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米民主党内乱、トランプ勝算の急増
2024年7月3日
田中 宇
この記事は「米民主党でバイデン下ろしの内乱」の続きです。
再選にのぞむ米民主党のバイデン大統領は、6月27日の共和党トランプ候補との討論会で、認知症になっていることがバレて、人気が急減した。討論会後、民主党内で、バイデンは認知症なのだから再選を目指すべきでなく立候補を取り下げ、民主党は8月19日に予定されている党大会で他の統一候補を決めるべきだという声が強まっている。
(Get Off His Lawn: White House Insists Biden 'Tires Younger Aides' With His Extreme Vigor)
民主党の連邦議員の中でバイデンに立候補取り下げを求めたのは、まだ一人(Lloyd Doggett)だけだが、民主党の黒人議員団を率いるジム・クライバーン(Jim Clyburn)や、元下院議長のナンシー・ペロシらが、バイデンが認知症なのかどうか医師が診断して発表すべきだという趣旨を言い始めている。
クライバーンは討論会直後、バイデンは少し疲れていただけだと言って擁護していたが、その後、認知症の有無を調べるべきだとの立場に転換した。こうした要求は、今後さらに増えるだろう。世論調査では、米有権者の75%が、民主党は統一候補を差し替えた方が勝算が増えると考えている。
(Doggett And Pelosi Show: Narrative Shifts As Top Dem Officially Calls For Biden To Quit, Governors Hold Concerning Call)
(Legitimate to question Biden’s mental health - Pelosi)
バイデンと周囲の人々は、2019年ごろから認知症に気づいていたはずだが、ずっと隠してきた。民主党の有力者たちやマスコミは、バイデンが認知症だという話はトランプ支持者や陰謀論者の危険な妄想・陰謀論であり、ニセ情報として取り締まるべきだと言い続けてきた。だが実のところ、バイデンの認知症は事実だった。
バイデンの人気が下がるばかりなので、民主党のエスタブたちの間で、バイデンを討論会に引っ張り出して認知症を露呈させ、バイデンを出馬取り下げに追い込んで民主党候補を他の人に替えるクーデターが画策された。それが今回の話の本質だと、ヒラリー・クリントンの元側近などの内部関係者が言い出している。
クーデター説は当初、共和党側で出ており、それだけなら陰謀論扱いされかねないが、民主党側でもクーデター説を指摘する者が出現し、陰謀論でなく事実になっている。
(Rep. Lloyd Doggett becomes first Democrat in Congress to call for Biden's withdrawal from 2024 race)
(Former Hillary Aide Claims Debate Setup Was "Soft Coup" By Democrats To Replace Biden)
バイデンは、党内から加圧されても出馬を取り下げない。バイデン引き下ろし派は、8月19日の民主党大会までに党規約を変更し、本人が続投を希望する限り現職者(バイデン)が統一候補になるという従来の制度を廃止し、党大会での投票で統一候補を決める新制度に転換しないとバイデンを引き下ろせない。これからの1か月半でその転換をやるのはほとんど無理だ。
民主党本部は7月21日に、党大会の準備のためのバーチャル会議を予定している。本部内のバイデン支持派たちは、このバーチャル会議でバイデンを統一候補にすると前倒しで決定してしまうことを画策している。画策が成功すると、もう他の候補に差し替えられなくなる。
(DNC Weighs Early Nomination For Biden To Quosh Internal Party Dissent)
党大会や、その前のバーチャル会議までの日数が減る中で、民主党上層部で、バイデン派と反対派の対立が激化し、いろんな噂話や指摘が飛び交っている。
バイデン引き下ろし派の元締めの黒幕はオバマ元大統領だと、民主党上層部が指摘したと、トランプ系のタッカー・カールソンが言っている。バイデンはオバマ政権の副大統領だったが、バイデンは大統領になるとオバマの忠告を全く聞かなくなり、水面下で両者の対立が激化した。
(Tucker Carlson shares bombshell scoop on Joe, Jill and Obama from an 'unusually trusted source'.)
オバマは現職時、諜報界から権力を取り返そうと戦いを挑んだので、諜報界に嫌われている。バイデンは言いなりだから諜報界に好かれているが、国民からの人気がない。諜報界はオバマの返り咲きを望まない。言いなりになってくれる他の候補を探して据えたい。だが、今からだと時間が足りない。
(Tucker: Obama Is Privately Lobbying To Get Rid Of Biden)
(軍産複合体と闘うオバマ)
認知症で判断が鈍っているバイデンに代わり、政策決定を取り仕切っているのは妻のジル・バイデンで、ジルが了承すればバイデンも続投をあきらめるが、権力欲が強いジルは絶対続けると言っており、悪いのはジルだという話も出回っている。ヒラリー・クリントンやミシェル・オバマ以来、民主党は大統領の妻を持ち上げて落とす歪曲報道がお家芸だ。
(First Lady Jill Biden on What’s at Stake in 2024)
(There It Is: Biden Family Now 'Expected To Discuss Future Of Campaign' After Disaster Dementia Debate)
バイデンは出馬するなという呼び声が強まるばかりだが、替わりに誰を統一候補にすべきかという話は進んでいない。今のところ最有力な加州知事のギャビン・ニューサムが候補になったとしても、世論調査によると、トランプに負けてしまう。
現時点の私の予測は、バイデンが引き下ろし派の妨害を乗り越えて候補を維持し、党内の団結とバイデンの支持率が下がるだけの結果になり、民主党は団結が崩壊して選挙不正もうまくやれなくなり、11月の本選挙でトランプが勝つ、というものだ。
(Replace Biden With Gavin Newsom? Polls Show Democrats Would Still Lose)
民主党は2020年と2022年中間選挙で、激戦区において郵送票の偽造品を大量に注入してバイデンなど民主党候補を勝たせる選挙不正をやって成功した。
選挙不正を成功させるには、いくつもの選挙区の選挙管理委員会などに党の協力者がおり、諜報界の手引きで共和党側の監視を回避・妨害しつつ、開票時の深夜に不正な工作を成功させねばならない。不正の成功には、党内の団結が必要だ。不正を行う各地の要員たちが、自党の候補が勝たないとダメなんだと思いこんでいることが必要だ。
今回の騒動は、党内でのバイデンへの支持を大幅に減らす。他の候補への差し替えが成功したとしても、新候補に対する党員の支持を強める時間がない。
(米民主党の選挙不正)
バイデンのままでも、変更になっても、その候補に対する支持は今一つで、党内が分裂し、失望者が多いまま投票日になる。選挙不正に加担したいと思う党員は少ない。党のやり方に不満を持ち、不正が行われるなら暴露したいと思う人も増える。そういう人のために、ジュリアン・アサンジが釈放されてウィキリークスを再活性化して、情報注入を待っている。
不正はとてもやりにくくなり、やるとばれやすい状態だ。協力者が少ないと、不正に転換できる得票差の幅も狭くなる。バイデンが不人気で、トランプの人気が高まる中、不正が成功しない可能性が高まる。
米国の選挙不正の手口はいろいろある。ディーボルトなどの電子投票機を使って結果を不正操作する手口もある。投票機による不正は昔から指摘されているが、ずっと放置され、実体究明すら行われていない。意図的な不正でなくても、投票機があきらかにおかしい集計結果を出したりする無茶苦茶が以前から起きている。
(アメリカで大規模な選挙不正が行われている?)
6月2日にプエルトリコで行われた州知事の予備選挙で6000台のディーボルト投票機が使用され、何人かの候補の得票数がゼロとか、おかしな集計結果を出した。イーロン・マスクらが指摘したが、無視されている。米国は近年、政治も経済もウソが増えるばかりで腐っている。
ディーボルトは以前、共和党のエスタブ系の影響下にある企業だったが、共和党がトランプ党になってエスタブ系がほとんど追放された今、誰の傘下にあるのか不明だ。投票機を不正操作する権限をめぐる暗闘もありそうで、党内が団結していないと選挙不正をやれない。
(usk Says "Eliminate Electronic Voting Machines" After Dominion's Puerto Rican Imbroglio)
バイデンと対照的に、トランプは優勢が増している。7月2日、トランプの口止め料裁判を担当するNY地裁が、7月11日に予定されていた量刑を決める判決言い渡しを、9月18日もしくはそれ以降まで延期すると発表した。
判決延期の決定は、トランプのJ6裁判(2021年1月6日、選挙不正に怒ったトランプの支持者たちが、当局のスパイに誘導されて連邦議会議事堂を占拠したJ6事件を、トランプの扇動だと決めつけた裁判)で、米最高裁が7月1日に、現職大統領が公務として行ったことに対して事後に犯罪性を問うことはできないと起訴を却下する判決したことを受けたもの。
(MAGA explodes over Supreme Court’s ruling on Trump immunity…)
口止め料裁判は、トランプが不倫相手に払った口止め料の申告をごまかした容疑で、不倫も口止め料支払いも公務でなく私的行為だが、公務でないことを確定するためには裁判をやり直さねばならず、すでに出している有罪判決をいったん取り消す必要が生じた。
裁判所は、量刑の言い渡しを延期したというよりも、すでに出ている有罪を事実上取り消した。裁判所は、トランプが次期大統領候補者であることを勘案したとも言っており、大統領になりそうだから微細な申告ミスの容疑で裁判するのは不適切だという表明に近い。
この件の検察官(Alvin Bragg)はソロス傀儡の民主党系で、最近までトランプを敵視していたが、今回の裁判所の判断に反対していない(賛成もしていない)。口止め料裁判は、再審でなくお蔵入りすると考えられる。民主党は負けた。
(トランプの有罪)
トランプを微罪や濡れ衣で有罪にして攻撃する4つの裁判は、これですべて却下ないし破棄された。J6と、2020選挙結果受け入れ拒否の裁判は、現職時代の公務なので最高裁が却下。機密文書持ち出しは、容疑が大幅に縮小したため破棄。口止め料裁判も破棄された。
トランプは完全無罪になった。バイデンの認知症が暴露され、民主党が急速に分裂している今のタイミングで、トランプが無罪になり、濡れ衣裁判を多発した検察や裁判所の裏にいる民主党や諜報界の方が犯罪者であることが露呈した。これは劇的だ。
(Trump sentencing postponed after Supreme Court ruling)
トランプの優勢と、民主党の劣勢が増している。民主党は多分候補を差し替えられず、不人気なバイデンのままでいく。民主党は分裂が加速し、選挙不正もやれなくなっていく。11月の大統領選でのトランプ勝利が確定したと考えられる。
トランプは、返り咲いたらどんな政策を展開するのか。最近、トランプの元安保担当補佐官(Robert C. O'Brien)が、2期目のトランプの世界戦略とおぼしきものを発表したが、それは主軸を、欧州を舞台としたロシア敵視から、アジアを舞台にした中国敵視に移すものになっている。
(Trump cabinet hopeful wants the 'Israel model' for US China policy)
トランプは以前から「大統領になったらすぐにロシアとウクライナを和解させる」と言っているが、米国で今回バイデンが沈没してトランプが優勢になるとともに、ウクライナではゼレンスキーがロシアとの停戦和解に言及し始めた。単なるはったりかと思っていたら、プーチンやトランプと親しいハンガリーのオルバン首相が、開戦後初めてウクライナを訪問してゼレンスキーと会った。
(Zelenski Changes His Peace Plan)
(Viktor Orban Urges Zelensky For 'Quick Ceasefire' In First Visit Since War's Start)
プーチンは最近、今のラインで停戦し、ウクライナがロシア敵視をやめて中立に戻り、欧米が対露制裁を解除したら、ロシアはウクライナと和解できるという停戦案も出している。米欧ウクライナはプーチン案をとりあえず蹴ったが、いずれ停戦和解するならこの案しかない。
(Putin Makes Public Peace Offer to Ukraine)
ウクライナ戦争が終わってしまうと、米国側と非米側の分裂が緩和され、分裂によって進んでいた世界の非米化・多極化が止まる。非米諸国の中に米国側に戻る流れが起き、米覇権が蘇生するかもしれない。
トランプは覇権放棄屋だったが、それはもうやめるのか。このあたりについて分析が必要だ。
(Why the Russia-US conflict will outlast the Ukraine crisis)
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