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スペイン移民侵略騒動は米イスラエルの欧英潰し策
2026年8月2日
田中 宇
7月30日、スペインとモロッコが国境を接している地中海岸の港湾都市セウタとメリリャで、モロッコ人の若者ら5万人前後が、突如として、国境を越えたり泳いだりしてスペイン側に流入する騒動が起きた。メリリャへの侵入はわずかで、ほとんどはセウタに来た。
(What we know about Ceuta migration crisis and causes behind it)
セウタとメリリャは、15-16世紀からスペインがアフリカ大陸に持っていた植民地の、最後の名残だ。セウタは、地中海の出入り口でスペインとモロッコに挟まれたジブラルタル海峡の南側の岬の部分。メリリャは、その300キロほど東にある、地中海岸のアンダルシア対岸の岬の港湾都市だ。地理的には、いずれもモロッコの一部であるのが自然だ。
モロッコ政府はセウタとメリリャをスペイン領と認めず、自国の一部だと主張してきた。スペインはEUの一部であり、セウタとメリリャはEUがアフリカに持っている唯一の領土だ。
EUは、一か国に入国したら検問なしに他の加盟国に自由に行ける「シェンゲン協定」の体制下にある。だが、セウタとメリリャはシェンゲン協定の例外地域で、モロッコからセウタやメリリャに違法入国できても、そこからスペイン本土や他のEU諸国に行くには空港や港湾で検問がある。
今回の流入者もセウタやメリリャから出て行けず、スペイン当局に投降して収容所に入るか、モロッコの自宅に戻るしかなかった。半数以上が自主的に帰国したと報じられている。
だが、本当に大半が帰国したかどうか疑問もある。スペインでは7月8日、陸の国境を歩いて来た不法入国でなく、海を泳いで渡ってきた不法入国の移民に対し、即時送還せず入国許可も視野に入れた対応をせねばならないという判決が出された。それを知ったモロッコのスペイン移住希望者たち数万人が、陸路でなく泳いでセウタに渡ったと考えられている。
スペインはリベラル左翼のサンチェス政権で、不法移民を合法化する政策を今年から強めている。セウタに泳いできたモロッコ人の多くを受け入れていく可能性がある。
(22 EU Leaders Demand "Immediate Action" As Migrant Invasion Raises Fear Of Hybrid Warfare)
EUでは中道系のエリート政党によるリベラル政策によって、10年以上前から不法入国してきた中東などから大量の移民を寛容に受け入れ、福祉の資金を与えて生活保護する流れが定着している。
その結果として近年、EU各国では、移民による強姦や強盗、銃撃などの犯罪が増え、エリート政党のリベラル政策に対する市民の反発が高まった。
ドイツのAfDやフランスのルペン系、英国のファラージ(改革党)といった極右系の政党への支持が強まり、戦後ずっと続いてきたエリート支配が終わりかけている。米国はすでに、反リベラルなトランプ派が席巻し、リベラル左翼な民主党が凋落している。
今回のセウタなどへの移民流入は、欧英のリベラル支配の終わりと極右化の流れに拍車をかける。
かつてローマ帝国が不法移民の流入で衰退したように(西暦410年のゲルマン民族によるローマ略奪とか)、近代世界の中心だった欧英が不法移民の侵略的な流入によって衰退・破綻しているという見方も(ロシアなどから)出ている。
(Why did nearly 60,000 migrants suddenly storm the border into Spain?)
今回のセウタ移民侵略は、自然に起きたことでなく、モロッコ当局が誘発した事件である。当日、モロッコの国境警備隊はセウタとの国境にあるゲートを開き、青年たちのスペイン側への流入を誘発した。
セウタのモロッコ側では、荷台に多くの若者を乗せたトラックが次々と国境に向かい、国境近くに到着したトラックから無数の若者が飛び降りて越境していくのを当局者が傍観している動画も流れている。
モロッコ政府は、スペイン政府が最近、西サハラ紛争でモロッコの仇敵であるアルジェリアに接近したことを不服として、サンチェス首相が7月20日にアルジェリアを公式訪問した後に今回のセウタ移民侵略を誘発した。
(Hybrid war hypocrisy: How the migrant attack on Spain shattered the ‘EU solidarity’ delusion)
モロッコ当局は2021年5月にも、スペイン政府が西サハラ紛争で独立派ポリサリオの指導者ブラヒム・ガリを秘密裏にスペインで新型コロナの入院治療させたことに反発し、今回と同じ手口の移民侵略をセウタで展開している。この時は流入移民の規模が8000人で、今回の5分の1だった。
スペイン政府はその後、西サハラ紛争で独立派を支持する傾向を弱め、モロッコによる領有を容認する方向に流れたが、今年に入って再びアルジェリアに接近してモロッコから離反した。そのためモロッコは今回、スペインへの制裁としてセウタ移民侵略を、5年前より大規模に再発した。
セウタ移民侵略は、移民問題であると同時に、西サハラなどをめぐるスペインとモロッコの対立問題でもある。
(What to know about the Spanish enclave of Ceuta as migrant arrivals from Morocco spike)
今回の話には、さらに大きな裏がある。トランプとイスラエルのリクード系が、ユーラシア西部にイスラエル覇権の確立を目指し、アラブの諸国の中に親イスラエルな国々を作って反イスラエルな諸国と争わせる策略を続けている。
米イスラエルは1期目のトランプ政権時代からモロッコを取り込み、2020年12月にトランプの仲裁(アブラハム合意)でイスラエルとモロッコが国交正常化した。
トランプは見返りに、米国がモロッコの西サハラ領有を支持すると宣言した。(米国ではクリントンとオバマの民主党政権が西サハラ独立支持に傾き、その間の子ブッシュの共和党政権はモロッコ寄りになるという右往左往だった。トランプは、イスラエルが覇権戦略としてモロッコを必要とした関係で、決定的に親モロッコになった)
モロッコは、イスラエルと和解し始めた後、イスラエルの入れ知恵で、2021年5月や今回のセウタ移民侵略を引き起こしてスペインに圧力をかける諜報戦略をやり出した。
(The Gibraltar calculus: Is Spain's Ceuta included in Abraham Accords?)
スペインは2018年から、リベラル左翼のサンチェス政権だ。イスラエルが英国系を激怒させて対立を激化する目的でガザ戦争の巨大な人道犯罪をわざと犯した後、サンチェスは「飛んで火に入る夏の虫」になり、イスラエル敵視を強めた。
サンチェスは、2024年5月にパレスチナを国家承認し、イスラエルを経済制裁し始めた。今年3月からのイラン戦争で、スペインはトランプへの非難を強め、米軍にスペインの基地使用や領空通過を禁じた。トランプは報復としてスペインとの貿易を停止した。
スペインはすっかり米イスラエルの敵になった。イラン開戦で米スペイン関係が悪化した後の4月末、米議会下院の歳出委員会が報告書の中で「スペインが管理するセウタとメリリャはモロッコ領」と表記した。
(H. Rept. 119-631)
米国の公的機関として史上初の表出(提案)だった。この表記を主導した共和党議員(Mario Diaz-Balart)はフロリダ選出で、ルビオ国務長官の盟友だ。トランプ政権が手を回したと考えられる。
そして今回のモロッコによるセウタ移民侵略の再発動。ここまでの流れを見ると、トランプとイスラエルが、リクード系による英国系(欧英EUのリベラルエリート)潰しの一環として、欧英の移民危機を悪化させ、独仏英などの極右を応援するために、モロッコに移民侵略策を再発動させたのだろう。
(Think Tank: Trump Must Recognize Ceuta, Melilla as Occupied Moroccan Territory)
▼重複するが、他に入れるところがない背景説明を以下に入れる
米覇権の運営機関である諜報界の支配をめぐり、911以来、英国系とリクード系が対立・暗闘し、親イスラエルなドナルド・トランプの登場(特に返り咲き)後、リクード系の席巻と英国系の衰退が如実になっている。
リクード系(今の米イスラエル)は、英国系が政権を持つ欧英EUを潰すため、欧英を主導するリベラル勢力の中に活動家の諜報要員を多数入りこませ、リベラル政策を歪曲・過激化していった。
リクード系が送り込んだリベラル活動家たちは10年以上かけて欧英のリベラル政策を過激化し、欧州を自滅させる方向に進ませた。
地球温暖化、原発反対、ジェンダー運動、ロシア敵視などの分野と並び、大量の不法移民を積極的に受け入れて欧英に定住させるリベラル運動が進められた。移民急増の結果、犯罪の増加、社会の不安定化、財政の逼迫など悪い事態が拡大し、欧英の各国で、リベラル政策を進めたエリート勢力が国民の支持を失い、極右勢力に取って代わられていく流れになっている。
リクード系(米諜報界)は、中東各国の地元の諜報機関や治安組織を動かし、中東諸国が厄介払いしたい犯罪者や強姦魔などを移民として欧州に送り込み、欧州の治安を悪化させている。
かつてテロ戦争の時は、同じルートでテロリストが中東から欧州に送り込まれた。以前も今も、欧州側は諜報が米国依存なのでやられていることに気づかない。当局者の一部が気づいたとしても、米国に楯突けない政治構造なので上から止められ、米諜報界の策略を阻止できない。
リベラル政策は、英国系が米国中心の世界覇権を動かす際の基本戦略であり、覇権に楯突く諸国に独裁や人道犯罪など反リベラルなレッテルを貼り、制裁して弱体化させてきた。
リクード系は、過激な活動家を送り込んで欧英のリベラル政策を過激化・歪曲して失敗・無効化させ、英国系を潰そうとしている。
英国系のリベラル勢力が各国の選挙で政権を失った後に出てくる極右勢力は、どこの国でもだいたい親イスラエルだ。日本のリベラル派を無力化しつつある高市政権も、親イスラエルでリクード系だ。
リクード系は、世界各国のリベラル派や左翼の政権を極右に政権転覆する流れを作り、世界を英国系主導からリクード系(イスラエル)主導に転換しようとしている。
(世界はイスラエル覇権体制になった)
イスラエルはアラブ諸国の中で近年、モロッコのほか、UAEとソマリランドに接近し、国交正常化し、諜報や軍事の面で親密な関係を構築している。3カ国はいずれも重要な海峡に面し、イスラエルがユーラシア西部の覇権国になるために地政学的に重要だ。
モロッコは、地中海と大西洋をつなぐジブラルタル海峡に面している。UAEはホルムズ海峡に面し、ソマリランドは紅海とインド洋をつなぐバブエルマンデブ海峡に近い。
(多極化後の中東の覇権争い)
3つの海峡は、いずれも世界有数の貿易航路だ。イスラエルは3つの国と戦略関係を強化し(傀儡化し)、世界の貿易路と石油ガス流通を握ることで、いずれ米国がドル崩壊して覇権国として機能(諜報借用)できなくなってもイスラエルの覇権が続くようにしている。
モロッコは優勢になる。スペインは自滅させられ、いずれ極右の政権になる。イスラエルの右派(入植者たち。リクード系。米諜報界に入り込んでいる勢力)は今回の騒動に関し、スペインを思い切り誹謗中傷し、馬鹿にしている。欧州人はリクード系の戦略に気づいていない。間抜け。自業自得だ。
(Zionists celebrate Spanish migrant invasion)
アラブ世界においてイスラエルはこのほか、南に隣接するヨルダン、エジプトを1980年代から傀儡化し、北に隣接するシリアとレバノンを最近、イラン傘下から引き剥がして傀儡化している。
英国系はオバマを動かし、イランがシリアとレバノンを傘下に入れ、中露から兵器を買ってイスラエルと対立するよう仕向けた。その逆回しをやっているのがトランプだ。イスラエルは英国系を許さず潰す。さもないと、いずれ反逆される。
私がずっと前から面白いと思ってきたゼロヘッジ(Tyler Durden)は、今回のセウタ騒動に関して、米イスラエルの謀略だという指摘を「左翼の無根拠な妄想」だと言って、謀略の指摘について中身も吟味せずに批判だけする、間抜けな間違い記事を書いている。
以前は面白い分析を出していたゼロヘッジが、なぜこんな浅はかな間違い記事を出すのか。諜報界(=金融界)のリクード系から、買収されたり、脅されたりしているのかもしれない。
(Leftists Now Claim US And Israel Behind The Migrant Invasion Of Spain)
ゼロヘッジは近年、金融面も政治面もつまらなくなっている。ゼロヘッジだけでなく、英語中心の分析業界とかオルトメディアの全体がダメになっている。
私にとっての分析の手がかりが減っている。これまでの英国系覇権は、ウソや歪曲情報ばかりだったが饒舌で、どう歪曲されているかを解読できれば、とても豊かな情報源となっていた。
だが今立ち上がりつつあるリクード系覇権は、情報そのものを流さない。イスラエル右派は、能弁に歪曲情報を流す時もあるが、何も出さない時の方が多い。
マスコミだけでなくオルトメディアも、それ自体が英国系の道具・傀儡機関として作られたものなのかもしれない。だから英国系の衰退とともに立ち枯れて終わりつつある。
私は英国系が潰れてざまあみろと思っているが、情報源が英国系なので私自身も記事が劣化している。私は分析とか執筆自体が楽しいので、立ち枯れて、読者から見捨てられても書いていく。誹謗中傷せず見捨ててください。
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