温暖化対策で非米化の加速2022年11月30日 田中 宇11月6-18日にエジプトのリゾート地シャルムエルシェイクで開かれた「地球温暖化対策」のCOP27(第27回気候変動枠組条約締結国会議)は、化石燃料の利用制限など「温暖化対策」を加速したい欧米諸国と、その手の「対策」を後退させたい・やるふりしてやらない構図を加速したい中露サウジなど非米諸国が対立し、非米側の優勢が進んで「対策後退」になって終わった。議長国のエジプトは表向き米傀儡国だが、以前からサウジの傀儡で中露とも親しい「隠れ非米国」なので、共同声明の文案策定時などに非米諸国の主張を通す傾向だった。欧米日のマスコミはCOP27の「大失敗」を喧伝したが、そもそも開催地をエジプトに決めた時点で「失敗」が確定していた。 (Farcical COP27 Debacle Ends In "Tears And Frustration" As Furious Eco-Delegates Realize Who's In Charge) 京都議定書など1990年代から始まった「温暖化対策」は当初、これから工業化や中産階級化で二酸化炭素の排出量が増える中国など新興諸国・非米諸国にカネ(温暖化対策費)を出させ、すでに工業化が終わっている先進諸国はカネを出さない「先進諸国が、新興諸国の今後の成長の儲けを対策費としてピンハネする」構図だった。だが途中から、新興諸国・非米諸国がしだいに政治力を増し、中国が途上諸国を率いて米欧に立ち向かって温暖化対策の主導権・決定権を奪取し、逆に新興諸国が先進諸国からピンハネする態勢に転換した。 (地球温暖化問題の裏の裏の裏) (まだ続く地球温暖化の歪曲) リーマン危機後の2009年、パリ条約を決めたCOP15でオバマと習近平が話し合い、温暖化対策を決める主導権を米国から中国に引き渡した。それ以来、中国が途上諸国(新興諸国、非米諸国)を主導し、欧米の主張に打ち勝って「やるふりだけ」もしくは「先進諸国にカネを出させる形」の温暖化対策を進めてきた。COP27で示された「失敗」は、ずっと前からの流れだった。欧米のマスコミ権威筋は「温暖化対策の主導権を中国から欧米に戻すべきだ」と言っているが、15年ほど続いてきた中国など非米側主導の態勢をいまさら転換するのは無理だ。そもそも中国に温暖化対策の主導権を渡したのはマスコミ権威筋の「上司」である米上層部(諜報界)だ。 (新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題) 今回のCOP27で示された新たな傾向は、少し前まで米国の傀儡だったサウジアラビアが、正式に中露と結託する非米側の国として活躍し始めたことだ。サウジはCOP27で、子分である議長国のエジプトを動かして、決議内容を決める最終段階の議論に介入し、決議文を大幅に後退させた。 ("We Are On A Highway To Climate Hell" But What Does Europe Really Want: Environmentalism Or Neoliberalism?) サウジはOPECの盟主であり、サウジの非米化は産油国全体の非米化になる。サウジとOPECの非米化は、ウクライナ戦争によって、石油ガスなど資源類の世界的な利権の中心が米国側から露中・非米側に移転したこと(米側と非米側の分断により、以前からの利権移転の傾向が顕在化・不可逆化したこと)と連動している。サウジは数年前から隠然と非米化していた(目立たないように中露との親密性を増した)が、ウクライナ戦争によって資源利権の世界的な中心が非米側に移ったのを見て、自国の非米化も顕在化することにした。サウジ主導のOPECは、ウクライナ戦争前から、サウジと並ぶ大産油国であるロシアと結束を強め、OPECはロシアを入れて「OPEC+」になった。露サウジは人類にどんどん化石燃料を使ってほしいから、温暖化対策を換骨奪胎して無効にすることに力を注いでいる。そんな勢力が仕切っているのだから、COPは決議内容が後退し続けている。 (Climate-Policy Is A Much Greater Threat Than Climate-Change) 「それじゃあ地球が急激に温暖化して人類は滅亡するよ」と焦った人は、いまだにマスコミ権威筋のプロパガンダを鵜呑みにしている。これまで何度も書いているように「近い将来に地球が急激に温暖化して人類が滅びる」という「地球温暖化問題」は、現実に存在しない事象だ。「化石燃料の使用などで人類が排出する二酸化炭素が急激な温暖化を引き起こす」という「温暖化人為説」も、現実と無関係な妄想(集団思考)である。大昔や遠い未来には、地球の急激な温暖化や寒冷化があった・あるだろうが、数十年後に大規模な気候変動が起きるという欧米マスコミ権威筋の言説は間違い・ウソである。地球は、一定の幅で温暖化と寒冷化を周期的に繰り返しているが、それは化石燃料の使用など人為とほとんど関係ない。温暖化問題が不存在なのだから、温暖化対策も「対策」になってない。「温暖化対策」と、カッコに入れて語る話だ。 (地球温暖化問題の歪曲) (歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説) 「温暖化問題」を喧伝するための話の一つに「南極の氷が溶け出して地球の海水面が上昇し、世界各地の沿岸部に人が住めなくなる」というのがある。年間に南極の氷が溶ける量は、1980年代の40ギガトンから2010年代の250ギガトンへと6倍に増えた。これは大変だ、石油の使用を減らさないと街が水没してしまう、と騒がれている。だが実のところ、250ギガトンの海水は地球の海面を0.6mm引き上げるだけだ。南極には全部で2650万ギガトンの氷があり、毎年大体その1万分の1にあたる2200ギガトンの氷が溶け、ほぼ同量の雪が降り積もって氷になる。近年は、溶ける量が少し多いが、いずれ氷になる量の方が多くなり、融解と氷結の傾向を繰り返す循環になっている。南極の氷の増減は、数十年かけて地球の海水面を数センチ引き上げたあと、その次の数十年で数センチ引き下げる。この循環の一部だけを切り取り、ギガトンという数字の大きさをトリックにすると「南極の氷が溶けて街が水没する」という話になる。実体は「闇夜の枯れすすき」である。 (Don’t Believe the Hype About Antarctica’s Melting Glaciers) (The Real Inconvenient Truth: Arctic Sea Ice Has Grown Since 2012) 今の地球は急激な温暖化などしてないし、化石燃料は気候変動に関係ない。それが事実だ。温暖化問題は、欧米の上層部(諜報界)が捏造したウソである。1990年代からウソがまかり通っている。ウソだと指摘した専門家は権威を剥奪されて無力化され、急激な温暖化と、原因としての人為説が「疑う余地がなく、もはや議論を蒸し返す必要もない確立した真実」とされている。真っ赤なウソが真実とされて異論や疑問が許されない「裸の王様」の状況が30年続いてきた。途中から、この「問題」への「対策」を決める主導権が中国など非米側に移ったが、中国などはウソをウソと指摘せず、欧米が作ったウソの構図を保持したまま「対策」だけ後退させるやり方をしている。非米側とくにOPEC+は、温暖化問題や人為説のウソを暴いた方が化石燃料の世界的な消費削減を防止できるので好都合なはずだが、そうしなかった。なぜなのか。 (Greenpeace Co-Founder Patrick Moore Says Climate Change Based On False Narratives) 私が考えたのは以下のことだ。温暖化対策として化石燃料利用の減少を欧米に続けさせると、欧米は経済が自滅して覇権を失う。これまで欧米に抑圧されてきた非米側は抑圧から解放され、経済成長や発展がやりやすくなる。覇権は多極化し、欧米支配・米単独覇権体制だった時よりも世界の政治体制は安定する(これまで米覇権を維持するために、冷戦やテロ戦争などの対立構造がでっち上げられ、世界が不安定化させられてきた)。だから中国などは、温暖化問題のウソの構図を維持したまま、欧米に化石燃料利用の削減を続けさせて経済自滅に導き、覇権転換することを優先した。その一方でCOPの決議内容を後退させ、欧米は自主的に温暖化対策(化石燃料の利用減)を続けて経済自滅の道を突き進む一方、非米諸国は引き続き化石燃料を好き放題に使えて経済成長を続けられるようにした。 (41% of Climate Scientists Don’t Believe ‘Climate Change’ Narrative) 温暖化問題だけでなく、その後に起きてきた都市閉鎖など新型コロナの超愚策や、今春以降のウクライナ戦争による対露経済制裁(ロシアから欧州への石油ガス輸入の停止)も、欧米の経済と覇権を自滅させている。長期化が必至なウクライナ戦争は、資源類を独占した非米側の発展につながる。新型コロナの状況はやや複雑だ。中国は、新型コロナ対策として効果がない都市閉鎖を強硬に続けるゼロコロナ策を延々と続けており、中国経済は自滅している。中国のゼロコロナ策は、おそらく共産党内での習近平の独裁体制を強化するために行われており、習近平は自分の権力強化のために一時的な中国経済の自滅を容認している。中国経済を自滅させると、中国から原材料や製品を輸入している米欧の経済自滅も連動して進み、米覇権の低下と多極化につながる「効果」もある。欧米は中国を政権転覆したいが、ゼロコロナ策は中国をめぐる国際的・国内的な人の移動を制限し、政権転覆を不可能にする習近平の防衛策になっている。 (コロナの次は温暖化ディストピア) (英米覇権の一部である科学の権威をコロナや温暖化で自滅させる) 温暖化問題も新型コロナもウクライナ戦争も、今後まだまだ続く。3つとも、1年後も多分続いている。3つとも、米諜報界がマスコミ権威筋の言説を不正操作してウソを人々に信じ込ませている。3つとも、ウソに立脚して採られる「対策」が欧米経済を自滅させている。ウソの構図と対策を作った米諜報界は、欧米の経済と覇権を自滅させ、非米側を強化して、覇権構造を米単独から多極型に転換している。多極化を進めているのは中国やロシアでなく米諜報界だ。米国が中国を台頭させ、米自身の覇権を自滅させて多極化を進めている。温暖化やコロナと似た構図を持った策を次々と推進するWEF(世界経済フォーラム)は、米諜報界(多極派)の出先機関であり、習近平の中共も、米諜報界が作る構図を把握した上で、それに乗っている。この傾向は今後まだ何年か続き、多極化が完遂されてから終わる。異常な温暖化など起きないのに、ヒステリックに叫ばれる温暖化問題のウソはまだまだ続く。 (WEF Piece Lauds How "Billions" Across The World Complied With Lockdown Restrictions) 日本はG7に加盟して欧米の一部として振る舞ってきたが、自滅への道を静かに避けることを米諜報界から許されている。日本は、温暖化対策をやりますと言いつつ、もたもたしてやらない策を取っている。コロナの都市閉鎖もやんわりした策にとどめ、経済は自滅したものの欧米よりましだ。表向きG7の対露制裁に参加しつつもサハリン1と2のガス田などの利権を手放さず、こっそり露中と協調関係を保っている。日本政府は表向き対米従属一本槍の姿勢を維持しつつ、裏でこっそり非米側に属している。米国は、こうした日本の隠然非米化策に気づきつつ黙認している。 (資源の非米側が金融の米国側に勝つ) 米国は、NATO諸国と豪州など、アングロサクソンとEUの「欧米諸国」には、経済自滅を避けるための隠然非米化策を許さず、目ざとく見つけて潰し、代わりに回避不能なガチガチの自滅策を採らせている。だが日本や韓国など、米国側だが「欧米諸国」でない国々には、自滅を避ける隠然非米化策を黙認している。この2面性は意図的な戦略だろう。米諜報界を牛耳る多極派は、米覇権の内部にいるアングロサクソンとEUを自滅させ、米覇権の体制をきっちり潰す一方で、米覇権の外側にいて従属してきただけの日韓などには隠然非米化を黙認し、米覇権の自滅が加速する中で、日韓などが円滑に非米側に移れるようにしている。日本ではマスコミや左翼野党が、温暖化やコロナ、ロシア敵視のウソと自滅策を積極推進する側になっている。自民党政権が潰されて左翼が政権を取ったりすると、日本は自滅を避けられなくなり破綻してしまう。 ("Another Stab In The Back": Climate Movement Miffed After UK's Sunak Snubs Cop27 Climate Talks)
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