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北朝鮮の脅威を煽って自らを後退させる米国

2017年8月3日   田中 宇

 7月28日、北朝鮮が今年何度目かのミサイル発射実験を挙行した。今回のミサイル「火星14型」は、7月4日に発射されたものと同じ型式で、これまでの北のミサイルとして最大高度の3500キロを超える高さまで達し、飛行時間も45分間と、これまでの北のミサイルで最も長く飛んだ。米国の政府高官(匿名)は、火星14が、北のミサイルとして初めて、5500キロ以上の飛距離を持つ「大陸間弾道弾(ICBM)」の範疇に入り、米本土の大半の地域を射程に入れることになったと述べた。 (North Korea can hit most of United States: U.S. officials) (North Korea Missile Test Shows Advances in Reaching U.S.

 英国軍の「専門家」は、北が米本土まで届く火星14型を開発したことが、事態を根本的に変えてしまった、と言っている。最近の北は、韓国や中国などが、6か国協議の再開を北に呼びかけても断っている。韓国の文在寅政権が7月20日、北に対して対話しようと提案したが、その後、北はなんの返答もしてこない。対話や交渉の呼びかけを無視する一方で、ミサイルの試射を頻繁に行い、核ミサイルの開発を全力で進めている。北はおそらく今後も、核ミサイルの開発が一段落するまで、対話や交渉を拒否し続けるだろう。 (North Korea missile test 'a game changer' says British nuclear expert) (Seoul calls for Pyongyang to respond to overture for talks

 このような中、米政界では、トランプ大統領に対して「北を何とかしろ」という圧力が強まったと報じられた。トランプは「中国が、北を簡単に抑止できるのに何もしていないのが悪いんだ。中国がやらないなら、われわれが、北に対して断固たる対応をする」とツイートした。だが、断固たる対応の中身は、何も明示されていない。 (Trump Blames ‘Previous Administrations’ For North Korea, Issues Blunt Warning: ‘We’ll Handle North Korea’

「トランプは、1年以内に北を先制攻撃せよと米軍に命じた」という報道も流された。「米国が北を先制攻撃したら、北は38度線から30キロしか離れていないソウルを猛攻撃して何百万人ものソウル市民が死傷する。だから米国は北を先制攻撃し得ない」というのが常識論だが、好戦的な米国のグラハム上院議員らは「北をうまく先制攻撃で破壊する方法はある」と、強硬論を展開してみせた。だがここでも、その方法がどういうものであるかは、まったく語られていない。 (North Korea Or Iran - Ron Paul Asks "Who Will Trump Attack First?") (Senator Graham: Trump Is Prepared To Strike; "There Is A Military Option To Destroy North Korea"

 これらの報道の上っ面を見ていくと、北の核ミサイルがついに米本土に届く事態になったので、トランプは、ソウルを全滅させるリスクを負いつつ、いよいよ北に対して先制攻撃することになった。朝鮮戦争が再発し、日本にも北のミサイルが降り注ぐかも、防空壕を掘れ、という話になる。 (US general says military has 'rapid, lethal and overwhelming force' ready for use against North Korea) (Russia, at U.N., Disputes Findings That North Korea Launched an ICBM

 だが、ひとつずつの話をよく見ていくと、かなり違う分析も出てくる。そのひとつは、本当に北の火星14型が、大陸間弾道弾の性能を持っているのかどうかだ。米当局の匿名高官は、火星14号が5500キロ以上飛ぶと指摘したが、実際のところ、7月28日の発射では900キロしか飛んでいない。ロシア政府は、火星14型について、飛行の軌跡から見て、大陸間弾道弾でなく中距離ミサイルであると発表している。しかも、北のミサイルは以前から、標的に当てる命中精度が非常に低く、どこに飛んでいくかわからないもので、精度に関する向上がほとんどみられない。日本で偶然に撮影された映像からは、7月28日のミサイルが、大気圏に再突入する際に弾頭が燃え尽きてしまった可能性が高いと分析されている。 (North Korea ICBM Failed, But US Still Hypes Threat) (Success of North Korean Missile Test Is Thrown Into Question

 米軍が北を先制攻撃することが有効な戦略であるという、トランプやグラハムらが発している主張には、何も根拠が示されていない。南北国境から30キロのソウル大都市圏には、2500万人が住んでいる。米国が北を先制攻撃したら、北は報復としてソウルを攻撃し、何万人か何十万人かのソウル市民が死に、韓国軍や在韓米軍と、北朝鮮軍の間で朝鮮戦争が再発する、という予測の方が信憑性がある。 (Donald Trump Shouldn’t Start Second Korean War

 加えて、米国のティラーソン国務長官が8月2日、トランプの好戦的な姿勢を真っ向から否定する発言を放った。ティラーソンは「米国政府は、北朝鮮を政権転覆しようと考えていない。北との対話によって問題解決していきたいと考えている。中国と協調し、北に平和裏に圧力をかけていきたい」と発表した。これは、トランプ政権内がひどく分裂していることを示したと「解説」されているが、そうでなく、トランプが非現実的に好戦的なことを言う役回りで、ティラーソンがその「火消し」をする役回りであると考えられる。ティラーソンは同日、北に対してだけでなく、イランに対しても「核協定を廃棄する」というトランプの過激な主張を否定する発言を放った。あとから火消しが必要になるのは、北に対するトランプの好戦策が現実的でないからだ。 (Tillerson: US Wants Dialogue With North Korea, Not Regime Change) (Tillerson Tamps Down Talk of North Korean Regime Change

▼軍産より好戦的にやって軍産の覇権運営を失敗させるトランプ

 好戦的で非現実的な発言を発するトランプは、未経験な馬鹿なのか。いつものとおり、米マスコミやリベラル論客らは、そのように書きたがる。だが、いつものとおり私には、トランプの非現実的な好戦姿勢が、十分に意味のある有効な策に見える。トランプは、世界と米国を支配してきた軍産複合体が好む適度な好戦策を上回る、過激な好戦策をやることで、軍産の策を無効にして、米国の覇権を解体しようとしている。トランプの策は本質的に、政権転覆など過激な世界戦略をやって失敗させ、米国の覇権を低下させたブッシュ政権の「ネオコン」と同じだ。 (‘Trump has no understanding of geo-politics’) (ネオコンは中道派の別働隊だった?

 朝鮮半島において、軍産は、在韓米軍の存在を恒久化できるような、適度な北の脅威の存続を望んでいる。北が、6か国協議や米朝対話に応じ、核を廃棄して米韓と和解してしまうと、軍産は在韓米軍を撤退しなければならなくなる。だから、北が交渉や対話に応じそうな姿勢をみせるたびに、米政界の好戦的な軍産系の人々が「米国の最終的な目標は北の政権転覆だ」「北が核廃棄しても在韓米軍を撤収しない」などと示唆し、北の交渉意欲を削いできた。北が交渉を拒否し、核ミサイルを開発し続けることは、軍産の思惑に沿っている。 (ネオコンと多極化の本質

 だが、今後も北が核ミサイルの開発を続け、いずれ北のミサイルが米本土に届くことが確実になり、命中精度も上がり、北が「在韓米軍を撤退しない場合、核ミサイルを米本土に撃ち込むぞ」と米国を脅し始めると、それは軍産にとってまずいことになる。北朝鮮は、韓国よりずっと経済規模が小さいので、すでに現時点で、在韓米軍がいなくても、韓国軍だけで、北に負けない自衛力を維持できる。米国(軍産)は、本来は韓国にとって不必要な在韓米軍を維持したいがゆえに、北の脅威を煽り、挙句の果てに、北が本当に米本土に撃ち込める核ミサイルを持つ事態になる。

 米国は、北朝鮮のすぐ近くに2万人規模の在韓米軍を駐留しているのに、自国を、北のミサイルの脅威から守れない。米国が北を先制攻撃したら、ソウルが破滅する。北が核ミサイルを自慢しつつ発射実験を繰り返し、飛距離が伸びるほど、米国が在韓米軍を延々と駐留させていることが、米国自身と韓国の両方にとって、北からの脅威を高めることにつながっている現実が、しだいに誰の目にも明らかになっていく。

 このような事態の発生を遅らせるため、軍産傘下のマスコミや「専門家」の中に「北のミサイルの性能はまだまだだ」と言いたがり、いつ尋ねられても「北のミサイルが実用水準に達するまで、あと数年かかる」と答える人々が出てくる。実際の北のミサイルの能力に関係なく、能力を過小評価することで、見かけ上の北の脅威を、軍産にとって都合の良い適度な水準にとどめておこうとする。今回も、軍産系マスコミのエリートであるNYタイムスが、北のミサイルの能力を低めに見せる記事を出している。 (Success of North Korean Missile Test Is Thrown Into Question) (How close is North Korea to launching a nuclear missile?

 軍産傘下のマスコミや「専門家」の中には、上記のような正統派軍産のほかに、軍産のふりをしたネオコン、隠れ多極主義者も多く混じっている。ネオコン系は逆に、北の核ミサイルの脅威を必要以上に扇動したがる。北の上層部自身も、米韓との敵対が扇動された方が、国内の結束を引き締めるために好都合なので、ネオコン的な敵対扇動にどんどん乗り、ミサイル実験を繰り返す。トランプは、このネオコン系の勢力の一派だ。北の脅威を過小評価する正統派軍産と、過大評価するネオコンの両方が、北の脅威に関する分析を発するため、北の脅威に関する正当な評価が困難になっている。

 トランプは、北を先制攻撃すると息巻く一方で、別の時には、北と交渉する、金正恩を米国に呼んで交渉したいと表明したりもする。こうしたトランプの朝令暮改は、目くらまし、もしくは硬軟両方を試みる意図的なものだろう。思い返すと、今年2月、米国務省が、北の代表団を米国に呼び、米国の民間団体との話し合いを持つことを画策し、北の代表団にビザを発給しようとした時、大統領府の上層部から待ったがかかり、ビザ発給が見送られ、米朝交渉への萌芽が潰された経緯がある。あの時に米朝交渉の萌芽を潰したのは、トランプ自身の決断だった可能性が高い。 (核ミサイルで米国を狙う北朝鮮をテコに政治するトランプ) (軍産に勝てないが粘り腰のトランプ

 トランプは北の脅威を煽り、北にどんどんミサイル開発させ、その一方で北への先制攻撃を表明し続けている。これはまさに軍産がこれまで言ってきたことであり、グラハム上院議員ら米政界の好戦派は、トランプの姿勢に賛同せざるを得ない。しかし、本当に北を先制攻撃するのは、朝鮮戦争が再発し、在韓米軍と韓国国民が大量に死ぬので、軍産にとってもダメだ。だから、好戦姿勢をどんどん強めるトランプを見て、軍産系のCNNが「北に対する要求を緩和し、核兵器の完全廃棄でなく、核やミサイルを持ったままで良いから、これ以上開発しないという約束だけで許してやることにするのが良い。北の開発行為を止めないと、本当に米国にとって脅威な核ミサイルができてしまう」と主張する記事を出している。 (US options on North Korea: It's a choice between bad and worse

 核の完全廃棄でなく開発凍結だけで北を許してやる案は、すでに16年初めにオバマ政権下で出ていた。当時は軍産が反対したため、それが米国の正式な策にならなかった。だが今や、軍産の方から、条件を甘くして北を交渉の場に引っ張りだすことが提案されている。いまさらこんな案を出しても、北は乗ってこない。北にとっては、早く核ミサイルの性能を引き上げ、確実に米本土の大都市に命中させられる(と米国側が認める)状態にしてからの方が「(もう完成したので)開発を凍結しても良いよ」と言って、交渉の場に出られる。「先に在韓米軍が撤退するなら、交渉してやるぜ」と強気に要求できる。 (北朝鮮に核保有を許す米中) (Trump, North Korea and China's choice

 北の核ミサイルが完成した後で開発を凍結させても、あまり意味がない。しかも、開発凍結以上の成果、つまり北核の完全廃棄を期待するのは、もはや無理だ。北は、いったん開発を凍結しても、いつでも好きなときに再開できる(中国が北を本気で経済制裁しない限り)。米国は、北の核ミサイル開発に対し、事実上、打つ手がなくなっている。今後、時間が経つほど、北の核ミサイルの脅威が、しだいに重く、米国(や日本)にのしかかってくる。THAADなど、北のミサイルを迎撃するミサイルは、実戦でどれだれ迎撃力があるか疑問だ。迎撃ミサイルの試験は、実戦よりずっと甘い条件でしか行われていない。 (あたらないミサイル防衛

 米国がやれる最大の自衛策は「在韓米軍を撤退すること」になる。在韓米軍(や在日米軍)を撤退し、韓国(や日本)を、米国の核の傘から出せば、米国は北にとって脅威でなくなり、北は米国をミサイル攻撃したがらなくなる。米国は、在韓米軍を撤退し、安保的に朝鮮半島と縁を切ることでしか、北の脅威を減じることができない状態に向かっている。米国は早晩、北から実体的な譲歩を何も引き出せない状況で、在韓米軍を撤退することになる。 (The Real Reason North Korea May Start a War Doug Bandow

▼在韓米軍の撤収につながる北のミサイル開発を黙認する中国

 米国は、在韓米軍を撤収して朝鮮半島から身を引く以外、北の核ミサイルから自国を守ることができない状態に向かっている。そんな米国と対照的に、中国は、現在も今後も、経済制裁によって北朝鮮に圧力をかけることができる唯一の国である。北朝鮮は、貿易の9割以上を、中国に頼っている。韓国の中央銀行によると、北朝鮮は昨年、4%の経済成長をした。冷戦終結以来、最大の経済成長率だった。昨年から、中国は北を経済制裁していたことになっているが、実際には何の制裁もやっていたなかったと考えられる。北は経済的に、中国の一部である。特に、北の当局が容認したり潰したりを繰り返している北の「民間市場」は、完全に、中国経済の一部だ。中国が北との貿易を本気で完全に停止したら、北の経済成長はものすごい縮小となり、北の政府も人々も、本当に困窮する。 (Why China Should Fear Donald Trump's Tweets) (China Says Trade With North Korea Grew Only 10.5% In First 6 Months Of 2017

 人工衛星が撮った夜景は、韓国がまぶしく輝いているのと対照的に、北朝鮮は平壌がわずかに光っているだけで、あとはほとんど真っ暗だ。しかし平壌の光は、00年代半ば以降、しだいに大きくなっている。これは、北の経済が、中国と貿易しながら成長し続けている証拠だ。中国は今年に入り、北が中国に輸出している最大の品目である石炭の輸入を「禁止」したことになっている。北も、中国に対して激怒して見せている。だが今年1-3月の、北から中国への石炭輸出の総額は、前年同期比18%増だった。中朝間の貿易は1-6月に、前年同期比10・5%の増加だった。中国は、北を経済制裁するふりをして、実のところ、まったく制裁をしていない。北も、中国を恨むふりをしているだけだ。トランプが「中国は北に対して何もやってない」と怒っているのは、このことだ。 (North Korea's night lights show improving economy despite sanctions) (Constraining North Korea Is Impossible without China

 トランプがけしかけても、中国は北を制裁しない。中国は、北の核ミサイル開発に対して激怒して見せている。だが制裁はしない。なぜか。中国は、北が核ミサイルを開発して米国を脅すことが、在韓米軍の撤退につながることを知っているからだろう。在韓米軍の恒久駐留を前提に「中国は、自国と在韓米軍との緩衝地帯として、北が存続していた方が良いと考えている」という「解説」をよく目にする。だが中国にとって、在韓米軍が撤退することの方が、緩衝地帯の維持よりも、さらにうれしい。中国が北を放置し続けるほど、北は米国に向けた核ミサイルの精度を上げ、在韓米軍が自発的に撤退していく日が近づく。中国は、経済的に北の手綱を握っているので、北の核ミサイルが中国に向けられることはない。 (Forcing China’s Hand on North Korea) (U.S. Presses China on North Korea Threat

 中国は何もやってないというトランプの批判に対し、中国の国連大使が「北は、米国が敵視して挑発したので、米国に向けてミサイルを発射している。米国が北との敵対を扇動している限り、中国が米朝を仲裁しても敵対はとけず、話し合いにならない。話し合いは、北と米国の間で、直接にやってくれ。トランプの好戦策にはうんざりしている」と反論している。 (China warns Trump over North Korea: ‘Don’t stab us in the back’) (The North Korea Problem Lies in Washington, Not Pyongyang

 在韓米軍は最近、ソウル南郊の平沢(ピョンテク)に110億ドルかけて4万人以上が住める巨大な基地を新設し、司令部をソウルの中心部から移転している。これだけ見ると、在韓米軍は撤退しそうもない感じだ。だが韓国政府は、米国がトランプ政権になってから、在韓米軍に頼らなくても韓国を北の脅威から守れるよう、防衛力を急いで増強している。韓国で今年5月から大統領をしている文在寅は、北との対話に積極的で、軍事拡大に反対する平和主義者に見えたが、就任後、6月末に米国を訪問してトランプに頼んだことは、北に対抗するため、韓国の防衛力を急いで増強したいので協力してほしい、ということだった。訪米後、文は、トランプの対北戦略を全面支持すると述べた。 (As N Korea missile threat grows, US opens $11 billion base) (South Korea Leader Reverses Stance, Now Backs Trump Against North Korea

 韓国軍は従来、米国との軍事協定で、射程500キロ以上のミサイルを持てなかったが、この射程では韓国軍のミサイルが北の全域に届かないので、韓国軍が在韓米軍に頼らないで北の全域にミサイルを発射できるよう、米韓軍事協定を改定して射程を伸ばす。これは明らかに、在韓米軍の撤退を意識した戦略変更だ。文在寅は、かつて反対していた米陸軍の迎撃ミサイルTHAADの配備にも反対しなくなり、むしろ積極的に追加配備を米国に求めるようになった。韓国の左翼やリベラル派は怒っているが、文在寅の「転向」は、在韓米軍の撤退という、韓国の「真の独立」に向けたものであり、左翼やリベラルにとって本来喜ぶべきことだ。 (Urgent Warning: Time to Hit the Reset Button on U.S.-Korean Policy) (Moon's N. Korea approach

 在韓米軍が撤退すると、次は在日米軍の処遇になる。在日米軍の存在意義の最大の理由は北の脅威だ。日本の権力機構(官僚)は、韓国よりもっと強い対米(対軍産)従属一本槍路線だから、軍産と一心同体だ。日本政府は従来、北の脅威が失われる北核6か国協議に対して冷淡だった。北は、米国だけでなく日本をも、ミサイルによる威嚇の対象としている。今後、いずれ米国が、北のミサイル脅威に対応する形で在韓米軍を撤退し、韓国を米国の核の傘から外したとしても、米国が日本と韓国をわけて考えるなら、在日米軍を残し、日本を米国の核の傘の下に置き続けるかもしれない。北もそれで良いと考えるなら、日本は対米従属を続けられる(米国自身がリーマン危機再発などによって覇権崩壊しない限り)。 (NORTH KOREA MAY HAVE TRIED TO ATTACK JAPAN

 だが逆に、在日米軍も在韓米軍も、北の脅威に対抗する存在であることを考えると、米国が、自国を北の脅威から隔離するために在韓米軍を撤退するなら、同時に在日米軍の撤退も俎上にのぼる。韓国だけでなく、日本も、北に比べてはるかに大きな国力(経済力)なので、自衛隊は米軍や、米の核の傘がなくても、北の脅威から日本を守れる。 (Japan-U.S.leaders did not discuss military action against North Korea: Japan government

 韓国と日本に独自の核武装を許し、日韓を米国の核の傘から外す構想は、トランプが選挙戦の中で言っていたことでもある。トランプはその後、この構想に言及していないが、トランプの全般的なやり方からみて、この構想は水面下でまだ生きている。トランプはいずれ、北の核の脅威から米国を隔離する劇的なやり方として、日韓の両方に対し、独自の核武装を許しつつ、駐留米軍を撤退し、核の傘から外す可能性がある。 ('North Korea fires ballistic missile toward Japan'

 そこまで行く前に、北は延々とミサイルを発射し続け、米国だけでなく日本を威嚇し続ける。北のミサイルの精度が上がると、日本国内に着弾する可能性が上がる。そうなると日本政府は「日本だけで対処できないので、米軍や米国との安保的なつながりをますます強化せねばならない」と、対米従属と官僚独裁を維持強化する道具として、北の脅威を使うだろう。防空壕建設で公共事業の枠も増やせる。最近の日本人は、韓国人よりもさらに他力本願なので、北のミサイル脅威の高まりに対し、国際的には米国、国内的にはお役所(官僚独裁)に頼る傾向を強めるばかりだろう(糞)。日本の対米従属がいつまで続くかに関し、日本人の意思は関係ない。ほとんどの日本人には、何の意思も(考える力も、参考になる情報も)ないからだ(かなり前に意思を固めた沖縄の人々以外)。日本の対米従属の終わりは、米国側の意思によって決まる。 (日本の官僚支配と沖縄米軍



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