求されるようになってしまった。
専門医が大統領府に何度も呼ばれていたことが発覚するなど、バイデンが認知症であることがほぼ確定した。
(Parkinson's Specialist Met With White House At Least 9 Times Since July 2023)
(Comer Seeks Docs, Interview With White House Physician Who Obviously Lied)
これまでバイデンを礼賛してきたマスコミも、急に集団で態度を豹変し、バイデンを非難・秘密暴露するようになった。大統領府での記者会見も、認知症関連の質問ばかりだ。党内でバイデンを擁護する勢力が急減した。マスコミを巻き込んで仕組まれたクーデターの臭いぷんぷんだ。
("It's Just My Brain": Biden Defends Health As Dem. Governors Call For Resignation)
バイデンは包囲されて猛烈に攻撃されているが、立候補の取り下げを強く拒否し、予定通り出馬して当選するんだと言っている。民主党は8月19-22日に党大会を開き、全米各州の代議員が投票して統一候補を決める。
各州が代議員を決める段階はすでに終わっており、代議員のほぼ全員がバイデン支持だ。6月28日のテレビ討論会の前まで、民主党はバイデン続投で意思統一されていたから当然だ。8月の党大会でバイデン以外が候補に選ばれる可能性はとても低い。
(Here’s why it would be tough for Democrats to replace Joe Biden on the presidential ticket)
党大会の開催前に民主党全国委員会(DNC)を開き、そこで候補選び・党内選挙のやり方を変えることを決めるシナリオを以前の記事で指摘した。だが、党大会に集まってきている代議員たちは各州で選ばれる際に、バイデン支持を宣誓しており、他の候補を支持することを許されていない。
DNCが党内選挙の制度変更を決めても、それを直後の党大会に反映できない。党大会を各州の代議員選びからやり直していたら、11月の本選挙に間に合わない。直前に党大会規約を変更するシナリオは民主党内でも出ていたが、現実性がなく無意味だ(真に受けて書いた私が馬鹿でした)。
("The Sh*t Is Going To Hit The Fan On Monday": DC In Turmoil As Biden Says Only 'Act Of God' Will Dislodge Him)
8月の民主党大会は、バイデンを統一候補に選出する。それ以外の道はない。しかし民主党内ではすでに、バイデン以外の候補に替えないとダメだという話で持ちきりだ。どうするつもりなのか??。
いま語られている新たなシナリオは、党大会後に、バイデンに立候補を取り下げさせる話だ。どうやって??。誰も明言していないが、多分、ハンター・バイデンのスキャンダルなどを暴露して、バイデンを立候補取り下げに追い込むつもりだろう(だからウィキリークスを蘇生させた??)。
(As Biden team suggests there can be no alternative, DNC rules provide a path if Biden were to step aside)
バイデンが自ら降りない場合は、超党派でバイデンを弾劾する話を盛り上げ、加圧して立候補取り下げに追い込む。バイデンが降りた後、大々的な党大会のやり直しは間に合わないと言い訳しつつ、内輪だけのDNC会合を臨時に開き、そこで替わりの候補者を決める。
DNCは、民主党の上層部だけで開くので、このクーデターの首謀者たちが集まって好きな候補を立てられる。不人気なカマラ・ハリス副大統領を昇格させる必要はない。
(Biden may drop out of presidential race - NYT)
スキャンダルの暴露を、バイデンの大統領としての自主辞任や弾劾辞任につなげてはならない。大統領が辞任すると、自動的に副大統領が昇格して大統領になり、選挙に出馬する権利もそれに付随してしまう。
無能で有名なハリスを大統領にして、選挙に出馬させると、トランプに対して惨敗する。認知症露呈後のバイデンがそのまま出馬するのよりもひどい結果になる。
(US Democrats view Kamala Harris as only possible replacement for Biden - WSJ)
だが、これまでのバイデン降ろしのクーデターが悪い結果ばかり生んでいるように、今後の展開も、たぶん悪い結果ばかりになる。
スキャンダル暴露は、民主党全体の信用と人気を崩壊させる。バイデンは続投の意思が固いので、スキャンダルが暴露されても立候補を取り下げない。弾劾されて大統領を辞任しない限り、選挙から降りない。不人気が加速した民主党から、不人気なバイデンが出馬して惨敗する。
弾劾シナリオに共和党が便乗してバイデンを辞任させてしまうと、ハリスが後任になり、これも惨敗。そしてそもそも、バイデンをうまく立候補取り下げに追い込み、DNCがハリス以外を候補を立てたとして、それが誰であっても、トランプよりも人気が大幅に低い。どの道をたどっても、民主党の人気低下や党内分裂、選挙惨敗にしかならない。
(VDH: Bidengate & The Doom Loop)
結局、討論会なんかやらず、認知症を隠し続けてバイデンが選挙を戦い、11月5日の投票日に大規模な選挙不正をやるのが、民主党が勝てる最良の現実策だった。
民主党が支配的なウィスコンシン州の最高裁が7月5日、今年の選挙でも無人の期日前投票用の投票箱を設置することを許可する判決を出した。
(Wisconsin Supreme Court Reinstates Unstaffed Drop Boxes Ahead Of 2024 Election)
無人の投票箱の利用は、2020年の選挙で、民主党側による選挙不正の手口として使われた可能性がある。今年もまた無人の投票箱を置くことからは、今年の選挙でも民主党が不正をやる気であることがうかがえる。
ウィスコンシン州最高裁は、2022年の中間選挙に際しては、無人の投票箱の設置を禁止する判決を出していた。今回は、2年前の自分らの判決を、法律解釈が間違っていたと言ってくつがえした。無人の投票箱がよっぽど必要だったのだろろう。
米国の上の方(諜報界)を握る勢力(隠れ多極派)は、トランプが大統領に返り咲いた方が世界の多極化や非米化が進むと考えているのでないか。
彼らは、民主党が大規模な選挙不正をやってもトランプが勝つよう、民主党本部の人々をそそのかして、引っ掛け討論会によるバイデン降ろし・候補入れ替えの稚拙なクーデターをやらせたのかもしれない。
民主党内部が不必要なパニックになっていることや、クーデターの稚拙さから、諜報界に引っ掛けられた感じを受ける。
背景がどうであれ、今秋の選挙で民主党が勝つことはなくなった。トランプが返り咲く。
(Biden has five days to prove himself - top donor)
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