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トランプの左翼退治
2025年9月16日
田中 宇
米トランプ政権は、おそらく諜報界リクード系(イスラエル)の主導で、政敵の民主党の左派を過激化・暴力化して国内テロ組織に仕立て、改名した「戦争省」をテロ退治に動員し(そのために改名した)、民主党の支持を引き下げ、米国の政治体制をこれまでの二大政党制(二党独裁)からトランプ共和党の一党独裁に変えようとしている。
(White House Plans Security Boost On Civil Terrorism Fears As FBI Investigates Revolutionary Leftist Groups In Kirk Assassination)
リクード系は、すでに前任の民主党バイデン政権にも入り込み、人種差別撤廃(実質は白人差別)運動や、ジェンダーを混乱させるなどして人々の間の対立を意図的に激化する覚醒運動を扇動し、民主党内で左派を台頭させた。
(JPM CEO Jamie Dimon Unloads On Democrats: "Idiots" Obsessed With Failed Wokeism)
民主党は昨秋トランプに負けて政権を取られた後、方向性を失って国民の支持が減り、支持者として残った人々は極左が多くなって過激化が進んだ。
ジョージ・ソロスの組織が民主党の極左に資金を出して活発化し、全米諸都市で極左が社会を破壊して混乱させていると共和党側が批判し、トランプはソロスを捜査すると言い出した。
(こうした動きを見てビビった民主党支持のビル・ゲイツは、自分が捜査対象になるのを恐れて左派組織への資金供給を打ち切り始めた)
(The Protest-Industrial-Complex Isn't Peaceful, It's "Civil Terrorism")
("Looking Into Soros. Looks Like RICO": Trump Puts Crosshairs On Radical Leftist NGOs)
こうした流れの先に、国防総省を戦争省に改名し、世界的な中露敵視よりも、米国内や中南米のテロ退治を米軍の主な任務に転換する9月初めのトランプの策がある。
(トランプの米州主義と日本)
トランプが米軍の主要任務を米国内のテロ退治に変更する動きを始めた数日後の9月10日、トランプ革命の若手活動家で極左たちに敵視されてきたリチャード・カークが講演中に射殺された。
容疑者として捕まったタイラー・ロビンソンは犯行を否認しているが、現場のDNAは本人のものと一致した。タイラーの両親は共和党支持だが、本人は友人(トランスジェンダーである同棲相手)の影響で極左になっており、タイラーはカークを敵視していた。
(Kirk Murder Suspect Pleads Not Guilty - Utah Governor)
(Kash Patel Confirms DNA Evidence Match In Kirk Assassination, Reveals Details Of Note)
カークが殺されたユタ州など全米各地で、トランスジェンダーなどの極左の人々が武装組織を形成し、トランプ政権やその支持者たち(極右)との対決に備えて射撃などの軍事訓練をしている。
ゲーム仲間などを装う極左活動家を通じて、政治に無関心だった若者たちが極左組織に引き込まれている。ロビンソンもその一人だったようだ。
ロビンソンは友人の影響で極左になって軍事訓練を受けた末に、極左組織からカーク来訪の情報を得て、狙撃を挙行したと考えられる。トランプの米当局は、全米の極左武装組織の捜査に乗り出している。
(Utah trans militia that trained with weapons deletes account hours after Charlie Kirk assassination)
(White House Plans Security Boost On Civil Terrorism Fears As FBI Investigates Revolutionary Leftist Groups In Kirk Assassination)
米国はカークの殺害後、カークを敵視していた極左や民主党支持者と、カークを支持していたトランプ信奉者(極右)の共和党支持者との対立が決定的になっている。カーク殺害が発火点になると示唆する言論が流布している。
示唆は気になるが、この事件が発火点になって米国で左右の対決が激化するのかどうかわからない。
(Kremlin Spokesman on Charlie Kirk's Murder: US Society Now Extremely Polarized)
もし今後、カーク殺害を機に米国で左右の対決が激化し、トランプが極左の動きをテロとみなして米軍(連邦軍もしくは州兵)を派遣する展開になるなら、トランプが米軍の主要任務を米国内に移したことと、カークの殺害が、タイミング良く組み合わされた謀略であるという話になる。
(A Turning Point For The Radical Left?)
新たに左右の対決が激化しなくても、極左武装組織の存在以外にも、すでに米国内の民主党系の地域では自体が悪化しており、トランプが事態を改善するために軍隊などを派遣する正当性がある。
民主党の知事らによるリベラルや左翼的な政策の結果、警察縮小と処罰の寛容化(犯罪の無罪化)、中南米カルテル系組織の跋扈などによって、犯罪増加や治安悪化がひどくなっている。
(Leftist Nonprofit Head Spills Beans About Secret "Notification System" To Help Illegals Evade ICE Arrest)
民主党系の諸都市では、万引きや略奪など小売店での犯罪が4年間で倍増した。連邦当局の違法移民の取り締まりに対し、民主党傘下のNGOが取り締まりの情報を事前に移民に知らせて逃がしてしまう妨害策も横行している。
("Billions In Losses": Retail Crime Has Surged 93% In Progressive Cities)
首都のワシントンDCは伝統的に地元政府が民主党で、左翼的な政策によって犯罪が増加して住みにくくなっている。トランプは、連邦政府の権限を拡大して、民主党のDC地元政府の左翼政策を上書きして犯罪取り締まりを強化している。
(Democrats Go Into Meltdown Mode As Trump Launches Washington DC Takeover)
民主党側は、これをトランプの独裁強化だと非難しているが、DCの犯罪は減り始めた。トランプは、DCでの成功を皮切りに、シカゴやボルチモアなど、犯罪がひどい他の民主党系の諸都市でも、同様の連邦権限の拡大をやろうとしている。
トランプは、民主党が支配してきたシカゴの治安を立て直すため、犯罪組織と戦うための連邦軍の派兵も辞さない構えで、これが「戦争省」に改名した理由の一つだと言っている
(President Trump warns that Chicago is 'about to find out why it's called the Department of WAR' in incendiary Truth Social post)
民主党の極左勢力がトランプの連邦軍に対抗して決起すると、極左(もしくは民主党全体)がテロ組織扱いされてトランプに退治されてしまう。
そこまでいかなくても、トランプの強硬策が成果を上げると、治安悪化を放置した民主党への支持がさらに減り、今後の中間選挙や大統領選で惨敗が続き、二大政党制が崩れていく。
民主党を支援し、トランプを誹謗してきたマスコミも、読者や視聴者が減って経営が悪化し、それだけでなく今後は歪曲報道の罪が問われるようになっていく。
民主党が弱くなると、トランプは政権交代を心配する必要がなくなり、トランプは自分よりカリスマ性が低いDJバンスを次の大統領として政権を継承できる。米国は、トランプ革命・米州主義・覇権放棄の共和党の一党独裁になっていく。
(Trump shares call for ‘Charlie Kirk Act’ to hold media accountable)
殺されたカークも、トランプ自身も、親イスラエルで親ロシアだ。アルゼンチンのミレイやドイツのAfD、フランスのルペン派など、世界的に最近の右派(極右)の政治家は、親イスラエル親露の傾向だ。
イスラエル(リクード系)は、米諜報界を乗っ取って、トランプやプーチンや世界各地の極右政治家たちに諜報で協力してテコ入れして傘下に入れ、世界的なネットワークを形成している。
イスラエルの支援先が極右である理由は、諜報界のイスラエルの暗闘相手の英国系が、既存エリートのリベラル(左右の中道派)や極左勢力(エリートと戦う敵として設定された英国のうっかり傀儡たち)を傘下に入れつつ米英覇権を構成し、世界支配してきたからだ。
(中南米を右傾化させる)
リクード系は911以来、英国系が支配する米諜報界に入り込んで乗っ取り、同時に世界各地の極右をテコ入れして英傀儡のリベラルや極左と戦わせ、勝たせつつある。
イスラエル自身、かつては英傀儡でパレスチナ国家を受け入れる左翼の労働党が支配していたが、冷戦終結から911に至る過程で、パレスチナを拒否する極右のリクードが台頭してテロ戦争を米国に輸出した。
911以来の25年間で、リクード系は軍事諜報でも政治でも英国系を打ち負かしつつある(リベラルや左翼の人々は、負けたことにも、自分らが英傀儡だったことにも気づいてない)。今の米国や英仏独は、こうした流れの最終局面にある。
(世界を敵に回すイスラエルの策)
トランプは本質的に、米覇権放棄を進める隠れ多極派だ。トランプは覇権放棄の一環として、国防総省(戦争省)に中露敵視を放棄させたが、これだけだと米政府の防衛費は大幅に削ることになる。
米国の防衛費削減はイスラエルが困る。防衛費の多くは、兵器開発のふりをした諜報活動の費用であり、その費用でイスラエルは貴重な諜報を得て、戦争に勝ったり国際政治を牛耳って強くなっている。
イスラエルはトランプに防衛費を増やし続けろと命じ、トランプは米軍に「中露敵視を放棄する替わりに米州主義に基づいて米国内や中南米で戦争する」という軍事戦略(NDS)を立てさせた。防衛費は1兆ドルを超えて増え続けている。
(Big, Beautiful trillion dollar war budget!)
(トランプは金融システムをいじらない)
トランプが、米軍の主要任務を中露敵視から米国内の治安維持(という名の左翼退治)に替えたことと、カークの射殺を機に米国内の左右両極が対決していく流れの開始のタイミングの一致は、どうも偶然でない気がする。
偶然でない感じは、同じタイミングで、トランプと喧嘩別れして出ていったイーロン・マスクが、極左と喧嘩する極右の活動家としてトランプ陣営に戻ってきたことからも漂っている。
(イーロンマスクを激怒させた意味)
マスクは今年初め、トランプ政権に入り、覇権放棄策の一環として、米政府のUSAID潰しなど世界介入費の削減を挙行するDOGEを仕切っていたが、諜報界の維持のため防衛費や金融バブル維持費を削りたくないイスラエルの横やりが入り、トランプはDOGEの勧告を無視して米政府の財政削減を中止した。
怒ったマスクはトランプと仲違いして政権を去った。だが、資金援助してくれてビジネス感覚も鋭く、喧嘩も得意なマスクは、トランプにとって使い勝手が良かった。マスク自身も喧嘩腰の政治を張るのが大好きなので、今回トランプが左翼との喧嘩芝居を本格化するに際し、マスクが呼ばれて政権の周辺に戻ってきた。
(Musk calls left the ‘party of murder’ after Charlie Kirk’s shooting)
(Elon Musk Commits $1 Million To Murals Of Iryna Zarutska Nationwide, Turning Public Spaces Into Culture War Battlegrounds)
マスクは米国だけでなく、英国の混乱に拍車をかける百万人(マスコ"ミ報道では10万人)の極右系の反政府・反移民デモ行進にも、動画で参加して介入している。
(Tommy Robinson 'Unite The Kingdom' Rally Attracts Massive Crowd In London)
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