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トランプの敗北

2020年12月13日   田中 宇

トランプ米大統領は、11月3日の大統領選挙で民主党側が行った不正を公式に暴くことができない可能性が高まっている。大統領選から6週間が過ぎ、あの選挙で民主党側が、郵送票と投票機を使って選挙不正を行った兆候がいくつかの点で出てきている。接戦州だったペンシルバニアやミシガンでは、それまで郵送票に有権者の署名が必要だったのが、今年から署名が不要になり、郵送票の偽造がしやすくなった。郵送票の大半はバイデン票だ。接戦州では、消印がなかったり、辻褄の合わない日付の消印の郵送票も有効票としてバイデンの得票になっており、それらが無効になるだけで勝敗が逆転する。投票後の開票中の夜中に共和党の監視団が選管によって排除され、その後、スーツケースに入った票が引っ張りだされて開票され、そのほとんどすべてがバイデン票として計上されるといった怪しい動きもジョージア州などで起きている。米国の選挙で使われている投票機が簡単に不正できるものであることは以前から指摘されていた。投票機を精査すべきだという要求もいくつかの州の議会で出された。 (A summary of the Texas election lawsuit) (The Same Organized Fraud That Took Place in Michigan Took Place In Georgia on Election Night

選挙管理委員会が、開票所を監視しにきた共和党側の人々を遠ざけたり、窓に目隠しを貼るなど、各地で選管が民主党寄り・反トランプであると思われる事例も起きている。不正の指摘の中にはなるほどと思えるものが多く、きちんと調べていけば公式な不正として暴露できそうだ。今秋の選挙で民主党が不正をした可能性は高い。だが、これらの不正の疑惑は、きちんと調べられることがなく、今回の選挙後にトランプ陣営や共和党が起こした裁判のほとんどは門前払いで終わっている。マスコミも、今回の選挙で民主党が不正を行った疑惑について全く報じたがらない。大企業が運営するSNS(FAANG、GAFA)も、ネット利用者が選挙不正について語ることを禁止抑制している。不正が報道されず、裁判所に通らないのは、不正が「なかったから」でなく、マスコミやネット企業や裁判所が米国の軍産エスタブの一部であり、彼らがトランプの敗北を望んでいるからだ。 (米ネット著作権法の阻止とメディアの主役交代) (覇権過激派にとりつかれたグーグル

トランプは、米国の覇権を放棄・崩壊させたい「覇権放棄屋」「隠れ多極主義者」であり、米国の覇権を恒久化したい軍産エスタブ(深奥国家)の仇敵だった。軍産は、2016年の就任時からトランプに「ロシアのスパイ」の濡れ衣を着せて潰そうとしてきた。隠れ支持者の影響でトランプの勝利になりそうだった、今秋の選挙で、軍産は民主党に不正をやらせてバイデンが勝った形を作り、それをマスコミや裁判所が積極的に支持・追認するかたちで歪曲報道が流され続け、門前払いが食らわされた。 (米民主党の選挙不正

共和党系のマスコミとされるFOXやWSJも本質的には軍産傘下であり、トランプの権力が安泰だった選挙前は親トランプな感じを醸し出していたが、選挙後は他のマスコミと同様に、選挙不正などなかったという姿勢をとっている。「不正を暴くのがジャーナリズムだろ!」と言う人がいるかもしれないが、軍産傘下であるジャーナリズムが暴く対象は多くの場合、軍産に楯突く者どもだけだ。戦後のきらびやかなジャーナリズムの始まりとなった「ウォーターゲート事件」は、軍産に楯突いて冷戦終結やドル覇権瓦解(ドルショック)を試みたニクソン大統領を辞めさせるための微罪発掘だった。軍産支配を切り崩したトランプは、ニクソンの後継者であり、当然ながらマスコミに敵視される。任期を終えた後の大統領を訴追しないという米政界の不文律を破り、トランプは任期後に申告漏れなどの微罪を発掘されて逮捕され、政治的に抹殺されるかもしれない。軍産マスコミは、トランプが2024年に再出馬するのを防ぎたいはずだ。 (大統領の冤罪

今回の選挙後、トランプが負けた裁判として決定的なのは12月11日に出た、テキサス州がペンシルバニア州などを相手に訴えた連邦最高裁の訴訟の判決だ。この裁判でテキサス州は、ペンシルバニア、ジョージアなど、民主党による不正が行われたと疑われる接戦州の州政府が、州議会に諮らず、選挙前に、郵送票の署名廃止など不正をやりやすくする手続きの改定をやったことが、米国全体の選挙結果の歪曲、民主主義の破壊につなる不正であると主張した。この訴えに対し最高裁の判事の多数意見は、テキサス州が他の州の選挙のやり方に干渉することを認めず、被告側の諸州の選挙制度の改定によって不正が行われやすくなったかどうかの判断に入らず、訴えを却下・門前払いした。最高裁のこの判決で、トランプが裁判によって選挙結果を覆すことは不可能になったと報じられている。 (Supreme Court rejects Texas’ bid to overturn Joe Biden’s election, handing decisive blow to Trump) (Texas files reply brief in election suit at SCOTUS, final step before justices issue order in blockbuster case

裁判所には、政治に立ち入りたがらないので門前払いをやりたがる、という面もある。裁判で選挙結果をくつがえすことが難しいことは前からわかっていた。トランプにとっては、裁判よりも、全米各州で選挙人集会が行われる12月14日に、トランプが負けたことになっている接戦州で、軍産マスコミが勝利を宣言した民主党の側だけでなく、共和党の側にも選挙人集会を開かせて当選証書を二重化し、最終的な勝者を決める1月6日の両院合同会議で、憲法修正12条に沿って、上院議長のペンス副大統領がトランプ当選を決める、という「裏街道」の方が実現性が高かった。トランプ自身、選挙前の9月に、この裏街道について語っていた。 (トランプ再選への裏街道

だが今日(12月12日)の時点で、トランプが負けたことになっている接戦諸州の共和党が12月14日に対抗的な選挙人集会を開きそうになっている州は一つもない。対抗的な選挙人集会をやるなら、事前の準備が必要だ。3日前の段階で何も兆候が出てこない、オルタナティブメディアも何も報じていないのだから、共和党が対抗的な選挙人集会を開く州は一つもないと予測できる。2重に当選証書が発行されなければ、1月6日の両院合同会議でどんでん返しが行われる可能性もゼロになる。12月14日が終わった段階で、トランプの敗北が確定する。 (トランプの敗北?

トランプは、接戦各州の共和党が、自分のために対抗的な選挙人集会を開いてくれると期待していただろう。だが、共和党の地方議員の多くは以前から軍産に政治献金されており、トランプを見捨てて軍産に味方したのだろう。就任以来、ロシアゲートなど軍産から売られた喧嘩に勝ったトランプは、諜報界(=軍産)をある程度支配できていた。だから11月の選挙で民主党が不正をすることをトランプは把握していた可能性がある。トランプは、民主党に不正をやらせた上で、各州の共和党の支援を受けつつ修正12条を使って最終的な勝利を決め、続投して民主党の不正を捜査・検挙して民主党と軍産を潰すつもりだったのかもしれない。だが、協力してくれると思った各州の共和党も実は軍産の一味であり、そこでつまづいてトランプは勝てないことになった。民主党の選挙不正は「完全犯罪」になった。 (トランプ再選への裏街道<2>

米国の投票機は2000年以前からだいたい同じものが使われており、20年以上前から選挙不正が行われていたふしがある。投票機で簡単に開票不正ができることは以前から知られていたが、放置されたきた。選挙後に不正が指摘されても、やられた側の候補はあまり戦わず早々と敗北を認め、選挙不正に対する徹底究明は行われてこなかった。選挙不正は放置され、選挙後の紛争は2大政党間の談合で解決されてきた。米国の選挙不正は、軍産が米国の権力を保持するために機能してきた観がある。米国が「選挙不正のない民主主義の成功の象徴」だというのは、軍産マスコミのプロパガンダである。トランプは、戦後に軍産支配が始まって以来最も軍産に楯突いて、軍産潰しに成功した大統領だ。それでも今回の選挙で軍産にしてやられ、不正選挙を暴けず敗北させられつつある。選挙不正の完全犯罪は続いている。 (不正が横行するアメリカ大統領選挙

これまでトランプに対して面従腹背だった共和党の軍産系の人々は、接戦州で対抗的な選挙人集会を開くことを拒否してトランプの落選を確定し、党内からトランプを追い出して満足だろう。しかし、トランプが負けて民主党のバイデン政権になると、共和党は「永遠の野党」に突き落とされる可能性がある。連邦議会上院は、これまで共和党が多数派だったが、1月6日のジョージア州の決選投票で民主党が(不正して?)2議席とも獲得すると、上院の民主党と共和党が50対50の同数になる。議長は副大統領が兼務なので、バイデン政権になる場合ハリスだ。上院の多数派が共和党から民主党に替わる。下院と大統領府も民主党なので、共和党は連邦政府で全くの野党に成り下がる。民主党のやりたい放題になる。 (Newt Gingrich On Georgia Runoff: "We Need To Win By A Bigger Margin Than The Left Can Steal"

この状態で、民主党は永久に自分たちが勝つ形に選挙制度を改定し、共和党が二度と政権や議会多数派を取れない状態を作るかもしれない。そこまで考えると、共和党の軍産系の人々はトランプを追い出して喜んでいる場合でないことがわかる。だが現実は、共和党の壊滅に向かっている。今回の選挙でトランプが勝って続投していたら、負けた民主党は左派と中道派に分裂する可能性があった。民主党と共和党のどちらが勝っても、米国の2大政党制は崩壊に瀕していた。軍産は、2大政党制をあきらめて(もしくは意図的に崩して)もっと独裁的なシステムに替えざるを得なくなる。

トランプらの努力の結果、今回の選挙不正に関して軍産マスコミやネット企業が情報を抑制歪曲しても、オルタナティブメディアなどを通じて情報が流れ、共和党支持者の70-80%が選挙不正があったと思っている。彼らは、軍産=深奥国家が自国を隠然支配し、民主主義がインチキなものにされたことを把握しつつある。トランプは任期後も、草の根の共和党支持者である彼らに支持され続け、英雄視されて在野の指導者であり続けるかもしれない。その流れでトランプが2024年に出馬するという話もある。だが、軍産は先手を打ってバイデン政権にトランプを脱税などで逮捕させ、政治的に抹消するかもしれない。共和党の草の根の人々が政治運動を展開しても、民主党のBLMやアンティファなどの暴力好きの左翼に好き放題に暴行され、「人権重視」を標榜する権威筋も彼らを「極右」として中傷し続ける。共和党支持者はさらなる受難の時代になる。しかし、彼らの受難の状況から、次の何らかの動きが出てきそうだとも感じられる。米国らしさを体現する人々は昔から、共和党支持者である。 (Nearly 80% of Republicans in Recent Poll Believe Results in Pennsylvania Are Littered with Fraud

これを書いているうちに、最高裁で敗訴したテキサス州が分離独立を示唆する動きを始めたとか、トランプが軍産にやられたことにようやく気づいて支持者の百万人集会を開きたがっているとか、新しい展開が矢継ぎ早に出てきている。トランプが負けてバイデン政権になったら米国と世界は何がどうなるか、に関する私なりの分析もある。これらはあらためて書く。 (GOP chair says 'law-abiding states' should 'form a union' after SCOTUS rejects election suit



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