実は悪くなかった「悪の枢軸」2005年1月25日 田中 宇アメリカがイラクで行っていた大量破壊兵器の捜索は、昨年末にひっそりと終了していたことが明らかになった。米軍のイラク侵攻後、国防総省やCIAを中心に「イラク兵器調査団」(ISG)が組織されて大量破壊兵器を探し始めたが、その後2年半たっても国連の取り決めに違反する兵器は見つからず、フセイン政権が大量破壊兵器を開発しようとしていたという証拠も出てこなかった。 このところ兵器に関する新情報も出てこなくなり、その一方でイラクの治安は悪くなる一方で、おちおち捜索もできなくなったため、昨年のクリスマス休暇を前に、捜索を終わりにした。この話は1月12日にワシントンポストが報じ、それをホワイトハウスの報道官が事実と認めた。(関連記事) 私が見るところ、大量破壊兵器が見つからなかったのは、当然の結果である。なぜなら開戦前、イラクが大量破壊兵器を持っている「証拠」として米英の政府が発表したいくつかの話は、偽造された文書に基づくものだったり、兵器開発と関係ない動きを兵器開発の一部であると誤認したものであることがすぐに分かったり、亡命イラク人組織が保身のために流した誇張をそのまま使ったものだったりして、証拠と呼べないものばかりだったからだ。証拠が怪しいものであることは、開戦前から欧米の一部のメディアで指摘されていた。(関連記事) たとえば、核兵器を開発している証拠とされた、イラクがニジェールからウランを買ったことが記されている「公文書」は、署名やレターヘッドからニセモノだと分かるもので、開戦2週間前の2003年3月7日には、IAEAがこの文書についてニセモノだと発表した。このニセ文書を作ったのはイギリスの諜報機関であるとも報じられた。米英の政府は、イラクが大量破壊兵器を持っていないことを知りつつ、証拠をでっち上げてマスコミに書かせ、侵攻を実現したのである。(関連記事) 米当局は、イラクに大量破壊兵器がある可能性が低いと知っていただろうから、イラク占領後の大量破壊兵器探しは、米国民を納得させるための、かたちだけの動きだった。それを最近になってやめたのは、ブッシュが再選を果たし、もはや米国民の信頼を勝ち取らねばならない時期が過ぎたからだろう。捜索をやめたことで、フセイン政権は大量破壊兵器を持っておらず、開発もしていなかったことが確定した。 ▼フセインは毒ガスをまいてない アメリカが、フセイン元大統領を悪者と呼んだ根拠のもう一つに、フセイン政権が1988年にイラク北部のハラブジャで5千人のクルド人を生物化学兵器で殺したとされる事件がある。これについても最近、フセインの弁護団が、ハラブジャの事件はフセイン政権の仕業ではないことを証人を立てて立証したいと言っており、裁判に負けそうなイラクの検察側は、ハラブジャの事件のことをフセインを起訴した罪状から外すことを検討しているという。(関連記事) (毒ガスを使ったのがイラク軍でないならイラン軍だった可能性が強い。それは以前から指摘されていた。クルド人擁護の市民運動家などは、ハラブジャの件でフセイン政権をさんざん非難していたが、彼らは米英の諜報機関にだまされて踊っていたことになる。前回の記事に書いた北朝鮮の脱北者問題もそうだが、国際的な人権問題をめぐる市民の「善意」は、アメリカの軍産複合体のカモにされやすい)(関連記事) フセイン政権は独裁だったが、アメリカが先制攻撃して倒さねばならないほどの「悪」ではなかった。(フセインのもう一つの罪状である1990年のクウェート侵攻も、アメリカが黙認するサインを出したから挙行したのであり、アメリカがフセインを引っ掛けなければ起こらなかった) ブッシュ政権は2002年1月にイラク、イラン、北朝鮮の3カ国を「悪の枢軸」と呼び、これらの国々は大量破壊兵器を開発してアメリカを攻撃しようとしているので、場合によっては先制攻撃する必要があると発表した。このうちイラクについては、大量破壊兵器を開発していなかったことが明らかになったわけだが、実はのこりの北朝鮮とイランに対しても、アメリカはこれらの国々が脅威だと主張するためにウソをついている可能性がある。 ▼北朝鮮はウラン濃縮をしているとは言っていない 北朝鮮の核問題をめぐってアメリカがついているかもしれないウソは、北朝鮮が核兵器製造に必要なウラン濃縮を進めているかどうかについて、実際には北の当局は何も認めていないにもかかわらず、米政府が「北朝鮮は、ウラン濃縮を進めていることを白状した」と主張していることである。 911後、ブッシュ政権内で強くなったタカ派の主張に押され、ブッシュ大統領は2002年始めに北朝鮮などを「悪の枢軸」と名指ししたが、米中枢の中道派(親中国派)は、北朝鮮の問題は戦争ではなく外交で解決せよとブッシュに圧力をかけた。タカ派は、ブッシュが特使として国務省のジェームズ・ケリー次官補を平壌に派遣して北朝鮮当局者と交渉することを認めたが、ここにタカ派の巻き返し作戦が仕掛けられていた。 2002年10月、平壌を訪問したケリー次官補は、北朝鮮のカン・ソクジュ第一外務次官と交渉した。その席上、ケリーは「わが方は、北朝鮮が秘密裏にウラン濃縮を進めて核兵器を作っている証拠を持っている」と述べ、北朝鮮側に対し、ウラン濃縮の事実を認めよと迫った。するとカンは、ウラン濃縮を行っていることを認め「わが国は、もっと強力な兵器も作っている」とまで認めたという。(関連記事) 米側は、北朝鮮側が核開発を認めたため、1994年にクリントン政権と北側が合意した「枠組み合意」を破棄し、北朝鮮に対する石油の無償供給を止めた。この事件の延長線上で、北の核開発を止めさせるための6カ国協議が開かれることになったが、実は、カンがケリーに対してウラン濃縮の実施を認めたという主張は、アメリカ側が言っているだけで、北朝鮮側は、カンはケリーに対してウラン濃縮の実施を認めてなどいないと主張している。 ▼日韓の北への接近を阻止するための米のウソ 最近になって関係者から相次いで出てきた分析は、この件に関しては、米側ではなく北側の方が正しいことを言っている、ということである。 アメリカの外交政策決定の「奥の院」ともいうべき「外交問題評議会」が発行する論文雑誌「フォーリン・アフェアーズ」の最新号の記事によると、カンはケリーに対し「アメリカがわが国(北朝鮮)を侵略しようとする限り、わが国は自衛策としてウラン濃縮を行う権利を持っているし、もっと強力な兵器を開発する権利も保持している」という原則論を述べたのだが、米側が勝手に「権利」の部分を省いて間違った解釈を行い「北はウラン濃縮の事実を認めた」と主張してしまった。 カンは、北朝鮮が核兵器を持っているかどうかについては「核兵器保有について、否定も肯定もしない方針の国が世界にいくつもあり、わが国もその方針を採っている」と明言を避けたが、米側はこの発言を無視した。 この会合でカンが述べた「北は核を持つ権利がある」「実際に持っているかどうかは言わない」という主張は、その後も北朝鮮側が交渉のたびに言い続けていることだ。米政府の主張を信じ、2002年10月だけ北側は違うことを言ったと考えるより、フォーリン・アフェアーズの記事を信じ、米当局が北の脅威を誇張するため故意の聞き間違いをしたと考える方が自然である。 同記事によると、2002年10月に米政府が北朝鮮の脅威を誇張したのは、その3週間前に小泉首相が平壌を訪問したり、韓国が38度線のすぐ北の開城に工業団地を作る交渉を北側と進めたりして、日本と韓国が北朝鮮に対して宥和的な態度をとり始めたので、それを止める必要があったためだという。 事実、日本政府は拉致問題を解決しようと小泉訪朝を挙行したものの、その後米朝間で核問題が持ち上がった後、急速に北朝鮮に対して再び敵対的な態度をとっている。日本政府の態度の変化に合わせるように、日本のマスコミに北を敵視する論調が急増し、国民の多くもこれに乗せられた結果、日本では北朝鮮に対するヒステリックな敵視が支配的になった。これはどうやら米中枢のタカ派勢力が好戦的な政策を行うための誇張戦略の影響だったらしいということは、私も最近になって分かってきた。 ▼フォーリン・アフェアーズが自国のウソを暴露した理由 米中枢に近い人々が関与しているフォーリン・アフェアーズがこんな暴露記事を載せたということは、北朝鮮政策をめぐる米中枢でのタカ派と中道派の対立がまだ続いていることを感じさせる。 ブッシュの再選により、政権中枢のタカ派は「われわれの好戦的な戦略が米国民に認められたのだ」と主張し、イランや北朝鮮などに対する攻撃を強めそうな気配だが、これを牽制するために、中道派がフォーリン・アフェアーズに「ブッシュ政権は北朝鮮をめぐってウソをついている」という論調の記事を出したのだと思われる。 最近では、米議会の議員団が平壌を訪問し、アメリカは北朝鮮を攻撃する意志はないと表明し、これを受けて北朝鮮当局は平壌市内の反米的な看板や彫像を取り外した。(関連記事) 政権中枢のタカ派の人々も、北朝鮮に対する発言を融和的なものに変質させている。昨年12月初めにワシントンを訪れた韓国の政治家たちに対し、ライス大統領補佐官の副官だったスティーブン・ハドリーは、米政府は北朝鮮の政権を軍事攻撃によって倒すのではなく、北朝鮮に改革をした方がいいことを納得させ、自然に変質させることを計画していると述べている。前回の記事で述べたように、北朝鮮はすでに中国式の経済自由化政策を始めているのだから、これは実は「アメリカは北朝鮮に対して何もしない」と言っているのと同じである。(関連記事) (ハドリーは、イラクのフセインが核兵器を開発しているというウソの情報をブッシュ大統領に信じ込ませたネオコン系の人物だが、ライスの後任として大統領補佐官に昇格することが決まっている) ウォルフォウィッツ国防副長官は2003年6月に「北朝鮮は中国を見習って経済発展すれば、崩壊せずにすむし、核武装などしなくても良いようになる。そうしたらアメリカは金正日政権を転覆しようとは思わなくなる」と発言している。ネオコンは、かつてのイラクやイランに対しては、言いがかりをつけて何とか政権転覆しようとしてきたが、北朝鮮に対してはもっと現実的な方針を述べており、トーンが違う。(関連記事) イラクやイランの政権転覆に積極的なネオコンが北朝鮮の転覆には割と消極的である理由は、イラクとイランはネオコンの心の故郷であるイスラエルの存亡に関係しているからかもしれないし、アメリカの資本家が中国の安定を乱す北朝鮮の転覆に賛成していないからかもしれない。 ▼発電用のウラン濃縮を兵器用と決めつけた? 実際に北朝鮮が核兵器開発をしているかどうか、判断するのは難しい。北の政府が、ウラン濃縮に必要な遠心分離器をパキスタンから購入していたという指摘があるが、これは以前の「枠組み合意」に基づいて米韓日が北朝鮮に作ってやるはずだった軽水炉の燃料を自国で作ろうとして購入したものだった可能性もある。兵器用の高純度の濃縮ウランを作るのは核拡散防止条約に違反しているが、発電用の低純度のウラン濃縮は違反していない。(関連記事) アメリカは昨年末、北朝鮮が自国のウラン濃縮が発電用のものであると主張するのならそのような定義のままで良いから、ウラン濃縮の施設を廃棄すると約束すれば「完全核放棄」の意思表示とみなすという方針に転換した。発電用のウラン濃縮は国際法に違反していないのだから、廃棄する必要はなく、アメリカのこの主張は理に合わない。(関連記事) もともと北朝鮮が行っていたウラン濃縮は発電用のもので、それをアメリカが誇張して「兵器用に違いない」と決めつけていたため、今ごろになってアメリカの方で態度を変えねばならなくなっているのかもしれない。後述するが、アメリカは、イランに対しても似たような濡れ衣を着せている。 この記事を書いている最中の1月24日、平壌を訪問したアメリカの議員団に対し、北朝鮮政府が核兵器の保持を認めたという報道が出てきた。北朝鮮が核兵器保有を認めたのは初めてのことで、一見「北朝鮮は核兵器を持っている」というアメリカの主張は正しかったように見える。しかし、アメリカ側が議員団を派遣して北朝鮮と交渉する雰囲気になってきたところで北朝鮮の「自白」が飛び出してきたというタイミングを考えると、今回の自白は、アメリカ側を試すための駆け引きの一環であると思われ、北朝鮮が本当に核兵器を持っているかどうかは、これだけでは判断できない。 (関連記事) 実際に北朝鮮が核兵器を持っているとしたら、それはウラン濃縮によって作られたものではなく、プルトニウムを使って作ったものであると思われる。CIAは、北朝鮮がどのくらいのプルトニウムを持っているか、よく分からないと分析している。 ▼亡命イラン人組織に誇張の暴露をさせる 「悪の枢軸」のもう一つの国であるイランに関しても、アメリカが「核兵器開発を進めている」と主張している証拠は、根拠が薄いという指摘が出ている。 イランが核兵器開発を進めていると最も強く主張しているのは、亡命イラン人のゲリラ組織「ムジャヘディン・ハルク」(MEK)と、その傘下の政治団体である「イラン国民抵抗評議会」(NCRI)である。NCRIは昨年11月17日に「イラン政府は、パキスタンから核兵器の設計図を買って核兵器を製造中で、来年中には完成する予定」と発表した。またこの直後、パウエル国務長官が「イランは、自国製のミサイルに核兵器を搭載する技術を開発しているという情報を見た」と発言し、これもNCRIが持ち込んだ情報であると報じられている。(関連記事) だが、これらの情報には裏付けがない。NCRIによると、イランは2001年にパキスタンから核兵器に使える濃縮ウランを買ったというが、この時期はアメリカがパキスタンの核兵器開発について詳しい調査を進めていたときで、ひそかに濃縮ウランを売ることなどできるはずがないと米国内の専門家から指摘されている。 NCRIが発表を行ったのは、イランの核兵器開発疑惑を軍事ではなく外交で解決しようとしているEU3カ国(英仏独)が、イランとの間で「イランがウラン濃縮を中止する代わりに、EU側はイランに経済援助を行う」という約束を取り交わして署名した2日後のことだった。NCRIとその背後にいる米タカ派は、EUの外交努力を潰すために、根拠の薄い発表を暴露的に行ったのだと考えられる。 NCRIの上部組織であるムジャヘディン・ハルク(MEK)は、もともとイランの共産主義者の組織だったが、イスラム革命の後、反政府団体としてイランから追放されてイラクに亡命し、フセイン政権にかくまわれて1980年代をすごした。湾岸戦争の後、こんどはアメリカにかくまわれ、米軍がフセインの攻撃からクルド人を守るために作った北イラクの自治区で活動し、アルカイダと連携することもアメリカが黙認した。アメリカでは、国務省はMEKをテロ組織の一つに指定したが、国防総省のネオコンらは、それを無視して裏からMEKを支援した。 ▼イラク潰しと同じ方法でイランを潰す NCRIはイラン国内に密偵がおり、イランのどこに核施設があるかといったことについては正しい情報を発表したときもあるが、それらの核施設の中でどんな開発が行われているかについては知るすべがないはずだ、という指摘もある。たとえば、NCRIは「イスファハンの近くに地下の核開発施設がある」「そこで核兵器用のウラン濃縮が行われている」という情報を流しているが、イスファハンの近くに核施設があるのは事実としても、そこで核兵器開発が行われているという見方は、根拠のあるものとは考えにくいということである。(関連記事) イラン政府は、ロシアなどからの技術協力を受けて発電用の原子炉を建設中で、核燃料サイクルも確立しようとしている。亡命者組織が「核兵器開発」と主張しているものは、実は発電用に開発しているもので、誰にもそれを止める権利はないとイラン政府は主張している。「イランでは石油が豊富に採れるのに、わざわざ原子力発電を行おうとするのはおかしい」というタカ派からの指摘に対しては、イラン政府は「国内で採れる石油を輸出に回して外貨を稼ぐため」と反論している。 イランの核開発が、100%発電用なのか、タカ派が主張しているようにこっそり核兵器の開発も兼用しているのか、それを確定することは簡単ではない。しかし、イランはこれまで何回もIAEAの査察を受けており、公式に疑惑を持たれた部分に対しては潔白を証明している。 NCRIなどの外部勢力が「あそこで核兵器開発をしている」「こっちでもやっているらしい」と指摘するのは簡単で、その指摘が外れても、彼らはバックにアメリカのタカ派がついているので、大して問題にされない。IAEAとイラン政府が振り回されるだけである。こうしたタカ派の作戦が成功すると、イランは核兵器を開発しているという見方が国際的に確定し、アメリカが軍事侵攻しやすくなる。 この構図は、イラクが「大量破壊兵器を開発している」という濡れ衣をかけられて侵攻されたときの仕掛けと全く同じである。イラクのときは「イラク国民会議」(INC)という亡命者組織がウソや誇張の情報をマスコミに流し、世界の人々に「フセインは悪者」というイメージを定着させた。INCのトップだったアハマド・チャラビは、以前からのネオコンの仲間だった。CIAや国務省からは「INCの指摘はいい加減だ」という主張も出されたが、ホワイトハウスの方針決定権を握った国防総省のネオコンやチェイニー副大統領は、CIAを解体し、パウエルを辞めさせることでそれに応えた。 ▼民主化という名の世界破壊 以上説明してきたように、ブッシュ政権が主張した「イラク、イラン、北朝鮮は危険な大量破壊兵器を持っており、政権転覆によって強制的に民主化する必要である」という「悪の枢軸」の戦略は、ウソと誇張に基づいた主張であることが明らかになっている。 イラク、イラン、北朝鮮は「民主主義」の面で欠点のある国だという指摘もあるが、この点でも「政権転覆」は解決策になっていない。イラクは多民族国家であり、アメリカが独裁的なアラウィ政権を就任させねばならなかったことから明らかなように、ある程度の独裁が必要である。その意味でフセインは正しいことをしていたといえる。イランは独自の限定的な民主主義をやっており、外国からの政治介入は必要ない。北朝鮮は前回の記事に書いたように、中国型の経済優先の開放が進められることが望ましく、先に政権転覆すると壊滅的な結果しか生まない。 アメリカが世界を民主化したければ、まずアメリカが無茶苦茶にしたイラクを、せめてフセイン時代のような安定した国に戻してやることから始めなければならない。1月末にイラクで予定されている選挙は、しだいに失敗が確定的になっており、このままでは状況はますます悪化する。 ところが、1月20日の就任演説でブッシュ大統領は、イラクの立て直しについて何も述べなかったどころか、2期目の4年間で、民主化されていない国々に対する政権転覆作戦をさらに拡大続行することを表明した。(関連記事) 国務長官に就任するライスは、米議会での公聴会での発言で「悪の枢軸」を拡大し、イラン、北朝鮮、キューバ、ミャンマー、ベラルーシ、ジンバブエの6カ国を「いまだに圧政の国々」(outposts of tyranny)と呼び、これらの国々は強制民主化が必要だと主張した。(関連記事) チェイニー副大統領は、次に政権転覆が行われるのはイランであり、イスラエルがアメリカに代わってイランを攻撃するかもしれないと述べている。これには「アメリカの犬」と言われたイギリスの外相でさえ「イランに対する軍事攻撃は考えられない」と述べている。しかし、イラクの前例から考えると、今後アメリカが単独でイランに侵攻する可能性もある。(関連記事) しかしアメリカがイランに侵攻したら、イラクのようなゲリラ戦の泥沼をもう一つ抱えることになり、自滅的な結果に陥ることは目に見えている。私はこれまで何回か、ブッシュ政権は自国を自滅させたがっているように見えると書いてきたが、ここでもその傾向が見てとれる。(関連記事)
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