崩れない911公式論2019年8月23日 田中 宇2018年(昨年)4月、911事件に関する米政府の判断に疑問を持つ米国の弁護士たちで作る「911調査弁護士会(Lawyers' Committee for 9/11 Inquiry)」が、911事件現場であるニューヨーク市の検察に対し、「911事件で倒壊した世界貿易センタービル(WTC)は、米政府の公式論のような、ハイジャックされた飛行機の衝突で倒壊したのでなく(ジェット燃料の燃焼温度ではビルの鉄骨が溶けない)、あらかじめビル内に仕掛けられた、ビル制御崩壊(高層ビル解体工事)用の高性能爆弾の爆発によって倒壊したと考えられるいくつもの証拠がある。倒壊現場から高性能爆弾に特有の物質が見つかっているし、当日の消防士らの証言や、WTCの倒壊を撮影した動画の分析などが証拠だ。誰が何のために高性能爆弾をWTC内部に仕掛けて爆発させて多くの人々を殺したのか、米政府がなぜ間違った結論に固執しているのか、米検察は再捜査すべきだ」という趣旨の請求書を出した。 (Lawyers' Committee for 9/11 Inquiry) (9/11: Finally the Truth Comes Out? Jan 4, 2019) これまで何度か書いてきたように、2001年9月11日に起きた911「テロ」事件に対する米政府の公式な結論は、いくつもの点で不合理で、その不合理さの一つが、911調査弁護士会が指摘した「WTCの倒壊はどう見ても爆弾による制御崩壊」ということだ。この指摘はすでに911事件の当日、米軍系の研究所の制御崩壊の専門家であるバン・ロメロ(Van Romero。当時ニューメキシコ鉱業技術研究所副所長)がメディアに対して語っている。ロメロ氏はその後、公式論の方向に発言の訂正を余儀なくされた。911事件の多くの不合理さは、マスコミや権威ある人々(軍産傀儡)にとってタブーであり、うっかり不合理さを正直に指摘した人はロメロ氏のように上の方から強い圧力を受けて態度を変えさせられる。指摘した人が一般人の場合は「頭のおかしい陰謀論者」のレッテルを貼られる(私はこちら)。 (テロ戦争の終わり) (仕組まれた9・11【5】オクラホマ爆破事件と911) 米国の上層部(軍産エスタブ)は、911に関する不合理な公式論を、不合理だと人々に指摘させない「タブー化」によって維持してきた。米上層部は、公式論が不合理であると知りながら、力づくで公式論を維持してきた。911調査弁護士会の請求も「陰謀論に毒された頭のおかしな異端の弁護士たちの奇行」とみなされて米当局から無視されて当然だった。だが意外なことに、請求書を受け取ったNY市南部地区の検察は約半年後の18年11月、「911に関する再捜査が必要かどうか、大陪審を招集して審議してもらうことにした」という趣旨の返答を、911調査弁護士会に対して出してきた。これは、米当局(の一部)が初めて911公式論に対する不合理さの指摘に対して無視の一点張りによるタブー化の維持から脱却し、公式論の不合理さについて審議することを手続き上認めたものとして画期的だった。 (7 NOV 2018 — U.S. Attorney Geoffrey Berman Will Comply with 18 USC Section 3332) ("Breakthrough": U.S. Attorney Agrees to Present Evidence of WTC Demolition to Federal Grand Jury) だが結局、その後さらに9カ月が過ぎたが、911再捜査の是非を審議する大陪審は召集されていない。昨年11月の検察側からの返答は、形式を取り繕うための「だまし」だった可能性が増している。WTCのビル崩壊原因をめぐる公式論の不合理さを感じている人々の中には、911当日、現場に駆けつけてWTC内部に取り残された人々の救出作業中にWTCが崩壊して死亡したNY市の消防士たちの関係者がいる。彼らの一部であるNY市の自治的な消防団の一つである「フランクリン広場・ムンソン地区消防団(FSMFD)」の運営委員会は7月24日に委員会を開き、委員5人が全会一致で、911事件の再捜査を求める決議を可決した。 (New York Area Fire Commissioners Make History, Call for New 9/11 Investigation) (NY Fire Commissioners Demand New 9/11 Probe, Citing "Overwhelming Evidence of Pre-Planted Explosives") この決議は、NY市南部地区の検察に対し「911調査弁護士会に対して昨年約束した大陪審の招集を早く進めてくれ」と促す意味がある。米国の公的な機関が911再捜査を求めたのはこれが初めてだ。FSMFDは、WTCから約20キロ離れたNY市内のクイーンズの方にある消防団で、911当日に消防車で駆けつけて救出活動をしている間にWTCが崩壊し、24人の消防士が死亡している。 (Do firefighters believe 9/11 conspiracy theories?) 911事件は間もなく事件から18年が過ぎる(この記事は気の早い「18周年記事」だ)。記憶は風化し、多くの人にとって真相などどうでも良い「昔の話」になっている。公式論の不合理さを指摘する人を陰謀論者扱いする体制は固定され、ほとんど揺らがない。だが同時に、近年トランプが米大統領になって、911後に米国が展開してきたテロ戦争や単独覇権主義のインチキさが露呈するような戦略を展開し、米国と世界の人々が911とその後の米国の戦略の不合理さをより強く感じる流れになっているのも事実だ。911公式論は、表層的(報道されている仮想現実的)には、まだ鉄壁の強さだが、実質的には、以前より多くの人がおかしい、怪しいと思うようになっている。 (Majority Of Americans Do Not Believe The Official 9/11 Story) (How is London’s Grenfell Tower Still Standing?) WTCは内部に仕掛けられた爆弾で崩壊したのに米国の政府や上層部(軍産マスコミ)がそれを隠している、という話が陰謀説でなく事実だとしたら、爆弾を仕掛けたのは当局筋自身だ。93年に起きたWTC爆破未遂事件が、まさにFBIがエージェントにやらせたことだったが、その手法が01年にも繰り返されたことになる。911は米諜報界の自作自演だったことになる。米国は、自作自演で911事件を起こし、それをイスラム組織のせいにして恒久的な「テロ戦争」を開始し、アフガニスタンやイラクなどに侵攻して何十万人もの無実の市民を殺した。アルカイダやISといった「敵」も、米諜報界の支援を受けてきた。米国は、史上最悪の国家犯罪組織だったことになる。 (FBIに雇われていた1993年のテロ実行犯) 911事件が米諜報界の自作自演であるなら、なぜあの事件が起こされたのか。これについても私は何度か書いている。冷戦後、米上層部では諜報界の黒幕だった英国と組んで「金融覇権体制」を強化する動きになり、軍事覇権が軽視されたが、これに不満な軍産系は、米軍を中東に引っ張り込みたいイスラエルと組んで、米国を軍事覇権に引き戻す911事件を引き起こし、米国がイスラム世界を恒久敵視するテロ戦争の体制が作られた、というのが私の読みだ。911後、軍産系の好戦派が米政府を牛耳ったが、その中には親イスラエルのふりをした反イスラエル・隠れ多極主義のネオコンが入り込み、テロ戦争を過激に稚拙に展開して自滅的に失敗させ、米国の覇権を意図的に浪費し、恒久的なはずのテロ戦争を短めの約20年で終わらせた。この過程で米国は史上最悪の犯罪国家になった。トランプは、ネオコンが途中までやった米国覇権の自滅策を完遂する覇権放棄・多極化策を展開している。 (覇権転換の起点911事件を再考する) (911十周年で再考するテロ戦争の意味) トランプ政権下でも911の公式論は崩れず、公式論が維持されたまま米国覇権が先に崩れていくかもしれない。だが、そうならずに911公式論が破壊されていく可能性もある。それは、911事件の犯人扱いされたサウジアラビアが、米国の同盟国から敵に転換させられ、米国に敵視されたサウジが犯人扱いの濡れ衣を晴らそうと911事件をめぐる秘密を暴露していき、公式論が崩れる可能性だ。左傾化する米民主党は、米国の同盟国だったサウジやイスラエルを敵視する傾向になっている。トランプは、サウジやイスラエルとの同盟関係を是が非でも維持する姿勢(演技)をしているが、これがまた利権優先の腐敗した構図を意図的に露呈しており、全体としてトランプの抵抗を乗り越えて米国がサウジやイスラエルと疎遠にしていく流れになっている。サウジとイスラエルは、911事件の表と裏の「容疑者」であり、米国がサウジ・イスラエルと疎遠になるほど、911の公式論を破壊しようとする動きが横から出てくる。 (911サウジ犯人説の茶番劇) (国家と戦争、軍産イスラエル) 911の公式論は、健全な洞察力や情報分析の努力があれば、不合理なものだと見抜けるような存在だ。そして911公式論の不合理が見破れれば、QEや地球温暖化人為説、イラン露中への濡れ衣敵視など、他の歪曲的なプロパガンダの不合理さも見えてくる。911以後の米国の世界戦略は不合理なものが多く、米国を知るほど米国に対する疑いやが増すという「知米は疑米」の構造になっている。911事件は「疑米」の原点である。私はそのように実感しつつ、911以来の18年間、いろんな分野の「疑米」を記事にしてきた。 (プーチンを怒らせ大胆にする) (米国が中国を怒らせるほどドルが危なくなる) だが残念なことに、対米従属しか眼中にない日本では「疑米」の姿勢が「良くないもの」「反米」「陰謀論」としか見なされず、日本人のほとんどは米国の本質や覇権構造について何も知らないまま無為に過ごしており、これは今後日本の「弱さ」となってはねかえってくる。日本以外の同盟諸国の多くも「疑米」の姿勢を持ちたがらない反面、米国に敵視された諸国は逆に「疑米」の精神を持ち、その分だけ、米国覇権が自滅した後の多極型の世界において優勢を得る。 (理不尽な敵視策で覇権放棄を狙うトランプ) 米国がトランプになって「疑米」よりさらに取り組みやすい「呆米」(トランプの米国の無茶苦茶さに呆れること)の姿勢が登場してきた。独仏や豪加といった同盟諸国が「呆米」の姿勢を強めている。しかし、この段階になってもまだ日本は疑米も呆米もやっておらず、世界有数の間抜けな国になっている。
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