終わりゆくロシア敵視2019年7月20日 田中 宇7月11日、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が初めて電話会談を行い、ウクライナ内戦を終わらせていく方向で合意した。手始めに捕虜交換などを進める。ウクライナでは、今年4月の大統領選挙で、ウクライナ国内のロシア系住民やロシア本国との和解を公約にしたコメディアンのゼレンスキーが勝ち、今回の停戦和解への道筋が始まった。ウクライナは5年間の内戦で経済が疲弊し、西半分のウクライナ系の国民は、東半分のロシア系の分離独立傾向を阻止する戦意を喪失し、東部のドンバス地方の自治付与(事実上のロシア化)やクリミア半島のロシア帰属を容認するしかない状態だ。内戦終結とともに、こうした状態が公式化すると予測される。 (Putin discusses Ukrainian conflict, prisoner exchange, in first direct phone call with Zelensky) (Ukraine's Russian-speaking president gives glimmer of hope to war-torn east) (Russia's Putin discusses ending conflict in eastern Ukraine with president Zelenskiy) 2014年からのウクライナ内戦は、米英がウクライナの極右勢力をけしかけてウクライナの親露的なヤヌコビッチ政権を転覆させ、ロシア敵視の極右政権を樹立させたことで始まった。米英は、極右にウクライナの政権を取らせたら、ロシア系(母語が露語)が多く親露的なウクライナのドンバスとクリミアがウクライナから分離独立してロシアとくっつきたがり、ロシア系と、好戦的な極右勢力が戦闘して内戦になると予測した上で政権転覆を誘発した。ロシアは、ウクライナから分離独立したがるロシア系勢力を支持・支援せざるを得ず、クリミアが住民投票でウクライナから分離してロシアに編入してもらうことを決議したのをロシアが受諾した時点で、米英は「ロシアがウクライナ領であるクリミアを不正に併合する国際法違反を犯した」と言って、独仏など米同盟諸国を巻き込んでロシア制裁を開始した。 (Russia and West spar at UN over minority rights in Ukraine) (ウクライナでいずれ崩壊する米欧の正義) (ウクライナ民主化の戦いのウソ) 米英がウクライナ内戦を誘発した目的は、国際社会(米同盟諸国)、とくに親ロシアに傾きがちな独仏(=EU)を、恒久的なロシア敵視(=対米従属)の構図の中に押し込めておくための冷戦戦略だった。クリミアは、かつてソ連邦の内政的な都合でロシアからウクライナに編入された歴史があり、もともとロシア領だったので、ウクライナにロシア敵視政権ができた時点でロシアがクリミアを併合するのは合理的だったが、米英はこのような歴史が同盟諸国での世論形成時に軽視されるようマスコミや専門家を動員した。14年の内戦勃発後、独仏は、ロシア側とウクライナ側を仲裁して停戦和解(ミンスク合意)しようとしたが、極右政権のウクライナ政府は米英にけしかけられてロシア敵視を貫いたため、合意は長続きせず内戦が続いた。 (The Obama Ukrainian Nightmare Seems To Be Ending, At Last) (ウクライナ米露戦争の瀬戸際) (ウクライナ東部を事実上併合するロシア) 以下やや脱線。従来、ウクライナ内戦は、オバマ政権の米国務省内(ヌーランド国務次官補ら)など米国の勢力(軍産複合体)がウクライナ極右を支援して親露政権を転覆させて内戦を誘発したという「米国のしわざ・英国はあまり関係ない」説が強かった。だが最近、英国の諜報界(MI6)が冷戦戦略(英国が米国の黒幕で、同盟諸国が対米従属である体制を維持するための戦略)の一つとして、オバマ政権下で、ロシア敵視のプロパガンダ(情報歪曲、偽ニュース)を米英国内や同盟諸国、国際社会にばらまく役目をしてきたことがわかってきた。究極のロシア敵視策(トランプ敵視策)である「ロシアゲート」が濡れ衣だったことがバレていく昨年来の流れの中で、米国より英国がロシア敵視のプロパガンダを捏造する主役だったことがわかった。このため今回の記事では、ウクライナの政権転覆や内戦を誘発した主体を「米国」でなく「米英」と書くことにした。 (Britain Ramps Up Media War On Russia) (危うい米国のウクライナ地政学火遊び) (スパイゲートで軍産を潰すトランプ) 米国側の勢力は、ウクライナ内戦を誘発した民主党系(ネオリベ)、イラク戦争を起こした共和党系(ネオコン)を問わず、政治活動家あがりの人々が多いため、比較的バレやすいおおっぴらな(わざとバラして失敗させる隠れ多極主義的な)形で政権転覆の策謀をやってしまうのと対照的に、英国側の勢力はプロのスパイ(MI6要員)であり、事後もバレずに策略を展開する。このため、政権転覆や人権外交など、冷戦構造や米英覇権の維持策は、主に米国が手がけているように見えるが、実のところ、米国側(とくに民主党政権)は、英国に操られている「人形」の傾向がある。裏で覇権運営やロシア敵視の戦略を立案している黒幕は英国だ。先日の記事に書いたように、英国が米国覇権の黒幕であるのは終戦時からのことだが、冷戦後、英国を振り落とそうとする米国と、すがりつく英国との暗闘が激化し、英国が黒幕であることが見えやすくなってきた。 (米国が英国を無力化する必要性) (Isikoff, Who First Peddled The Fake Steele Dossier, Invents New 'Russian Influence' Story) (Fired UK Ambassador Who Trash-Talked Trump Also Vouched For Christopher Steele) 昨年3月に起きた「スクリパリ事件」で、英国でロシア側が仕掛けたとされる生物化学兵器の攻撃を受けて死にかけたと報じられ、その後元気になったものの、英当局によって行方不明にされている亡命ロシア人(元KGB、のち英国に亡命してMI6傘下)のセルゲイ・スクリパリが、ロシアゲートの捏造文書(スティール報告書)の作成に関与していたこともわかってきた。スクリパリ事件は、邪魔になったスクリパリを「消す」ための英当局(MI6)の自作自演、もしくはトランプ傘下の米諜報界からの逆襲(英国にヘタを打たせて黒幕性を露呈させる策)だった可能性が強くなった。これについては改めて書きたい。やや脱線ここまで。 (Mainstream Media Hide Skripal's Connections To Russiagate-Trump Case) (英国の超お粗末な神経ガス攻撃ロシア犯人説) (大統領の冤罪) (英スクリパリ事件と米イラン協定離脱の関係) 7月11日のロシアとウクライナの大統領どうしの電話会談で、ウクライナのゼレンスキーは、プーチンに対し、今後の停戦和解交渉で米英独仏の首脳たちに同席してもらいたいと提案した。プーチンは、米独仏の首脳の同席には反対しなかったが、英国のメイ首相については、もうすぐ辞めるのだから同席を頼むのはおかしいと言って反対した。ウクライナ側はまだ英国に頼りたいようだが、ロシア側はそれを拒否している。トランプは隠れ多極主義なので、ロシアとウクライナの和解を仲裁しない。仲裁するなら独仏が中心になり、独仏とロシアの(対米自立的な)和解も同時並行で進む。 (‘In what capacity?’ Putin puzzled as Zelensky invites outgoing PM May to mediate their talks) (Russia Begins Handing Out Passports To Ukrainians From Conflict Zone) ウクライナ問題がロシアの優勢で解決し、独仏とロシアが和解を進めていくのをしり目に、トランプはいずれ、ロシアの天然ガスをドイツなど西欧に運ぶ建設中の海底パイプライン「ノルドストリーム2」がロシアの脅威を拡大しているのにドイツがそれを容認していると言って、ドイツ(EU)を経済制裁しようとするだろう。ロシアでなく米国から(シェールで増産した)天然ガスを買えと言うだろう。これは英国風(米覇権維持)のロシア敵視策に見えるが、実はそうでなく、ドイツやEUが米国の命令に反逆・無視するように仕向け、欧州を親ロシアと対米自立に追いやる覇権放棄策だ。 (Europe Is Stuck between the United States and Russia) (Ukraine Zelensky believes Trump can solve issue of Nord Stream 2 in favor of Ukraine) (揺れる米欧同盟とロシア敵視) EUは11月から最上層部が交代する。大統領に相当する欧州委員長が、対米自立的なジャンクロード・ユンケル(ルクセンブルク元首相)から、ドイツ元国防相のウルスラ・フォンデアライエンへと交代する。フォンデアライエンは、対米従属・ロシア敵視的であると報じられた。ユンケルは、自分の後任がフォンデアライエンになることに反対しているという。だが、これらは目くらましだ。フォンデアライエンは、従来からの国家統合を進めてEUを「欧州合衆国」にするとともに、欧州統合軍を作ると宣言している。これらは、欧州が対米自立して米国やロシアと並ぶ世界の「極」の一つになる動きだ。フォンデアライエンは前任者のユンケルと同様、対米自立を目指している。EUの最上層部に新任される人々は、全員が対米自立的な姿勢であり、今後ロシアとの和解が進んでいく可能性が高い。 (EU At The Crossroads: Integration Or Disintegration) (Can Ursula von der Leyen save the transatlantic relationship?) (ユーラシアの非米化) EU(独仏)とロシアが結束して米英と対立する喫緊の最大案件は「イラン問題」(イランにかけた核兵器開発の濡れ衣をどうするか)だ。以下、最近のイラン問題の動きのまとめから。イランと国際社会(米露中英独仏)が、濡れ衣構造に手をつけないで(強いプロパガンダの構造があるので濡れ衣を晴らすのは無理だから)イラン核問題を乗り越えるために2015年に結んだ核協定(JCPOA)から昨年トランプの米国が離脱して最近イランへの制裁を復活し、トランプは他の諸国にも新たなイラン制裁への参加を強要した。トランプは先月、イランを空爆する素振りさえ見せた。だがその後、米軍や軍産がイランと戦争すると米側への悪影響が大きすぎるといってトランプをとめたため、トランプは態度を軟化させている(これも計算のうち)。7月18日には、共和党の戦争反対派(覇権縮小派、リバタリアン、隠れ親トランプ)のランド・ポール上院議員らが、トランプの非公式な特使としてイランのザリフ外相とニューヨークで会い、米イランの和解について話した。(ザリフは国連出席のため訪米した。米国は、しぶしぶだぞという演技をしつつビザを出した)。 (Source: Iran FM met Rand Paul to feel out打診 possible US-Iran talks) (Rand Paul angles to become Trump's emissary to Iran) (イラク戦争の濡れ衣劇をイランで再演するトランプ) (米国を孤立させるトランプのイラン敵視策) 米議会下院では、トランプがイランを攻撃するなら事前に米議会の承認を得ねばならないという法案が可決された(トランプは拒否権発動のかまえ)。米当局(CIA?)とイラン側が、イラクのクルド地区で秘密裏に会合した(議題は不明)という報道も出てきた(イラクのクルド地区はサダムフセイン時代からCIAの拠点)。ポンペオ国務長官らはイラン敵視の発言を繰り返しているが、全体としてみると、もう米国はイランを攻撃しない感じだ。イラン問題での米国の内部分裂や決定不能性が露呈している。 (Report: US, Iranian Delegations Secretly Met in Northern Iraq) (House votes to restrain Trump on war with Iran, setting up showdown with the Senate) この状態を見て、少し前まで米国を恐れてINSTEX(米国のイラン制裁を回避するためのユーロ建ての対イラン貿易決済システム)を作ったものの動かしていなかったEUは6月28日にINSTEXの稼働を発表した。さらに7月18日には、これまで静観していたロシア政府が、INSTEXに参加する意志を初めて示唆した。これは画期的だ。これまでロシアとEUは、別々にトランプのイラン協定離脱への対応(制裁回避策)を進める傾向だったが、INSTEXにロシアが参加すると、EUとロシアの対米的なイラン制裁回避策が合体していく流れが始まる。 (Trump To Unleash Hell On Europe: EU Announces Channel To Circumvent SWIFT And Iran Sanctions Is Now Operational) (In Major Threat To Dollar's Reserve Status, Russia Offers To Join European SWIFT-Bypass) 今後トランプが、ロシアの天然ガスをEUに送るノルドストリーム2のパイプライン建設を理由にロシアを制裁した場合、EUはイランだけでなくロシアともつながったINSTEXを使って、ユーロ建てで米国の対露制裁を回避してロシアとの貿易(天然ガスの輸入など)を続けられる。EUが対米自立していくと、トランプはそのうちEUに対する経済制裁も始めるだろうが、そのときEUはINSTEXを使って米国による制裁を回避しつつ世界との貿易を続けられる。INSTEXは、トランプが乱発している世界各国に対する経済制裁を無力化するシステムになっていく。 (Iran, Russia pour scorn on US moves at UN nuclear watchdog) (Non-EU states to join INSTEX trade mechanism with Iran: Senior EU official) 世界に対するトランプの経済制裁は「米国の言うことを聞かないとドル決済を禁止するぞ」という圧力だが、INSTEXは「ユーロで決済するからドルなんか使わないよ」というEUからの切り返しだ。INSTEXが使われていくほど、世界のの貿易の「非ドル化」が進み、ドルの基軸性が壊れ、米国の覇権が自滅していく。覇権放棄屋のトランプは、これを意図的に進めている。 (Goodbye Dollar, It Was Nice Knowing You!) (中露に米国覇権を引き倒させるトランプ) (理不尽な敵視策で覇権放棄を狙うトランプ) INSTEXには、EUとイランとロシアだけでなく、中国やインド、トルコなどの非米諸国も入っていきそうだ。トルコやインドは、ロシアから迎撃ミサイルS400を買うので、米国から経済制裁されそうになっている。とくにトルコは、NATOの結束を壊しつつ先週からS400の配備を開始している。トルコやインドもINSTEXを使えば、米国以外の世界との貿易を続けられる。INSTEXなど、制裁に「抜け穴」が作られるほど、トランプは世界に対する経済制裁に拍車をかけ、ドル覇権の自滅を進めていく。 (India, Russia Seek to Skirt U.S. Sanctions Threat to Arms Deals) (ドルを破壊するトランプたち) (米国の覇権を抑止し始める中露) イランに対する「核兵器開発」の濡れ衣そのものに対しても、最近のEUは濡れ衣維持のプロパガンダに乗らなくなっている。核協定を一方的に離脱して今にもイランを空爆しそうな米国に対し、反抗的なイランは、米国が協定を守らないならわが国も守らないと言って、協定で定められた上限を超えてウラン濃縮を進めてみせた。米英などのマスコミは「イランが核兵器を作ってしまう」と針小棒大にプロパガンダ報道して騒いだが、EUは動じず「イランのウラン濃縮の上限突破は大した問題でない」と発表した。イランのウラン濃縮は、医療用や原発の燃料用であり、以前から核兵器と関係ない。 (EU's Mogherini: Iran commitment reduction no significant JCPOA noncompliance) (トランプがイラン核協定を離脱する意味) トルコの話をもう少し。トルコのS400購入は、NATO(=世界の対米従属構造)を壊し、ロシアの中東覇権を拡大する多極化の促進になるが、同時にトルコ国内の政治情勢として、選挙で連敗して独裁を維持しにくくなっているエルドアン大統領が「汚い」あの手この手を使って独裁を維持するための好機となっている。トルコが対米従属を維持したままだと、民主や人権や独裁反対にうるさい欧米の基準に従わねばならず、エルドアンも「汚い」手法を使いにくく、政権転覆される懸念が増す。だが、ロシアからS400を買って米国から制裁され、対米従属やNATOをやめてロシアや中国の側に本格的に転じると、欧米から民主や人権や独裁反対をうるさく言われても無視できるようになり、エルドアンは好き放題に独裁を強化できる。 (Margolis: Turkey Calls Trump's Bluff) (Trump admin to impose sanctions on Turkey for buying Russian S-400 air defense systems) (欧米からロシアに寝返るトルコ) NATOを崩壊させたくない軍産がトルコに甘い態度をとると、エルドアンはますます強気になり、露中イランとの結束を強める。それを見て、他の非米的な諸国も、米国の警告や制裁を無視して露中イランと取引・結託するようになる。S400は、米国の最新鋭の戦闘機F35を迎撃できるとされる、ロシア製のコスパの良い最新鋭の迎撃ミサイルであり、これを買うと、米国から割高な防衛装備を買う必要がなくなる(日本も買ったら? 笑)。S400が普及するほど、露中が強くなり、非ドル・非米・多極化が進む。 (S400迎撃ミサイル:米は中露イランと戦争できない) (Trump: Not Fair to Turkey or US to Block F-35 Sales) (Russia eyes big picture with S-400 sale to Turkey) 露イランとの関係で、トルコなど非米諸国と対照的に貧乏くじを連続して引かされているのが英国だ。ロシアとウクライナの和解開始で、英国が米国や独仏にやらせていた歪曲的なロシア敵視の構図が破綻し始めたことはすでに書いた。英国はイランに対しても、トランプの米国からの依頼で、好戦的かつ自滅的な作戦をやらされている。7月4日、英国軍が英領ジブラルタルで「シリアに石油を運ぼうとしていた」とされるイランのタンカーを、シリア制裁違反の容疑で拿捕・拘束したが、実のところ、このタンカーはシリアに向かうものでなく、拿捕は濡れ衣に基づいていたことが発覚した。 (Is Britain Making Itself a Target in the Gulf?) (US, Iran Each Demand Release of Oil Tankers) その後、ホルムズ海峡を航行中の英国のタンカーがイランに拿捕されかけたとされる事件が起きた。マスコミはイラン非難の報道をしたが、実のところ、このタンカーは夜中にトランスポンダーを切ってイラン前面を航行するという不審な行動をわざとやっており、イランを挑発するための「おとり」だった。イラン軍(革命防衛隊)が引っかかってタンカーを臨検すると、近くに隠れていた英軍艦が出てくるシナリオで策謀が進められたが、イラン側が策謀を察知しててタンカーを臨検せず、英軍との衝突を回避した。英国独自でこんな危険な好戦策をやるはずがないので、これも米国からの依頼だろうが、この事件も英国の国際信用を損なうものになっている(だから英傀儡の国際マスコミは現実を報じず、イランが英タンカーを拿捕しかけた、とだけ報じた)。 (Iran v. Trump Enters The Next Stage) (Iran comes to assistance of disabled foreign oil tanker in Persian Gulf) 英国は首相がボリス・ジョンソンになって10月末にEUから無協定離脱するので、英国の国際影響力はますます低下していく。米国の歪曲的なロシア敵視策を影で仕切ってきた英国の減退により、ロシアは敵視策から解放されて強くなり、米国が放棄した覇権を拾い集め、世界を多極化していく。 (Putin plans to strike 'anti-EU alliance' with Boris Johnson in huge Russia UK deal) 英国のほか、イスラエルやサウジアラビアも、トランプに引っかけられて貧乏くじを引いている。サウジはこれまで、同じペルシャ湾岸アラブ産油国であるUAE(アラブ首長国連邦)を子分として使い、UAEはサウジのイエメン侵略を助けるためイエメンに派兵してきた。だが7月初めにUAEは「米国とイランが戦争したらUAEも巻き込まれるので自衛力の強化が必要」という理由で、イエメンに派兵していた軍隊を撤退させて国内に戻した。これは実のところUAEのサウジとの「縁切り」だった。UAEはサウジから距離を置くとともに、イランとの対話を目立たないように進め、サウジ側からイラン側に転向している。トランプの目論見どおり、米国のイラン敵視策は破綻色を強めている。そのうちサウジもイラン敵視をやめざるを得なくなる。イスラエルは、すでに米国よりロシアを頼りにしており、こちらもイラン敵視が形骸化している。 (The UAE allegedly held secret meetings with Iran) (UAE pulls most forces from Yemen in blow to Saudis: Report) (UAE: "We Don’t Have Evidence" That Iran Carried Out Tanker Attacks)
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