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イスラエルのはしごを外すトランプ

2019年8月31日   田中 宇

8月25ー26日、イスラエル軍の無人機が、レバノンとイラク、シリアにあるイラン系民兵団の軍事拠点を相次いで空爆した。イスラエルはこれまで、シリアのイラン系拠点は何度も空爆してきた。イラクの拠点も7月から空爆し始めていた。レバノンを空爆したのは5年ぶりだ。イスラエルはまた、サウジアラビアが戦争しているイエメンのシーア派武装勢力(イラン系)であるフーシ派に対する空爆も検討していると報じられている。マスコミや分析サイトは、米国のイラン敵視に合わせてイスラエルがこれらのアラブ諸国のイラン系拠点を空爆しているのだとか、イスラエルが米国をイランとの戦争に引っ張り込もうとしているのでないか、などと分析している。 (Pat Buchanan Asks: "Will Bibi's War Become America's War?") (Israel Warns Any Hezbollah Attack Will Bring "Reprisal On Whole Lebanese State"

しかし、アラブ諸国に対するイスラエルの空爆は、米イスラエルに不利、イランに有利な状況を生んでしまっている。以下、詳細すぎると思われるかもとれないが、おのおの重要なので国ごとに説明していく。 (Iraqi Intel Believes Israeli Attacks Are Launched From Syrian Kurdish Bases) (Israel preparing to bomb Houthis in Yemen to warn them away from Iran – reports

イラクでは、イスラエルによる空爆が、米イスラエルへの敵視増加を生み、イラクに駐留している5千人の米軍に撤退を求める動きを加速している。オバマ前大統領の努力により、米軍は2011年にいったんイラクから完全撤退したが、「テロ戦争」の永続を画策してイラク撤兵を逆戻しさせたい米イスラエルの軍産複合体は、イラクのイスラム過激派を涵養・扇動して「アルカイダ」に替わる脅威であるIS(イスラム国)を台頭させた。ISが14年にイラク北部を占領し、窮地に陥ったイラク政府は米軍に再駐留を要請せざるを得なくなり、軍産はまんまとオバマの裏をかいてイラク再駐留を実現した。イラクではその後、米軍がISを退治するふりして支援・温存していた反面、イラン系民兵団がISと本気で戦い、シリアでのISの敗北と連動して、2017ー18年にイラクでもようやくISが退治された。だがその後も米軍は「ISの残党がまだ残っている」としてイラクに居座り続け、「ISはほぼ完全に退治されている」「米軍はISの残存規模を誇張している」と主張するイラク政府と対立してきた。 (Iraqi bloc calls for US troop withdrawal after Israeli air raids) (Pentagon Officials Eager To Present A Recovering ISIS, Facts Don't Support It) (敵としてイスラム国を作って戦争する米国

早く米軍に出て行ってほしいイラク政府は、米軍から「イラク政府軍が弱すぎるので出ていけない」と批判されぬよう、これまで別々に存在してきた政府軍とイラン系民兵団(PMUなど)を統合し、民兵団を政府軍に統合する動きを進めていた。今回イスラエル軍は、イラクで最有力なイラン系民兵団であるPMUの軍事拠点を空爆した。この空爆は、イラク側を弱めるどころか、イラク政府と民兵団の結束を強める結果となった。PMUは、すでにイラク政府軍の一部であり、イスラエルによる空爆はイラク国家に対する宣戦布告であると、イラク政府が発表している。米イスラエルは、イラク政府を親米側に引きつけてイランを仲違いさせようとしてきたが、その戦略は今回の空爆で破綻した。イスラエルのイラク空爆は全く逆効果になっている。 (Israeli strikes raise questions about US presence in Iraq) (Iraq Enters the Israel-Iran Proxy War

シリアでは今春来、イスラエルがシリア国内のイラン系民兵団の拠点を空爆し続けているため、シリアを安定させたいロシアを苛立たせている。ロシアはこれまで、シリア政府から招待されて駐留し続けるイラン系民兵団(レバノンのヒズボラ、イラクのPMUなど)の活動を制限することで、シリアにおけるイスラエルとイランの対立を緩和しようとしてきた。ロシアの要請で、イラン系民兵団はシリアの対イスラエル国境(ゴラン高原)に駐留しないようにしてきた。だが、ロシアの努力を無視するかのようにイスラエルがシリアのイラン系拠点を空爆するため、ロシアは報復として、イラン系民兵団がイスラエル国境近くに展開することを黙認した。トランプは米軍のシリア撤退を求め続けており、シリアにおいてイスラエルはロシアとうまくやっていくしかない。それなのにイスラエルはシリア空爆を続け、ロシアを怒らせている。馬鹿である。 (US-Israeli attacks on PMU meant to revive Daesh in Iraq: Kata'ib Hezbollah) (内戦後のシリアを策定するロシア

レバノンでも似たような状況だ。レバノンは以前からシリアの影響力が強く、シリア内戦でアサド政権・露イラン側が勝ったことにより、レバノン政府は完全にイラン系のヒズボラのものになり、米サウジの影響力が排除された。イスラエルはレバノン(ヒズボラ)と戦わず「冷たい和平」を維持する戦略を採り、この5年間、イスラエルはレバノンを攻撃していなかった。それなのに今回、イランの台頭と米国の退潮が加速しているのに、イスラエルはレバノンのヒズボラ拠点を攻撃した。レバノン政府は「イスラエルは(ヒズボラという民兵団でなく)レバノン国家に宣戦布告した」と宣言している。イスラエルは、敵を「民兵団」から「国家」に昇格させることをやってしまっている。馬鹿以外の何者でもない。 (Netanyahu Urges International Community to Act to Protect Israel) (Iraq, Lebanon See Israeli Attacks as a ‘Declaration of War’

読者は「もうたくさんだ」と思うかもしれないが、イエメンについても書いておく。イスラエルは、イエメンのイラン系民兵であるフーシ派をこれから空爆する予定だと報じられた。フーシ派との戦争に勝てずに窮しているサウジアラビアとの親密性を高め、米イスラエルとサウジが連携してイランとの対立を強化するための策らしい。報道が事実かどうかわからないが、事実としたらイスラエルはここでも大馬鹿だ。サウジは、もうイランと対立したくない。 (Saudi Arabia Acknowledges Defeat In Yemen - Starts To Sue For Peace) (Maariv: Israel involved in Yemeni conflict to serve ‘Saudi lover’

イエメン戦争もフーシ派と停戦して終わりにしたい。これまでサウジの「子分」だったUAE(アラブ首長国連邦)は7月、イエメンに侵攻させていた政府軍を突然に撤退した。「米イラン戦争が一触即発だ」と報じられる表向きと裏腹に、イランの台頭と米国の退潮が加速するなか、イエメン戦争で勝てないと悟ったUAEは、サウジの子分であることを放棄した撤兵した。もしくは、UAEとサウジの両方がイエメン戦争で勝てないと悟り、とりあえずUAEが先に撤兵し、それに対する米国の反応などを見ながらサウジも撤兵・停戦・和解する戦略に転じた。UAEはイエメン撤兵後、イランに接近し、ペルシャ湾をはさんで対面する両国の軍隊どうしが協議し、ペルシャ湾の安全維持を強化していくことで合意した。ペルシャ湾で米国がイランと戦争しそうなのに、湾岸の親米国だったUAEはイランに急接近している。 (UAE pulls most forces from Yemen in blow to Saudis: Report) (Why the UAE Is Hedging Its Bets with Iran) (U.S. Plans to Open Direct Talks With Iran-Backed Houthis in Yemen

UAEの外相は8月3日に「UAEとサウジは、イランとの問題を(戦争でなく)外交で解決したい」と表明した。UAEが、サウジの意に反してこんな表明をするとは考えにくい。サウジは、UAEに引っ張られる形で、もしくは最初からUAEと役割分担する形で、イランとの対立を解消し、イエメン戦争を和解によって解決したいと考えるようになっている。米イスラエルと組んでイランやフーシ派を敵視して軍事的に潰す方法はもう不可能だと、サウジとUAEは考えている。それなのに、その後のタイミングで、イスラエルがサウジのためにフーシ派を空爆することを計画中だという。イスラエルが馬鹿か、この話がウソかのどちらかだ。 (UAE, Saudi Arabia Prefer Diplomacy Over Confrontation With Iran, Says Emirati Minister) (Saudi Arabia, UAE form joint panel to enforce Yemen cease-fire

▼イスラエルにイラン系を空爆させた後、イランと和解したいと言い出してイスラエルのはしごを外したトランプ

延々と書いてきたが、最も大事なことを書いていない。それは「米国のトランプ大統領が、イランを戦争や経済制裁で倒す策をやめてイランと対話しても良いかも、と言い出している」ということだ。トランプは、イエメンのフーシ派とも話し合いの開始を計画しているとも報じられている。トランプは昨年から何回か「イランと話し合いたい」と言っているが、その一方でイランが対話開始の条件としている経済制裁の解除を拒否しており、軍産マスコミやイスラエルはトランプの対イラン対話姿勢をウソの演技と考える姿勢をとってきた。 (Trump, Iran’s Rouhani Both Say They’re Open to Talks in Coming Weeks) (US Plans for Secret Direct Talks With Yemen’s Houthis

だが今回は、イラン問題の外交解決(核協定の順守)を求めるフランスのマクロン大統領が、トランプとイラン側(ロウハニ大統領ら)との対話開始を仲裁しようと動き、先日フランスで開かれトランプも出席したG7サミットの開催地にイランのザリフ外相を招待した。米国はザリフを経済制裁の対象としているが、トランプはマクロンがザリフを呼ぶことに反対しなかった。トランプはザリフと会わなかったものの「会わなかったのは時期尚早だから」と言っており、条件が整えば会いたいとの姿勢だ(今回はマクロンら仏独英の代表がザリフと会った)。トランプが近いうちにイラン側と会うかどうか不明だが、少なくとも米国はもう本気でイランと戦争しようとしていない。米軍も、イランと戦争したくない(犠牲が大きすぎる)と正式に表明している。 (Trump leans into Macron's Iran diplomacy, open to meet Rouhani) (Israeli Officials Fear Trump Will Agree to Talks With Iran

米国がイランと戦争しない姿勢を強めているのに、イスラエルはイランと戦争することを前提に、アラブ諸国のイラン系民兵団の拠点を空爆している。この空爆で米国をイランとの戦争に引っ張り込めるなら、イスラエルの策は合理的だが、実際はむしろ逆に、アラブ諸国が米イスラエルを非難し、イランとの対立を戦争でなく外交で解決したいとアラブや欧州の親米諸国が考える傾向に拍車をかけている。「イスラエルは馬鹿だ」と何度も書いたが、実のところイスラエルは馬鹿でない。自国の安全を最重視している。米国と関係なく、イスラエルがイラン側に戦争を仕掛けることなどない。イスラエルが今回イラン系民兵団を空爆したのは、イスラエル自身が考えた戦略でなく、米国側からそそのかされたからだろう。 (Israel, Saudis Move to Preempt Trump Bid for Iran Talks) (Zarif Makes Unexpected Arrival At G7: Iran Oil Waiver Resumption In The Works?

イランと話し合いたいと言い出したトランプが、それを言い出す前にネタニヤフにイラン系への攻撃を要請するとは考えにくい。むしろ、トランプ政権内の好戦派(ボルトンとか)もしくは米イランの和解に反対する諜報界の軍産の好戦派が「このままだとトランプはイランと対話し和解してしまい、イスラエルは窮地に陥る。イスラエルがイラン系を空爆し、米イスラエルとイラン側との戦争を誘発することで、トランプの対イラン和解を阻止するしかない」などと言って空爆をとそそのかしたのでないか。好戦派はトランプとぐるで、イスラエルがそそのかしに乗ってイラン系を空爆したら、トランプがイランと対話・和解したいと言い出し、イスラエルのはしごを外して困らせる策略が最初から決まっていた、といった筋書きが考えられる。 (Weirdly, Trump seeks peace with Iran while Netanyahu battles it) (Rouhani backpedals on suggestion of talks with Trump

イスラエルは9月17日に総選挙があり、ネタニヤフは好戦的な世論に沿って、選挙に勝つために空爆を挙行したのだという解決記事がマスコミや分析サイトに出ているが、それらは間違いだ。イスラエル国民は、レバノンやシリアやイラクと戦争などしたくない。民兵団を「ピンポイント攻撃」するつもりでアラブの3つの国家に「宣戦布告」してしまうことなど、イスラエル国民は望んでいない。イスラエルは、今回のようなリスクの大きな戦闘行為を、米国からの働きかけがない限り実行しない。 (Israel’s Shadow War With Iran Widens as Netanyahu Faces Close Election Contest) (Netanyahu Hits Iraq, Syria, and Lebanon in Desperate Reelection Bid

イスラエルは今回の攻撃より前、イランに対する姿勢を敵視から協調に変えたUAEと親しくすることを続けていた。イスラエル自身、頼りにならない米国に頼って国家破綻につながりかねないイランとの戦争をするのはまっぴらで、むしろイランと仲良くする道を進むUAEと親しくしたい。だがトランプの米国は、UAEに接近するイスラエルを見て「俺も入れろ。どうやってイランを潰すかを話し合うんだろ。俺にも良い考えがあるぞ」と、ジャイアン的に割り込んでくる妨害策をやっている。 (The U.S. Has Joined Secret Talks With Israel and the U.A.E. The Topic? Iran.) (On Trump and Iran, the UAE Shifts Strategy — and Israel Should Take Heed

トランプらがイスラエルの「はしご外し」をやりたがる理由は、それによってイスラエルがトランプの米国を信用できない状態に追い込み「米国に頼れない以上、中東の覇権を握りつつあるロシアに頼るしかない」と考えさせ、米国にしがみついてたイスラエルを振りほどいて、米国の中東覇権の放棄・解体と多極化を進めたいからだろう。トランプはイランと対話したいと言うだけで実際の対話をしないと私が考えるのも、同様の理由からだ。トランプはイランに対し、対話希望と敵対・制裁強化という両極端を行ったり来たりし続ける理不尽な策をやることで、イスラエルやアラブ諸国、ロシアや欧州などが「米国を信じず、頼らない方が良い」と考えるように仕向け、ロシアやEUやアラブが米国抜きで中東を安定化させ、そこにイスラエルも取り込んでいくことで米国覇権の解体と多極化を実現しようとしている。トランプは理不尽策を貫き、世界を米国の命令を聞かない状態に不可逆的に押しやる。私はそう予測している。 (Pentagon Opposes Israeli Attacks on Iraq

トランプは、北朝鮮に対して昨年6月の米朝首脳会談以来、対立を避け続け、金正恩をほめそやす「ズッ友作戦」をとっている。トランプは、イランとも同じことをやりたいのでないか、と考える読者もいるかもしれない。私はそう思わない。戦争を辞さない北と、外交を好むイランは、外交戦略の基本が異なる。 (軍産の世界支配を壊すトランプ) (トランプはイランとも首脳会談するかも

トランプは、軍産と暗闘しながら世界戦略を主導している。軍産は、北朝鮮やイラン、ロシアなど「敵」の諸国との対立を永続させる世界戦略をやりたいが、トランプはその世界戦略を履行不能にして軍産を壊滅させ、対立を解消したい。軍産が、対立を永続するには、対立が適度な強さ(弱すぎず、強すぎず)であり続けることが必要だ。北朝鮮は強度の対立をいとわず、対立してくる相手とはとことん対立する姿勢だ。このためトランプはいったん北と徹底対立して対北外交の主導権を軍産から奪った後、米朝首脳会談をやって金正恩と個人的な信頼関係を築き、その後は一転して2人の親密さを維持することで軍産に付け入るすきを与えないようにしている。(なかなか次の段階に行けないでいるが。最終的に北の面倒を見るのを中国に押し付けて極東から立ち去るつもり。対米従属に洗脳された、おこちゃまな日本人には理解しにくいだろうけど) (トランプのイランと北朝鮮への戦略は同根) (好戦策のふりした覇権放棄戦略

対照的に、イランは対立を好まず、外交を重視する合理性を持っている。オバマはイランと核協定(JCPOA)を結んだが、軍産側はイランが核兵器を開発しているという濡れ衣を喧伝し続け、米国はイランとの敵対を解消しきれず、軍産好みの対立の永続状態から脱却できなかった。そこでトランプは逆に、JCPOAから離脱してイランとの戦争の可能性を再解放し、今にもイランと戦争しそうな姿勢と、今にもイランと和解しそうな姿勢の間を行き来して軍産を振り回しつつ、ロシアやEUなどにイラン問題の外交解決の主導役を押しつけている。トランプがイランとの対話を開始して好戦策を放棄したら、軍産が好戦策を拾い上げ、トランプのイラン和解策を破壊して主導権を奪ってしまう。これはオバマの失敗の繰り返しになる。トランプはそんな愚策を採らない。 (Netanyahu’s worst nightmare: a Trump-Rouhani meeting) (Trump Is Using Netanyahu's Political Ambitions to His Benefit

イスラエルのイラン系空爆は、国際政治的な意味で失敗に終わった。イスラエルは米国を信用できなくなっていく。米政界では、左傾化する民主党がイスラエルへの非難を強めており、トランプは「民主党を支持するユダヤ系は、イスラエルへの愛国心がないか無知である」と言い放った。トランプはネタニヤフに対しても、民主党を受け入れず自分を支持しろと求め、民主党の2人の連邦議員の入国ビザを発給拒否させている。イスラエル系が米政界を強く支配した90年代以降、イスラエルにこんな態度をとれたのはトランプが初めてだ。トランプの覇権解体策がイスラエルを弱体化させている。 (Jewish Democrats are ‘disloyal to Jewish people, Israel,’ Trump insists again) (Netanyahu turns his back on Democrats, US Jews) (Trump Says Jews Who Vote for Democrats Show Ignorance, Disloyalty

サウジやUAEも、米国に見切りをつけてイランと親しくしたがっている。先日、サウジの権力者であるMbS皇太子の弟が訪米した。トランプに「イランと和解しないでくれ」と言いに行ったとマスコミが報じているが、くそ軍産の歪曲報道もいい加減にしろだ。MbSの弟は、トランプに「イランと戦争しないでくれ。サウジとUAEがイランと和解するのを許してくれ」「イエメンを停戦させて戦争をやめたい。協力してほしい」と言いに行ったはずだ。マスコミは軍産イスラエルの傀儡なので、中東報道の意味づけに関して、全くあてにできなくなっている。「ジャーナリズム」は根本的に、たちの悪い詐欺である。 (Saudi Ruler Sends Brother to U.S. as Trump Wavers on Iran, Yemen) (Israel delivered UAE, Saudi message to US to stop strike on Iran

米国が退潮する今後の中東で、イスラエルをどう存続させるか。イスラエルを滅亡させようとすると、中東は核攻撃などの大戦争になってしまう。イスラエルの国家存続は必須だ。今後の注目点は、選挙後のイスラエルが、極右を外した連立政権を組めるかどうか、その連立政権が、米国に頼らない(ロシアなどに頼る)新しい中東和平(まずゴラン高原の返還と対シリア和解、その先に2国式的なパレスチナ和平)を進められるかどうかだ。パレスチナ人にイスラエル国籍を与えざるを得なくなる「1国式」は、イスラエルを壊してしまう。西岸をヨルダンに併合させる案も、王政が倒されるのでヨルダンが拒否する。結局のところ、何らかの2国式しか解決策はない。 (米国に頼れずロシアと組むイスラエル) (ロシアの中東覇権を好むイスラエル

ロシアは、イスラム諸国を説得して中東和平を進め、イスラエル国家を存続させてユダヤ人に感謝されれば、中東の覇権を永続できるし、経済面でも有利を得られる。プーチンは頑張るだろう。ロシアは、イランとアラブ側が協力してペルシャ湾の安全を確保していく案を国連で提案したり、イエメンの停戦を仲裁したり、シリアの安定化を進めるなど、中東各地で影響力を拡大している。 (How Russia manuevers between Saudi Arabia, UAE in Yemen) (Collective Security in Persian Gulf: Can It Fly?



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