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板門店で電撃の米朝首脳会談

2019年6月29日   田中 宇

大阪でG20サミットに出ているトランプ米大統領は明日6月30日に韓国に移動し、北朝鮮との境界線である板門店まで行くが「その時に金正恩に挨拶したい、金正恩がこのツイートを見ているなら明日板門店まできてくれ」と先ほど(6月29日朝)ツイートした。トランプは、急に思いついたように演じているが、これは周到に準備された話に違いない。金正恩は明日、板門店に来る。3回目の米朝首脳会談が電撃的に行われる。 (I would meet him at the Border/DMZ just to shake his hand and say Hello(?)!) (In a tweet, Trump appears to invite Kim Jong Un to meet him at the Korean demilitarized zone

数日前、韓国の文在寅大統領が、米朝首脳会談の準備が進んでいると漏らしている。その前には、米朝首脳が書簡を送り合ったり、習近平が平壌を訪問したり、金正恩の妹である金与正がソウルを訪問したりしている。これらの流れから見て、米朝はかなり前から明日の板門店での首脳会談を準備してきたようだ。 (U.S., North Korea in Informal Talks for Third Summit, South Korea’s Moon Says) (Kim Jong Un Sends Sister With Letter To Break Ice With South Korea) (North Korea’s Kim receives ‘excellent letter’ from Trump, state media says

過去の2回の米朝首脳会談は、シンガポールとハノイという、北朝鮮から見ると外国で行われており、金正恩の暗殺防止策など、「隠遁国家」である北にとって煩雑な事前の準備が必要で、話が大掛かりになっていた。今回の会談場所は北の一部である板門店なので、北は面倒な事前の準備をせずに電撃的に開催できる。トランプにとっても、直前まで首脳会談を秘密にできるので、北を永久に敵視したい軍産(永久に対米従属したい同盟諸国)に邪魔されにくい利点がある。 (North Korea Tells South Korea to Stop Trying to Mediate Between Them and US) (中露に米国覇権を引き倒させるトランプ

これまでの2度の米朝首脳会談によって、韓国と北朝鮮が和解する流れが進み、板門店のまわりも地雷が撤去され、南北が経済交流を深める体制が作られてきた。だが、南北の経済交流は、北に資金が入るので国連安保理の対北経済制裁に抵触してしまう。米政府(在韓米軍)が、そのように判断して韓国に、北との経済交流の進展を禁止しているため、南北和解と経済交流が途中で頓挫している。経済交流が進まないと、北は核廃棄を進めないので、北核問題の解決全体が止まっている。北はトランプに、国連の対北制裁を緩和してほしいと求めてきたが、トランプは応じてこなかった。今回、トランプが金正恩との再会を決めたことは、トランプが国連の対北制裁の緩和に応じることにしたという意味だ。そうでなければ、北は再会談に応じない。 (多極化への寸止め続く北朝鮮問題) (韓国は米国の制止を乗り越えて北に列車を走らせるか

国連安保理(米中露仏英)での対北制裁の緩和を、米国が進めるとは限らない。中国とロシアが北制裁の緩和を提起し、米国が反対しなければ可決できる。覇権放棄屋・隠れ多極主義者であるトランプは、北問題の解決の主導役を、米国自身でなく、中国にやらせたい。これまで中国は、米国(軍産)から妨害されかねないので、北問題の解決主導役になりたがらなかった。それで、北問題解決の流れが止まっていた。 (ハノイ米朝会談を故意に破談させたトランプ) (習近平を強める米中新冷戦

だが今回、習近平は貿易面でトランプから売られた喧嘩を買い(中国の反米ナショナリズムが習近平の権力を強めるので)、中国は米国に配慮せず国際活動する度合いをぐんと強めた。6月5日には中露がモスクワで首脳会談し、身勝手すぎるトランプ米国の覇権を抑止していくことを宣言した。習近平は北問題解決を中国が主導することも決意し、彼が権力者になって初めて平壌を訪問した。中国は、北の海軍と人民解放軍との連携を強めるなど、安保面の中朝関係を強化し始めている。 (Red Tide: China-North Korea Naval Cooperation) (Chinese Consumers Shun All American Products As Nationalism Soars

こうした流れの中に、明日の板門店での米朝首脳会談がある。習近平は、米国以上に本気で北の核兵器を廃絶させようとする可能性がある。米国の軍産は、北が核武装寸前の状態でいてくれることが、在韓・在日米軍駐留をはじめとする世界支配に好都合だったので北の核開発を放置・隠然支援してきたが、中国は、となりの小さな従属国である北に核武装してほしくない。習近平は金正恩に、米国を覇権国の座から引きずり下ろし、米国に北敵視をやめさせ、在韓米軍を撤退させてやるので、その代わり北も核廃絶してくれと伝え、金正恩も基本的に了承していると考えられる。 (Why there’s more than just ideology behind Xi Jinping’s state visit to North Korea and meeting with Kim Jong-un

今後うまくいけば、中露が安保理で北制裁を緩和し、南北の経済交流が始まり、今は裏でやっている中朝間の貿易も表向きに再開する。在韓米軍の撤収が俎上にのぼり、在日米軍の撤収も言及される(すでにトランプは今回、日米安保条約を破棄したいと表明している)。米朝だけでなく、日朝も和解していく。安倍は早く訪朝したいと以前から思っている。日米安保の代わりとして、中国は昨秋、安倍の訪中時に、日本と安保協定を結びたいと提案していたと、先日暴露された。こんな暴露が今の時期に行われた点も興味深い。 (China ‘wants new security relationship with Japan’ as US trade war leaves Beijing looking for friends) (Trump questions Japan defense pact, says if US is attacked, ‘they can watch on a Sony television’

安倍はプーチンとも仲良しで、日露の平和条約も早く結びたい。北方領土は2島返還以外の解決がないと大昔からわかっていた。北朝鮮、中国、ロシアの3か国と平和的な恒久関係が確立したら、日本にとって脅威な外国はなくなる。米軍が日本に駐留する必要もなくなる。ハブ&スポーク的な日韓別々の対米従属を維持するための、子供じみた日韓の相互敵視も、米国の覇権低下とともに下火になり、日韓も安保協定を結ぶ。日本の対米従属の終わりが、すぐそこまできている。 (China and Japan seek to take relationship to ‘next level’ as Xi Jinping state visit confirmed for spring



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