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イスラエルの綱渡り戦略

2005年11月11日   田中 宇

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「自爆テロ」という戦いのやり方を、イスラム過激派組織の中に植え付けたのは、イスラエルの諜報機関だったのではないか、という仮説を私は持っている。

 話は1990年代にさかのぼる。イスラエルでは従来、アラブ諸国やパレスチナ人との関係について、2つの対立する戦略があった。一つは「ガザと西岸の占領地から撤退し、パレスチナ国家の樹立に協力することでアラブ諸国と和解し、国際社会にもイスラエル非難をやめてもらうことで、小さくても安定したイスラエルを作る」という中道左派の労働党の考え方である。

 もう一つは「アラブ人の最終目標はイスラエルというユダヤ人国家を全部消滅させることだから、撤退や譲歩をしても安定にはつながらない。占領地は死守すべきで、パレスチナ国家の建設など認めず、国際社会の非難など無視すればよい」という右派のリクードの考え方である。

 イスラエルは1980年代までは冷戦体制を利用し、左翼のアラブと対峙するアメリカと組み、右派の戦略が有効だったが、冷戦後のアメリカがイスラエルに和平の圧力をかけるようになった結果、左派の戦略が台頭し、1994年にオスロ合意が締結され、アラファトを指導者とするパレスチナ国家の建設が決まった。こうした左派の攻勢に対して右派が仕掛けたのが、パレスチナ人の過激派組織に「自爆テロ」をさせる戦略だった。

 パレスチナ政界では、最大勢力アラファトが率いるファタハ(PLO主流派)が左翼で、イスラム主義の宗教勢力の台頭を嫌っていた。イスラエルの諜報機関は、パレスチナ政界を分裂させるため、従来からイスラム主義の「ハマス」や「イスラム聖戦団」などをこっそり支援してきた。その支援ルートを使い、イスラエル国内の治安の甘いところを過激派に教え、自爆テロ攻撃をやりやすいように仕掛けた。(関連記事

 2003年には、イスラエルの諜報機関「シンベト」の要員が「アルカイダ」のメンバーを名乗り、パレスチナ人青年を電話で勧誘していた事件も発覚している。(関連記事

 イスラエルでは、自爆テロが1990年代後半に増え、その結果、パレスチナ人と和解しようというイスラエル国内の世論は急速にしぼみ、代わりに「アラブ人(パレスチナ人)は信用できない」「アラブ人が自爆テロをやめるまで、和平交渉はできない」といった警戒感の強い世論が台頭した。右派のネタニヤフやシャロンが首相になり、左派の支持者は減り、左派だった労働党は右傾化した。

▼911で得をしたイスラエル

 パレスチナ人のテロは、イスラエルの世論を大転換させた。中東和平の気運は失われた。だが、イスラエル右派としては、これで十分とは言えなかった。

 オスロ合意によってイスラエルを譲歩させて弱体化させるという戦略は、もともとアメリカ(欧米)から出てきたものであり、アメリカの政府や世論を「親アラブ」から「反アラブ」に変えない限り、イスラエルに対する和平圧力は続き、経済制裁などに発展するおそれもあった。

 この行き詰まりを一気に解消したのが、2001年の911テロ事件だった。911事件をめぐっては、イスラエルの諜報機関の要員が、モハマド・アッタら実行犯グループが住んでいたフロリダ州のアパートのすぐ向かいに部屋を借りて住み、アッタらの動向を監視していたことが判明している。(関連記事

 また事件当日、ニューヨークのマンハッタン島の向かいのニュージャージー側で、引っ越し業者になりすましたイスラエル諜報機関の要員数人が、小躍りしたり嬉しがったりしつつ、望遠鏡で世界貿易センタービルの倒壊を眺め続けていたため、不審に思った近所の人の通報で彼らが逮捕されるという事件も起きている。(関連記事

(アメリカでは、イスラエルの諜報機関は、引っ越し業者や、美術品の販売業者などを経営し、要人などの自宅に盗聴器を仕掛ける作戦を展開している。国防総省の応接間にかかっている絵画の裏に盗聴器が仕掛けてあったりする。この作戦は米当局によって暴露され「イスラエル・スパイ網疑惑」として知られている)(関連記事

(また、アメリカでは多くの電話会社が、料金管理をイスラエルの「アムドック」という会社に委託しているが、この会社がアメリカ国内の電話を盗聴できる仕掛けになっているという疑惑もある)(関連記事

 911で犯人とされた人々の大半はサウジアラビア人だったが、これらの中には濡れ衣の「人違い」が何人も混じっており、本当にサウジ人が犯人だったのかどうか怪しい。サウジアラビアは911以前には、石油利権を使って米政府の中枢や共和党に深く食い込み、イスラエルの最大のライバルだった。サウジ人に濡れ衣を着せて犯人扱いし「アラブ人はテロリストだ」という偏見を米国内で助長することによって、最も得をしたのはイスラエルである。

▼イスラエルとアメリカは一心同体に

 これらのことから、イスラエルが911事件の発生に関与した疑いは十分にあるといえる。ブッシュ政権の中枢には、イスラエル右派の申し子であるネオコンの人々がおり、国防副長官や国防次官をしていた。911当日、ハイジャックされた飛行機を追尾する防空体制は異様に貧弱で、何者かが事前に、通常の防空体制が稼働しないような何らかの目立たない仕掛けをした可能性が強いが、ネオコンにはそれを行う権限があった。(関連記事

 911は、アメリカを親イスラエル・反アラブの方向に転換させる作戦としては、大成功だった。「パレスチナ人に対するイスラエルの人権侵害」はどうでも良い話になり、代わりに「アラブのテロリストを抹殺せよ」といった主張が耳につくようになった。アメリカ人は、イスラエル人と同様の、テロにおびえる境遇に追い込まれた。アメリカは、イスラエルになった。

 911とともにブッシュ政権は「テロとの戦争」を開始したが、これはすなわち「イスラム教徒との戦争」「アラブ人との戦争」で、しかも「敵」として据えられたテロ組織「アルカイダ」は、実体の詳細がいつまでたっても判然としない組織だった。アルカイダの頭目とされるオサマ・ビンラディンは、いつまでたっても捕まらず、生死も所在も不明なままである。

 最近では、アルカイダのトップはビンラディンではなく、イラクにいるアブムサブ・ザルカウイであるという説も出てきている。ザルカウイも生死が不明な人物だが、彼がアルカイダを率いているとすれば、存在しないイラクの大量破壊兵器を存在していることにしてまで挙行したブッシュのイラク侵攻は「意味があった」ことになるので、好都合である。このようにテロ戦争は、基本的に、アメリカのプロパガンダ作戦が生み出した幽霊のようなものである。(関連記事

 911後、ブッシュ政権の高官の中には「テロ戦争は、今後数十年続く」と宣言する者が相次いだ。つまり、イスラエルとアメリカがアラブ人を敵に回して一心同体の関係となる、イスラエルにとって安泰な状態が、今後何十年も続くということである。(関連記事

▼中道派の乗っ取り作戦を受けてガザ撤退

 反アラブの世論の支持を受け、ネオコンが湾岸戦争当時からやりたかったイラク侵攻も実現した。大産油国で教育水準も高いイラクは、イスラエルにとって、中東で最も脅威となりうる国だった。そのイラクを、アメリカとイスラエルの傀儡国家に変身させ、うまくすれば、スンニ派とシーア派とクルド人の領域に3分割し、弱体化させる機会が訪れた。

 ところが、その後の展開は、イスラエルにとって都合の悪いものとなった。イラク占領は泥沼化し、アメリカは軍事力と財政力を浪費する事態となり、ブッシュ大統領の支持率も低下した。しかも、イラク戦争が失敗だと分かった後も、ブッシュ政権は中東民主化や先制攻撃といった強硬戦略を変えなかった。

 ブッシュの中東民主化戦略は失敗し、それがイスラエルやネオコン(ユダヤ人)の謀略の結果であるという評価が世界的に定着し、中東全域の人々が反米・反イスラエルの感情を強める中で、アメリカは「新孤立主義」に陥って中東から手を引き、イスラエルだけが敵対の中で取り残され、原理主義化を強めるイスラム諸国に攻撃されて滅亡させられ、ユダヤ人は再び流浪の民に戻る、という最悪のシナリオが懸念される事態となった。

 前回と前々回の記事で分析したように、私が見るところ、こうした事態は、米中枢でネオコンの好戦的な戦略を止めようとしていた「中道派」が、開戦直前の段階で、ネオコンよりも好戦的な態度に転換する「乗っ取り作戦」を行ったからである。(関連記事

 そして、イスラエルにとっての状況が悪化する中で、イスラエルのシャロン首相がとった戦略が、ガザから撤退し、アラブ諸国との敵対を解消し、アラブの憎悪に潰されることを防ぐことだった。(関連記事

▼ガザ撤退の間にエルサレムを取る

 シャロンは、アラブ人を信用しない右派政治家の代表格である。イスラエルが中東戦争で占領した土地を絶対にアラブ側に返さないという主旨で始まったイスラエル右派の入植地運動を1970年代の初期から支援し「入植運動の父」と呼ばれてきた。(関連記事

 そのシャロンが、ガザの入植地を撤退させる決定を下し、左派のような戦略を取り始めたことは、入植者などイスラエル右派全体を激怒させた。「シャロンは右派に暗殺されるのではないか」といった懸念も一時はあった。(関連記事

 ところが、シャロンがガザ撤退後に採っている戦略をよく見ると、「パレスチナ人と和解し、彼らの国家の建設に協力する」という左派の戦略とは似て非なるものであることが分かる。

 シャロンは、ガザから撤退すると同時に、エルサレムの周辺に隔離壁を建設し、過去の国連決議では、東半分をパレスチナ国家の首都、西半分をイスラエルの首都とすることになっていた聖都エルサレムを、全部イスラエルのものにしてしまいつつある。シャロン政権は、ユダヤ人にとってあまり重要でないガザを放棄し、それをアラブ側に「譲歩」と認識させている間に、最重要の聖地であるエルサレムを奪取してしまっている。(関連記事

 エルサレムは、南北に長いパレスチナの西岸地域のほぼ中央部にある。シャロン政権は、エルサレムを隔離壁によってイスラエル側に取り込むだけでなく、隔離壁でパレスチナを南北につなぐ交通網を遮断し、西岸を北部と南部に分断する戦略をやっている。(西岸の地図

▼アラファトを殺し、パレスチナを分割?

 今後、シャロン政権は、西岸のイスラエル入植地のいくつかを放棄する方針のようで、そうなるとガザと西岸の両方からイスラエルが撤退し、占領が終了することになる。だがその一方で、パレスチナ人の領域は、ガザと西岸北部、西岸南部という三つに分割された状態になる。これでは、パレスチナ人が国家を建設することは困難である。(関連記事

 政治的にも、西岸ではPLO主流派のファタハが強い半面、ガザではイスラム主義のハマスが強く、西岸とガザで政治的な分裂がある。これでは、パレスチナが国家になったとしても、イスラエルに対抗する強さを持つことができず、イスラエルの脅威にならない。(関連記事

 アメリカは、パレスチナ国家を強化するため、ガザと西岸をつなぐ直結道路を作り、これをイスラエル側の道路に入り込めないパレスチナ人専用の道路にする構想を持っている。これに対してシャロン政権はアメリカに対し、直結道路の建設計画を破棄するよう求めている。(関連記事

 パレスチナ社会を分裂させておくシャロンの構想は、2004年11月にパレスチナの英雄指導者アラファトが死去した結果、実現しやすくなった面がある。アラファトは、パレスチナ社会の全体を統合できる唯一の指導者だった。彼が死去し、後任議長のアッバスはカリスマ性が不足し、他に全体を統合できる有力な指導者がいない中で、パレスチナ社会は分裂を強めている。(関連記事

 アラファトの死には、不透明な点が多い。パレスチナ自治政府は、最近また「アラファトの死には疑問がある」と発表した。アラファトが死ねばパレスチナの分裂が強まること、アラファトの死はシャロンのガザ撤退が検討されている最中の出来事だったことから考えて、イスラエル側が毒殺した疑いもある。(関連記事

▼欧米を衛兵として使う

 このままだと、パレスチナ国家が建設できない可能性もあるが、シャロン政権にとっては、それこそが目標なのかもしれない。国家ができれば、次のパレスチナ人の目標は「イスラエルを潰すこと」になりかねないからである。ブッシュ大統領も先日、パレスチナのアッバス議長が訪米した際に「私の大統領の任期中には、パレスチナ国家は作れないかもしれない」と発言し、パレスチナ人を落胆させた。(関連記事

 ガザと西岸は、1948年にイギリス植民地のパレスチナにイスラエルが建国されてから、1967年の第三次中東戦争でイスラエルの占領地になるまでの約20年間、ガザがエジプト領で西岸がヨルダン領だった。シャロンの真の構想は、パレスチナを分断して国家建設が不可能な状態にした上で、1967年以前の状態、つまりエジプトやヨルダンなどの外部の国々に、パレスチナ人の面倒を見させようとすることかもしれない。

 今回は、アラブ諸国だけでなく、欧米の軍勢もイスラエルのために働かされる可能性がある。イスラエルはガザ撤退後、ガザとエジプトの間の国境の出入国管理も、パレスチナとエジプトに明け渡すことになった。その際、アラブ過激派がエジプトからガザに大量の武器を搬入し、ガザからイスラエルを越境攻撃するのではないかという懸念から、EUが国境に監視団を派遣することになったが、イスラエルはEUに、国境管理になるべく大きな責任を持つよう求めている。(関連記事

 これは、もしアラブ過激派がガザからイスラエルを攻撃したら、それをEUのせいにできるからである。EUはパレスチナ側を擁護し、イスラエルの弱体化を望む傾向が強いが、下手に関与すると、イスラエルの「衛兵」としてタダ働きさせられてしまう可能性がある。アメリカはすでにイラクで、イスラエルの望みどおりにサダム・フセインを倒すタダ働きをさせられている。

▼ハマスの台頭

 さて、これでイスラエルは安泰かというと、そうでもない。イスラエルにとっての問題は、分裂させ、弱体化させたはずのパレスチナ人が、ハマスなど過激派が台頭するかたちで再結束し、これまでのファタハ中心のイスラエルに譲歩するパレスチナ人が、イスラエルと徹底的に戦うハマス中心のパレスチナ人に変身してしまうかもしれないということだ。

 従来、パレスチナの政界は、アラファトが作った左翼的な政治集団「ファタハ」(PLO主流派)が最大の勢力だった。ところが昨年、民族の英雄だったアラファトが死去し、あとを継いだマフムード・アッバスにはカリスマ性が少ないため、ファタハの求心力が低下した。その空白を埋めるかたちで台頭してきたのが、イスラム原理主義の「ハマス」で、今年に入って3回に分けてパレスチナ各地で順次行われている地方議会選挙では、ハマスがかなり健闘している。

 3回の地方議会選挙では、ファタハが全体の議席の53%を占めたのに対し、ハマスは26%しかとれず「ファタハの圧勝」と報じられている。しかし、これはハマスの政党としての歴史が浅いため、都市部の選挙区にのみ候補者を立て、農村部には誰も立てなかったためで、都市部ではハマスが勝ったところが多い。

 人口比で見ると、ファタハが過半数を占めた地方議会の総有権者数は23万人なのに対し、ハマスが過半数を占めた議会の総有権者数は50万人に達し、支持者の数ではすでにハマスの方がはるかに多い。ハマスはガザで生まれた政党で、以前は西岸ではほとんど勢力がなかったが、最近は西岸でも勢力を拡大しており、今後の選挙でハマスが西岸の農村部に立候補者を立てるようになると、ハマスが明確に与党になる可能性が大きい。(関連記事

 イスラエルにとって、ファタハは譲歩的で、イスラエルが与えてくれたもので満足しようとする傾向が強いが、ハマスは党是ではっきりと「イスラエル国家の消滅」を目標に掲げる敵対勢力である。

 パレスチナでは来年1月、中央の議会選挙が予定されている。この議会選挙は本来、今年7月に行うはずだったが、与党であるファタハのアッバス政権は、直前になって、選挙の延期を決定した。7月に選挙をしたらハマスが勝ってしまうため、イスラエルが9月にガザから撤退した後まで選挙を延期し、ガザ撤退後に和平的な雰囲気が醸成され、イスラエルに敵対するハマスよりも、イスラエルに宥和的なファタハの方が良いとパレスチナ人が思うようになってから選挙を行う魂胆だったのだろう。(関連記事

 ところが現実には、ガザ撤退後も、平和的な雰囲気は全く醸成されないどころか敵対感が強まっており、アッバスの目論見は外れている。

▼黙示録が現実に?

 ファタハとハマスの関係はかなり悪い。10月初めには、ハマスがガザで、ファタハ所属の自治政府の公安幹部を誘拐した上、足を撃った後で解放するという示威行為を行った。その仕返しに、ファタハは西岸で、ハマスの活動家を誘拐したり、家に銃弾を撃ち込んだりした。

 ファタハとハマスが拮抗している間は、イスラエルを利するだけだが、これが今後ハマスの方が大きな勢力になっていくようだと、イスラエルにとっては危険な状態になる。

 シャロンは、ハマスに対し、ガザ撤退を実行する1年前の2004年春、ハマスの指導者シェイク・アハメド・ヤシン師を殺害し、続いてヤシン師の後継者となったアブデルアジズ・ランティシも殺害している。これは、イスラエル撤退後のガザでハマスが台頭してくることを恐れ、指導者を殺して勢力を削ごうとしたものと考えられるが、そこまでしたにもかかわらず、ハマスは再び勢力を拡大している。(関連記事

 イスラエルは、ハマスがパレスチナ自治政府の選挙に参加することを阻止しようとしたが、これは逆効果になっている。ハマスがイスラエルに抑圧されるほど、パレスチナの人々はハマスを支持するようになっている。ハマスの活動家たちは、ハマス以外の政党名で立候補するので、政党としてのハマスの活動を制限しても意味がない。(関連記事

 ブッシュ政権は、中東民主化戦略を貫き、自滅的な強硬路線を続けているが、この状態が続く限り、中東では、反米・反イスラエルのイスラム過激派の勢力がますます強まり、ハマスを支持する人々も増えそうである。

 シャロンの目標は、イスラエル周辺地域を安定させ、疲弊したイスラエル経済を立て直し、アメリカの中東撤退の可能性に備えることだろうが、現実はその目標とは反対の方向に進んでいる。イスラエルの隣国ヨルダンの首都アンマンでは11月9日、市街の3つのホテルで同時多発テロが起きている。従来ヨルダンはテロのない安全な国とされていた。この事件で外国人投資家らの足がヨルダンから遠のく懸念もある。(関連記事

(このテロは、ザルカウイ率いるアルカイダの犯行とされているが、すでに述べたように、ザルカウイは実体の薄い存在である。「ザルカウイの犯行」とされる事件は、アメリカやイスラエルの諜報機関が関与しているのではないかと疑った方が良い。アンマンで爆破テロの標的になったホテルからは、爆破直前、イスラエルの治安要員の引率で、イスラエル人の宿泊客だけが避難している。イスラエル当局は、爆破テロを事前に把握していたことになるが、報道は後から「避難したのは爆破が起きてからだった」と訂正された。この「訂正」のパターンは、7月7日にロンドンの爆破テロ直前に、ネタニヤフ元首相がロンドンのホテルから避難したという報道が、後から「爆破後」に訂正されたときと同じで、奇妙である)(関連記事

 中世に、ヨーロッパの十字軍に蹂躙されてひどい目に遭っていたアラブ社会で、英雄指導者サラディンが出現してアラブを結束させ、十字軍を一掃したような事態が今後再現されるかもしれない。もしかするとイスラエルは、聖書の黙示録の預言どおり、消滅する可能性もある。イスラエルが国家として存続できるかどうか、シャロンは危うい綱渡りを強いられている。(関連記事



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