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トランプが作る今後の世界
2024年12月3日
田中 宇
ドナルド・トランプとMAGA支持者の政権は、来年からの4年間だけでなく、12年ぐらい続く可能性が高まっている。
米民主党が、従来のリベラルエリート(米覇権主義、グローバリスト、英傀儡)と左翼(社会主義、悪平等主義)の連合体を崩し、民意を汲み取った全く新しい政治運動体に転換できれば、MAGAな共和党を破って政権に返り咲ける。
だが、米覇権は崩壊しつつあり、トランプ政権は覇権放棄を加速するから、4年後の次期選挙では、すでにグローバリストとか米覇権主義はお門違い・時代遅れなものになっている。覇権が戻らないので、リベラル派は二度とエリートにならない。
('Hillary 2028' Speculation Rife As Dem Strategist Urges Kamala: "Please Don't Run Again")
民主党の左翼はこの4年間で、覚醒運動や温暖化対策など、米欧社会を自滅させる超愚策をやり続けて失敗したので、二度と民意の支持を得ることはない。米民主党が、グローバリズムもリベラルも社会主義も捨てて全く新しい政治運動体になるのは非常に難しい。
民主党内では、カマラ・ハリスが2028年に再挑戦したがっている。若手左翼として有名な下院議員のオカシオコルテス(AOC)の名前も上がっている。グローバリストのヒラリー・クリントンの名前も出ている。だが、これらの3人はもう時代遅れであり、惨敗が確実だ(だから名前が出てくる)。
(AOC May Launch 2028 Bid In Likely Redux Of Kamala Blunder)
米憲法の規定(不連続でも2期8年まで)で、トランプはあと4年間しか大統領をやれない。だが、MAGAは若手の人材が多い。2028年の次期大統領選では、JDバンス副大統領とか、諜報長官(国家情報長官)になって諜報界の英国系を潰していくトルシ・ギャバードとか、イーロン・マスクとかがトランプを継承して8年やれる。
そうなると米国は、これから12年間も覇権放棄なMAGAの政権になる。その間に従来の米覇権体制・英国型世界は完全に消滅し、世界は多極型に転換し、米国は極の一つになっている。G7もNATOも(形式的に残ったとしても)機能として消失しているはずだ。
今から12年後、米国は民主党の政権に戻るかもしれない。だが、その時の民主党は、今と全く違うものになっている。民主党が蘇生できない場合、米国は二大政党制から多党制(共和党プラス有象無象)に転換するかもしれない。
(Tulsi smears are an American tradition. They shouldn't be.)
覇権運営を担当してきた米諜報界では、この四半世紀、既存の英国系が、過激で好戦的な軍産・リクード系に入りこまれ、覇権を自滅させている。
諜報界は、英国系とリクード系の暗闘になっていたが、昨年あたりから、リクード系が完全に米覇権を見限ってトランプと組んで覇権の多極化に協力することになったので、米覇権の低下と英国系の凋落に拍車がかかった(それまでもリクード系は、ロックフェラーなど諜報界の隠れ多極派に協力していた)。
今後の米国は、トランプのMAGAとリクードが連立する、隠れ多極主義的な政権だ。米民主党、英国、EU、NATO、G7、日米同盟、AUKUS、豪州カナダなどは、すべて英国系の傘下にあった。これらは今後、お門違いな負け組になっていく。
独仏は右傾化して非米化していき、EUは崩壊するか非米的な右派に乗っ取られる。日豪加も大きな転換を余儀なくされていく。
("No Way Out" - French Credit Risk Spikes After Le Pen Confirms Backing Of 'No Confidence' Vote)
米諜報界の傘下にいた諸国の中でも、サウジアラビアやトルコは英国系を離脱してリクード系と組むようになっている。サウジやトルコは、パレスチナを抹消しつつあるイスラエルを批判する側であり、イスラエルのリクードと組むわけないじゃん、と思う人が多いだろう。だが、深部ではそうでない。
中東諸国はこれまで英国系に支配され、延々と弱体化されてきた。中東諸国が自立した強い存在になるために、リクード系とトランプが英国系を潰してくれるのはありがたい。
リクード系は、サウジやトルコが英傀儡を離脱して強くなれるようにしてやる見返りに、パレスチナ抹消とレバノンシリアでのイラン系抹消を認めさせた。サウジやトルコがイスラエルの人道犯罪を黙認しているのは、このような理由からだ。
(イスラエルの安全確保)
バイデン政権は、米国最後の英国系の政権になる(リクードや隠れ多極派に入りこまれているので、ウクライナ戦争など、覇権維持策の多くが失敗して多極化に貢献する結果に、すでになっているが)。
リクード系が牛耳る今後のトランプの米国は、さらに多極化に協力する。だから中国もロシアも、イスラエルの強烈な人道犯罪を黙認している。イスラエル軍が、これみよがしに残虐で悪辣な人道犯罪を見せつけるのは、英国系(マスコミ、リベラル派、人権活動家)に対する意図的な当てつけである。もっと激怒し、絶望しろよ、と。
前回の無料記事に書いたように、欧州では、ドイツとフランスの政権崩壊が加速している。独仏は、対米従属・英傀儡なリベラルエリートの支配が終わり、右派ポピュリストの政権になっていく。右派は、対米自立と対露和解に進んでいく。
トランプの米国は、欧州に冷たくする。軍事費をもっと出せ、関税をもっと払え、など。欧州の有権者はますます米国が嫌いになり、エリート支配が崩れて右派が政権につく。ドイツでエリート政党がAfDを非合法化すると、エリート政党の人気がさらに落ちて逆効果になる。右傾化した欧州は、対米自立した非米的な勢力になっていく。
(終わりゆくEUやユーロ)
EU上層部は米英諜報界(英国系)に牛耳られている。今までは独仏の上層部も英傀儡だったので、何も問題なかった。だが今後、独仏の上層部がエリートを追い出して右傾化すると、独仏とEUが鋭く対立するようになる。
右派勢力がEU上層部からエリートを追い出して乗っ取る、という展開があり得るが、米国の連邦政府と同様、EUの官僚機構には役人として無数の英傀儡が入り込んでおり、簡単に改革できない。
(米国でも、ドジェのイーロン・マスクらは苦労するはず。日本の官僚機構も英傀儡で、それを転換しようとした鳩山政権はマスコミ=英傀儡に誹謗中傷されて1年で潰された。マスコミやジャーナリズムも消えた方が良い)。
(Maddow Hit With $5 Million Pay-Cut As Musk, Trump Jr Joke About Buying MSNBC)
右傾化した独仏は、EUを改革するのでなく、EUを離脱して非米的な新組織を作ることを目論みそうだ。独AfDは、それをやりたがっている。うまくいくかどうかは疑問だ。ユーロ離脱はさらに難しい。欧州は、これから延々と混乱する。
欧州の混乱・自滅は、プーチンのロシアにとって願ってもない僥倖だ。ロシアは東欧を傘下に戻し、石油ガス穀物などの輸出を通じて欧州をロシア依存にする。ウクライナ戦争はロシアの勝ちで終わっていく。
(Prison For Le Pen? French Establishment Desperate To Stop Rise Of Conservatives)
この新たな現実の表出には、トランプやリクード系が協力・謀略している。欧州やEUは、米諜報界に従属しており、英国系でなくリクード系が欧州に自滅的な策をいろいろやらせることができる。コロナや温暖化や大リセットなどの対策で、欧州が自滅的な超愚策をやり続けたのは、リクード系の謀略だったのかも。
プーチンは当初、トランプの再来を警戒していたが、その後何も言わなくなり、今ではウクライナ停戦のトランプ案に協力する姿勢を見せている。トランプがロシアに僥倖をくれるのだから、協力して当然だ。
(How Trump can navigate the new multi-polar world)
ご本尊の英国は、どうなっていくのか。北アイルランドが分離してアイルランドに戻るとか。スコットランドも独立するとか。かつて英国から分割を強いられたイスラエルのリクード系が、英国に分割を強いる仕返しをしていくとか。妄想。
日本などアジアはどうなっていくのか。ここから先の後編は、あらためて書く。
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