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選挙不正が繰り返される米国

2022年11月11日   田中 宇

この記事は「中間選挙で米国が変わる?」の続きです。

米国で11月8日に行われ、まだ開票が続いている中間選挙(連邦議会・州議会・州知事などの選挙)で、民主党側が広範な選挙不正を行っている可能性が増している。米国では、前回2020年の総選挙(大統領・連邦議会などの選挙)でも民主党側が、コロナ対策を口実に拡大された郵送投票制度などを悪用して広範な不正を行い、再選されるはずだった共和党のトランプ前大統領が敗北させられて民主党のバイデン現政権になり、連邦議会も上下院とも多数派が民主党になった。不正が行われた2020年の選挙管理体制はその後も残り、今回再び不正が行われた疑いがある。民主党に対する米国民の支持はかなり落ちたので、不正がなければ今回の中間選挙は民主党の惨敗、共和党の圧勝になるはずだったが、ふたを開けてみると、共和党は辛勝した程度になっている。民主党が権力を握る諸州では、コロナ対策を口実に、不正をやりやすい郵送投票制度がこの2年間でさらに拡大され、それが選挙不正の温床になったようだ。 (Another Stolen Election) (The 2022 Midterm – Yet Another Steal?

2016年のトランプ登場後、共和党内はトランプ派が拡大し、それまで主流派だったブッシュ家以来の軍産エスタブ系が縮小した。米覇権主義の軍産系は、覇権放棄を進めるトランプ派を敵視し、同じ軍産系の民主党側をこっそり支援したがる傾向を強めた。トランプ派は、2020年に不正をされた選挙管理体制を改革しようとしたが、共和党軍産派と民主党とのエスタブ連合に阻まれて改革を進められず、今回の再不正になった。 (It's Obvious Now: America's Voting System Is Rigged) (米中間選挙で大規模不正の可能

米国のマスコミ権威筋はエスタブ連合の一部なので、前回2020年も今回も、選挙で不正が行われたことを一切認めようとしない。エスタブ連合からは「中間選挙で共和党が伸び悩んだのは、トランプの人気が落ちているからだ。トランプはもう時代遅れなのだから、自分の再選に固執せず、再立候補をあきらめて政界を引退すべきだ」といった言論が出始めている。エスタブ連合が選挙不正をやったので共和党が伸び悩んだのだが、それを政敵であるトランプのせいにして、トランプを引退させようとしている。トランプは中華選挙が終わったら立候補を表明しようとしていたが、表明の延期を決めたようだ。 (Midterms Post-Mortem: Comprehending GOP's Underwhelming Performance

共和党は現在トランプが最有力の指導者だ。トランプ派は共和党の主流派だ。万が一トランプが辞めたら、その後の共和党で最も有力な指導者はフロリダ州知事に再選されたロン・デサンティスあたりになる。デサンティスはトランプの盟友だから、べつにトランプが辞めてデサンティスが共和党を率いてもあまり変わりがないようにも見える。だがもう少し考えると、今はトランプが共和党を率いているので、デサンティスはトランプの盟友として振る舞っているが、もしトランプが辞めてデサンティス自身が指導者になると、目立たないように態度を変えて、いつの間にか軍産エスタブの策をとっている、などということがあり得る。トランプは大統領になって、米国の諜報界や覇権体制を破壊しようとした。米国の覇権運営を担当する諜報界は、選挙不正までやって全力でトランプを潰そうとしてきた。これは深い戦いだ。何が起きても不思議でない。 (Trump Has 3 Choices: Good, Bad, & Ugly For The Republican Party

2020の選挙不正は今のところ「完全犯罪」になっている。選挙不正があったと指摘しても、それは「負けを認めたがらない共和党支持者たちの妄想」とレッテル貼りされて終わる。地球温暖化問題やウクライナ戦争(対露善悪歪曲)、新型コロナ超愚策、米金融システム(QEによる相場歪曲)などと並ぶ、巨大なウソの構図だ(これらはいずれも、ウソの構図を指摘する者がトンデモ扱いされつつ、ウソの構図が平然と半永久的に続く。世界はウソだらけ)。米国の不正選挙の構図は固定化され、今後も繰り返される可能性が高い。 (Expect the Steal in These Dem-Run States

トランプ派が共和党内で軍産派を完全に追い出して選挙制度改革をうまく推進できたり、2024年の大統領選挙でトランプが勝って米大統領に返り咲いたりすれば、米国の不正選挙の構図が壊されて民主主義が戻るかもしれない。だが、それらが起こらない場合は、米国は今後ずっと不正選挙が繰り返される(トランプ登場前も、電子投票機で不正ができるようになっており、2大政党間の談合で、民意に関係なく政権党が決められる傾向があったが)。選挙不正が繰り返されると、いずれトランプが引退に追い込まれ、米国は諜報界が支配するエスタブ2大政党の談合体制に戻る。米国を諜報界の支配や覇権主義から解放しようとしたトランプ革命は失敗に終わる。 ("Protest, Protest, Protest!" Trump Calls For Action Over 'Complete Voter Integrity Disaster' At Polls

トランプ派は、2020年と今回の2回連続で選挙不正をやられており、不正の繰り返しを防ぐことに失敗している。これはトランプ派の力不足の結果とも言える。米国の選挙不正がこのまま完全犯罪であり続けると、トランプ派が盛り返すのは難しくなる。覇権放棄屋のトランプが盛り返すと、日欧など同盟諸国は対米自立を余儀なくされるが、トランプが潰されて旧来の覇権主義が続くと、米国は同盟諸国に対する支配や搾取を続け、同盟諸国は苦しい対米従属が長引く。ウクライナ戦争の対露制裁でドイツなど欧州が自滅させられているのが象徴的だ。米国は、トランプが今後どうなるかに関係なく、覇権の低下傾向が続く。米国は、覇権が低下するほど、同盟諸国への支配を強めて搾取して穴埋めしようとする。ウクライナ戦争の構図は解消されず、欧州の自滅が進む。インフレが今後も続き、金利が下がらず金融バブル崩壊の可能性が増す。

世界最大の大金持ちイーロン・マスクがツイッターを買収し、共和党トランプ派への支援を強めている。今回の選挙不正が放置されると、軍産エスタブはトランプ派を潰すための攻撃の一環としてイーロン・マスクへの攻撃も強めていく。マスクもそのうち潰されるかもしれない。その前にツイッターが倒産する。 (Why Is The Left So Afraid Of Twitter?

世界最優良の民主主義国家だったはずの米国で、選挙不正が恒常化していることは、いろんな意味で重要だ。選挙不正が繰り返されているのに、それが全く公式な話にならない点も重要だ。米欧は、自分たちの民主主義を自画自賛し、民主主義をやれない一党独裁の中国を批判してきた。だが実のところ、米国の民主主義はウソであり、選挙不正が完全犯罪として繰り返されている。ウソのかたまりの米国と、一党独裁の中国と、どちらが「より悪い」のか。この話は潜在的に、米欧を弱体化し、中共を強化している。



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