不人気が加速するバイデン米民主党2022年1月7日 田中 宇米国で、バイデン大統領と与党民主党への支持がどんどん低下している。バイデンと民主党の失策は、新型コロナの超愚策、温暖化対策によるエネルギー危機、インフレ放置、警察縮小など犯罪への寛容策による治安の悪化と市街地の廃墟化、違法移民の野放し、覚醒主義の押し付けによる白人逆差別、間違ったジェンダー政策による混乱や社会悪化の急増、貧困救済策による貧富格差の拡大など、多岐にわたっている。最新の世論調査ではバイデンの政策に対する不支持が全米の60%となり、過去最高を更新した。米国民の66%が「バイデン政権は庶民の生活実態を理解していない」と思っている。 (POLL: Biden disapproval hits new high…) (Democrats’ Dismal Outlook for 2022 Midterm Elections Continues to Worsen) 米国では今年11月に中間選挙(連邦議会選挙)があり、連邦議会下院の全員と上院の3分の1が改選される。現在の議席配分は、下院が民主党221、共和党212で9議席差、上院が民主側51(議長=副大統領を含む)、共和50の1議席差となっている。民主党が上下院とも多数派を握っているが、僅差だ。下院も5議席が民主から共和に移ると多数派が交代する。2大政党制の米国ではこの四半世紀ほど、議会両院での2大政党間のバランスが僅差の状態が続いている。 (2022 Midterms Will Be a Huge Win for GOP No Matter What) (Did Gallup End 'Most Admired' 74-Year Polling Tradition to Avoid Trump Placing First?) 世論調査によると、今年の中間選挙で絶対投票すると答えた人が有権者の72%いる。投票率がとても高くなりそうだ。この投票率の高さは、多くの人々がバイデンと民主党の政策運営に不満を持っていることを示している。中間選挙が公正に行われた場合、連邦議会の両院とも多数派が共和党になる可能性が高い。現在、民主党ではすでに現職の下院議員24人が再選に向けて立候補しないと表明している(共和党では16人)。ペロシ下院議長も再立候補しないと報じられた。高齢や健康不安による現職不出馬もあるが、一般的に現職は有利なので、民主党で現職議員の不出馬が多いことも、共和党に有利になっている。 (Rep. Bobby Rush becomes 24th House Democrat not to seek re-election) (Let's Go Brandon Store Chain Expands As Biden's Approval Rating Plunges) 人種別では、米国人の15%ほどを占めるヒスパニックの民主党離れが目立つ。ヒスパニックは民主党支持と言われ、だからこそオバマとバイデンの民主党政権はメキシコとの国境をわざと警備せず、中南米のヒスパニックが違法移民として米国に流入するよう仕向けてきた。逆に、共和党のトランプは、国境に壁を作って違法移民の流入を阻止する策を推し進めた。バイデン政権になってからの1年間で新たに200万人のヒスパニックが違法移民として米国にやってきた。(米国の選挙は以前から本人確認なしで投票できる場合が多い。共和党側は本人確認を強化する法律を州レベルなどで作ってきたが、民主党は連邦議会で本人確認の強化策を「運転免許証などIDカードを持っていない比率が高い有色人種の有権者の投票を妨害する人種差別の措置」とみなして制限する法律を作って対抗してきた) だが、これまで民主党支持と思われてきたヒスパニックの中で近年、共和党支持者が増えている。トランプはマッチョが好きなヒスパニック男性の間で支持者を増やし、その他の要因もあってトランプ政権下の4年間でヒスパニックの共和党支持者が全米で8%増えた。ヒスパニックは(思想や宗教の重視でなく)現実主義の人が多く、経済政策で支持政党を決める傾向が米国の全人種の中で最も強い。インフレを止められず不況を悪化させたバイデン政権を支持しないヒスパニックが増えている(バイデンの経済政策への不支持率が全人種平均より7%多い)。2020年の大統領選では、投票したヒスパニックの63%がバイデン、37%がトランプに入れたが、再びバイデンvsトランプになりそうな次回2024年の大統領選ではこのままだとバイデン44%、トランプ43%になる。他の人種の投票行動が前回と同じなら、次回はトランプの圧勝になる。 (Democrats Face Brutal Reckoning With Hispanic Voters) 米国に移住するヒスパニックの多くは、勤勉に働いて豊かな中産階級になりたいと思っており、民主党の左翼的な悪平等主義に賛成しない。バイデン政権がやっている、増税した公金を貧困層や失業者にばらまくことに反対だ。米国に移住した直後は貧乏なので民主党支持だったのが、何年か米国に住んで余裕が出てくると民主党を支持しなくなる。ヒスパニックが民主党を見放す傾向はコロナ以前からだが、バイデン政権の左傾化と愚策でそれが加速している。ヒスパニックのほとんどは左翼でないし、米国を人種差別の国とも思っておらず、左翼が妄想する理想主義(のふりをした全体主義=社会主義)を支持していない。この5年間、黒人の人口は横ばいだがヒスパニックは3割増えた。黒人の間でも、バイデンのコロナとインフレの愚策はとても不人気だ。これらの状況に対し、民主党は意味のある対策を打たずに放置している。 (Polls Show Strong Support For Secession - Both Red And Blue States) などなど、これらを総合して考えると、2022年の中間選挙は連邦議会の上下院の両方で共和党が多数派を奪還し、2024年の大統領選挙ではトランプが勝つ。共和党内ではトランプへの支持が強く、24年の予備選でトランプ以外の人が統一候補に選出される可能性は今のところ低い。 ('Jaw-Dropping' Gains for GOP in Florida as COVID Refugees Register RED) (Democratic pollster: ‘Big Republican advantage going into 2022’ ) とはいえ、民主党には「秘策」がある。コロナ対策を口実に、郵送投票制度を大々的に導入して選挙不正をやって勝つことだ。郵送投票制は、ニセモノの票を紛れ込ませることがわりと簡単にやれるので、他の先進諸国ではほとんど採用されていない(米国で多用されている電子投票も不正しやすい。日本で行われているような、投票所で投票用紙を使うやり方が最も確実だ)。米国では以前から電子投票で不正の疑惑が多発しており、コロナ危機後は全米各地のとくに民主党が多数派を握る州や市町で郵送投票制度が導入され、2020年の大統領選で不可解な未明の逆転を生み出し、バイデンを勝利に導いた。バイデン政権下で、民主党系の諸州は郵送投票制度をさらに広範なものにしている。民主党が負ける可能性が高い今後の選挙で、郵送投票制を悪用した民主党側による選挙不正がさらに大胆に行われる可能性が高い。 (California is Now a Universal Vote-by-Mail State – Makes It Easier for Democrats to Steal Elections) (米民主党の選挙不正) (トランプの敗北) すでに書いたように、共和党系の諸州では、投票時のID確認など不正投票をやりにくくする策をとっているが、民主党は連邦議会でそれを上書きする法案(John Lewis Voting Rights Act)を昨年から審議し、すでに上院では民主党の全員が賛成、共和党の全員が反対し、可決されている。「マイノリティの参政権を保護する法律」という名目になっているが、実のところ民主党が不正をやりやすくする法律である。 (Schumer Says Senate will Vote to Ditch Filibuster to Advance ‘Voting Rights’ Bill – Making it Easier for Democrats to Steal Elections) (John Lewis Voting Rights Act -Wikipedia) 不正が行われなければ、来年から米議会は上下院とも共和党が多数派になる。米国の超愚策を牛耳ってきた「コロナ皇帝」CDCのファウチ博士のウソや不正を以前から議会で攻撃してきた共和党のランドポール上院議員は「共和党が米議会の多数派をとったら、偽証罪を皮切りにファウチの不正を暴き、裁いていく」と宣言している。ファウチが自分と武漢ウイルス研究所との関係について議会で偽証したことは事実なので、ランドポなど米上院がファウチを偽証罪で裁くことは十分に可能だ。だからファウチは今年の選挙で共和党を勝たせるわけにいかない。WHOなど世界の上の方から委任されているコロナ皇帝としての自ら権力の全てを駆使して、中間選挙で民主党に不正をやらせて共和党の勝利を阻もうとする。 (Rand Paul Vows To Bring Fauci To Justice If GOP Wins Back Senate In Midterms) (After First Year Bust, Here Are 5 New Year's Resolutions For President Biden) 共和党のテッドクルーズ上院議員は「共和党が下院を奪還したら、違法移民流入放置などの違法行為を理由にバイデンを弾劾して辞めさせる」と宣言している。米議会はトランプ政権末期に、トランプを弾劾するために、大統領を弾劾しやすいように制度を改定している。クルーズは、この改悪された弾劾制度を逆手に取ってバイデンを弾劾できると言っている。民主党の自業自得だと。ファウチだけでなくバイデンも、中間選挙で何が何でも民主党を勝たせねばならない。ファウチとバイデンという2人の権力者が組んで選挙不正をやりたがっている。米欧日のマスコミは、コロナの歪曲報道に象徴されるように、ファウチの側だ。2020年と同様、民主党の選挙不正を全く報じないだろう。 (Ted Cruz: GOP May IMPEACH Biden If They Win Control Of House Again) (Sen. Cruz: GOP-led House could seek Biden impeachment) 選挙不正は行われるだろう。だが、不正をやると必ず民主党が議会両院の多数派を維持できるものなのか。これまでのように2大政党間の得票差が僅差だと不正が成功する。だが今年の中間選挙は「素」の状態で民主党が大差で惨敗になる。この大差を不正票によって穴埋めして勝利に転換し、連邦議会の全体として民主党の議席が共和党を上回る状態を維持できないと、不正の成功にならない。どのくらいの票差まで不正によってくつがえせるものなのか、わからない。バイデンと民主党は今後もゼロコロナ策とワクチン追加接種の強要という超愚策を続けていくし、米庶民を困らせるインフレが今後さらに悪化するのも確実だ。温暖化対策の超愚策も続くからエネルギー危機もひどくなる。民主党への支持は確実に今後さらに減る。中間選挙の惨敗の度合いがどんどんひどくなる。民主党は、不正をやっても勝てないほどの惨敗になっていく可能性が強くなっている。 (Ray Dalio On The Changing World Order: "Entirely Possible Neither Side Will Accept Losing The 2024 Election") (Biden's 2022 Setting Up For Political Disaster) 民主党の左翼やヒラリークリントンらは最近「米国の民主主義の終焉が懸念される」と言い出している。「民主主義の終焉」とは「トランプが率いる共和党が政権をとること」を指している。米国民の大半がトランプと共和党を支持し、その結果、共和党が米国の政権をとる。これは「民主主義」そのものであり「民主主義の終焉」ではない。「民主主義の終焉」発言は、民主党が負けそうなことを党の上の方が自覚していることを示している。 (Why Is The Left Suddenly Worried About The End Of Democracy?) (The Democrats' Problem With Democracy) トランプや共和党の側は、意外なところから、選挙不正を暴露・阻止する助っ人を得るかもしれない。それはイスラエルだ。イスラエル諜報界は1960年代から米諜報界に入り込んで裏から牛耳り、米国内で盗聴などのスパイ活動を続け、米政界のスキャンダルを集めて米国の選挙に影響を与えたり政治家を脅して転向させたり、ビルクリントンのモニカルインスキー事件に象徴されるハニートラップを仕掛けたりしてきた。オバマ以来、米民主党はイスラエルと仲が悪い。民主党左派はパレスチナ人に味方し、イスラエルを「アパルトヘイト国家」と呼んで非難している。トランプは、民主党がイスラエルと反目していることを逆手にとって積極的にイスラエルの味方になり、イスラエルとサウジアラビアとの和解を仲裁し、イスラエルが望むイラン核協定からの米国の離脱を挙行した。トランプは最近「(民主党支持者が圧倒的に多い)米国のユダヤ人はイスラエルを敵視している(イスラエルを愛しているユダヤ人は、民主党を離れてオレを支持すべきだ)」と述べて物議をかもした。 (Trump says Jewish Americans 'don't like Israel') (Trump says American Jews 'no longer love Israel' and Jewish people 'run The New York Times') 左傾化する民主党は、今後ますますイスラエルを敵視する。バイデンはイラン核協定への復帰を目指している。国連の人権理事会は、イスラエルの入植活動への批判を強めている。トランプは人権理事会を離脱したが、バイデンは昨年、人権理事会に復帰した。米国が民主党政権のままだと、イスラエルはどんどん敵視されていく。他方、トランプは親イスラエルを演じているが、同時にイスラエルが牛耳ってきた米国覇権を自滅させたい「覇権放棄屋」「隠れ多極主義者」でもある。親イスラエルのふりをした反イスラエルのネオコンと同類だ。イスラエルとしては、民主党政権から敵視されてアパルトヘイト国家のレッテルを貼られるのは困るが、トランプの策略に乗って米国覇権の自滅に加担させられるのも嫌だ。 (Lapid Warns of Efforts to Label Israel as Apartheid State in 2022) (イスラエル傀儡をやめる米政界) イスラエルは、米民主党から敵視され、米国内での諜報能力が落ちているかもしれない。しかしそれでも、米政界をスパイするイスラエルの能力はとても高いはずだ。民主党が選挙不正をやるなら、イスラエルはそのやり口を事前に把握できる。2020年の選挙でイスラエルは、民主党に不正されてトランプが負けていくのを傍観した。当時のイスラエルは、米国の覇権を牛耳ってアラブとイランの両方を抑止する策のネタニヤフ政権で、覇権放棄屋のトランプは不歓迎だった。だがその後、米国覇権の低下が加速し、今のイスラエルは、アラブやイランとうまく和解していく道を模索するベネットらの連立政権だ。 (米覇権衰退で総和解があり得る中東) もう米国覇権は十分に自滅している。多極化も不可逆的だ。イスラエル上層部は、トランプを支援しても良いと思い始めているかもしれない。民主党はパレスチナに味方したりイランを甘やかし、イスラエルを潰そうとして非難するばかりだが、トランプはイスラエルに有利なようにパレスチナやイランとの和解策を手伝ってくれる(トランプがイラン敵視をやめるかどうか不明だが。イスラエルとイランの間の仲裁は米国でなくロシア中国がやれる)。イスラエル上層部が、民主党よりトランプの方がましだと決断したら、米国の選挙で民主党が不正をやることを事前にトランプに伝え、トランプや共和党を政権に返り咲かせることができる。そのような展開になるのかどうかが注目点だ。
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